令和七年度 大学入学共通テスト本試験 公共、政治・経済
第1問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
男女平等に関して、生徒Aと生徒Bが日本の男女平等に関する法的状況について調べている。次の会話文中の空欄[ ア ][ イ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
A:日本国憲法第14条は、[ ア ]を明記しており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁じているよね。
B:他にも、日本は女性差別撤廃条約を批准したことに伴い、同じ年に[ イ ]を制定したよね。
A:このような法があるにもかかわらず男女平等が実現していないのはなぜだろう?
B:もっと調べてみようよ。
①ア 法の下の平等 イ 男女共同参画社会基本法
②ア 法の下の平等 イ 男女雇用機会均等法
③ア 両性の本質的平等 イ 男女共同参画社会基本法
④ア 両性の本質的平等 イ 男女雇用機会均等法
問1解説
正解:②
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
・問題としては普通だが、リード文が極めて不適切な問題
⇒「文部科学省所管の大学入試センターで作った」「大学受験をする日本全国の人」が受ける試験で「男女平等が実現していない」なんて思想性の強い言葉を開幕からぶつけていくのはちょっと…
・アについては知識がなくてもいいが、イについては知識が必要な問題である
⇒無論、アについても知識があった方がいいのは間違いない
日本国憲法第14条は、【ア】を明記しており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁じているよね
・アの選択肢は「両性の本質的平等」か「法の下の平等」である
・そして日本国憲法第十四条には、以下のようにある
日本国憲法第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
・これを覚えていれば、勿論、「法の下の平等」であると分かる
・そこまで覚えていなくても「人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別」の禁止は本文にある
・明らかに、性別による差別以外の差別が大量に書いてある
・そうである以上、まず「両性の本質的平等」ではないだろうと分かる
他にも、日本は女性差別撤廃条約を批准したことに伴い、同じ年に【イ】を制定したよね
・イの選択肢は「男女共同参画社会基本法」「男女雇用機会均等法」である
・ザ・頻出とでも言うべき部分である
・即ち、第二次世界大戦後成立した人権関係の条約は、ただ名前や内容を覚えればいいというものではない
・日本国が批准しているかどうか、しているのであればどういう対応をしたか、がよく出題される
・今回もまさにそうで、女性差別撤廃条約の批准の際、日本国政府がどう対応したかが問われている
・そして、この条約への対応として成立した法律が、男女雇用機会均等法である
問2
経済に関連して、生徒Aと生徒Bは、仕事にかかわる性別役割意識について調べるために、内閣府の資料を見つけた。次の表1は、生徒たちが、その資料中の二つの設問項目について、「そう思う」と答えた回答者と「どちらかといえばそう思う」と選んだ回答者数を合計の割合を、肯定的な回答割合としてまとめたものである。表1から読み取れることとして適当でないものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
①「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合は、女性20代~女性60代では、年代が上がるほど高くなっている。
②「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合は、男性の20代の方が女性20代よりも、10.0ポイント以上高い。
③「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合は、男性20代と男性30代のみ20.0%を超えている。
④「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合は、60代において男女の差が最も大きい。
問2解説
正解:④
・「表を見る」「選択肢と照らし合わせる」それ以外何もない虚無の問題
・表と選択肢の内容を照らし合わせると、①~③は正文であると分かる
・一方、④については、計算してみると誤文であると分かる
20代:20.4-11.0=9.4
30代:20.7-10.4=10.3
40代:17.6-10.4=7.2
50代:15.7-8.4=7.3
60代:15.8-9.4=6.4
・この通り、男女差が最も大きいのは30代であって、60代ではない
・よって、④が誤文である
問3
政治に関して、次の表2は、日本を含む4か国の国政における女性議員比率(以下、女性議員比率)の国際比較を示したものである。後の先生Tと生徒Aと生徒Bの会話文を読み、表2と会話文から読み取れることとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
表2
1960年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
X国 | 13.8 | 14.0 | 27.8 | 38.4 | 42.7 | 45.0 | 47.0 |
Y国 | 1.5 | 2.1 | 4.3 | 6.9 | 10.9 | 18.9 | 39.5 |
Z国 | 3.9 | 2.3 | 3.6 | 6.4 | 14.0 | 16.8 | 27.3 |
日本 | 1.5 | 1.7 | 1.8 | 2.3 | 7.3 | 11.3 | 9.9 |
(注l)数値は二院制の国では下院における女性議員数を基に算出したものである。
(注2)各年1月の女性議員比率で.小数第2位を四捨五入した値である。
(出所)Inter-Parliamentary Union(IPU),Parline database on national parliaments(IPUWebページ)により作成。
A:女性議員比率を上げるための方法のひとつとして、候補者の20~30%など一定の割合を女性に割り当てるクオータ制があるということですが、X国ではどうなっているのでしょうか。
T:X国では、1990年頃から候補者名簿の男女比率が均等になるように、各政党が自主的に努めているんです。
B:Y国では、2000年に候補者を男女均等にすることを各政党に義務付ける法が制定されたと聞きました。
T:Y国では、人口の半数を占める女性の権利として候補者を男女均等にしたんです。しかもこちらは義務なので、候補者の男女比率が均等でない政党には、政党助成金が減額されるという罰則があります。
B:女性議員比率を上げるためには様々な方法があるんですね。
A:Z国は、クオータ制を導入していないのに、女性議員比率は上昇していますね。
T:そうですね。Z国は、クオータ制以外にも、どのようなことが女性議員比率を上げるのかを調べるための良い事例になりそうです。
B:日本で2018年に制定された政治分野における男女共同参画推進法とは、どのようなものなのでしょうか。
T:各政党に候補者の男女比率を均等にする努力を促す法律で、罰則はありません。
A:私たちはこれから有権者になるから、この問題に関心をもっていこうと思います。
①X国では、女性議員比率が初めて上昇し始めたのは、各政党が候補者名簿の男女比率を均等にする努力を始めた時期である。
②Y国では、各政党の候補者の男女比率を均等にする法を制定した年とその10年後とを比較すると、女性議員比率は8.0ポイント高い。
③Z国では、クオータ制を導入していないが、女性議員比率は1960年以降常に日本の女性議員比率より高く、Y国より低い。
④日本では、各政党に候補者の男女比率をできる限り均等にすることを促す法律が制定された後、女性議員比率はZ国を上回った。
問3解説
正解:②
・表と会話文を選択肢に照らし合わせるだけの問題。それ以外は虚無
①X国では、女性議員比率が初めて上昇し始めたのは、各政党が候補者名簿の男女比率を均等にする努力を始めた時期である。
・表によると、1960年代から1970年代の時点で、女性議員比率が上昇している
・一方、会話文では以下のように書いてある
T:X国では、1990年頃から候補者名簿の男女比率が均等になるように、各政党が自主的に努めているんです。
・即ち、女性議員比率が初めて上昇した年代と、各政党が努力を始めた年代は一致しない
・よって、①は誤文である
②Y国では、各政党の候補者の男女比率を均等にする法を制定した年とその10年後とを比較すると、女性議員比率は8.0ポイント高い。
・Y国が法を制定した年代は、会話文中の以下の箇所にある
B:Y国では、2000年に候補者を男女均等にすることを各政党に義務付ける法が制定されたと聞きました。
・つまり、Y国に於ける2000年代と2010年代の女性議員比率を見ればよい
・すると、確かに、ちょうど8%の差がついている
・よって、②は正文である
③Z国では、クオータ制を導入していないが、女性議員比率は1960年以降常に日本の女性議員比率より高く、Y国より低い。
・以下の会話文から、Z国では確かに、クオータ制を導入していない
A:Z国は、クオータ制を導入していないのに、女性議員比率は上昇していますね。
・一方、表を見てみると、Z国の女性議員比率は、常に日本国より高い
・しかし、常にY国より低いという訳ではなく、Y国を上回る年代もある
・よって、③は誤文である
④日本では、各政党に候補者の男女比率をできる限り均等にすることを促す法律が制定された後、女性議員比率はZ国を上回った。
・日本国の女性議員比率は、常にZ国より低いというのは、③で既に確認済みである
・よって、④は誤文である
問4
生徒Aと生徒Bは、これまでの探究活動を振り返って会話をしている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
A:社会のなかには男女間の差別だけでなく、様々な差別があることが指摘されているよね。平等には二種類あるって学んだけれど、差別のない社会を実現する上で、どちらの平等が重視されるべきなのだろうか。
B:「個性や属性にかかわらず、すべての人を同じように扱うこと」という意味での平等は「[ ア ]平等」だと学んだね。法律や制度という点では、こちらの意味での平等は、日本ではかなり実現しているんじゃないのかな。
A:でも、平等を規定した法律が定められていても、事実として差別が残ってしまうことがあるよね。この問題に対してはどうすればいいのだろう。
B:その問題に対しては、クオータ制のような制度を新たに導入することによって、「[ イ ]平等」を実現するやり方があり得るね。
A:差別の問題があることは広く知られていても、実際には差別がなくならないことはあるから、そうした取組みが必要な場合もあるだろうね。
B:例えばアイヌ民族に対する差別については、2019年に[ ウ ]によってアイヌ民族は法律上初めて「先住民族」と明記されたよ。
A:そういえば2020年、北海道白老町に、アイヌ民族の歴史や文化を学ぶことのできる施設である「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が完成したね。
B:平等について考えるためには、人々の違いを多様性として捉えて、お互いにその存在を認め合うことが重要だろうね。差別のない社会を作るためには、法律や制度を整えるだけでなく、私たちの真摯な努力が求められていると言えるね。
①ア 形式的 イ 実質的 ウ アイヌ文化振興法
②ア 実質的 イ 形式的 ウ アイヌ文化振興法
③ア 形式的 イ 実質的 ウ アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)
④ア 実質的 イ 形式的 ウ アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)
問4解説
正解:③
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(平等権)
・長ったらしい文章の割に、直球で知識を聞いてくる問題
⇒大学入試の出来のいい問題では、長ったらしい文章がある場合「空欄の前後だけしか読まない」ではうまくいかないのだが、この問題はそれで解けてしまう
・アとイは、形式的平等と実質的平等のどちらかを聞いてきている
「個性や属性にかかわらず、すべての人を同じように扱うこと」という意味での平等は「[ ア ]平等」だと学んだね。
・この説明が「形式的平等」の説明として適切か? と言われると疑問がなくはないが…
A:でも、平等を規定した法律が定められていても、事実として差別が残ってしまうことがあるよね。この問題に対してはどうすればいいのだろう。
B:その問題に対しては、クオータ制のような制度を新たに導入することによって、「[ イ ]平等」を実現するやり方があり得るね。
・ここの会話文が、明らかに実質的平等(結果の平等)を示している
⇒実質的平等(結果の平等)は、「結果として平等になっているかどうか」を重視する考え方である
・よって、アが形式的、イが実質的である
2019年に[ ウ ]によってアイヌ民族は法律上初めて「先住民族」と明記されたよ
・アイヌ関係の法律の変遷を頭に入れておけば解ける
・この変遷は日本史的ではあるが、たまに大学入試でも出題されるので抑えておこう
北海道旧土人保護法 | アイヌ文化振興法 | アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法) |
明治にできた法律 | ←を改正してできた法律。人種差別撤廃条約批准に合わせて、批准直後の1997年成立 | ←を改正してできた法律。2019年成立。アイヌ民族を「先住民族」としたのが特徴 |
第2問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Aの班は「公共」の授業で、公共空間の形成に関して、次の先生の説明を受けた。先生の説明中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入るものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
先生の説明
「公共空間」とは、「人間同士のつながりや関わりによって形成される空間」を意味する。そこでは、人々が主体的に参加し、互いの意見を尊重しながらこの空間を形成していくことが期待されている。
『コミュニケーション的行為の理論』という著書のある[ ア ]によれば、公共空間では対等な立場で自由に意見を交わすという共通理解のもとで、合意を形成していくことが大切であり、そのような合意形成には[ イ ]が必要である。
また別の哲学者は著書『人間の条件』で、人間の営みを「生命を維持するために必要な営み」である「労働」、「道具や作品などを作る営み」である「仕事」、「人と人とが[ ウ ]営み」である「活動」の三種類に分け、「活動」こそが公共空間を形成する、と論じている。
① | ア | アーレント | イ | 対話的理性 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
② | ア | アーレント | イ | 対話的理性 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
③ | ア | アーレント | イ | 他者危害原理 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
④ | ア | アーレント | イ | 他者危害原理 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
⑤ | ア | ハーバーマス | イ | 対話的理性 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
⑥ | ア | ハーバーマス | イ | 対話的理性 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
⑦ | ア | ハーバーマス | イ | 他者危害原理 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
⑧ | ア | ハーバーマス | イ | 他者危害原理 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
問1解説
正解:⑤
復習用資料:倫理分野
・倫理分野からの出題にして、ほぼ純粋な知識の問題である
『コミュニケーション的行為の理論』という著書のある[ ア ]
・選択肢はユルゲン・ハーバーマスかハンナ・アーレントである
・無論、この著書を覚えていれば正解を選ぶのは容易である
・とは言え、そんな細かい知識まで覚えている受験生は少ないだろう
・実際のところ、ここで分からなくても、イで判断可能である
ア ]によれば、公共空間では対等な立場で自由に意見を交わすという共通理解のもとで、合意を形成していくことが大切であり、そのような合意形成には[ イ ]が必要である。
・選択肢は「対話的理性」と「他者危害原則」である
・ここに入る適切な単語は、「対話的理性」である
・そして「対話的理性」と言っていた思想家はまさに、ユルゲン・ハーバーマスである
・よってアはハーバーマス、イは対話的理性である
⇒なお、「対話的理性」という言葉を忘れていても、「他者危害原則」を言っていたのがジョン・ステュアート・ミルだと覚えていれば、イに関してはそちらからも解けなくはない。ただ「対話的理性」が「ハーバーマス」に結びつかないと正解に辿り着けないので…
また別の哲学者は著書『人間の条件』で、人間の営みを「生命を維持するために必要な営み」である「労働」、「道具や作品などを作る営み」である「仕事」、「人と人とが[ ウ ]営み」である「活動」の三種類に分け、「活動」こそが公共空間を形成する、と論じている。
・この三種分けは、ハンナ・アーレントに特徴的な思想と言えるだろう
・そしてアーレントが言っていたのはまさに「言葉を通して関わり合う」という事である
⇒ここまで覚えていなくても、話の流れ的に「契約を結んでこれを守る」というような“お堅い”話ではないだろう、というのは何となく察せられる筈である
問2
公共空間の形成についての授業を受けた生徒Aの班は、現在の人間同士の関わりについて情報収集することにし、次の表1・表2を見つけた。表1・表2の各年齢層とも上段の数字は2018年調査の、下段の数字は2022年調査の結果を表している。
(注1)表1の「ゆとりがある」は「かなりゆとりがある」と「ある程度ゆとりがある」とを合わせた割合であり、「ゆとりがない」は「あまりゆとりがない」と「ほとんどゆとりがない」とを合わせた割合である。
(注2)表1に示されている数値は.四捨五入している。そのため、各年齢層の合計は100%にならない場合がある。
(注3)「自由時間の過ごし方」の選択肢は、表2に示しているもの以外に「睡眠、休養」、「家族との団らん」、「旅行」などがあるが、省略している。
(出所)内閣府「国民生活に関する世論調査」(平成30年、令和4年調査)(内閣府Webページ)により作成。
生徒Aの班は表1・表2から,2018年調査と2022年調査を比べた場合の変化を読み取った上で、意見を出し合った。次の意見ア~ウのうち、表1・表2を正しく読み取ったものの組合せとして最も適当なものを後の①~⑦のうちから一つ選べ。なお、表1・表2の読取りに関する部分には下線を付している。
ア 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と回答した割合が半数を下回るようになったのは「30~39歳」と「40~49歳」だ。この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出の機会が少なくなり、インターネットやソーシャルメディアの利用機会が増えたのかな。
イ 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがない」と回答した割合は、すべての年齢層で上がっているが、上がった割合が1ポイント未満だったのは「18~29歳」だけだ。また「自由時間の過ごし方」として「友人や恋人との交際」をあげた割合に関して、9ポイント以上増えたのは「18~29歳」だけで、50歳以上についてはどの年齢層も減っている。「18~29歳」の人々への新型コロナウイルス感染拡大の影響は、他の年齢層とは異なるのかも。
ウ 「自由時間の過ごし方」として「社会参加」をあげた割合は、どの年齢層でも減っている。だけど「70歳以上」は、「社会参加」の割合が他のどの年齢層より高いままであり、「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と答えた割合も、他のどの年齢層より高いままだ。時間のゆとりがないと、社会参加は難しくなるのではないだろうか。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問2解説
正解:⑥
・純粋に表を読み取るだけの問題
・文章ア~ウ(の下線部)が表の内容を正しく言語化しているかどうかだけ見ればよい
ア 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と回答した割合が半数を下回るようになったのは「30~39歳」と「40~49歳」だ。
この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。
・前半部は正文だが、後半部が誤文である
・確かに2022年度に於ける「30~39歳」の「自由時間の過ごし方」では、該当項目が51.9%である
・一方、「40~49歳」は45.6%で、半数に至っていない
イ 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがない」と回答した割合は、すべての年齢層で上がっているが、上がった割合が1ポイント未満だったのは「18~29歳」だけだ。また「自由時間の過ごし方」として「友人や恋人との交際」をあげた割合に関して、9ポイント以上増えたのは「18~29歳」だけで、50歳以上についてはどの年齢層も減っている。
・正文である
ウ 「自由時間の過ごし方」として「社会参加」をあげた割合は、どの年齢層でも減っている。だけど「70歳以上」は、「社会参加」の割合が他のどの年齢層より高いままであり、「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と答えた割合も、他のどの年齢層より高いままだ。
・正文である
・よって、イとウが正しい
問3
探究活動の成果を授業で発表する上で対話の力に注目した生徒Aの班は、哲学対話を実践している哲学カフェに参加し、参加者たちの発言を記録した。参加者たちの次の発言I~IIIのうち、帰納的に推論されているものの組合せとして最も適当なものを後の①~⑦のうちから一つ選べ。
I
哲学カフェの参加者にも、話し合うときの態度はいろいろあるけど、お互い安心して話せるように、穏やかな態度で相手の発言を最後まで聞き、よく考えてから発言するように取り決めたところ、対話が活発にできるようになった。これらの事実が何度もあったことから、活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になるという経験則が導き出せるね。
II
人間には、自分の考えや意見を自由に述べる権利があり、お互いに認め合い尊重し合う義務がある。そうであるならば、哲学カフェに限らず、職場でも学校でも、参加者がお互いに、相手には自由に発言する権利があると考え、相手の話を尊重して最後までしっかりと聞くことを対話のルールにしなければならないことになるね。
III
哲学カフェに初めて参加した人が素朴な質問をしてくれると、これまで繰り返し問うてきた問題に新たな光が当てられて、問いが深まった。そんなときに、対話のおもしろさが感じられた。同じ実感を他の参加者たちももっていた。これらの経験を基にして、どんなに素朴であっても、率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になったんだよ。
①I ②II ③III ④IとII ⑤IとIII ⑥IIとIII ⑦IとIIとIII
問3解説
正解:⑤
復習用資料:倫理分野
・「帰納」という言葉さえ知っていれば、後は国語の問題
⇒ただ、「帰納」は別に公共や倫理でやらなくても、現代文をやる上で当然知っているべき「お堅い」単語のひとつなので…そう考えると純粋な論理国語の問題であるとも言える
意味 | 例 | |
---|---|---|
演繹 | ある前提を設定して、その前提から合理的に考える | ・ソクラテスは人間である(前提1) ・人間は必ず死ぬ(前提2) ⇒ソクラテスは必ず死ぬ(演繹的な推論) |
帰納 | 個々の事象から、その裏にある法則を推測する | ・ソクラテスという人は死んだ(事象1) ・プラトンという人も死んだ(事象2) ・アリストテレスという人も死んだ(事象3) ⇒人間って皆死ぬのでは…?(帰納的に導かれた法則) |
・上記を頭に入れた上で、I~IIIの文章を読んでいけばよい
I
哲学カフェの参加者にも、話し合うときの態度はいろいろあるけど、お互い安心して話せるように、穏やかな態度で相手の発言を最後まで聞き、よく考えてから発言するように取り決めたところ、対話が活発にできるようになった。これらの事実が何度もあったことから、活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になるという経験則が導き出せるね。
・Iの文章の大意は、以下のようなものである
1:ある取り決めを作ってやったところ、何回もうまくいった
2:って事はこの取り決めは有用なのでは…?
・これは明らかに、帰納的な考え方である
II
人間には、自分の考えや意見を自由に述べる権利があり、お互いに認め合い尊重し合う義務がある。そうであるならば、哲学カフェに限らず、職場でも学校でも、参加者がお互いに、相手には自由に発言する権利があると考え、相手の話を尊重して最後までしっかりと聞くことを対話のルールにしなければならないことになるね。
・IIの文章の大意は、以下のようなものである
1:人間には、権利や義務がある(前提)
2:だから全ての人は、他者の権利を尊重したり、自分の義務を果たしたりしなければならない(前提を踏まえた合理的な結論)
・これは明らかに、演繹的な考え方である
III
哲学カフェに初めて参加した人が素朴な質問をしてくれると、これまで繰り返し問うてきた問題に新たな光が当てられて、問いが深まった。そんなときに、対話のおもしろさが感じられた。同じ実感を他の参加者たちももっていた。これらの経験を基にして、どんなに素朴であっても、率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になったんだよ。
・IIIの文章の大意は、以下のようなものである
1:素人質問が、哲学をやる上でむしろ有用になった…という経験が沢山ある
2:だから、素人でも率直に質問や疑問を言ってもらうようにした方がよさそう
・これは明らかに、帰納的な考え方である
・よって、IとIIIが帰納的な推論を表した文章である
問4
生徒Aの班はこれまでの探究活動の成果を踏まえ、公共空間の持続的形成について、対面と非対面という点に着目して構想メモを作成した。次の構想メモ中の下線部a~cの記述と、それぞれに該当する後の事例ア~ウとの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
構想メモ
新型コロナウイルス感染拡大期に、ICT(情報通信技術)が本格的に活用され始めた。例えばa別々の場所にいる人たちが、ICTを使うことで、対面の場に集まることなく、対話や議論に参加できるようになった。これは「非対面的関わりのみのタイプ」である。
また、b今まで対面の場に参加できなかった人が、ICTを使って、対面の場に非対面で参加できるようにもなった。これは「対面的関わりに非対面的関わりが加わっているタイプ」である。
「対面的関わりのみのタイプ」については、例えばcその場にいる人たちが互いに気楽に質問したり、知識や技能を相手の反応を確認しながらていねいに伝えたりすることがしやすい。非対面的関わりと対面的関わりとのバランスをどのようにとるかが、公共空間の持続的形成にとって課題になってくるだろう。
ア これまで対面で実施されていた会議が、事情でオンライン会議に変更されたので、すべての参加者はインターネットで会議に出席した。
イ 料理教室に講師と生徒が集まり、生徒は講師から受けた指導に基づいて料理を作り、その場で講師に味見をしてもらい講評を受けた。
ウ 身体的な事情のため外出できなかった人が、地元の公民館に集まった人々が行っている対話集会に、インターネットで参加した。
①a―アb―イc―ウ ②a―アb―ウc―イ ③a―イb―アc―ウ
④a―イb―ウc―ア ⑤a―ウb―アc―イ ⑥a―ウb―イc―ア
問4解説
正解:②
・a~cの文章について、具体例となるものをア~ウから選べばよいだけの、国語の問題
a別々の場所にいる人たちが、ICTを使うことで、対面の場に集まることなく、対話や議論に参加できるようになった。これは「非対面的関わりのみのタイプ」である。
ア これまで対面で実施されていた会議が、事情でオンライン会議に変更されたので、すべての参加者はインターネットで会議に出席した。
・下線部aのすぐ後にある補足、「非対面的関わりのみ」に着目したい
・これは要するに、「aってのは、非対面のみって事だよ」という意味である
・もう少し嚙み砕いて言うと、「aってのは、オンラインのみって意味だよ」である
・そう考えると、「オンラインのみ」開催の具体例はアとなる
b今まで対面の場に参加できなかった人が、ICTを使って、対面の場に非対面で参加できるようにもなった
ウ 身体的な事情のため外出できなかった人が、地元の公民館に集まった人々が行っている対話集会に、インターネットで参加した。
・bは「対面の場に非対面で参加」とある
・つまり、基本は対面で開催しているものに、オンラインでも参加できるようになった…という話である
・となると、その具体例はウとなる
「対面的関わりのみのタイプ」については、例えばcその場にいる人たちが互いに気楽に質問したり、知識や技能を相手の反応を確認しながらていねいに伝えたりすることがしやすい
イ 料理教室に講師と生徒が集まり、生徒は講師から受けた指導に基づいて料理を作り、その場で講師に味見をしてもらい講評を受けた。
・cについては、直前の「対面的関わりのみ」に注目したい
・要するにこれは、オンライン参加なし、対面参加のみのものである
・となると、その具体例はイとなる
・よって、正解は②a―アb―ウc―イである