令和七年度 大学入学共通テスト本試験 公共、政治・経済
第1問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
男女平等に関して、生徒Aと生徒Bが日本の男女平等に関する法的状況について調べている。次の会話文中の空欄[ ア ][ イ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
A:日本国憲法第14条は、[ ア ]を明記しており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁じているよね。
B:他にも、日本は女性差別撤廃条約を批准したことに伴い、同じ年に[ イ ]を制定したよね。
A:このような法があるにもかかわらず男女平等が実現していないのはなぜだろう?
B:もっと調べてみようよ。
①ア 法の下の平等 イ 男女共同参画社会基本法
②ア 法の下の平等 イ 男女雇用機会均等法
③ア 両性の本質的平等 イ 男女共同参画社会基本法
④ア 両性の本質的平等 イ 男女雇用機会均等法
#人権の拡大 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第1問の問1
問1解説
正解:②
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
・問題としては普通だが、リード文が極めて不適切な問題
⇒「文部科学省所管の大学入試センターで作った」「大学受験をする日本全国の人」が受ける試験で「男女平等が実現していない」なんて思想性の強い言葉を開幕からぶつけていくのはちょっと…
・アについては知識がなくてもいいが、イについては知識が必要な問題である
⇒無論、アについても知識があった方がいいのは間違いない
日本国憲法第14条は、【ア】を明記しており、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁じているよね
・アの選択肢は「両性の本質的平等」か「法の下の平等」である
・そして日本国憲法第十四条には、以下のようにある
日本国憲法第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
・これを覚えていれば、勿論、「法の下の平等」であると分かる
・そこまで覚えていなくても「人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別」の禁止は本文にある
・明らかに、性別による差別以外の差別が大量に書いてある
・そうである以上、まず「両性の本質的平等」ではないだろうと分かる
他にも、日本は女性差別撤廃条約を批准したことに伴い、同じ年に【イ】を制定したよね
・イの選択肢は「男女共同参画社会基本法」「男女雇用機会均等法」である
・ザ・頻出とでも言うべき部分である
・即ち、第二次世界大戦後成立した人権関係の条約は、ただ名前や内容を覚えればいいというものではない
・日本国が批准しているかどうか、しているのであればどういう対応をしたか、がよく出題される
・今回もまさにそうで、女性差別撤廃条約の批准の際、日本国政府がどう対応したかが問われている
・そして、この条約への対応として成立した法律が、男女雇用機会均等法である
問2
経済に関連して、生徒Aと生徒Bは、仕事にかかわる性別役割意識について調べるために、内閣府の資料を見つけた。次の表1は、生徒たちが、その資料中の二つの設問項目について、「そう思う」と答えた回答者と「どちらかといえばそう思う」と選んだ回答者数を合計の割合を、肯定的な回答割合としてまとめたものである。表1から読み取れることとして適当でないものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
①「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合は、女性20代~女性60代では、年代が上がるほど高くなっている。
②「共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先するべきだ」への肯定的な回答割合は、男性の20代の方が女性20代よりも、10.0ポイント以上高い。
③「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合は、男性20代と男性30代のみ20.0%を超えている。
④「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」への肯定的な回答割合は、60代において男女の差が最も大きい。
#国語問題 #計算問題 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第1問の問2
問2解説
正解:④
・「表を見る」「選択肢と照らし合わせる」それ以外何もない虚無の問題
・表と選択肢の内容を照らし合わせると、①~③は正文であると分かる
・一方、④については、計算してみると誤文であると分かる
20代:20.4-11.0=9.4
30代:20.7-10.4=10.3
40代:17.6-10.4=7.2
50代:15.7-8.4=7.3
60代:15.8-9.4=6.4
・この通り、男女差が最も大きいのは30代であって、60代ではない
・よって、④が誤文である
問3
政治に関して、次の表2は、日本を含む4か国の国政における女性議員比率(以下、女性議員比率)の国際比較を示したものである。後の先生Tと生徒Aと生徒Bの会話文を読み、表2と会話文から読み取れることとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
表2
1960年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
X国 | 13.8 | 14.0 | 27.8 | 38.4 | 42.7 | 45.0 | 47.0 |
Y国 | 1.5 | 2.1 | 4.3 | 6.9 | 10.9 | 18.9 | 39.5 |
Z国 | 3.9 | 2.3 | 3.6 | 6.4 | 14.0 | 16.8 | 27.3 |
日本 | 1.5 | 1.7 | 1.8 | 2.3 | 7.3 | 11.3 | 9.9 |
(注l)数値は二院制の国では下院における女性議員数を基に算出したものである。
(注2)各年1月の女性議員比率で.小数第2位を四捨五入した値である。
(出所)Inter-Parliamentary Union(IPU),Parline database on national parliaments(IPUWebページ)により作成。
A:女性議員比率を上げるための方法のひとつとして、候補者の20~30%など一定の割合を女性に割り当てるクオータ制があるということですが、X国ではどうなっているのでしょうか。
T:X国では、1990年頃から候補者名簿の男女比率が均等になるように、各政党が自主的に努めているんです。
B:Y国では、2000年に候補者を男女均等にすることを各政党に義務付ける法が制定されたと聞きました。
T:Y国では、人口の半数を占める女性の権利として候補者を男女均等にしたんです。しかもこちらは義務なので、候補者の男女比率が均等でない政党には、政党助成金が減額されるという罰則があります。
B:女性議員比率を上げるためには様々な方法があるんですね。
A:Z国は、クオータ制を導入していないのに、女性議員比率は上昇していますね。
T:そうですね。Z国は、クオータ制以外にも、どのようなことが女性議員比率を上げるのかを調べるための良い事例になりそうです。
B:日本で2018年に制定された政治分野における男女共同参画推進法とは、どのようなものなのでしょうか。
T:各政党に候補者の男女比率を均等にする努力を促す法律で、罰則はありません。
A:私たちはこれから有権者になるから、この問題に関心をもっていこうと思います。
①X国では、女性議員比率が初めて上昇し始めたのは、各政党が候補者名簿の男女比率を均等にする努力を始めた時期である。
②Y国では、各政党の候補者の男女比率を均等にする法を制定した年とその10年後とを比較すると、女性議員比率は8.0ポイント高い。
③Z国では、クオータ制を導入していないが、女性議員比率は1960年以降常に日本の女性議員比率より高く、Y国より低い。
④日本では、各政党に候補者の男女比率をできる限り均等にすることを促す法律が制定された後、女性議員比率はZ国を上回った。
#国語問題 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第1問の問3
問3解説
正解:②
・表と会話文を選択肢に照らし合わせるだけの問題。それ以外は虚無
①X国では、女性議員比率が初めて上昇し始めたのは、各政党が候補者名簿の男女比率を均等にする努力を始めた時期である。
・表によると、1960年代から1970年代の時点で、女性議員比率が上昇している
・一方、会話文では以下のように書いてある
T:X国では、1990年頃から候補者名簿の男女比率が均等になるように、各政党が自主的に努めているんです。
・即ち、女性議員比率が初めて上昇した年代と、各政党が努力を始めた年代は一致しない
・よって、①は誤文である
②Y国では、各政党の候補者の男女比率を均等にする法を制定した年とその10年後とを比較すると、女性議員比率は8.0ポイント高い。
・Y国が法を制定した年代は、会話文中の以下の箇所にある
B:Y国では、2000年に候補者を男女均等にすることを各政党に義務付ける法が制定されたと聞きました。
・つまり、Y国に於ける2000年代と2010年代の女性議員比率を見ればよい
・すると、確かに、ちょうど8%の差がついている
・よって、②は正文である
③Z国では、クオータ制を導入していないが、女性議員比率は1960年以降常に日本の女性議員比率より高く、Y国より低い。
・以下の会話文から、Z国では確かに、クオータ制を導入していない
A:Z国は、クオータ制を導入していないのに、女性議員比率は上昇していますね。
・一方、表を見てみると、Z国の女性議員比率は、常に日本国より高い
・しかし、常にY国より低いという訳ではなく、Y国を上回る年代もある
・よって、③は誤文である
④日本では、各政党に候補者の男女比率をできる限り均等にすることを促す法律が制定された後、女性議員比率はZ国を上回った。
・日本国の女性議員比率は、常にZ国より低いというのは、③で既に確認済みである
・よって、④は誤文である
問4
生徒Aと生徒Bは、これまでの探究活動を振り返って会話をしている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
A:社会のなかには男女間の差別だけでなく、様々な差別があることが指摘されているよね。平等には二種類あるって学んだけれど、差別のない社会を実現する上で、どちらの平等が重視されるべきなのだろうか。
B:「個性や属性にかかわらず、すべての人を同じように扱うこと」という意味での平等は「[ ア ]平等」だと学んだね。法律や制度という点では、こちらの意味での平等は、日本ではかなり実現しているんじゃないのかな。
A:でも、平等を規定した法律が定められていても、事実として差別が残ってしまうことがあるよね。この問題に対してはどうすればいいのだろう。
B:その問題に対しては、クオータ制のような制度を新たに導入することによって、「[ イ ]平等」を実現するやり方があり得るね。
A:差別の問題があることは広く知られていても、実際には差別がなくならないことはあるから、そうした取組みが必要な場合もあるだろうね。
B:例えばアイヌ民族に対する差別については、2019年に[ ウ ]によってアイヌ民族は法律上初めて「先住民族」と明記されたよ。
A:そういえば2020年、北海道白老町に、アイヌ民族の歴史や文化を学ぶことのできる施設である「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が完成したね。
B:平等について考えるためには、人々の違いを多様性として捉えて、お互いにその存在を認め合うことが重要だろうね。差別のない社会を作るためには、法律や制度を整えるだけでなく、私たちの真摯な努力が求められていると言えるね。
①ア 形式的 イ 実質的 ウ アイヌ文化振興法
②ア 実質的 イ 形式的 ウ アイヌ文化振興法
③ア 形式的 イ 実質的 ウ アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)
④ア 実質的 イ 形式的 ウ アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法)
#人権の拡大 #日本国憲法と人権(平等権) #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第1問の問4
問4解説
正解:③
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(平等権)
・長ったらしい文章の割に、直球で知識を聞いてくる問題
⇒大学入試の出来のいい問題では、長ったらしい文章がある場合「空欄の前後だけしか読まない」ではうまくいかないのだが、この問題はそれで解けてしまう
・アとイは、形式的平等と実質的平等のどちらかを聞いてきている
「個性や属性にかかわらず、すべての人を同じように扱うこと」という意味での平等は「[ ア ]平等」だと学んだね。
・この説明が「形式的平等」の説明として適切か? と言われると疑問がなくはないが…
A:でも、平等を規定した法律が定められていても、事実として差別が残ってしまうことがあるよね。この問題に対してはどうすればいいのだろう。
B:その問題に対しては、クオータ制のような制度を新たに導入することによって、「[ イ ]平等」を実現するやり方があり得るね。
・ここの会話文が、明らかに実質的平等(結果の平等)を示している
⇒実質的平等(結果の平等)は、「結果として平等になっているかどうか」を重視する考え方である
・よって、アが形式的、イが実質的である
2019年に[ ウ ]によってアイヌ民族は法律上初めて「先住民族」と明記されたよ
・アイヌ関係の法律の変遷を頭に入れておけば解ける
・この変遷は日本史的ではあるが、たまに大学入試でも出題されるので抑えておこう
北海道旧土人保護法 | アイヌ文化振興法 | アイヌ施策推進法(アイヌ民族支援法) |
明治にできた法律 | ←を改正してできた法律。人種差別撤廃条約批准に合わせて、批准直後の1997年成立 | ←を改正してできた法律。2019年成立。アイヌ民族を「先住民族」としたのが特徴 |
第2問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Aの班は「公共」の授業で、公共空間の形成に関して、次の先生の説明を受けた。先生の説明中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入るものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
先生の説明
「公共空間」とは、「人間同士のつながりや関わりによって形成される空間」を意味する。そこでは、人々が主体的に参加し、互いの意見を尊重しながらこの空間を形成していくことが期待されている。
『コミュニケーション的行為の理論』という著書のある[ ア ]によれば、公共空間では対等な立場で自由に意見を交わすという共通理解のもとで、合意を形成していくことが大切であり、そのような合意形成には[ イ ]が必要である。
また別の哲学者は著書『人間の条件』で、人間の営みを「生命を維持するために必要な営み」である「労働」、「道具や作品などを作る営み」である「仕事」、「人と人とが[ ウ ]営み」である「活動」の三種類に分け、「活動」こそが公共空間を形成する、と論じている。
① | ア | アーレント | イ | 対話的理性 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
② | ア | アーレント | イ | 対話的理性 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
③ | ア | アーレント | イ | 他者危害原理 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
④ | ア | アーレント | イ | 他者危害原理 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
⑤ | ア | ハーバーマス | イ | 対話的理性 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
⑥ | ア | ハーバーマス | イ | 対話的理性 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
⑦ | ア | ハーバーマス | イ | 他者危害原理 | ウ | 言葉を通して関わり合う |
⑧ | ア | ハーバーマス | イ | 他者危害原理 | ウ | 契約を結んでこれを守る |
#倫理分野 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第4問の問1
問1解説
正解:⑤
復習用資料:倫理分野
・倫理分野からの出題にして、ほぼ純粋な知識の問題である
『コミュニケーション的行為の理論』という著書のある[ ア ]
・選択肢はユルゲン・ハーバーマスかハンナ・アーレントである
・無論、この著書を覚えていれば正解を選ぶのは容易である
・とは言え、そんな細かい知識まで覚えている受験生は少ないだろう
・実際のところ、ここで分からなくても、イで判断可能である
ア ]によれば、公共空間では対等な立場で自由に意見を交わすという共通理解のもとで、合意を形成していくことが大切であり、そのような合意形成には[ イ ]が必要である。
・選択肢は「対話的理性」と「他者危害原則」である
・ここに入る適切な単語は、「対話的理性」である
・そして「対話的理性」と言っていた思想家はまさに、ユルゲン・ハーバーマスである
・よってアはハーバーマス、イは対話的理性である
⇒なお、「対話的理性」という言葉を忘れていても、「他者危害原則」を言っていたのがジョン・ステュアート・ミルだと覚えていれば、イに関してはそちらからも解けなくはない。ただ「対話的理性」が「ハーバーマス」に結びつかないと正解に辿り着けないので…
また別の哲学者は著書『人間の条件』で、人間の営みを「生命を維持するために必要な営み」である「労働」、「道具や作品などを作る営み」である「仕事」、「人と人とが[ ウ ]営み」である「活動」の三種類に分け、「活動」こそが公共空間を形成する、と論じている。
・この三種分けは、ハンナ・アーレントに特徴的な思想と言えるだろう
・そしてアーレントが言っていたのはまさに「言葉を通して関わり合う」という事である
⇒ここまで覚えていなくても、話の流れ的に「契約を結んでこれを守る」というような“お堅い”話ではないだろう、というのは何となく察せられる筈である
問2
公共空間の形成についての授業を受けた生徒Aの班は、現在の人間同士の関わりについて情報収集することにし、次の表1・表2を見つけた。表1・表2の各年齢層とも上段の数字は2018年調査の、下段の数字は2022年調査の結果を表している。
(注1)表1の「ゆとりがある」は「かなりゆとりがある」と「ある程度ゆとりがある」とを合わせた割合であり、「ゆとりがない」は「あまりゆとりがない」と「ほとんどゆとりがない」とを合わせた割合である。
(注2)表1に示されている数値は.四捨五入している。そのため、各年齢層の合計は100%にならない場合がある。
(注3)「自由時間の過ごし方」の選択肢は、表2に示しているもの以外に「睡眠、休養」、「家族との団らん」、「旅行」などがあるが、省略している。
(出所)内閣府「国民生活に関する世論調査」(平成30年、令和4年調査)(内閣府Webページ)により作成。
生徒Aの班は表1・表2から,2018年調査と2022年調査を比べた場合の変化を読み取った上で、意見を出し合った。次の意見ア~ウのうち、表1・表2を正しく読み取ったものの組合せとして最も適当なものを後の①~⑦のうちから一つ選べ。なお、表1・表2の読取りに関する部分には下線を付している。
ア 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と回答した割合が半数を下回るようになったのは「30~39歳」と「40~49歳」だ。この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出の機会が少なくなり、インターネットやソーシャルメディアの利用機会が増えたのかな。
イ 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがない」と回答した割合は、すべての年齢層で上がっているが、上がった割合が1ポイント未満だったのは「18~29歳」だけだ。また「自由時間の過ごし方」として「友人や恋人との交際」をあげた割合に関して、9ポイント以上増えたのは「18~29歳」だけで、50歳以上についてはどの年齢層も減っている。「18~29歳」の人々への新型コロナウイルス感染拡大の影響は、他の年齢層とは異なるのかも。
ウ 「自由時間の過ごし方」として「社会参加」をあげた割合は、どの年齢層でも減っている。だけど「70歳以上」は、「社会参加」の割合が他のどの年齢層より高いままであり、「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と答えた割合も、他のどの年齢層より高いままだ。時間のゆとりがないと、社会参加は難しくなるのではないだろうか。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
#国語問題 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第1問の問2
問2解説
正解:⑥
・純粋に表を読み取るだけの問題
・文章ア~ウ(の下線部)が表の内容を正しく言語化しているかどうかだけ見ればよい
ア 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と回答した割合が半数を下回るようになったのは「30~39歳」と「40~49歳」だ。
この二つの年齢層は、「自由時間の過ごし方」として「インターネットやソーシャルメディアの利用」をあげた割合が半数を超えるようになった。
・前半部は正文だが、後半部が誤文である
・確かに2022年度に於ける「30~39歳」の「自由時間の過ごし方」では、該当項目が51.9%である
・一方、「40~49歳」は45.6%で、半数に至っていない
イ 「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがない」と回答した割合は、すべての年齢層で上がっているが、上がった割合が1ポイント未満だったのは「18~29歳」だけだ。また「自由時間の過ごし方」として「友人や恋人との交際」をあげた割合に関して、9ポイント以上増えたのは「18~29歳」だけで、50歳以上についてはどの年齢層も減っている。
・正文である
ウ 「自由時間の過ごし方」として「社会参加」をあげた割合は、どの年齢層でも減っている。だけど「70歳以上」は、「社会参加」の割合が他のどの年齢層より高いままであり、「時間のゆとりの有無」について「ゆとりがある」と答えた割合も、他のどの年齢層より高いままだ。
・正文である
・よって、イとウが正しい
問3
探究活動の成果を授業で発表する上で対話の力に注目した生徒Aの班は、哲学対話を実践している哲学カフェに参加し、参加者たちの発言を記録した。参加者たちの次の発言I~IIIのうち、帰納的に推論されているものの組合せとして最も適当なものを後の①~⑦のうちから一つ選べ。
I
哲学カフェの参加者にも、話し合うときの態度はいろいろあるけど、お互い安心して話せるように、穏やかな態度で相手の発言を最後まで聞き、よく考えてから発言するように取り決めたところ、対話が活発にできるようになった。これらの事実が何度もあったことから、活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になるという経験則が導き出せるね。
II
人間には、自分の考えや意見を自由に述べる権利があり、お互いに認め合い尊重し合う義務がある。そうであるならば、哲学カフェに限らず、職場でも学校でも、参加者がお互いに、相手には自由に発言する権利があると考え、相手の話を尊重して最後までしっかりと聞くことを対話のルールにしなければならないことになるね。
III
哲学カフェに初めて参加した人が素朴な質問をしてくれると、これまで繰り返し問うてきた問題に新たな光が当てられて、問いが深まった。そんなときに、対話のおもしろさが感じられた。同じ実感を他の参加者たちももっていた。これらの経験を基にして、どんなに素朴であっても、率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になったんだよ。
①I ②II ③III ④IとII ⑤IとIII ⑥IIとIII ⑦IとIIとIII
#倫理分野 #国語問題 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第4問の問3
問3解説
正解:⑤
復習用資料:倫理分野
・「帰納」という言葉さえ知っていれば、後は国語の問題
⇒ただ、「帰納」は別に公共や倫理でやらなくても、現代文をやる上で当然知っているべき「お堅い」単語のひとつなので…そう考えると純粋な論理国語の問題であるとも言える
意味 | 例 | |
---|---|---|
演繹 | ある前提を設定して、その前提から合理的に考える | ・ソクラテスは人間である(前提1) ・人間は必ず死ぬ(前提2) ⇒ソクラテスは必ず死ぬ(演繹的な推論) |
帰納 | 個々の事象から、その裏にある法則を推測する | ・ソクラテスという人は死んだ(事象1) ・プラトンという人も死んだ(事象2) ・アリストテレスという人も死んだ(事象3) ⇒人間って皆死ぬのでは…?(帰納的に導かれた法則) |
・上記を頭に入れた上で、I~IIIの文章を読んでいけばよい
I
哲学カフェの参加者にも、話し合うときの態度はいろいろあるけど、お互い安心して話せるように、穏やかな態度で相手の発言を最後まで聞き、よく考えてから発言するように取り決めたところ、対話が活発にできるようになった。これらの事実が何度もあったことから、活発な哲学対話は、安心して話せる取り決めがあれば可能になるという経験則が導き出せるね。
・Iの文章の大意は、以下のようなものである
1:ある取り決めを作ってやったところ、何回もうまくいった
2:って事はこの取り決めは有用なのでは…?
・これは明らかに、帰納的な考え方である
II
人間には、自分の考えや意見を自由に述べる権利があり、お互いに認め合い尊重し合う義務がある。そうであるならば、哲学カフェに限らず、職場でも学校でも、参加者がお互いに、相手には自由に発言する権利があると考え、相手の話を尊重して最後までしっかりと聞くことを対話のルールにしなければならないことになるね。
・IIの文章の大意は、以下のようなものである
1:人間には、権利や義務がある(前提)
2:だから全ての人は、他者の権利を尊重したり、自分の義務を果たしたりしなければならない(前提を踏まえた合理的な結論)
・これは明らかに、演繹的な考え方である
III
哲学カフェに初めて参加した人が素朴な質問をしてくれると、これまで繰り返し問うてきた問題に新たな光が当てられて、問いが深まった。そんなときに、対話のおもしろさが感じられた。同じ実感を他の参加者たちももっていた。これらの経験を基にして、どんなに素朴であっても、率直に質問や疑問を出し、問いを深めていくことが哲学対話の方針になったんだよ。
・IIIの文章の大意は、以下のようなものである
1:素人質問が、哲学をやる上でむしろ有用になった…という経験が沢山ある
2:だから、素人でも率直に質問や疑問を言ってもらうようにした方がよさそう
・これは明らかに、帰納的な考え方である
・よって、IとIIIが帰納的な推論を表した文章である
問4
生徒Aの班はこれまでの探究活動の成果を踏まえ、公共空間の持続的形成について、対面と非対面という点に着目して構想メモを作成した。次の構想メモ中の下線部a~cの記述と、それぞれに該当する後の事例ア~ウとの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
構想メモ
新型コロナウイルス感染拡大期に、ICT(情報通信技術)が本格的に活用され始めた。例えばa別々の場所にいる人たちが、ICTを使うことで、対面の場に集まることなく、対話や議論に参加できるようになった。これは「非対面的関わりのみのタイプ」である。
また、b今まで対面の場に参加できなかった人が、ICTを使って、対面の場に非対面で参加できるようにもなった。これは「対面的関わりに非対面的関わりが加わっているタイプ」である。
「対面的関わりのみのタイプ」については、例えばcその場にいる人たちが互いに気楽に質問したり、知識や技能を相手の反応を確認しながらていねいに伝えたりすることがしやすい。非対面的関わりと対面的関わりとのバランスをどのようにとるかが、公共空間の持続的形成にとって課題になってくるだろう。
ア これまで対面で実施されていた会議が、事情でオンライン会議に変更されたので、すべての参加者はインターネットで会議に出席した。
イ 料理教室に講師と生徒が集まり、生徒は講師から受けた指導に基づいて料理を作り、その場で講師に味見をしてもらい講評を受けた。
ウ 身体的な事情のため外出できなかった人が、地元の公民館に集まった人々が行っている対話集会に、インターネットで参加した。
①a―アb―イc―ウ ②a―アb―ウc―イ ③a―イb―アc―ウ
④a―イb―ウc―ア ⑤a―ウb―アc―イ ⑥a―ウb―イc―ア
#国語問題 #「公共」「公共、政治・経済」共通問題
※同年度本試験「公共」第4問の問4
問4解説
正解:②
・a~cの文章について、具体例となるものをア~ウから選べばよいだけの、国語の問題
a別々の場所にいる人たちが、ICTを使うことで、対面の場に集まることなく、対話や議論に参加できるようになった。これは「非対面的関わりのみのタイプ」である。
ア これまで対面で実施されていた会議が、事情でオンライン会議に変更されたので、すべての参加者はインターネットで会議に出席した。
・下線部aのすぐ後にある補足、「非対面的関わりのみ」に着目したい
・これは要するに、「aってのは、非対面のみって事だよ」という意味である
・もう少し嚙み砕いて言うと、「aってのは、オンラインのみって意味だよ」である
・そう考えると、「オンラインのみ」開催の具体例はアとなる
b今まで対面の場に参加できなかった人が、ICTを使って、対面の場に非対面で参加できるようにもなった
ウ 身体的な事情のため外出できなかった人が、地元の公民館に集まった人々が行っている対話集会に、インターネットで参加した。
・bは「対面の場に非対面で参加」とある
・つまり、基本は対面で開催しているものに、オンラインでも参加できるようになった…という話である
・となると、その具体例はウとなる
「対面的関わりのみのタイプ」については、例えばcその場にいる人たちが互いに気楽に質問したり、知識や技能を相手の反応を確認しながらていねいに伝えたりすることがしやすい
イ 料理教室に講師と生徒が集まり、生徒は講師から受けた指導に基づいて料理を作り、その場で講師に味見をしてもらい講評を受けた。
・cについては、直前の「対面的関わりのみ」に注目したい
・要するにこれは、オンライン参加なし、対面参加のみのものである
・となると、その具体例はイとなる
・よって、正解は②a―アb―ウc―イである
第3問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Yは、海外留学を希望している。海外での生活費を計算する中で、物価の変化に関心をもったYは、図書館で物価に関する次の資料をみつけた。なお、資料中の空欄[ ア ]には資料中の「期間a」か「期間b」のいずれかが当てはまる。空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
資料
次の図は、1948年から1990年までのアメリカの消費者物価指数の上昇率と失業率の推移を示したものである。図から明らかなように、二つの数値の関係は一定とはいえない。[ ア ]では、好況期には物価上昇率が高く、不況期には物価上昇率が低くなる傾向がみられる。もう一つの期間では高い物価上昇率と不況が同時に生じる[ イ ]が確認できる。
①ア 期間a イ デフレスパイラル
②ア 期間a イ スタグフレーション
③ア 期間b イ デフレスパイラル
④ア 期間b イ スタグフレーション
問1解説
正解:②
復習用資料:経済分野第一章/景気変動とインフレ、デフレ
復習用資料:経済分野第三章/国際経済通史
・基本的には、景気変動とインフレ、デフレの知識さえあれば解ける問題
・国際経済通史の知識がきちんと入っているとなおよい
・一般的に、インフレ(物価上昇)の時は好景気、デフレ(物価下落)の時は不景気である
・よって、消費者物価指数が高い時、失業率が低い(もしくはその逆)…というのが健全な経済である
・表を見ると、健全な経済になっているのは期間a、即ち1960年代ぐらいまでである
・逆に期間b、即ち1970年代に入ると、「消費者物価指数が高いのに失業率も高い」状態が発生している
・即ち「インフレなのに不景気」という状態。これがスタグフレーションである
・よって、[ ア ]は期間a、[ イ ]はスタグフレーションである
・尚、国際経済をきちんと勉強していれば、表を読み解くまでもない問題である
・即ち、1970年代は二度の石油危機があった時代であり、スタグフレーションが世界中で発生している
・特にこの時期の米国経済は、悪い話題が目白押しである
⇒石油危機、ニクソンショック、双子の赤字、スタグフレーション…
・そして、双子の赤字やスタグフレーションを退治するべく出てきたのが新自由主義だった訳である
⇒できたとは言っていない。とは言え、この辺の知識があれば、高速で解けてしまう事だろう
問2
地域の利害と国政選挙との関係に関心をもった生徒Xと生徒Yは、日本の国政選挙について調べる中で合区に関する全国知事会の2022年の決議をみつけ、その内容を踏まえて次のメモを作成した。後の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる語句と空欄[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ
1.合区選挙(2016年から2022年までの間に3回実施)
・鳥取県と島根県、徳島県と高知県でそれぞれ1選挙区とする合区。
2.全国知事会の指摘する合区選挙の弊害
・合区した県における投票率が低下する。地方の人口減少が進めば、合区対象となる県が全国に広がり、人口の少ない地方に議員定数が十分に割かれなくなり、地方の実情を国政へ反映することが困難になる。
X:合区については、「政治・経済」の授業でも学んだな。[ ア ]の選挙制度で採用されたんだよね。全国知事会は合区による弊害を主張しているね。
Y:選挙制度に関しての授業で学習したことを踏まえると、私は[ イ ]ために合区を進めるべきだと思うな。だけど、このメモでは[ イ ]ための施策によって、人口の少ない地域の有権者の投票行動や利害に影響があると指摘されていることがわかるね。Xさんはどう思う?
X:Yさんの考え方もわかるけど、合区が増えてくると、地方の意見が国政に届きづらくなるおそれがあるんじゃないかな。もっと調べてみようか。
①ア 衆議院 イ 投票価値の平等を実現する
②ア 衆議院 イ 道州制の導入を推進する
③ア 参議院 イ 投票価値の平等を実現する
④ア 参議院 イ 道州制の導入を推進する
問2解説
正解:③
復習用資料:政治分野第三章/選挙制度
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(平等権)
・参議院の選挙制度及び、一票の格差の問題について知っていれば解ける問題
・と言っても深い知識は必要なく、ヒントは問題文中各所にある
・まず、話題となっている合区については、以下にヒントがある
1.合区選挙(2016年から2022年までの間に3回実施)
・鳥取県と島根県、徳島県と高知県でそれぞれ1選挙区とする合区。
・選挙制度についてきちんと勉強していれば、これで何の話か分かる
⇒即ち、参議院議員選挙は本来、「一都道府県一選挙区」になるのだが…人口が少なくなり過ぎた県については、「二県で一選挙区」になった、というアレである
・よって、[ ア ]は参議院であると分かる
⇒衆議院議員選挙は、そんなに大きな範囲で選挙区を作らない。もっと細かい選挙区を作って選挙をやる
Y:選挙制度に関しての授業で学習したことを踏まえると、私は[ イ ]ために合区を進めるべきだと思うな。
・続いてイだが、何故合区で選挙が行われるようになったか理解していれば分かる
・即ち、一票の格差の問題である。これを言い換えれば「投票価値の平等」になるだろう
・よって、[ イ ]は「投票価値の平等を実現する」である
※なお、道州制導入というのは、2000年代後半(相互フォローの人調べ)(解説を書く配信中に調べてくれました)に流行った話であり、令和七年現在は殆ど見なくなった。現役受験生は道州制のどの字も知らない可能性がそこそこに高く、ダミー選択肢がダミー選択肢になっていない…というので解ける可能性も高い
問3
生徒Xは、地域農業の価値の新しい考え方について調べ、その内容を次のメモにまとめた。メモ中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ フードマイレージとは、食料の輸送にかかる環境負荷を表す指標であり、食料の総重量と輸送距離をかけあわせたものである。その数値は輸入よりも自国産の方が小さくなる傾向がある。自国での食料生産の増加は、輸入が途絶した際のリスクを下げることによって[ ア ]に貢献しうる。また、地域で作られた食料をその地域内で食べる[ イ ]の推進は、輸送にかかるエネルギー消費を抑え、環境負荷の低下にもつながりうる。
①[ア]オフショアリングの推進 [イ]地産地消 ②[ア]オフショアリングの推進 [イ]減反政策 ③[ア]食料安全保障の確保 [イ]地産地消 ④[ア]食料安全保障の確保 [イ]減反政策
問3解説
・日本経済テーマ史の「農業」で出てくる「食糧安全保障」「減反政策」を問う問題である
⇒ニュースや身近な生活の中で出てくる「地産地消」という単語を知っていれば、尚よい
自国での食料生産の増加は、輸入が途絶した際のリスクを下げることによって[ ア ]に貢献しうる。
・[ ア ]の選択肢は「食料安全保障の確保」「オフショアリングの推進」である
・食糧に関係して、「輸入が途絶した際のリスクを下げる」と言えば、無論、食糧安全保障の話である
地域で作られた食料をその地域内で食べる[ イ ]の推進
・[ イ ]の選択肢は「地産地消」「減反政策」である
・この文脈で減反政策だったら怖い
⇒減反政策は、簡単に言えば「米の生産を減らしてね♡」という政策である。「地域で作られた食料をその地域内で食べる」という話とは何の関係もない
・勿論、この文脈なら明らかに地産地消が正解、というので解いてもよい
問4
生徒Xと生徒Yは、ある大学のオープンキャンパスで行われた「日本国憲法における表現の自由」という模擬授業に参加した。次の資料は、模擬授業で配布されたものの一部である(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。XとYは、模擬授業後資料をみながら話し合っている。後の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる記述と空欄[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
資料
表現の自由の意義として、さらに、各人が自己の意見を自由に表明し、競争することによって、真理に到達することができるという、「思想の自由市場論」があげられている…(略)…。「思想の自由市場論」は、アメリカの連邦最高裁判所のホームズ裁判官が、「真理の最良の判定基準は、市場における競争のなかで、みずからを容認させる力をもっているかどうかである」と述べたもので…(略)…ある。
(出所)野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法I〔第5版〕』
X:この資料は、真理に到達するための筋道について論じているみたいだね。でも、人々の意見は多様だし、思想に真理なんてあるのかな。
Y:ここでの真理は、唯一絶対の真理とは違うよね。人々の思想に唯一の真理なんて普通は存在しないからこそ、思想の自由市場を説いたのではないかな。
X:そうだね。この資料の考え方を踏まえると、日本国憲法で定めている検閲の禁止は、[ ア ]ためにも大事なんだね。
Y:資料の考え方を現実の問題に当てはめてみるとどうだろうね。たとえば、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、アルゴリズムによって自分の考えと同じ意見ばかり表示されるとしたら、どうかな。
X:その場合、この資料にある思想の自由市場の前提である競争が[ イ ]されるんじゃないかな。ほかにも現実の問題に当てはめて考えることができそうだね。
Y:模擬授業ではSNS上でのフェイクニュースの問題が取り上げられていたけど、これも関連するんじゃないかな。こう考えてくると、思想の自由市場がしっかり機能するために、何らかの対策をする余地があるのかもしれないね。
[ ア ]に当てはまる記述
a危険な言論を取り除くことで、思想の自由市場を健全に保ち続ける
b意見の自由なやりとりを確保することで、真理を探究し続ける
[ イ ]に当てはまる語句
c促進
d阻害
①ア―a イ―c ②ア―a イ―d ③ア―b イ―c ④ア―b イ―d
#国語問題 #悪問
問4解説
正解:④
・作問者の思想性が強く出すぎている悪問
・問題としては別に難しくないので、この手の問題を落とさないようにしたくもある
日本国憲法で定めている検閲の禁止は、[ ア ]ためにも大事なんだね
a危険な言論を取り除くことで、思想の自由市場を健全に保ち続ける
b意見の自由なやりとりを確保することで、真理を探究し続ける
・「検閲」という言葉の意味さえ理解していれば解ける部分である
・即ち「検閲」は、特定の表現や言論の発表を(主に国家権力が)禁止するものである
・何故禁止するのかと言えば、aの言う通り「危険な言論を取り除く」為である
・そして、会話文にある通り、日本国憲法は検閲を禁止している
・という事は、検閲の目的について述べたaは不適切である
・むしろ、日本国憲法が検閲を禁止した目的に近い、bが適切である
Y:資料の考え方を現実の問題に当てはめてみるとどうだろうね。たとえば、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、アルゴリズムによって自分の考えと同じ意見ばかり表示されるとしたら、どうかな。
X:その場合、この資料にある思想の自由市場の前提である競争が[ イ ]されるんじゃないかな。
c促進 d阻害
・何故かSNSだけが問題になって、その他のメディアが問題になっていない部分。思想が強い…
・Yが言及しているのは、「一部の人間によって、人が受け取る情報が制御されてしまう」状況である
・この「一部の人間」とは即ち、SNSや新聞、テレビ等の運営者である
・人々に届く情報を、彼らが選別してしまう…というのは、検閲に近い効果があるのではないか、という話である
⇒検閲がなされていない、即ち、ある表現や言論の発表が禁止されていない状態であっても、人々に届かないのであれば結局は、検閲されているのと変わらない
・という訳で、[ イ ]は「阻害」が適切である
問5
生徒Xは、地域活性化の手段としての「ふるさと納税」による寄附金について調べ、「ふるさと納税」の制度の概要と影響を次のメモにまとめた。後の記述ア~ウのうち、メモから読みとれる「ふるさと納税」に関する記述として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
メモ
○「ふるさと納税」は、任意の地方公共団体に寄附した金額を、一部を除いて、住民税や所得税から控除できる制度である。居住地以外の地方公共団体に寄附をした者は、返礼品を受け取ることもできる。
○家族構成などの条件が同一の個人間で比較した場合、所得が高くなるほど、「ふるさと納税」の控除の上限額が高くなるため、高所得者ほど多くの返礼品を受け取ることができる。
○地方公共団体は、集めた寄附金を、社会保障や教育サービスの充実など、さまざまな目的に活用できる。また、住民以外の寄附者に対する返礼品を通じて、地域の資源の内容や特徴を地域外に発信できる。
○地域外に寄附をする者が居住する地方公共団体からは、地域外へ財源が流出する。2023年度の政令指定都市と東京23区の寄附金控除の合計額は、全市区町村の寄附金控除の合計額の52%に上る。
○地方交付税を交付される地方公共団体は、地域外に流出した財源のほてん75%が地方交付税で補填される。集められた寄附金のおよそ半分は返礼品や送料、寄附集めを担う仲介企業への事務手数料に使われる。
ア 2023年度の「ふるさと納税」の市区町村での寄附金控除の過半は、政令指定都市と東京23区の住民によるこの制度の利用から生じている。
イ 「ふるさと納税」により、この制度を利用した個人間の所得格差が是正される。
ウ 「ふるさと納税」の制度と、国の財政とは無関係である。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問5解説
正解:①
・「メモから読みとれる「ふるさと納税」に関する記述」を問うており、特別な知識は必要ない
・即ち、本問を解けるかどうかは、純粋な国語力の問題である
ア 2023年度の「ふるさと納税」の市区町村での寄附金控除の過半は、政令指定都市と東京23区の住民によるこの制度の利用から生じている。
○地域外に寄附をする者が居住する地方公共団体からは、地域外へ財源が流出する。2023年度の政令指定都市と東京23区の寄附金控除の合計額は、全市区町村の寄附金控除の合計額の52%に上る。
・並べてみれば一発で分かるように、アは正文である
イ 「ふるさと納税」により、この制度を利用した個人間の所得格差が是正される。
○家族構成などの条件が同一の個人間で比較した場合、所得が高くなるほど、「ふるさと納税」の控除の上限額が高くなるため、高所得者ほど多くの返礼品を受け取ることができる。
・メモより、沢山稼いでいる人ほど沢山返礼品を受け取れる事が分かる
・これは、格差の是正にはなっていない
⇒格差を是正したいのであれば、所得(収入-経費)が少ない人ほど沢山返礼品が貰え、所得が多い人ほど返礼品が貰えない形にする必要がある
・よってイは誤文である
ウ 「ふるさと納税」の制度と、国の財政とは無関係である。
○地方交付税を交付される地方公共団体は、地域外に流出した財源の75%が地方交付税で補填される。集められた寄附金のおよそ半分は返礼品や送料、寄附集めを担う仲介企業への事務手数料に使われる。
・並べてみれば一発で分かるように、ふるさと納税と国の財政には関係がある
⇒仮に地方交付税について知らなくとも、「地方公共団体(都道府県や市区町村)はナントカ税によるカネが貰えるらしい」という事は問題文に書いてあるし、じゃあ誰がカネを渡す(交付する)かって、国以外に誰がいるのかという話である
・という訳で、ウは誤文である
問6
生徒Yは、地域における防災や減災の取組みに関心をもち、「政治・経済」の授業で配布された、日本における防災や減災に関する次の資料を読み返している。資料中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
資料
防災や減災を目的とした公共の取組みは、時として個人の権利と衝突する。たとえば、災害から個人の生命を守るために防潮堤や遊水地を設置する場合、設置する場所の土地所有者の意思に反してでも、公共の利益のために当該土地が強制的に収用されることがありうる。ただし、その場合には、憲法で定められた[ ア ]が適切になされる必要がある。
防災や減災の担い手は国家だけではない。「自助、共助、公助」の観点からは、住民が自分で防災や減災に取り組むだけでなく、国や地方公共団体とともに地域コミュニティや地元企業といった主体も災害対策に関与することが求められる。たとえば、国や地方公共団体が洪水浸水想定区域を指定することは、[ イ ]に該当する。さらに、そうした指定をもとに防災や減災について話し合う集会を設けるなど、日頃からリスクコミュニケーションを活発化することに、地域の住民などが関与することも必要となる。
①ア 国家賠償 イ 公助
②ア 国家賠償 イ 共助
③ア 損失補償 イ 公助
④ア 損失補償 イ 共助
#日本国憲法と人権(請求権) #国語問題 #悪問
問6解説
正解:③
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(請求権)
・「そんなマニアックなところを、しかもそんな意地の悪い聞き方するかね?」と言わざるを得ない悪問
設置する場所の土地所有者の意思に反してでも、公共の利益のために当該土地が強制的に収用されることがありうる。ただし、その場合には、憲法で定められた[ ア ]が適切になされる必要がある。
・問題はこの[ ア ]。選択肢としては国家賠償か損失補償になる
・問題文のような場合、人権が制限される場合がある、というのは高校政経の授業でも扱う
・即ち、自由権の中でも経済的自由、財産権は、比較的制限を受けやすい。土地収用法はその実例である
・ただ、その場合の補償として損失補償が行われる…というところまでは普通、やらないのである
・一方、国家賠償は、人権の中でも請求権のところで出てくる単語である
・請求権の一種として国家賠償請求権というものがある、というので一応、高校政経でも取り扱う
⇒これは、日本国憲法十七条が根拠になっている権利である。簡単に言えば、公務員の不法行為によって損害が発生した場合、損害賠償を請求できる権利である。公害訴訟や薬害訴訟がその具体例となる
・今回の場合、空欄ア周辺で政府は、不法行為を働いた訳ではない
・あくまで土地収用法等の法律に則り、日本国憲法の範囲内で、財産権を制限しただけである
・つまり、ここでは国家賠償請求権は行使できない。よって[ ア ]に「国家賠償」は不適切である
⇒…とまぁ、一応高校政経の授業の知識の範囲内で解ける問題ではあるのだが…うーん…ちょっと知識としてマニアック過ぎるし、何より出し方が意地悪だし…
防災や減災の担い手は国家だけではない。「自助、共助、公助」の観点からは、住民が自分で防災や減災に取り組むだけでなく、国や地方公共団体とともに地域コミュニティや地元企業といった主体も災害対策に関与することが求められる。
・一方、[ イ ]に関しては、問題文をきちんと読めばそれだけで解ける
・何せ、自助、共助、公助の説明が、上記文章の中にあるのだ
※一応、「自助共助公助」は現代文を解く上で知っておくべき「お堅い」単語なので、問題文中に説明がなくても知っておいてほしいが…
・即ち、「住民が自分で防災や減災に取り組む」、これが自助である
・そして、「地域コミュニティや地元企業といった主体も災害対策に関与する」、これが共助である
・最後に、「防災や減災の担い手」が「国家」「国や地方公共団体」となる場合は、公助な訳である
たとえば、国や地方公共団体が洪水浸水想定区域を指定することは、[ イ ]に該当する。
・選択肢は共助と公助だが、自助共助公助の意味が分かっていれば迷う事はない。これは公助である
第4問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Xと生徒Yは、緊急の歳出拡大に関して話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:先進主要各国政府は、拡張的な財政政策のために国債を発行してきたけど、これにあわせて主要各国の中央銀行も巨額のお金を供給してきたね。
Y:その供給される「お金」というのは、中央銀行が市中銀行との間で国債等を売買する公開市場操作により増減する[ ア ]のことだね。その売買代金は、市中銀行が中央銀行に開いている当座預金口座で決済されているよ。
X:この当座預金は市中銀行の準備金でもあるから、その過不足は銀行間のコールレートの高低に影響を与えるよね。市中銀行は、このコールレートを基準に、企業や家計向けの貸出金利を設定して、貸出しを行っているよ。この貸出しが[ イ ]を形成していくんだよね。
Y:ところでアメリカでは[ イ ]の激増によるインフレーション対策として、2022年春から連邦準備制度理事会が、公開市場操作によって[ ア ]を削減してきたよね。それで、アメリカと日本との間で金利格差が広がり、日本円の対米ドル為替レートが下落して、輸入インフレーションの影響が大きくなったね。その結果、日本銀行に対して金利引上げを求める声も高まったよ。
X:だけど、額面100円、1年間の利子1円の国債の場合、たとえば金利が2%になると、額面と比較してその国債の市場評価額は[ウ]よね。大量の国債を購入した金融機関にとって、金利上昇の影響は大きいよね。
Y:アメリカと日本の金利が影響し合っているという金融のグローバリゼーションの一コマだね。今後も金融経済情報から目が離せないね。
①ア マネーストック イ マネタリーベース ウ 上がる
②ア マネーストック イ マネタリーベース ウ 下がる
③ア マネタリーベース イ マネーストック ウ 上がる
④ア マネタリーベース イ マネーストック ウ 下がる
問1解説
・共テ恒例実在性の低い高校生シリーズの中でも、特に実在性が低い経済オタク型
・この手の「買いオペで直接マネーストックは増えないよね」問題は令和四年本試に次いで二回目である
⇒第2問の問4。この時も実在性の低い高校生シリーズだった。…のはともかくとして、よく似た問題がたったの三年で再登場したと考えると、この手の知識を大学入試センターが重視している可能性がある
・いい機会だからここで、マネーストックとマネタリーベースの違いを改めて把握しておこう
マネーストック:市場に流通する貨幣の総量(どこまでを「貨幣」とするかで数え方は色々ある)
マネタリーベース:市場に存在する現金全部+市中銀行の日銀口座全額
X:先進主要各国政府は、拡張的な財政政策のために国債を発行してきたけど、これにあわせて主要各国の中央銀行も巨額のお金を供給してきたね。
Y:その供給される「お金」というのは、中央銀行が市中銀行との間で国債等を売買する公開市場操作により増減する[ ア ]のことだね。その売買代金は、市中銀行が中央銀行に開いている当座預金口座で決済されているよ。
・会話の流れが完全に、令和四年本試第2問の問4と一緒である
・即ち、日本銀行が民間の金融機関と有価証券を売り買いするのが公開市場操作である
・買いオペであれば、日本銀行が買う側である
・日本銀行は有価証券を買い、カネを民間の金融機関へ支払う
・これで日本銀行からカネが民間へ流れ、通貨流通量が増える。すると、「お金」が増える
・そしてこの「お金」は、言うまでもなく民間の金融機関が日本銀行に持つ預金口座の「お金」である
・つまり、ここで言う「お金」とは、マネタリーベースを指している
・即ち、「市場に存在する現金全部+市中銀行の日銀口座全額」である
・で、手元のお金が増えた銀行は、企業や個人へカネを貸そうとする訳である
・銀行が他者へカネを貸すと、この世に存在するお金(マネーストック)が増える
・結果、[ ア ]はマネタリーベース、[ イ ]はマネーストックであると分かる
X:だけど、額面100円、1年間の利子1円の国債の場合、たとえば金利が2%になると、額面と比較してその国債の市場評価額は[ ウ ]よね。大量の国債を購入した金融機関にとって、金利上昇の影響は大きいよね。
・ここまでしっかり知識を問うてきたが、ここで突然国語問題、もしくは計算問題になる
・言うまでもなく、金利とは利子の事である
⇒即ち、「あなたに100円貸します。来年101円にして返してね」であれば、利子が1円、もしくは1%である
・「額面100円、1年間の利子1円」は、既に見たように、金利(利子)1%の国債である
・この国債は、当たり前だが一度買ったらずっと金利1%である
・ここで、「金利が2%になると」、つまり一般にどこの銀行も金利2%でカネを貸すようになったら?
・勿論、この金利1%の国債は“損”な国債となる
・勿論、「その国債の市場評価額は」下がるに決まっているのである
問2
経済のグローバル化に関速して、生徒Xと生徒Yは、日本、アメリカ、インド、韓国、中国、ドイツの2000年以降の貿易収支と一人当たりGDP(国内総生産)との推移を示した次の六つの図を作成し、これらの図をみながら話をしている。後の会話文を踏まえ、国名と図との組合せとして正しいものを後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:図をみると、日本の貿易収支は黒字から赤字に転じることもあったね。そして、一人当たりGDPの伸びも停滞気味だね。
Y:それに対して、隣国の韓国は20世紀末の経済危機を克服し、今世紀以降、貿易収支の黒字を重ねているよ。一人当たりGDPでも韓国は日本とほぼ並んできているね。また、ドイツは、これまで一人当たりGDPが堅調に推移し、貿易収支も黒字が続いてきたようだね。
X:GDPで世界第1位のアメリカと世界第2位の中国の貿易収支の動きはきわめて対照的だね。それにしても、中国の貿易収支の動きと一人当たりGDPの伸びには驚くばかりだね
Y:インドも一人当たりGDPは大きく伸びているね。ただし、インドの貿易収支は毎年赤字を計上しているよ。今後、インド経済も中国経済に続くのかな。
X:世界経済の構図はこれから大きく変わるかもしれないね。
Y:ロシアのウクライナ侵攻もあったし、これまでの経済のグローバル化も曲がり角に来ているのかもしれないね。
①インド―図ア 韓国―図イ 中国―図ウ
②インド―図ア 韓国―図エ 中国―図ウ
③インド―図イ 韓国―図ア 中国―図エ
④インド―図イ 韓国―図ウ 中国―図エ
⑤インド―図ウ 韓国―図イ 中国―図ア
⑥インド―図ウ 韓国―図エ 中国―図ア
⑦インド―図エ 韓国―図ア 中国―図イ
⑧インド―図エ 韓国―図ウ 中国―図イ
問2解説
・まるで教員室で交わされていそうな中身のない会話を読んで、どの図がどの国か類推する問題
・基本的には国語の問題であるが、米中新冷戦についての知識が多少なりともあると、尚よい
⇒2000年代にBRICSが伸びて以降、中華人民共和国はひたすら貿易黒字、アメリカ合衆国はひたすら貿易赤字である。アメリカ合衆国の製造業の壊滅や、ドナルド・トランプの大統領就任もこの話の延長線上にある
・図は一人当たりGDPと貿易黒字・赤字を示している
・問題文から、どの国がどのような傾向を示しているかをまとめると以下のようになる
一人当たりGDP | 貿易収支 | |
---|---|---|
大韓民国 | 「日本とほぼ並んできている」 | 「今世紀以降、貿易収支の黒字を重ねている」 |
アメリカ合衆国 | 特に情報なし | 中華人民共和国と真逆 |
中華人民共和国 | 「伸びには驚くばかり」 | アメリカ合衆国と真逆 |
インド共和国 | 「大きく伸びている」 | 「毎年赤字を計上」 |
・これだけでは正直、正答を出すのは厳しい
・しかしここに、米中新冷戦についての知識を突っ込むと、以下のようになる
一人当たりGDP | 貿易収支 | |
---|---|---|
大韓民国 | 「日本とほぼ並んできている」 | 「今世紀以降、貿易収支の黒字を重ねている」 |
アメリカ合衆国 | 特に情報なし | ずっと赤字 |
中華人民共和国 | 「伸びには驚くばかり」 | 2000年代以降、大幅な黒字 |
インド共和国 | 「大きく伸びている」 | 「毎年赤字を計上」 |
・続いて、それぞれの図の特徴を見てみよう
|一人当たりGDP|貿易収支|
|:—-:|:—-:|
|図ア|最初から高く、伸びは緩やか(40ぐらいから60ぐらい?) ずっと赤字|
|図イ|猛烈に伸びている(2あるかないかから10以上、5倍ぐらい) ずっと黒字|
|図ウ|緩やかに伸びている(15行かないぐらいから30ちょい、2倍ぐらい) ずっと黒字|
|図エ|猛烈に伸びている(0.5ないぐらいから2.0行かないぐらい、4倍ぐらい) ずっと赤字|
・ここまで来れば、後は照らし合わせるだけである
・例えばずっと黒字の図は二つ(図イ図ウ)、ずっと黒字の国も二つ(大韓民国、中華人民共和国)ある
・この内、一人当たりGDPが猛烈に伸びているのは図イと中華人民共和国である
・これで、図イが中華人民共和国というだけでなく、残った図ウが大韓民国という事も分かる
・同様に、ずっと赤字の図は二つ(図ア図エ)、ずっと赤字の国も二つ(米国、インド共和国)ある
・この内、一人当たりGDPが猛烈に伸びているのは図エとインド共和国である
・これで、図エがインド共和国というだけでなく、残った図アがアメリカ合衆国という事も分かる
・まとめると、以下の通りである
インド共和国:図エ
大韓民国:図ウ
中華人民共和国:図イ
アメリカ合衆国:図ア
問3
生徒Xと生徒Yは、世界経済の分断に関する次のメモを作成した。メモ中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ 2000年から今日までの世界経済の統合と分断の流れ
○中国が自由貿易を掲げる[ ア ]に加盟した。
○[ イ ]を背景に、2008年に世界金融危機が始まった。
○新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの寸断とロシアのウクライナ侵攻によって、世界経済分断への懸念が高まった。
①ア OECD(経済協力開発機構) イ サブプライムローン問題
②ア OECD(経済協力開発機構) イ ユーロ危機
③ア WTO(世界貿易機関) イ サブプライムローン問題
④ア WTO(世界貿易機関) イ ユーロ危機
問3解説
・標準的な、知識を問う問題。こういう問題は落とさないようにしたい
○中国が自由貿易を掲げる[ ア ]に加盟した。
・国際経済テーマ史でも、「1980年代以降のGATT/WTO」について聞いてきている部分である
・2000年代はBRICS全般が伸びた時期になるが、特に伸びたのは中華人民共和国である
・この国は2000年代に製造業が発達し、「世界の工場」と化して膨大な貿易黒字を出しながら急成長した
・その貿易黒字を支える重要な柱の一つが、2001年に加盟したWTOだった訳である
⇒WTO加盟の結果、今まで「共産主義はちょっと…」と、中華人民共和国に対して高い関税をかけていた国が、一斉に関税を引き下げる事になったのである。何せWTOには最恵国待遇という原則があるので、特定の加盟国にだけ高い関税をかけ続ける、というのにはできないのだ
○[ イ ]を背景に、2008年に世界金融危機が始まった。
・国際経済テーマ史でも、「2000年代の金融危機」について聞いてきている部分である
・2000年代の金融危機と言えば、2001年のアルゼンチン通貨危機、そして2008年のリーマンショック
・このリーマンショックは、言うまでもなく、サブプライムローン問題に端を発したものであった
問4
生徒Yは、国際刑事裁判所(ICC)の意義について考えてみたいと思い、ICCの目的や実際の活動を踏まえて推察した。ICCに関する正しい知識と、その知識に基づく妥当な推察を示した記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①個人の刑事責任を国際法に基づいて追及する国際的な手続を設けることで、国際社会が処罰対象とする重大な犯罪を防止しようとしている。
②個人の刑事責任を国際法に基づいて追及する国際的な手続を設けることで、各国の刑事裁判における法定手続(適法手続)を保障しようとしている。
③国際司法裁判所によって有罪判決を下された個人がICCに上訴する手続を設けることで、迅速な刑事裁判の実現を図ろうとしている。
④国際司法裁判所によって有罪判決を下された個人がICCに上訴する手続を設けることで、再審手続を充実させようとしている。
問4解説
正解:①
復習用資料:政治分野第四章/国際連合
・国際刑事裁判所についての知識を問う問題である
・国際司法裁判所と国際刑事裁判所は、名前は似ているが全く別の組織である
国際司法裁判所 | 国際刑事裁判所 | |
---|---|---|
概要 | 国と国との争いを国際法に基づいて判決する裁判所 | 国際的な関心を集める重大犯罪者(戦争犯罪者等)を扱う裁判所 |
国連の… | 主要機関の一つ 独立組織、国連の機関ではない | |
対象 | 国 | 個人 |
・こういった知識が入っていれば、①が正文で他は誤文である事はすぐ分かるだろう
問5
国連憲章に基づく秩序に対する信頼をどうやって維持していくかについて、生徒Xと生徒Yは、安保理の常任理事国による拒否権行使を制約する仕組みが必要だと考えた。そこで、新聞のデータベースで過去の試みを調べたところ、次の記事をみつけた。この記事で報じられている決議に関する説明として最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
記事 安保理常任理事国の拒否権に説明を求める 国連総会が決議採択
国連総会は26日、安全保障理事会で常任理事国が決議の採択に反対した場合、総会の場で説明を求める決議を採択した。ウクライナ侵攻をめぐる安保理での審議で改めて問題となった拒否権の乱用を抑制することが意図されている。拒否権を持つ安保理常任理事国5カ国のうち米英仏、原案を作成したリヒテンシュタインなど82カ国が共同提案した。同決議は、拒否権が行使された場合には、10日以内に国連総会議長が総会を招集し、安保理での決議案の対象とされた事態について討議することを定めた。その際、拒否権を行使した国がまず壇上に立ち、発言することが予定されている。(2022年4月27日夕刊)
①この決議は、総会が上位機関として安保理を管理監督する権限を国連憲章によって与えられていることを確認し、その権限の行使として総会が安保理の活動に制限をかけるものとして採択されたものである。
②この決議は、安保理が積極的に対応する必要がないと考えた場合であっても、総会が必要と判断した場合には安保理による強制措置の発動を義務づける仕組みを導入しようとしたものである。
③この決議は、国際の平和と安全の維持について安保理が有する権限を尊重しつつ、国連憲章が扱う問題全般に及ぶ総会自身の権限に基づいて拒否権の行使をとくに取り上げ、討議の対象とすることとしたものである。
④この決議は、総会が「平和のための結集」決議に基づいて、総会として強制措置を加盟国に命じるべきかを判断するために、安保理での審議状況について、とくに常任理事国から説明を受けることとしたものである。
問5解説
正解:③
・国際連合の知識を問うように見せかけて、その実、純粋な国語の問題である
①この決議は、総会が上位機関として安保理を管理監督する権限を国連憲章によって与えられていることを確認し、その権限の行使として総会が安保理の活動に制限をかけるものとして採択されたものである。
・記事を読んでみても、「総会が上位機関として安保理を管理監督する」というような事は書いていない
・よって誤文である
②この決議は、安保理が積極的に対応する必要がないと考えた場合であっても、総会が必要と判断した場合には安保理による強制措置の発動を義務づける仕組みを導入しようとしたものである。
・記事を読むと、拒否権が使われた場合は総会を招集して討議する、としか書いていない
・即ち、「会が必要と判断した場合には安保理による強制措置の発動を義務づける」とは書いていない
・よって誤文である
③この決議は、国際の平和と安全の維持について安保理が有する権限を尊重しつつ、国連憲章が扱う問題全般に及ぶ総会自身の権限に基づいて拒否権の行使をとくに取り上げ、討議の対象とすることとしたものである。
・記事の内容と適合する。正文である
④この決議は、総会が「平和のための結集」決議に基づいて、総会として強制措置を加盟国に命じるべきかを判断するために、安保理での審議状況について、とくに常任理事国から説明を受けることとしたものである。
・記事を読んでみても、「平和のための結集」決議については何も書いていない
・よって誤文である
問6
生徒Xと生徒Yは、アラブの春について調べる中で、民間の調査機関がアラブ諸国で「アラブの春」に対する世論調査を行っていることを知った。その結果をまとめた次の資料をみたXとYは、人々の評価が揺れ動いていることに関心をもち、それがなぜなのかについて、生徒Zも加えて話し合っている。後の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる国名と空欄[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
X:2015年に、肯定的な評価が大きく落ち込んでいるのはなぜだろう。
Z:「アラブの春」の後、多くの国で政治的な混乱が生じて、暴力的な事態にまで至ったところもあるからじゃないかな。
Y:たしかにね。同じ時期に[ ア ]などのように内戦が激化したり、イスラーム原理主義勢力がイラク北部から勢力を広げ、「イスラーム国」を宣言したりしているね。
X:そうしたことを踏まえると、権威主義的な体制の下であっても安定した生活を送る方が望ましいと多くの人は思っていると考えていいのかな。
Z:資料からは[ イ ]ことを読みとれることからすると、「アラブの春」はアラブ地域の人々の中に民主化に対する期待が根強くあることを示したといえるんじゃないかな。
Y:なるほどね。「アラブの春」に歴史的な評価を下すのは、まだ早いのかもしれないね。
[ ア ]に当てはまる国名
aチュニジア bシリア
[ イ ]に当てはまる記述
c 2015年の調査を除いて、「肯定的な評価」と「どちらかというと肯定的な評価」との合計が「否定的な評価」と「どちらかというと否定的な評価」との合計を常に上回っている
d 2016年以降の調査では、「否定的な評価」と「どちらかというと否定的な評価」との合計が「肯定的な評価」と「どちらかというと肯定的な評価」との合計を常に上回っている
①ア―a イ―c
②ア―a イ―d
③ア―b イ―c
④ア―b イ―d
#現代国際政治史―ModernWarfare #時事問題 #国語問題
問6解説
正解:③
復習用資料:政治分野第四章/現代国際政治史―ModernWarfare
Y:なるほどね。「アラブの春」に歴史的な評価を下すのは、まだ早いのかもしれないね。
・高校生がこんな事言ってたら嫌ランキング、令和七年ナンバーワン間違いなし!
・…は置いておいて、アラブの春関連の知識を問いつつ、図表を読ませる問題である
Z:「アラブの春」の後、多くの国で政治的な混乱が生じて、暴力的な事態にまで至ったところもあるからじゃないかな。
Y:たしかにね。同じ時期に[ ア ]などのように内戦が激化したり、イスラーム原理主義勢力がイラク北部から勢力を広げ、「イスラーム国」を宣言したりしているね。
aチュニジア bシリア
・[ ア ]については、教科書的な知識でも「ニュースで見たよね!」な知識でも解ける
・即ち、アラブの春で唯一、マトモに民主化が成功し、国が安定したのがチュニジア共和国である
・他の国は悉く、内戦になったりイスラム国に浸食されたりして大失敗に終わった
・一方、アラブの春でも特に大失敗に終わったのがシリア・アラブ共和国である
・そのままシリア内戦へ突入し、それはもう大変な事になった
⇒2010年代は欧州に難民が押し寄せた時代でもあるが、その三分の一がシリア出身者なんて言われる事もある。それぐらい大変な事になった
Z:資料からは[ イ ]ことを読みとれる
・一方、[ イ ]は純粋に図表を読み取ればよい
・図表を読むと、以下のようになる
年 | 肯定的+どちらかというと肯定的 | どちらかというと否定的+否定的 |
---|---|---|
2012/2013 | 25+36=61 | 11+11=22 |
2014 | 17+28=45 | 17+25=42 |
2015 | 10+24=34 | 25+34=59 |
2016 | 18+33=51 | 19+22=41 |
2017/2018 | 20+29=49 | 16+23=39 |
2019/2020 | 25+33=58 | 13+15=28 |
2022 | 20+26=46 | 15+24=39 |
c 2015年の調査を除いて、「肯定的な評価」と「どちらかというと肯定的な評価」との合計が「否定的な評価」と「どちらかというと否定的な評価」との合計を常に上回っている
・正文である
d 2016年以降の調査では、「否定的な評価」と「どちらかというと否定的な評価」との合計が「肯定的な評価」と「どちらかというと肯定的な評価」との合計を常に上回っている
・誤文である(2016年以降は常に、肯定的+どちらかというと肯定的、の方が高い)
第5問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Xは、さまざまな格差と貧困の問題の事例とそれらへの対策について調べた。現代における格差や貧困に関する記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①発展途上国の低所得層に向けて製品やサービスを販売して利益を得つつ、低所得層の生活水準の向上に資する企業の活動を、BOPビジネスという。
②すべての国民に対して個別の事情によらず無条件に現金を定期的に給付する制度を、ミニマム・アクセスという。
③情報通信技術を使いこなすことができる人と使いこなすことができない人との間に生じる格差を、トレードオフという。
④ある国における全世帯の年間可処分所得の中央値の半分に満たない人の割合を、絶対的貧困率という。
問1解説
正解:①
復習用資料:経済分野第三章/国際経済テーマ史
復習用資料:経済分野第一章/貧富の格差を表す指標
・この手の四択問題でも、「②~④が間違ってるし、①が正解でしょ!」で解く問題である
・ついでに言うと、「①の内容を受験生が知らなくてもいい」という考え方で作問されていると思われる
①発展途上国の低所得層に向けて製品やサービスを販売して利益を得つつ、低所得層の生活水準の向上に資する企業の活動を、BOPビジネスという。
・正文である
②すべての国民に対して個別の事情によらず無条件に現金を定期的に給付する制度を、ミニマム・アクセスという。
・誤文である
・「すべての国民に対して(中略)現金を定期的に給付する制度」はベーシック・インカムである
・ミニマム・アクセスは、最低輸入量である
⇒例えばGATTウルグアイ・ラウンドで、日本国は米の輸入自由化に同意。1995年から準備期間を経て、1999年から米の輸入は自由化された。では準備期間に何をしていたかと言うと、極少数の米を輸入していた。この少数の輸入量を、最低輸入量(ミニマム・アクセス)と呼ぶ
③情報通信技術を使いこなすことができる人と使いこなすことができない人との間に生じる格差を、トレードオフという。
・誤文である
・「情報通信技術を使いこなすことが(中略)間に生じる格差」はデジタル・デバイドである
・トレードオフは、一方を優先するともう一方を犠牲にしなければならない関係や状況を指す言葉である
④ある国における全世帯の年間可処分所得の中央値の半分に満たない人の割合を、絶対的貧困率という。
・誤文である
・「ある国における全世帯の年間可処分所得の中央値の半分に満たない人の割合」は、相対的貧困率である
・即ち、国や地域の生活水準に照らして、「この地域だと貧乏な方だねこの人」が相対的貧困である
・一方、絶対的貧困は、国や地域の生活水準とは関係ない
・とにかく、「生きる上で最低限の生活水準が満たされていない」と言えるぐらい貧乏な状態を指す
⇒令和四年現在、「一日に2.15ドル未満の生活」が絶対的貧困となっている
問2
日本以外の国の労働問題に関心をもった生徒Zは、国際比較のために隣国である韓国の労働政策について調べて報告し、生徒X、生徒Yと話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる語句と空欄[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:Zさんの報告によると、韓国では1980年代終盤から外国人の働く姿が多くみられるようになったんだね。これは、当時の日本でもあった状況だと聞くよ。
Y:外国人労働者の増加をうけて、韓国では1991年に産業技術研修生制度を設けて外国人を研修生として受け入れる制度を導入したんだね。日本でも1993年に[ ア ]を目的として掲げた技能実習制度が導入されたよ。
Z:その後韓国は2004年に外国人を労働者として受け入れる雇用許可制を施行したのちに研修生の制度を廃止したんだよ。日本では2018年の出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)改正で[ イ ]こととして、翌年施行されたね。
X:こうやってみてくると、今後、外国人との共生を考えるにあたって、同じような状況を抱えている日韓両国は、アジアの中で互いに重要な参照例となりそうだね。
[ ア ]に当てはまる語句
a発展途上国への技能や知識の移転
b日本国内の労働力不足への対応
[ イ ]に当てはまる記述
c「特定技能」の在留資格を新設して、在留資格が与えられる業種を拡大する
d技能実習制度を廃止して、外国人にほぼすべての業種での就労を認める
①ア―a イ―c
②ア―a イ―d
③ア―b イ―c
④ア―b イ―d
問2解説
・地域共生社会問題の中でも特に、外国人労働者関係の知識を問うてくる問題である
・この問題で使う知識は、教科書どうこうを抜きに、ニュースを見ていればよく耳にする話題である
・そういう意味では、常識で解ける時事問題であるとも言えるだろう
Y:外国人労働者の増加をうけて、韓国では1991年に産業技術研修生制度を設けて外国人を研修生として受け入れる制度を導入したんだね。日本でも1993年に[ ア ]を目的として掲げた技能実習制度が導入されたよ。
a発展途上国への技能や知識の移転
b日本国内の労働力不足への対応
・Yの言う「技能実習制度」とは明らかに、外国人技能実習制度の事である
・そしてこの制度、確かに「日本国内の労働力不足への対応」として悪用されている面がある
・あるのだが、少なくとも建前上は「発展途上国への技能や知識の移転」が目的である
⇒だから制度の名前が「外国人技能実習制度」なのである
日本では2018年の出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)改正で[ イ ]こととして、翌年施行されたね。
c「特定技能」の在留資格を新設して、在留資格が与えられる業種を拡大する
d技能実習制度を廃止して、外国人にほぼすべての業種での就労を認める
・外国人技能実習制度は、現代の奴隷制・人身売買として批判も多い
・それもあって、廃止して育成就労制度へと移行する、という話になっているのは事実である
・ただ、廃止と移行は令和九年以降が目途であり、令和七年現在はまだ現役である
・況して、2018年に技能実習制度を廃止している訳がない
⇒ちなみに、技能実習制度廃止と育成就労制度への移行に関する法案が国会で可決されたのが令和六年の夏である。その半年後の共テでこの問題が出た訳で、割としっかりめの時事問題である。勿論特定技能について知っていても解ける問題ではあるのだが
問3
労働環境と福祉政策の関係に関連して、生徒X、生徒Y、生徒Zが、「すべての人が働きやすく、生きやすい社会はどうしたら実現できるか」について話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる語句と空欄[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
X:私はこれまで意識してこなかったけれど、不慮の事故や病気はだれにでも起こりうるし、年をとるにつれてさまざまなリスクは高まっていくよね。現役世代を含めたすべての世代のだれもが安心して暮らせる社会の実現のためには、何が必要になってくるのかな。
Y:まずは、高齢者や障害者も社会の中でほかの人々と同じような暮らしを送り、ともに生活するという[ ア ]という考え方が重要だよね。
Z:その点、高齢者や障害者にとって生活の支障となるものを取り除こうというバリアフリーの取組みは、日本でも法律的な裏づけも得て一般化してきているよ。
X:バリアフリー化が進めば、雇用の障壁となっている問題も改善しそうだね。
Y:現在、国、地方公共団体や企業などに対しで[ イ ]が法律で義務づけられているのは、雇用における問題の改善が早急に求められるということを示しているとも考えられるね。
Z:だとすれば、法律は国会で制定され、改正されるものだから、18歳以上の高校生ももっている選挙権は、社会の変化を促すことにつながっているといえるね。
[ ア ]に当てはまる語句
aワーク・ライフ・バランス
bノーマライゼーション
[ イ ]に当てはまる記述
c定年制を廃止すること
d障害者を職員や従業員の一定比率以上雇用すること
①ア―a イ―c
②ア―a イ―d
③ア―b イ―c
④ア―b イ―d
問3解説
正解:④
復習用資料:経済分野第二章/社会保障
復習用資料:経済分野第二章/今日的な福祉問題
・社会保障や今日的な福祉問題についての、基本的な知識を問う問題である
・受験はとにかく、こういう基本問題を落とさない、というところを徹底したい。難問奇問はその後の話
Y:まずは、高齢者や障害者も社会の中でほかの人々と同じような暮らしを送り、ともに生活するという[ ア ]という考え方が重要だよね。
aワーク・ライフ・バランス
bノーマライゼーション
・Yが言っている事がそのまま、ノーマライゼーションの定義になっている
・無論、「いや常識的に考えて、それはワーク・ライフ・バランスではないだろ」で解いてもよい
Y:現在、国、地方公共団体や企業などに対しで[ イ ]が法律で義務づけられているのは、雇用における問題の改善が早急に求められるということを示しているとも考えられるね。
c定年制を廃止すること
d障害者を職員や従業員の一定比率以上雇用すること
・社会保障の項目で学習したように、現代日本では、一定比率以上の障害者雇用が義務付けられている
・勿論、「いや常識的に考えて、定年廃止が法的に決まったなんて話はないだろ」で解いてもよい
問4
労働法について調べた生徒Yは、だれもが相互に契約を締結しその内容を自由に決めることができるという資本主義経済における契約自由の原則が、労働契約においてはそのままでは当てはまらないことを知った。その理由を示した記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①労働者と使用者は、効率的な生産の実現に向けて分業や協業の関係を構築しなければならず、契約の締結に政府の介入が容認されるため。
②労働者と使用者は、労働条件をめぐってしばしば対立し、結果として争議行為が発生して生産活動が止まったときの企業の損失を避けるため。
③労働者と使用者は、形式上は対等な主体として契約を締結したとしても、実際には立場の弱い労働者に不利な内容となる可能性があるため。
④労働者と使用者は、商品の品質について共同で責任をもつだけでなく、それぞれの活動が社会に及ぼす影響についても配慮する必要があるため。
問4解説
・法の支配と法治主義の中でも、非常に基本的な、法の種類の知識を問う問題である
⇒定期試験でも受験でも、まずは基本問題を落とさない事。難問奇問は二の次三の次。この問題のような、基本的な知識を聞いてくる問題は絶対に外さないようにしたい
・今回聞かれているのは、社会法の知識である
※労働法は社会法の代表例
・法にも色々ある。社会法は、上記の通り、実定法の中でも成文法の一種である
・成文法は、公法、私法、社会法の三種に分かれている
・公法は、国家と私人(個人や企業)の関係、手続きを規定する法である
⇒憲法、刑法、地方自治法、民事訴訟法、刑事訴訟法等
・私法は、私人と私人の関係を規律する法である
⇒民法、商法等。各私人間の関係を、なるべく自由かつ平等に扱おうとする傾向にある
・ところで私人と言っても、個人と企業では持つ力が違い過ぎる
⇒個人と企業を対等な存在として扱い、企業を自由にさせ過ぎるとどうなるか? 企業は「社員の給料を下げる自由」「社員の労働時間を増やす自由」「目障りな社員をクビにする自由」を堂々と行使するようになるだろうし、個人がこれに対抗するのは大変である
・こうして、個人を保護し、実質的な平等を実現させる法が必要となる。社会法である
⇒労働基準法、独占禁止法等
③労働者と使用者は、形式上は対等な主体として契約を締結したとしても、実際には立場の弱い労働者に不利な内容となる可能性があるため。
・社会法の知識があれば、この③が正文である事は一発で分かるだろう
問5
労働組合の組織率が労働時間や労働生産性とどのように関係しているのかに関連して、労働組合組織率や労働生産性の国際比較に関心をもった生徒Xは、次の表を作成し、生徒X、生徒Y、生徒Zが表から読みとれることについて話し合っている。後の会話文中の空欄[ ア ]に当てはまる語句と空欄[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:労働組合組織率や労働生産性の国際比較について、新型コロナウイルス感染拡大前のデータを整理して表を作成したよ。
Y:労働生産性の数値をみると、就業者一人当たり年間労働生産性と就業1時間当たり労働生産性のいずれも、アメリカとドイツが高いね。
Z:一方で、労働生産性が低い国は、今後、高める余地が大きいともいえるよ。
X:そうだね。次に日本と韓国とを比較すると、日本は韓国よりも就業者一人当たり年間労働生産性が低い一方で、就業1時間当たり労働生産性が高いことが表からわかるよね。ということは、日本が韓国よりも就業者一人当たりの年間総労働時間が[ ア ]ことになるよね。
Y:なるほど。ところで、労働組合組織率は労働生産性と関係があるのかな。
Z:それについては、たとえば、表をみる限り、[ イ ]と推察できるね。
X:労働組合の組織率や労働生産性以外の要素も考える必要があるかもね。
Y:それでは、この後雇用のあり方について、新型コロナ感染拡大の影響も含めて幅広く調べてみようか。
[ ア ]に当てはまる語句
a長い
b短い
[ イ ]に当てはまる記述
c就業l時間当たり労働生産性が高いアメリカおよびドイツと、低い日本および韓国とを比べると、アメリカおよびドイツは労働組合組織率が日本および韓国よりも高いので、就業1時間当たり労働生産性の違いが労働組合組織率の違いをもたらしている
d労働組合組織率が同水準の日本とドイツとを比べると、就業1時間当たり労働生産性に大きな差がみられるので、労働組合組織率の違いが就業l時間当たり労働生産性の違いをもたらしているわけではない
①ア―a イ―c
②ア―a イ―d
③ア―b イ―c
④ア―b イ―d
問5解説
正解:④
・純粋な論理国語の問題である
・特に[ ア ]は、純粋に会話文を読むだけで解けてしまう(図表の内容と照らし合わせる必要がない)
・国語の問題の中でもかなりボーナス問題寄りであり、落とさないようにしたい問題と言える
X:そうだね。次に日本と韓国とを比較すると、日本は韓国よりも就業者一人当たり年間労働生産性が低い一方で、就業1時間当たり労働生産性が高いことが表からわかるよね。ということは、日本が韓国よりも就業者一人当たりの年間総労働時間が[ ア ]ことになるよね。
a長い
b短い
・日本の方が一時間当たりの数値は高いのに、年間の合計の数値が低いのは何故か、という話である
・そんなもの、日本の労働時間が(韓国に比べれば)短い、という以外にはあり得ない
・よって、[ ア ]は「b短い」である
Y:なるほど。ところで、労働組合組織率は労働生産性と関係があるのかな。
Z:それについては、たとえば、表をみる限り、[ イ ]と推察できるね。
・この[ イ ]に関しては、会話文はあまり関係ない
・純粋に、選択肢と図表の内容を照らし合わせるだけで正答が導けるだろう
c就業l時間当たり労働生産性が高いアメリカおよびドイツと、低い日本および韓国とを比べると、アメリカおよびドイツは労働組合組織率が日本および韓国よりも高いので、就業1時間当たり労働生産性の違いが労働組合組織率の違いをもたらしている
・一時間当たりの数値は確かに、米独が高く(76.7と76.8)日韓が低い(47.5と42.2)
・一方労働組合組織率はと言うと、日独が高く(16.7と16.3)、米韓が低い(10.3と12.5)
・これは選択肢cの「アメリカおよびドイツは労働組合組織率が日本および韓国よりも高い」に反する
・よって選択肢cは誤文である
d労働組合組織率が同水準の日本とドイツとを比べると、就業1時間当たり労働生産性に大きな差がみられるので、労働組合組織率の違いが就業l時間当たり労働生産性の違いをもたらしているわけではない
・既に見たように、労働組合組織率は日独が高く、米韓が低い
・一方、こちらも既に見たが、一時間当たりの数値は、(米と)独が高く日(と韓)が低い
・となると、選択肢dは正文である
問6
日本における労働力雇用の特徴に関連して、日本における雇用の特徴に関心をもった生徒X、生徒Y、生徒Zは、いろいろな本を読み、本の内容とこれまでの学習から考察できることについて話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる記述と空欄[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:最近読んだ本に、日本における雇用を他国と比較した際の特徴として、職務が特定されていない労働契約がしばしばみられることがあげられていたよ。
Y:私が読んだ本でも、日本の雇用では、職務が特定されていない労働契約に基づいて使用者がさまざまな職務を労働者に担当させていることが特徴的だと指摘されていたね。
X:そのような雇用形態の場合、担当している職務が廃止されても、ほかの職務を担当できる場合には、使用者がその労働者を解雇することに制約があるという側面も述べられていたよ。これが終身雇用の慣行につながっているといえそうだね。
Z:ということは、そのような雇用形態では、[ ア ]が重要な要素となっていると推察できるね。
X:さらに同じ人がさまざまな職務を担当する可能性の高い終身雇用の下では、[ イ ]が難しいので年功序列型賃金がみられるようになったと推察できるね。
Y:一方で、職務を特定した採用を増やそうとする動きもみられるよ。
Z:労働生産性を高めて経済成長につなげようとするねらいが背景にあるのかな。
X:そうすると、今後日本では、雇用形態に変化が生じる可能性があるね。
Y:そうした変化の中で、今後職務に適合した労働者を雇用する傾向が強まると、労働者にとって[ ウ ]の労働組合の必要性が高まるといえるんじゃないかな。
Z:雇用のあり方のそうした変化を見通した上で、過労死やサービス残業、賃金格差の拡大といった問題について、考えていく必要があるね。
[ ア ]に当てはまる記述
a労働者が単一の職務の専門的技能を身につけていること
b労働者が特定の企業の一員であること
[ イ ]に当てはまる記述
c職務の専門的技能の高低や職務の必要度の高低に応じて賃金を定めること
d入社後の期間や年齢といった客観的な基準に応じて賃金を定めること
[ ウ ]に当てはまる語句
e企業別
f産業別や職業別
①ア―a イ―c ウ―e
②ア―a イ―c ウ―f
③ア―a イ―d ウ―e
④ア―a イ―d ウ―f
⑤ア―b イ―c ウ―e
⑥ア―b イ―c ウ―f
⑦ア―b イ―d ウ―e
⑧ア―b イ―d ウ―f
問6解説
正解:⑥
・労働問題の知識を問う…ように見せかけた、純粋な国語の問題である
X:最近読んだ本に、日本における雇用を他国と比較した際の特徴として、職務が特定されていない労働契約がしばしばみられることがあげられていたよ。
Y:私が読んだ本でも、日本の雇用では、職務が特定されていない労働契約に基づいて使用者がさまざまな職務を労働者に担当させていることが特徴的だと指摘されていたね。
(中略)
Z:ということは、そのような雇用形態では、[ ア ]が重要な要素となっていると推察できるね。
・[ ア ]に関して、重要なのは下線部である
・現代日本社会では、労働者に様々な仕事をさせる(単一の仕事をさせる事を想定していない)のである
・という事は、「a労働者が単一の職務の専門的技能を身につけていること」が重要というのはあり得ない
・必然的に、「b労働者が特定の企業の一員であること」が正答として導かれるのである
X:さらに同じ人がさまざまな職務を担当する可能性の高い終身雇用の下では、[ イ ]が難しいので年功序列型賃金がみられるようになったと推察できるね。
・[ イ ]は、[ ア ]の話の続きである
・現代日本社会では、「同じ人がさまざまな職務を担当する」
・言い換えれば、現代日本社会では、“ある人がずっと同じ仕事をする”というのはあまり想定されていない
・結果、「c職務の専門的技能の高低や職務の必要度の高低に応じて賃金を定めること」は難しいのである
⇒だから、従来の日本型労働環境では、年功序列型賃金、即ち「d入社後の期間や年齢といった客観的な基準に応じて賃金を定めること」が多かったのである
Y:一方で、職務を特定した採用を増やそうとする動きもみられるよ。
(中略)
Y:そうした変化の中で、今後職務に適合した労働者を雇用する傾向が強まると、労働者にとって[ ウ ]の労働組合の必要性が高まるといえるんじゃないかな。
・ここで話が少し変わるが、[ ア ]を振り返ると正答を得やすいだろう
・今までの現代日本社会では、“ある人がずっと同じ仕事をする”は想定されていなかった
・故に大事なのは「a労働者が単一の職務の専門的技能を身につけていること」ではなかった
・大事なのは「b労働者が特定の企業の一員であること」であった
・故に、従来の日本型労働環境では、「e企業別」労働組合が多かった
・ところが、最近、“ある人がずっと同じ仕事をする”形で労働者を雇う動きが出てきている
・そうなると、大事なのは「b労働者が特定の企業の一員であること」ではなくなるだろう
・大事なのは「a労働者が単一の職務の専門的技能を身につけていること」になるだろう
・という事は、労働組合も「f産業別や職業別」が求められるようになるのではないか…
・…というのが、[ ウ ]周辺の話である
・よって正解は、⑥ア―b イ―c ウ―f である
第6問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Xは、探究を始めるにあたり、企業の形態について授業ノートを見直して、その内容を次のメモにまとめた。メモ中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
メモ
企業の形態の典型例に株式会社がある。株式会社の所有者は[ ア ]であり、その最高意思決定機関は[ ア ]によって構成される。一方で株式会社では、[ イ ]が進行しており、会社の行為が[ ア ]の利益と一致しないこともありうる。そして会社の下した判断に対して、[ ア ]がその判断が正しいかを評価するための十分な情報をもっていないこともある。このような状況は、会社が所有者にとって望ましい意思決定を下しているのかの判断が困難になってしまうことを意味している。
一般に、企業の意思決定の透明性を高め、不正を防ぎ、[ ア ]の利益を損なわないようにコーポレート・ガバナンスの強化が必要とされている。そのため、たとえば、ディスクロージャー(情報開示)や[ ウ ]が進められている。ただ、企業の不祥事が引き続き発生していることからもわかるように、コーポレート・ガバナンスの強化には持続的な取組みが必要であろう。
①ア:取締役 イ:所有と経営の分離 ウ:株主代表訴訟の手続の簡素化
②ア:取締役 イ:所有と経営の分離 ウ:メインバンク制度の新設
③ア:取締役 イ:有限会社への転換 ウ:株主代表訴訟の手続の簡素化
④ア:取締役 イ:有限会社への転換 ウ:メインバンク制度の新設
⑤ア:株主 イ:所有と経営の分離 ウ:株主代表訴訟の手続の簡素化
⑥ア:株主 イ:所有と経営の分離 ウ:メインバンク制度の新設
⑦ア:株主 イ:有限会社への転換 ウ:株主代表訴訟の手続の簡素化
⑧ア:株主 イ:有限会社への転換 ウ:メインバンク制度の新設
問1解説
正解:⑤
復習用資料:経済分野第一章/企業とは
・「企業とは」について、基本的な知識を問うてくる問題である
⇒「株式会社の仕組みが定番中の定番っていうのは知識としては知ってるけど、本当にこんな定番オブ定番みたいな感じで出題されるんですね」というコメントが思わず漏れてきそうな、基礎問題。こういう問題は落とさないようにしたい
株式会社の所有者は[ ア ]であり、その最高意思決定機関は[ ア ]によって構成される。
・選択肢は「取締役」と「株主」である
・言うまでもなく、株式会社の所有者は株主であり、最高意思決定機関は株主総会である
⇒ここが覚えづらい人は、「大体のモノって、カネを出した人が持ち主って形になるでしょ」「教室の机と椅子を実際に使っているのは生徒でも、カネを払って買ったのは学校でしょ」というような形で覚えればよいだろう。株式会社の場合、カネを出している人(出資者)は株主である
一方で株式会社では、[ イ ]が進行しており、会社の行為が[ ア ]の利益と一致しないこともありうる。
・選択肢は「所有と経営の分離」と「有限会社への転換」である
・言うまでもなく、現代の株式会社で進行しているのは、所有と経営の分離である
⇒即ち、“出資者(カネを出している人、株主)が会社を経営せず、専門家に任せる”という事態が進行している。そして、会社経営を任されている専門家こそ、[ ア ]の選択肢で出てきた取締役である
※勿論、「いや有限会社は会社法の改正で作れなくなった奴でしょ…」で解いてもよい
一般に、企業の意思決定の透明性を高め、不正を防ぎ、[ ア ]の利益を損なわないようにコーポレート・ガバナンスの強化が必要とされている。そのため、たとえば、ディスクロージャー(情報開示)や[ ウ ]が進められている。
・選択肢は「株主代表訴訟の手続の簡素化」と「メインバンク制度の新設」である
・既に見たように、現代の株式会社では、所有と経営の分離が進行している
・これは要するに、“出資者(カネを出している人、株主)が会社を経営せず、専門家に任せる”である
・これを放っておくと、出資者が知らないところで専門家が不法行為をする、という事態も起こり得る
・そういった事態を防ぐのに、「メインバンク制度を新設」しても仕方ない
・言うまでもなく、「株主代表訴訟の手続の簡素化」をした方が有益である
⇒取締役会のような会社の経営陣が、法令違反によって会社に損害を与えた場合、株主は訴訟を起こせる。特に、一部の株主が株主全体を代表して裁判に訴える場合を株主代表訴訟と言う
問2
市場の仕組みに関連して、生徒Xは、ある仮想的な農産物の国内市場における価格の決まり方について考え、この農産物の2025年の農家の売上げとその増減に関する考察を述べた次の資料を作成した。資料中の空欄[ ア ]に当てはまる金額と空欄[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
①ア:8千万円 イ:増加
②ア:8千万円 イ:減少
③ア:1億6千万円 イ:増加
④ア:1億6千万円 イ:減少
⑤ア:2億4千万円 イ:増加
⑥ア:2億4千万円 イ:減少
問2解説
正解:②
復習用資料:経済分野第一章/需要供給曲線
・今年もなかなか捻った需要供給曲線の問題である
⇒需要供給曲線はセンター試験以来、毎回一問出る鉄板中の鉄板だったが、共テに入ってから変な方向に捻った問題ばかりになっている
・今回の場合は、供給曲線が縦の直線になっているのが特徴である
・普通、供給曲線は右上がりの線になる
・これは、“高いものは沢山作って売りたい”“安いものはあんまり作りたくない”を反映している
・が、今回はかなり特殊な農産物を対象にしている。その結果が縦の直線である
⇒農産物は普通、年に一回しか生産(収穫)できない。かつ、今回は「保存がきかず」「輸出入はなく」「生産した全量を出荷」という縛りをつけた結果、“どれぐらい作るかを、値段を見て変えようがない”形となり、結果、“100円で売れようが10円で売れようが知らん”“とにかく今年は800万個できた!”“だから800万個売る!!”みたいな縦の直線になってしまった
2023年 | 2024年 | 2025年(見込み) | |
---|---|---|---|
生産量(万単位) | 300 | 400 | 800 |
1単位当たり価格(円) | 70 | 60 | x |
・さて、図表から、300万個作った時は70円、400万個作った時は60円だった事が分かる
・かつ、需要曲線が直線である事から、500万個なら50円、600万個なら40円…となると考えられる
・つまり700万個なら30円、そして800万個は20円。よって、xは20(円)だと考えられる
2024年と比較した2025年の全農家の売上総額は、(中略)[ ア ]だけ[ イ ]すると見込まれる
・さて、この問題は、空欄[ ア ]と[ イ ]を埋めねばならない
・のだが、「全農家の売上総額」とやらはどう計算するのか?
この農産物を生産する全農家の売上総額は、価格と販売量の積で求められる
・という事は、例えば2024年の売上総額は400万個×60円で2億4000万円である
・同様に、2025年は800万個×20円で1億6000万円となる
・つまりこれは、「8000万円」の「減少」である
問3
生徒Xは、経済の仕組みに関心をもっていろいろな本を読む中で、イノベーション(技術革新)に関連する記述をみつけ、生徒Yとイノベーションについて話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:人口に関する本を読んでいたらイノベーションの話が出てきたよ。イノベーションが経済成長の源泉になっているんだね。そして経済成長の指標には実質GDP(国内総生産)が使われることが多いけど、仮に人口が減少し実質GDPが伸び悩む状況の下でも、[ ア ]考えると、イノベーションによる生産性の上昇があれば生活水準を高めることは可能だとわかると書いてあったよ。イノベーションを担うのは主に企業だから、企業の活動にはなるべく制約をかけず、新しい発想をもった企業が参入できることが必要なのではないかな。
Y:でも、自由な経済活動は必ずしもよいことばかりではないと思うよ。アイデアやデザインなどの知的財産権の保護を[ イ ]すぎると、せっかくのアイデアなどを勝手に使われてしまうね。逆に保護を[ ウ ]すぎると、アイデアなどを新しい研究開発に利用できなくなったり、高額の使用料を求められることになったりするね。結局どちらもイノベーションを妨げる要因となるかもしれないよ。
X:なるほど、健全な経済活動の維持発展には企業の行動をバランスよく規制することも重要なんだね。
Y:そのため司法や行政の役割も調べてみよう。
①ア:一人当たりで イ:強め ウ:弱め
②ア:一人当たりで イ:弱め ウ:強め
③ア:固定資本減耗を控除して イ:強め ウ:弱め
④ア:固定資本減耗を控除して イ:弱め ウ:強め
問3解説
正解:②
・基本的には読み解くだけの、国語の問題である
⇒一応、「GDPって何?」ぐらいの事は分かっておきたいが、それは政治経済の知識と言うよりは一般常識なので…
経済成長の指標には実質GDP(国内総生産)が使われることが多いけど、仮に人口が減少し実質GDPが伸び悩む状況の下でも、[ ア ]考えると、イノベーションによる生産性の上昇があれば生活水準を高めることは可能だ
・選択肢は「一人当たりで」「固定資本減耗を控除して」である
・当たり前だが、GDPは、その国がどれぐらい豊かかを表す指標である
・具体的には、その国で生産されたモノ・サービスの価格と個数を掛けて合計したものである
・これも当たり前だが、人口が減れば生産できる商品の数も減る
・つまり、GDPは伸びづらくなる。著しくは減少する
・しかし、「イノベーションによる生産性の上昇があれば」…というのが[ ア ]である
⇒即ち、GDP自体は増えていなくとも、国民一人あたりが生産できる商品の数が増えれば、実質的には豊かになれる、という話である
・こうなってくれば当然、[ ア ]に入るのは「一人当たりで」しかあり得ない
アイデアやデザインなどの知的財産権の保護を[ イ ]すぎると、せっかくのアイデアなどを勝手に使われてしまうね。逆に保護を[ ウ ]すぎると、アイデアなどを新しい研究開発に利用できなくなったり、高額の使用料を求められることになったりするね。
・知的財産権の代表例が特許権だが、特許の本質とは、独占である
・即ち、ある人が発明した新商品を、その人しか作ってはいけない、というのが特許である
⇒本質的にそういう性質を持つのが知的財産権であるから、その保護が強すぎると「アイデアなどを新しい研究開発に利用できなくなったり、高額の使用料を求められることになったり」する訳である
・と考えると、[ イ ]が「弱め」、[ ウ ]が強めである事はすぐに分かるだろう
問4
検察官の不起訴処分により刑事罰が科されないことがあることに関心をもった生徒Yは、日本の検察審査会制度について調べ、次のメモを作成した。後の記述ア~ウのうち、メモから読みとれる内容として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
メモ
1 検察審査会は、検察官の不起訴処分の当否に関して審査した場合、以下のいずれかの議決を行う。
(a) 起訴を相当と認める場合、起訴相当の議決を行う。
(b) (a)を除いて不起訴処分を不当と認める場合、不起訴不当の議決を行う。
(c)不起訴処分を相当と認める場合、不起訴相当の議決を行う。
2 検察審査会が1の(a)または(b)の議決をした場合は、検察官は、当該議決を参考にして、起訴処分または不起訴処分をしなければならない。
3 1の(a)の議決後、検察官が不起訴処分をしたときは、検察審査会は当該処分の当否の審査を行わなければならない。検察審査会は、当該審査を行い起訴を相当と認めるときは、起訴をすべき旨の議決をするものとする。
4 3の議決があったときは、裁判所が指定した弁護士により、当該事件について強制的に起訴される。
ア 検察審査会が起訴相当の議決をし、それに対して検察官が再び不起訴の判断をした事件について、検察審査会が起訴を相当と認める場合、起訴が行われなければならない。
イ 検察審査会の不起訴不当の議決をうけて、検察官が再び不起訴の判断をした場合、検察審査会は、当該判断の当否の審査を行わなければならない。
ウ 検察審査会の議決に基づき強制的に起訴が行われる場合、その起訴は検察官によって行われる。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問4解説
正解:①
・法律の条文を読んで、その意図するところを読み解く問題である
・この手の問題も共テ常連だが、論理国語こそこういうのやる教科として新設したんじゃないの…?
・…というのはさておき、今回は流れが比較的分かりづらい法律を持ってきている
・この手の法律を読むときは、流れ図を(頭の中だけでもいいから)作るのが重要である
⇒「法律は自然言語(人間が使う言語)で書かれたプログラム」とよく言われる。そしてプログラムを作る時も読み解く時も流れ図は重要、というのは恐らく情報の授業でやった筈である
・上記流れ図を見ながら各選択肢を見てみると、自然と答えが見えてくる筈である
ア 検察審査会が起訴相当の議決をし、それに対して検察官が再び不起訴の判断をした事件について、検察審査会が起訴を相当と認める場合、起訴が行われなければならない。
・上記流れ図で言う、a⇒左の2.⇒改めて不起訴⇒3.⇒起訴相当決議⇒4.の流れの説明である
・よって、正文である
イ 検察審査会の不起訴不当の議決をうけて、検察官が再び不起訴の判断をした場合、検察審査会は、当該判断の当否の審査を行わなければならない。
・「検察審査会の不起訴不当の議決」は、上記流れ図で言う、bである
・bから始まった場合、右の2.の後は「改めて起訴」か「改めて不起訴」があるだけである
・言い方を変えれば、bから始まった場合、右の2.の後は検察審査会は出てこない
・よって、誤文である
ウ 検察審査会の議決に基づき強制的に起訴が行われる場合、その起訴は検察官によって行われる。
・上記流れ図で言う、4.の話である
・問題文のメモの4にもあるが、この時、起訴は裁判所指定の弁護士が行う
・よって、誤文である
</div>
問5
生徒Yは、消費者を保護する法制度による対策の例について調べ、その内容を次のメモにまとめた。メモ中の空欄[ ア ]に当てはまる記述と空欄[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
メモ
企業間の競争が激化すると、コスト削減などのために企業が製品の安全性を軽視し、消費者に被害が生じることがある。こうした問題に対処するために消費者を保護する法制度が整備されており、そうした法制度の一例として製造物責任法がある。日本の製造物責任法では、消費者が企業に賠償を求めるためには、[ ア ]。
消費者に生じる被害への対策は、一般に、問題の発生を防ぐために企業の参入の前や製品の販売の前に規制を行う事前規制と、問題を発生させた企業を取り締まったり被害者の救済を図ったりする事後規制の二つに分類される。日本の製造物責任法に基づき企業に賠償責任を負わせることは、その二つのうち、[ イ ]に分類される。
[ ア ]に当てはまる記述
a製品の欠陥の証明と企業の過失の証明とが両方とも必要である
b製品の欠陥の証明は必要であるが、企業の過失の証明は不要である
c製品の欠陥の証明は不要であるが、企業の過失の証明は必要である
d製品の欠陥の証明と企業の過失の証明とが両方とも不要である
[ イ ]に当てはまる語句
e事前規制
f事後規制
①アーa イーe ②アーa イーf ③アーb イーe
④アーb イーf ⑤アーc イーe ⑥アーc イーf
⑦アーd イーe ⑧アーd イーf
問5解説
正解:④
復習用資料:経済分野第二章/消費者問題
・製造物責任法(PL法)の知識を問いつつ、国語力も問うてくる複合問題である
日本の製造物責任法では、消費者が企業に賠償を求めるためには、[ ア ]。
・ご存知製造物責任法は、無過失賠償責任で有名な法律である
⇒「欠陥商品を製造した者は、過失がなくとも賠償しなければならない」が無過失賠償責任
・と言っても、何でもかんでも欠陥品なら全部賠償、という訳ではない
・例えば、「この商品には欠陥がある」というのは、被害者側が証明せねばならない
・また、開発危険の抗弁、というのもある
⇒その商品を開発し、販売した(流通させた)時点での科学技術では予想不可能な危険については賠償しなくていい、というもの。まぁこれすらも認めないと、誰も新商品を作らなくなるので…
b製品の欠陥の証明は必要であるが、企業の過失の証明は不要である
・という訳で、このbが、製造物責任法の特徴をよく説明している選択肢となる
消費者に生じる被害への対策は、一般に、問題の発生を防ぐために企業の参入の前や製品の販売の前に規制を行う事前規制と、問題を発生させた企業を取り締まったり被害者の救済を図ったりする事後規制の二つに分類される。日本の製造物責任法に基づき企業に賠償責任を負わせることは、その二つのうち、[ イ ]に分類される。
・製造物責任法は、“欠陥商品で被害を受けた人が、製造企業を訴える”方式の法律である
・となればこの法は当然、「製品の販売の前に規制を行う事前規制」ではない
・むしろ、「被害者の救済を図ったりする事後規制」であると言えよう
問6
生徒Xと生徒Yは、発表に向けて、次の表1と表2をみながら、日本における農業への企業の参入の目的と課題について話し合っている。後の会話文中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
X:企業の農業への参入に期待がもたれているね。たとえば、食品製造業の企業が自社商品の原料の農作物を自分で生産したり、建設業の企業が重機運転技術をいかして農作業を行ったりする事例をみつけたよ。表1の企業の参入の目的をみると、たとえば、[ ア ]。
Y:でも、参入した企業が事業をうまく継続できず撤退するという懸念もあるよ。表2をみると、参入時からさまざまな課題があることがわかるよ。
X:たしかにさまざまな課題があるみたいだね。表1で参入の目的に「地域貢献」があげられているように、企業の参入は地域の農業や経済を活性化させる可能性があるから、地方自治体などが支援することも考えられるね。たとえば、表2の建設業で、参入時の課題としてあげている企業が最も多い項目については、地方自治体の支援策として[ イ ]が考えられるよ。
Y:発表に向けて、企業の農業への参入のもたらすさまざまな影響についても考えてみようか。
[ ア ]に当てはまる記述
a 建設業において農業に参入する目的として最も多いのは、これまでとは異なる業種に事業を拡大することだね
b 食品製造業において農業に参入する目的として最も多いのは、製造する食品の生産や流通の経路を把握できるようにすることだね
[ イ ]に当てはまる記述
c 参入企業に対して、農作物の生産の際に先端技術を用いるスマート農業を導入するための資金を援助すること
d 参入企業と、その企業が生産した農作物を購入して利用する可能性のある他の企業とのマッチングの機会を設けること
e 参入企業が農作物の栽培技術を習得するための講習会を開催すること
①ア―aイ―c ②ア―aイ―d ③ア―aイ―e
④ア―bイ―c ⑤ア―bイ―d ⑥ア―bイ―e
問6解説
正解:②
・図表と本文及び選択肢の内容を照らし合わせるだけの、純粋な論理国語の問題である
表1の企業の参入の目的をみると、たとえば、[ ア ]。
・表1を見て、選択肢と照らし合わせればよい部分である
a 建設業において農業に参入する目的として最も多いのは、これまでとは異なる業種に事業を拡大することだね
・表1の建設業では、「経営の多角化」が80%で一位となっている
・よって、正文である
b 食品製造業において農業に参入する目的として最も多いのは、製造する食品の生産や流通の経路を把握できるようにすることだね
・表1の食品製造業では、「本業商品の付加価値化・差別化」が59%で一位である
・よって、誤文である
表2の建設業で、参入時の課題としてあげている企業が最も多い項目については、地方自治体の支援策として[ イ ]が考えられるよ。
・表2の建設業では、「販路の開拓」が83%で一位になっている
・これを頭に入れた上で、[ イ ]に適する選択肢を選べばよい
c 参入企業に対して、農作物の生産の際に先端技術を用いるスマート農業を導入するための資金を援助すること
・「販路の開拓」という課題に対して適した対策ではない
※むしろ、「農業技術の習得」や「労働力の確保」に適した対策である
d 参入企業と、その企業が生産した農作物を購入して利用する可能性のある他の企業とのマッチングの機会を設けること
・「販路の開拓」という課題に対し、適した対策である
・よって、dが正文であると考えられる。一応、eも見ておこう
e 参入企業が農作物の栽培技術を習得するための講習会を開催すること
・見ての通り、eもまた、「販路の開拓」に資するものではない
・むしろ、「農業技術の習得」という課題に適した対策である
・よって、やはりdが正文であると考えられるのである