令和四年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第4問 問4
問題
社会保障に関連する資料について、生徒Xと生徒Yは報告会前にL市役所を訪問し、職員に質問することにした。次の会話文は生徒たちが訪問前に相談している場面である。会話文中の下線部ア〜エの四つの発言のうち、三つの発言は、後の資料の数値のみからは読みとることのできない内容である。会話文中の下線部ア~エのうち資料の数値のみから読みとることのできる内容について発言しているものはどれか。最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:高齢者向けの社会保障と同時に子育ての支援も重要だと思うよ。
Y:子育てにはお金がかかるから児童手当のような現金給付が必要じゃないかな。ア資料1を使って児童手当支給額の経年での変化をみると、支給額は増えていないことが示されているよ。もっと給付できないのかな。
X:でも、それよりも保育サービスの拡充の方が求められているんじゃないかな? イ資料2には、保育所等を利用する児童数の増加傾向が示されているよ。
Y:現金給付と保育サービスの拡充のどちらも必要なのかもしれないよね。この前読んだ本には子育て支援の給付などを表す指標として家族関係社会支出があると書いてあったんだけど、ウ資料3では、世界の国の中には、対GDP比でみた家族関係社会支出の規模が日本の2倍以上の国があることが示されているしね。
X:でもエ資料4には、社会保障の財源には借金が含まれていて、プライマリーバランスが悪化している主な要因であることが示されているよ。持続可能な仕組みなのかな。
Y:日本全体の話だと実感がわかないから、身の回りの問題から考えてみようよ。市役所の訪問時にはL市の子育て支援について質問してみない?
①下線部ア ②下線部イ ③下線部ウ ④下線部エ
解説
正解:③
・知識不要の、典型的な図表読み取り系国語問題である
・図表に書かれている事と、下線部の文章が一致しているかどうかを見ればよい
ア 資料1を使って児童手当支給額の経年での変化をみると、支給額は増えていないことが示されている
・という訳で資料1を見てみると、そもそも資料1はそういう図表ではない
・資料1にあるのは「子供が×歳の時は月△円貰える」の一覧である
・「児童手当支給額の経年での変化」は、何処にも書いていない
・よって、下線部アは図表から読み取れる内容ではない
イ 資料2には、保育所等を利用する児童数の増加傾向が示されている
・という訳で資料2を見てみると、またしても、資料2はそういう図表ではない
・資料2にあるのは「保育所等の待機児童数の推移」である
・「保育所等を利用する児童数」を示したものではない
・よって、下線部イは図表から読み取れる内容ではない
ウ 資料3では、世界の国の中には、対GDP比でみた家族関係社会支出の規模が日本の2倍以上の国があることが示されている
・という訳で資料3を見てみると、「各国の家族関係社会支出の対GDPの比較」が載っている
・そして資料3によると日本国は1.6であり、その2倍となる3.2を超える国が複数載っている
⇒例えばノルウェー王国は3.2、スウェーデン王国は3.4である
・よって、下線部ウは図表から読み取れる内容である
エ 資料4には、社会保障の財源には借金が含まれていて、プライマリーバランスが悪化している主な要因であることが示されている
・もう既に正答はウ(③)だと分かっているが、念の為下線部エも検討しておこう
・資料4には確かに、「日本の社会保障の給付と負担の現状」が書かれている
・ただ、資料4の負担をよく見てみると、「保険料」「公費」「その他」としか書いていない
・注を含めたとしても、やはり、「借金」という文言が何処にもない
・一般に国の「借金」と言われがちな国債の表記すらない
・故に資料4には「社会保障の財源には借金が含まれてい」るとは示されていない
・よって、下線部エは図表から読み取れる内容ではない