令和四年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済
第1問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
国の法制度に関連して、生徒Xは、図書館で資料調査をする中で、国家権力のあり方に関するある思想家の著作に次のような記述があることを発見した。この記述から読みとれる内容として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。なお、一部表記を改めた箇所やふりがなを振った箇所がある。
およそ権力を有する人間がそれを濫用しがちなことは万代不易(ばんだいふえき)の経験である。彼は制限に出会うまで進む。…(中略)…
権力を濫用しえないようにするためには、事物の配置によって、権力が権力を抑止するようにしなければならない。誰も法律が義務づけていないことをなすように強制されず、また、法律が許していることをしないように強制されないような国制が存在しうるのである。…(中略)…
同一の人間あるいは同一の役職者団体において立法権力と執行権力とが結合されるとき、自由は全く存在しない。なぜなら、同一の君主または同一の元老院が暴君的な法律を作り、暴君的にそれを執行する恐れがありうるからである。
裁判権力が立法権力や執行権力と分離されていなければ、自由はやはり存在しない。もしこの権力が立法権力と結合されれば、公民の生命と自由に関する権力は恣意的となろう。なぜなら、裁判役が立法者となるからである。もしこの権力が執行権力と結合されれば、裁判役は圧制者の力をもちうるであろう。
もしも同一人間、または、貴族もしくは人民の有力者の同一の団体が、これら三つの権力、すなわち、法律を作る権力、公的な決定を執行する権力、犯罪や個人間の紛争を裁判する権力を行使するならば、すべては失われるであろう。
① 権力を恣意的に行使する統治に対する革命権の重要性を説いている。
② 権力を分立することにより公民の自由が保護されると説いている。
③ 権力をもつ者が権力を濫用するのではなく公民の自由を保護する傾向にあることを前提としている。
④ 権力をもつ者が人民から自然権を譲渡された絶対的な存在であることを前提としている。
問1解説
問2
地方自治に関連して、生徒は、日本国憲法が保障している地方自治について調べ、次の文章のようにまとめた。文章中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
日本国憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」としている。ここでいう地方自治の本旨は、団体自治と住民自治の原理で構成される。団体自治は、国から自立した団体が設立され、そこに十分な自治権が保障されなければならないとする[ ア ]的要請を意味するものである。住民自治は、地域社会の政治が住民の意思に基づいて行われなければならないとする[ イ ]的要請を意味するものである。国から地方公共団体への権限や財源の移譲、そして国の地方公共団体に対する関与を法律で限定することなどは、直接的には[ ウ ]の強化を意味するものということができる。
① ア 集権 イ 自由主義 ウ 住民自治
② ア 集権 イ 自由主義 ウ 団体自治
③ ア 集権 イ 民主主義 ウ 住民自治
④ ア 集権 イ 民主主義 ウ 団体自治
⑤ ア 分権 イ 自由主義 ウ 住民自治
⑥ ア 分権 イ 自由主義 ウ 団体自治
⑦ ア 分権 イ 民主主義 ウ 住民自治
⑧ ア 分権 イ 民主主義 ウ 団体自治
問2解説
正解:⑧
復習用資料:政治分野第三章/地方自治
問3
K寺の門前町として栄えたJ市に関連して、J市とK寺のかかわり合いに関心がある生徒は、「政治・経済」の授業で学習した政教分離原則のことを思い出し、政教分離原則に関する最高裁判所の判例について調べてみた。最高裁判所の判例に関する次の記述ア~ウのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
ア 津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教的活動にあたるとされた。
イ 愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
ウ 空知太(そらちぶと)神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に市有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問3解説
正解:⑥
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(自由権)
・非常に基本的な、精神的自由(の中でも信教の自由)の知識についての問題である
・こういう問題は、是非とも落とさないようにしてほしい
⇒何度でも言うが、受験は「難問奇問がいくら解けるか」ではなく「基本的な問題をどれだけ落とさないか」が鍵である
ア 津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教的活動にあたるとされた。
・津地鎮祭訴訟は、最高裁で合憲判決が出ている
⇒地鎮祭ぐらいどこの誰でもやってるでしょ、という形
・よって、アは誤文である
イ 愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
・愛媛県靖国神社玉串料訴訟は、最高裁で違憲判決が出ている
⇒違憲判決を出すのに反対だった裁判官が「津地鎮祭訴訟と何が違うんだよ。靖国神社ってビッグネームにビビってるだけじゃねーのか(大意)」とキレキレ意見を出した判決である
・よって、イは正文である
ウ 空知太(そらちぶと)神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に市有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
・空知太神社訴訟の最高裁判決では、違憲判決が出ている
⇒「公有地を無償で神社へ貸与するのは違憲」とした裁判。同時に「公有地を無償で神社へ譲渡するのは合憲」とした裁判でもあり、傍から見ると「なんでやねんねんねん」となる裁判である
・よって、ウは正文である
問4
空き家について、生徒Xは、国土交通省のWebページで「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」という)の内容を調べ、次のメモを作成した。Xは生徒Yと、メモをみながら後の会話をしている。後の会話文中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを後の①~⑥のうちから一つ選べ。
メモ
1.「空家等」(空家法第2条第1項)
・建築物やそれに附属する工作物で居住等のために使用されていないことが常態であるもの、および、その敷地。
2.「特定空家等」:次の状態にある空家等(空家法第2条第2項)
(a)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(b)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(c)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
(d)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
3.特定空家等に対する措置(空家法第14条)
・特定空家等の所有者等に対しては、市町村長は、特定空家等を取り除いたり、修繕したりするなど、必要な措置をとるよう助言や指導、勧告、命令をすることができる。
・上記(a)または(b)の状態にない特定空家等については、建築物を取り除くよう助言や指導、勧告、命令をすることはできない。
X:空家法によると、市町村長は、所有者に対し建築物を取り除くよう命令し、従わない場合は代わりに建築物を取り除くこともできるみたいだよ。
Y:そうなんだ。でも、市町村長が勝手に私人の所有する建築物を取り除いてしまってもよいのかな。
X:所有権といえども、絶対的なものとはいえないよ。日本国憲法第29条でも、財産権の内容は「[ ア ]」に適合するように法律で定められるものとされているね。空家法は所有権を尊重して、所有者に対し必要な措置をとるよう助言や指導、それから勧告をすることを原則としているし、建築物を取り除くよう命令できる場合を限定もしているよ。でも、空家法が定めているように[ イ ]には、所有者は、建築物を取り除かれることになっても仕方ないんじゃないかな。
Y:所有権には所有物を適切に管理する責任が伴うということだね。
① ア 公共の福祉 イ 周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合
② ア 公共の福祉 イ 周辺の景観を著しく損なっている場合
③ ア 公共の福祉 イ 土地の有効利用のための必要性がある場合
④ ア 公序良俗 イ 周辺住民の生命や身体に対する危険がある場合
⑤ ア 公序良俗 イ 周辺の景観を著しく損なっている場合
⑥ ア 公序良俗 イ 土地の有効利用のための必要性がある場合
問4解説
問5
地元の農産物に関心をもった生徒は、日本の農業に関する法制度の変遷について調べ、次の表を作成した。表中の空欄[ ア ]~[ エ ]には、後の記述①~④のいずれかが入る。表中の空欄ウに当てはまる記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
1952年 農地法の制定〔内容:[ ア ]〕
1961年 農業基本法の制定〔内容:[ イ ]〕
1995年 食糧管理制度廃止
1999年 食料・農業・農村基本法の制定〔内容:[ ウ ]〕
2009年 農地法の改正〔内容:[ エ ]〕
①農業と工業の生産性の格差を縮小するため、米作から畜産や果樹などへの農業生産の選択的拡大がめざされることになった。
②国民生活の安定向上のため、食料の安定供給の確保や農業の多面的機能の発揮がめざされることになった。
③地主制の復活を防止するため、農地の所有、賃貸、販売に対して厳しい規制が設けられた。
④農地の有効利用を促進するため、一般法人による農地の賃貸借に対する規制が緩和された。
問5解説
問6
民泊について、生徒Xと生徒は次のような会話をしている。次の会話文中の空欄[ ア ][ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なもの後の①~④のうちから一つ選べ。
X:住宅宿泊事業法が制定されて、住宅を宿泊事業に用いる民泊が解禁されたと聞いたけど、うちのJ市も空き家を活用した民泊を推進しているらしいね。でも、同じく宿泊施設であるホテルや旅館の経営者の一部からは、経営への悪影響を懸念して規制をすべきという声も出ているらしいよ。
Y:[ ア ]を支持する考えからすれば、民泊がたくさんできると、利用者の選択肢が増え利便性が上がるだろうし、将来的には観光客の増加と地域経済の活性化につながって、いいことなんだけどね。
X:問題もあるんだよ。たとえば、閑静な住宅街やマンションの中に民泊ができたら、夜間の騒音とか、周辺住民とトラブルが生じることがあるよね。彼らの生活環境を守るための対策が必要じゃないかな。
Y:民泊の営業中に実際に周囲に迷惑をかけているなら個別に対処しなければならないね。でも、自身の所有する住宅で民泊を営むこと自体は財産権や営業の自由にかかわることだし、利用者の選択肢を狭めてはいけないね。だから、住宅所有者が民泊事業に新たに参入することを制限するのはだめだよ。その意味で、[ イ ]ことには反対だよ。
① ア 規制強化 イ 住宅街において民泊事業を始めることを地方議会が条例で禁止する
② ア 規制強化 イ 夜間の激しい騒音を改善するよう民泊事業者に行政が命令する
③ ア 規制緩和 イ 住宅街において民泊事業を始めることを地方議会が条例で禁止する
④ ア 規制緩和 イ 夜間の激しい騒音を改善するよう民泊事業者に行政が命令する
問6解説
正解:③
問7
法律について、生徒Xと生徒は、さらに民泊に関連する法律の内容を調べた上で、次のような会話をしている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:調べてみたら民泊を営むにも利用するにもいろんな法律がかかわるんだね。
Y:そうだね。まず民泊の解禁を定めた住宅宿泊事業法があるけど、ほかにも、利用料金を支払って民泊を利用する契約には[ ア ]が適用されるね。ちなみに、私人間の関係を規律する[ ア ]は、公法か私法かという分類からすれば[ イ ]に該当するね。
X:また、民泊を営業する人は事業者だから、不当な勧誘による契約の取消しを可能にしたり、消費者に一方的に不利な条項の無効を定めたりする[ ウ ]も関連するよ。
Y:一つの事項についてもさまざまな法律が重層的にかかわることが確認できたね。
① ア 民法 イ 私法 ウ 消費者契約法
② ア 民法 イ 私法 ウ 独占禁止法
③ ア 民法 イ 公法 ウ 消費者契約法
④ ア 民法 イ 公法 ウ 独占禁止法
⑤ ア 刑法 イ 私法 ウ 消費者契約法
⑥ ア 刑法 イ 私法 ウ 独占禁止法
⑦ ア 刑法 イ 公法 ウ 消費者契約法
⑧ ア 刑法 イ 公法 ウ 独占禁止法
問7解説
問8
立法過程について、生徒Xは、「政治・経済」の教科書を読み、日本の立法過程について整理した。日本の立法過程に関する記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①国会議員が予算を伴わない法律案を発議するには、衆議院では議員20人以上、参議院では議員10人以上の賛成を要する。
②法律案が提出されると、原則として、関係する委員会に付託され委員会の審議を経てから本会議で審議されることになる。
③参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後、60日以内に議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。
④国会で可決された法律には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
問8解説
第2問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
日本における企業に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①自社の株価の低下を招くような社内の行為をその会社の株主が監視することを、リストラクチャリングという。
②ある企業の1年間の利潤のうち、株主への分配率が上昇すると内部留保への配分率も上昇し、企業は設備投資を増やすようになる。
③世界的に拡大した感染症による経済的影響として、いわゆる巣ごもり需要の増加に対応することで2020年に売上を伸ばした企業があった。
④1990年代のバブル経済崩壊後、会社法が制定され、株式会社設立のための最低資本金額が引き上げられた。
問1解説
正解:③
問2
関係図に関連して、生徒Xと生徒Yは、白板における関係図の書き方を参考に話し合いを行い、自主学習として環境問題を関連させた経済主体の関係図を作成した。たとえば、次の会話文中の下線部の内容は、後の関係図中の消費者と企業の間の矢印(→←)に対応している。会話の内容と整合する関係図として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:企業の工場から汚染物質が排出されるような図を考えればいいかな。
V:それもあるけど、需要側の消費者が供給側の企業と、市場で財・サービスを取引するから生産が行われるわけで、需要側にも問題があると思うよ。
X:そうだね。でも、両方を書くと問題の焦点がわかりにくくなるし、今回の学習では、需要側からの汚染物質の問題は省いて、供給側からの汚染物質の排出と供給側への政府の対策を作図するってことでいいんじゃないかな。政府が供給側を対象に対策をしたというニュースもあったよね。
Y:いいね。私もみたよ。あと、その矢印のそばに書く語句はニュースに近いものを書くといいかもね。政策の目的も考慮されやすい語句がいいかな。
X:うん。加えて、市民で構成されるNPOなどによる、供給側への監視も大事になってくるんじゃないかな。
問2解説
正解:④
復習用資料:経済分野第一章/市場の失敗
問3
土地開発に関連して、生徒Xは、クラスでの発表において、企業の土地利用を事例にして、機会費用の考え方とその適用例をまとめることにした。Xが作成した、次のメモ中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
◇機会費用の考え方:ある選択肢を選んだとき、もし他の選択肢を選んでいたら得られたであろう利益のうち、最大のもの。
◇事例の内容と条件:ある限られた土地を公園、駐車場、宅地のいずれかとして利用する。利用によって企業が得る利益は、駐車場が最も大きく、次いで公園、宅地の順である。なお、各利用形態の整備費用は考慮しない。
◇機会費用の考え方の適用例:ある土地をすべて駐車場として利用した場合、[ ア ]の関係から他の用途に利用できないため、そのときの機会費用は、[ イ ]を選択したときの利益に等しい。
① ア トレード・オフ イ 公園
② ア トレード・オフ イ 宅地
③ ア ポリシー・ミックス イ 公園
④ ア ポリシー・ミックス イ 宅地
問3解説
正解:①
問4
金融政策に関連して、生徒Xと生徒は、日本銀行による金融政策の主な手段である公開市場操作(オープンマーケット・オペレーション)について話し合った。次の会話文中の空欄[ ア ][ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:日本銀行は、買いオペレーションや売りオペレーションによって、個人や一般企業が保有する通貨量を変動させているようだね。
Y:そうかな? たしかに、買いオペは金融[ ア ]の効果が期待できると言われているけど、日本銀行が市中銀行から国債を買い入れると、確実に増加するのは市中銀行が保有する日銀当座預金の残高だね。
X:それは個人や一般企業が保有する通貨量、つまり[ イ ]が増加すると考えてよいのかな。
Y:[ イ ]が増加するかどうかは、個人や一般企業の資金需要と市中銀行の貸出が増加するかどうかによるよ。
X:それなら、日本銀行の公開市場操作は[ イ ]を直接的に増減させるものではないということだね。
① ア 緩和 イ マネーストック ② ア 緩和 イ マネタリーベース
③ ア 引締 イ マネーストック ④ ア 引締 イ マネタリーベース
問4解説
・共テ恒例「そんな生徒いねーよ」シリーズの中でも特に実在性が低い回
⇒生徒Xの冒頭の「買いオペ売りオペでマネーストックが変動するんだね」までは「ああ、この生徒試験勉強中なのかな?」ぐらいで済むが、そこですかさず「そうかな?」とか言い出す生徒は絶対にいない。ここでクスッと来たら、君も共テのヘビーユーザー言えるだろう(?)
・そこを抜きにすると、金融政策と公開市場操作の知識があれば解ける基本的な知識問題になっている
・だからこそ、こういう問題は落とさないようにしたい
⇒何度でも言うが、受験は「難問奇問がいくら解けるか」ではなく「基本的な問題をどれだけ落とさないか」が鍵である
買いオペは金融[ ア ]の効果が期待できると言われている
・ここを解く上で一番いいのは、ちゃんと覚えている事である
・「買いオペは通貨流通量を増やす、つまり金融緩和政策」と覚えていれば一発である
・よって空欄アは「緩和」だと、覚えていればそれで終わりなのだ
・ただ、そこまで完璧に覚えていなくても解けると言えば解ける
・「金融緩和は通貨流通量を増やす」と公開市場操作の仕組みさえ覚えていれば導出できるからである
・公開市場操作では、日本銀行が民間の金融機関と有価証券を売り買いする
・買いオペであれば、日本銀行が買う側である
・日本銀行は有価証券を買い、カネを民間の金融機関へ支払う
・これで日本銀行からカネが民間へ流れ、通貨流通量が増える、という訳である
・よって買いオペは金融緩和(通貨流通量増加)…と、答えを導出できるのだ
・政治経済は、「原理原則だけ覚えておいて、細かい事はその場で導出する」が有効な科目である
・丸暗記という非効率な勉強はやめて、賢く効率的に勉強しよう
それは個人や一般企業が保有する通貨量、つまり[ イ ]が増加すると考えてよいのかな。
・一方、こちらはもう覚えているか覚えていないかだけの、完全な知識問題である
・選択肢はマネーストックとマネタリーベースだが、この両者は全然違う単語なのだ
マネーストック:市場に流通する貨幣の総量(どこまでを「貨幣」とするかで数え方は色々ある)
マネタリーベース:市場に存在する現金全部+市中銀行の日銀口座全額
・文脈から考えれば、空欄イは明らかにマネーストックである
⇒空欄イが初登場する直前の会話文でも、生徒Yが、買いオペは所詮「市中銀行が保有する日銀当座預金の残高」みたいな事を言っている。この文脈で、市中銀行の日銀口座全額が含まれるマネタリーベースが空欄イに入る事はありえない
問5
融資に関連して、生徒たちは、次の図1と図2を用いて市中銀行の貸出業務を学習することになった。これらの図は、すべての市中銀行の資産、負債、純資産を一つにまとめた上で、貸出前と貸出後を比較したものである。これらの図から読みとれる内容を示した後のメモを踏まえて、市中銀行の貸出業務に関する記述として最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ
個人や一般企業が銀行から借り入れると、市中銀行は「新規の貸出」に対応した「新規の預金」を設定し、借り手の預金が増加する。他方で借り手が銀行に返済すると、市中銀行の貸出と借り手の預金が同時に減少する。
①市中銀行は「すでにある預金」を個人や一般企業に貸し出すため、銀行貸出は市中銀行の資産を増加させ負債を減少させる。
②市中銀行は「すでにある預金」を個人や一般企業に貸し出すため、銀行貸出は市中銀行の資産を減少させ負債を増加させる。
③市中銀行は「新規の預金」を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を減少させる。
④市中銀行は「新規の預金」を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を増加させる。
問5解説
問6
経営能力に関連して、生徒たちは労働問題について学ぶため、事前学習として、次の図のような求人情報の例を作成し、問題点がないか話し合った。図中の下線部ア〜ウについて、企業がこの求人情報のとおりに労働者と労働契約を結んだ場合、雇用に関係する日本の法律に抵触するものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
求人情報#○○△△××
○○○○株式会社【販売スタッフ】
●パート・アルバイト
ア労働時間:1日当たり6時間、週6日
イ雇用契約期間:3年
時給:1200円 交通費:自己負担
ウ有給休暇:付与なし
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問6解説
正解:③
復習用資料:経済分野第二章/労働問題
・労働問題でよくある、「××は労働基準法で禁じられている」系知識に関する問題
・ただ、下線部イに関してはかなり細かい知識であり、常識を問うてくる問題とも言える
ア 労働時間:1日当たり6時間、週6日
・労働基準法では、法定労働時間という名で、労働時間の上限が定められている
・即ち、一日八時間、週四十時間が上限であり、経営者は、この上限を超えて従業員を働かせてはならない
・この下線部アの場合、一日六時間の週六労働なので、6×6=36、つまり週三十六時間労働となる
・よって、アは合法である
イ 雇用契約期間:3年
・労働基準法では、有期雇用契約の契約期間上限を三年としている
・よって、下線部イは合法である
※ただ、正直この次元の細かい知識は、公共や政治経済では扱わないものである。「アルバイトなんて普通は一年契約なのに、この店、三年は契約してくれるのか。太っ腹だなぁ」という常識的な判断を求めている箇所の可能性がある
ウ 有給休暇:付与なし
・労働基準法では、雇用形態に関わらず有給休暇の付与を義務として定めている
・アルバイト、パートに有給休暇を与えないのは、現実に横行している労働基準法違反である
・よって、下線部ウは違法である
問7
※原題は二重下線を使っていたが通常の下線に改めた
災害復旧に関連して、生徒Xと生徒は災害の影響に関する次の会話をしている。
X:この間の災害で被害を受けた地場産品の野菜の価格が上がって困っているよ。おいしいから毎日必ず食べてたんだ。復旧のめどはたったらしいけど、元に戻るには時間がかかるらしくて。早く元に戻ってくれないかな。
Y:この図をみてよ。災害前は右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線がE点で交わっていたと仮定すると、災害の影響で供給曲線が図の元の位置から一時的にこんな位置に変わった状況だね。ということは、需要曲線が災害前の位置のままとして、供給曲線が元の位置に自然に戻るまでの間に[ ア ]といったような対策がとられれば、より早く元の価格に戻っていくんじゃないかな。
Xの発言に対し、Yは災害後の供給曲線を図中のSa線かSb線のいずれかと推測し、下線部を実現するためのE点までの調整方策を会話文中の空欄[ ア ]で述べている。[ ア ]に当てはまる発言として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 野菜の購入時にキャッシュレス決済で使える電子ポイントを付与する
② 野菜の購入量が増えるように消費者に宣伝を行う
③ 原材料の購入に使える助成金を生産者に支給する
④ 原材料の使用量に応じて課徴金を課す
問7解説
正解:③
復習用資料:経済分野第一章/需要供給曲線
問8
物価に関連して、生徒たちは、次の図と図に関する説明を用いて、各国の物価水準の比率から外国為替レートを理論的に求める購買力平価説を学んだ。この説に基づいて算出される外国為替レート(1ドル=α円)を基準として考えるとき、20××年○月△日における実際の外国為替レートの状態を表す記述として正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
【図に関する説明】
・両国で販売されている「SEIKEIバーガー」はまったく同じ商品であり、それぞれの販売価格は、同一年月日(20××年○月△日)のもので時差は考えない。
・両国の物価水準は「SEIKEIバーガー」の販売価格でそれぞれ代表される。
①実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円安ドル高である。
②実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円高ドル安である。
③実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円安ドル高である。
④実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円高ドル安である。
問8解説
第3問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
家計に関連して、生徒Xは、次のXの小遣い帳(2019年11月)をもとに1か月のお金の動きを、後の水槽を使った模式図で表すことにした。Xは、この1か月間について、お金が流れる方向を矢印に、お金の量を水量に見立て蛇口から水槽に水が入り、出口から出ていく模式図を作成した。小遣い帳と模式図中の下線部ア~オの五つの量をフローとストックに分類したとき、フローであるものをすべて選び、その組合せとして正しいものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
①アとイ ②アとウ ③イとオ ④ウとエ
⑤アとイとオ ⑥アとウとエ ⑦イとエとオ ⑧ウとエとオ
問1解説
・「そもそもフローとストックとは何か?」を理解していれば解ける良問
・例えばフローは「一定期間に流れた量」を指す
⇒つまり、「この一年間で、国民がどれだけ稼いだか」を示すGNPはフローである
フロー | ストック | |
---|---|---|
意味 | 一定期間に流れた量 | ある一時点に於ける貯蔵量 |
例 | 国民所得(GNP/GDP等) | 国富 |
・つまるところ、通帳の「残高」や水槽の「水位」がストックである
・そして、通帳の「収入」「支出」や水槽の「流れる水」がフローである
・よって、通帳のアとイはフローである
・また、水槽のオはフロー、ウとエはストックである
問2
雇用環境に関連して、生徒Yは、日本の失業について詳しく知りたいと考え、「労働力調査」の「用語の定義」から15歳以上人口の分類を調べ、次の資料にまとめた。その上で、Yはある月の月末1週間の状況として、後のA~Cの3人のモデルケースを作成し、3人の就業状態を分類した。資料中の空欄[ ア ]に入る語句と空欄イに入る分類の図の組合せとして正しいものを、後の①~③のうちから一つ選べ。
- 15歳以上人口は、労働力人口と非労働力人口からなる。
- この15歳以上人口は、生産年齢人口と[ ア ]
- 労働力人口は、就業者と完全失業者からなる。(調査週間は月末1週間)
- 就業者は、従業者と休業者からなる。
- 従業者は、収入を伴う仕事を1時間以上した者。
- 休業者は、仕事をもちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかったものの、賃金等の支払いを受けた者、または受けることになっている者。
- 完全失業者は、次の三つの条件を満たす者。
- 仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった。
- 仕事があればすぐに就くことができる。
- 調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。
- 就業者は、従業者と休業者からなる。
⇒これらに従った3人のモデルケースの正しい分類は[ イ ]である。
※非労働力人口は、通学、家事、高齢などの理由で仕事をしていない者。
[ ア ]に入る語句
a一致する b一致しない
①ア―a イ―図1 ②ア―a イ―図2 ③ア―a イ―図3 ④ア―a イ―図4
⑤ア―b イ―図1 ⑥ア―b イ―図2 ⑦ア―b イ―図3 ⑧ア―b イ―図4
問2解説
正解:⑦
・かなり難しい国語の問題である
・アで常識を問うてきた上で、イで読解力を問うてくる二段構えの構成になっている
・しかも解くのに時間がかかる…と、これ政治経済で出していい問題なのかな……
●15歳以上人口は、労働力人口と非労働力人口からなる。
この15歳以上人口は、生産年齢人口と[ ア ]
●労働力人口は、就業者と完全失業者からなる
・まずは常識を聞いてくるところである
・「ナントカカントカ人口」が複数出てくるが、常識に従ってその意味を類推する必要がある
・「15歳以上人口」は、「15歳以上の人間が何人いるか」だろう
・その後、「労働力人口」と「非労働力人口」という単語が出てくるが、これは目くらましである
・アは、あくまで「15歳以上人口」が「生産年齢人口」と同じかどうかを聞いてきている
・しかも「15歳以上人口」はどういうものかは、名前を見れば大体類推できる
・だからここで、「労働力人口」と「非労働力人口」についてウンウン悩む必要はない
・むしろそのせいで問題を誤る可能性が高く、ここは一旦無視しよう
・では、「生産年齢人口」は何か?
・これはこの後二度と出てこない単語であり、意味は類推するしかない
・ここで、ちょっと考えてみよう
・例えば、三十歳は「生産年齢人口」と言えそうだろうか?
・生産と言うと工場で機械を動かして商品を作るとかやっていそうだが、三十歳ならやっていそうである
・続いて、六十歳は「生産年齢人口」と言えそうだろうか?
・一昔前なら定年退職で引退して年金生活に入り始める歳であり、微妙そうである
・では、百歳は「生産年齢人口」と言えそうだろうか?
・百歳を工場で働かせる…老人虐待としか思えないだろう
・このように考えてくると、「生産年齢人口」が何か見えてくる
・要は、生産活動(経済活動の中でも商品を作る側の活動)を主に担う年齢の人間が何人いるか、である
・となると、「生産年齢人口」は「15歳以上人口」とは異なる、という事になる
・何せ、九十歳も百歳も百十歳も、「15歳以上」なのだ
[ ア ]に入る語句
a一致する b一致しない
・よって、アはb「一致しない」である
●労働力人口は、就業者と完全失業者からなる。(調査週間は月末1週間)
○就業者は、従業者と休業者からなる。
・従業者は、収入を伴う仕事を1時間以上した者。
・休業者は、仕事をもちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかったものの、賃金等の支払いを受けた者、または受けることになっている者。
・続いてイを考えていこう。まずはABCのどれが就業者か割り出してみよう
・Cを見ると、「調査週間中に1日臨時の仕事を得た」とある
・そして就業者の一種たる従業者は「収入を伴う仕事を1時間以上した者」である
・となると、Cは就業者の可能性が高い
⇒臨時の日雇い仕事とは言え、1日仕事をしている訳で、まず間違いなく1時間以上仕事をしている
⇒むろん、「でもこの“1日臨時の仕事”って、収入を伴うとは書いてないな…」「いやでも普通、収入を伴わないものを仕事とは言わんな…」「うーん微妙」となるのは事実。こういう時は一旦、「多分Cが就業者じゃない?」と考えながら次に行ってみよう
○完全失業者は、次の三つの条件を満たす者。
・仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった。
・仕事があればすぐに就くことができる。
・調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)。
・次は、完全失業者を探してみよう
・AもBも仕事はしておらず、また求職活動もしているので、どちらも完全失業者に該当しそうに見える
・しかしよく見ると、Bが求職活動していたのは以前の話であり、今回の調査週間中はしていない
・一方、Aはアルバイトに応募している
・となると、Aは完全失業者の可能性が高い
※非労働力人口は、通学、家事、高齢などの理由で仕事をしていない者。
・最後に、非労働力人口を見てみよう
・AもBも現在仕事をしていないのは同じ、また勉強しているのも同じである
※Aは大学生、Bは資格取得の勉強中
・そして既に見たように、Aは求職活動をしており、Bは勉強に集中している
・「通学、家事、高齢などの理由で仕事をしていない」により適合するのは、Bと言えるだろう
・となると、Bは非労働力人口の可能性が高い
・よって、Cが就業者、Aが完全失業者、Bが非労働力人口であると考えられるのである
問3
物価上昇に関連して、生徒Xは、物価の変動が国民生活に与える影響に関心をもち、その例として、インフレ(インフレーション)のケースについて調べ、次のメモにまとめた。メモ中の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
物価の変動は私たちの消費に影響を与える。私たちが買い物をするときを考え、名目の消費支出額を一定とする。すべての財・サービスの価格が同じ比率で変化したとすると、物価上昇前と比較して物価上昇後に消費できる数量は[ ア ]することになる。
物価の変動は、債権者や債務者に対しても影響を及ぼす。ある一定額のお金の貸借が行われている状況を想定する。金利が変化しなかったとして、貸借が行われた時点では想定されていなかったインフレが発生した場合について考える。このとき、インフレが発生しなかった場合と比較すると、債権者にとって経済的に[ イ ]に、債務者にとって経済的に[ ウ ]になる。
これは、支払われる金額が事前に確定しており、その後インフレが進行した場合、この債権債務の価値が実質的に[ エ ]することになるからである。
①ア 増加 イ 有利 ウ 不利 エ 上昇
②ア 増加 イ 有利 ウ 不利 エ 下落
③ア 増加 イ 不利 ウ 有利 エ 上昇
④ア 増加 イ 不利 ウ 有利 エ 下落
⑤ア 減少 イ 有利 ウ 不利 エ 上昇
⑥ア 減少 イ 有利 ウ 不利 エ 下落
⑦ア 減少 イ 不利 ウ 有利 エ 上昇
⑧ア 減少 イ 不利 ウ 有利 エ 下落
問3解説
正解:⑧
復習用資料:経済分野第一章/景気変動とインフレ、デフレ
・インフレとデフレがどのような現象か、という話の理解を問う良問
・きちんと理解していれば簡単に解けるし、ただの丸暗記だと大変だし、というよくできた問題である
物価の変動は私たちの消費に影響を与える。
・まさにその通りで、同じ商品でも高くなればあまり買わなくなるし、安くなれば沢山買うものである
・そして物価が上昇する事をインフレ、低下する事をデフレと呼ぶ訳である
私たちが買い物をするときを考え、名目の消費支出額を一定とする。すべての財・サービスの価格が同じ比率で変化したとすると、物価上昇前と比較して物価上昇後に消費できる数量は[ ア ]することになる。
・ここでは、仮定が二つ述べられている
仮定1:名目の消費支出額を一定とする
⇒ 買物に使えるカネは一定とする
仮定2:すべての財・サービスの価格が同じ比率で変化した
⇒ 仮にインフレ率10%なら、全ての商品、及びサービスの価格が10%上昇した…とする
・この仮定の上で、物価上昇、つまりインフレが起きたらどうなるか?
・買物に使えるカネの額は変わらず、商品の値段だけ上がっているのだから、勿論、買える数が減るのだ
・よって、空欄アは「減少」である
物価の変動は、債権者や債務者に対しても影響を及ぼす。ある一定額のお金の貸借が行われている状況を想定する。
・ここから、「インフレ、デフレとはどういう現象か?」の理解が問われる
・既に見たように、インフレは物価上昇、デフレは物価下落である
・だが、インフレとデフレの理解がこれで止まっているようでは、充分ではない
・即ち、以下を抑えておく必要がある
インフレ:「物価上昇・貨幣価値下落」「需要過剰・供給過少」
デフレ:「物価下落・貨幣価値上昇」「需要過少・供給過剰」
・これさえ理解できていれば、後は簡単である
・インフレ状況下では、物価上昇の裏で貨幣価値が下落する
・つまりインフレ発生前の百万円とインフレ進行後の百万円であれば、後者の方が、価値が低い
・換言すれば、インフレ発生前の百万円は沢山モノを買えるが、インフレ進行後は買えるモノが減る
・だからインフレ状況下では、カネは貯金するより使った方がいい
・同様に、インフレ状況下では、カネはどんどん借りた方がいい
・年々カネの価値は減っていくのだから、カネの価値が高い今の内に、借りてでも使った方が得なのである
ある一定額のお金の貸借が行われている状況を想定する。(中略)インフレが発生した場合(中略)、債権者にとって経済的に[ イ ]に、債務者にとって経済的に[ ウ ]になる。
これは、支払われる金額が事前に確定しており、その後インフレが進行した場合、この債権債務の価値が実質的に[ エ ]することになるからである。
・先程解説した辺りの話が書かれているのが上記引用文である
・インフレ状況下でカネを借りる側(債務者)が得になり、カネを貸す側が損となる
・よって、空欄イは「不利」、空欄ウは「有利」である
・その理由は先に見た通り、インフレが進行するとカネの価値が下がるからである
・よって、空欄エは「下落」である
問4
予算審議に関連して、日本の国会の活動に関心をもった生徒は、2020年における予算審議を中心に国会の活動を調べ、その一部を次の表にまとめた。表中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして正しいものを後の①~⑥のうちから一つ選べ。
① ア 各省庁 イ 暫定予算 ② ア 各省庁 イ 補正予算
③ ア 財務省 イ 暫定予算 ④ ア 財務省 イ 補正予算
⑤ ア 内閣 イ 暫定予算 ⑥ ア 内閣 イ 補正予算
問4解説
問5
税制改革に関連して、日本では、2019年に消費税率が10パーセントに引き上げられ、それと同時に、食料品(飲料などを含む)への8パーセントの軽減税率が導入された。そこで、生徒Xは、その際に話題となった消費税の逆進性について考えるために、次の表を作成して整理してみることにした。具体的には、可処分所得が300万円の個人A、500万円の個人B、800万円の個人Cの三つのタイプを考えて表を作成した。この表から読みとれる消費税の逆進性に関する記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
①可処分所得アが高い個人ほど、表中カの額が多く、消費税の逆進性の一例となっている。
②可処分所得アが高い個人ほど、可処分所得に占める表中力の割合が低く、消費税の逆進性の一例となっている。
③可処分所得アが高い個人ほど、表中オの値が高く、消費税の逆進性の一例となっている。
④可処分所得アが高い個人ほど、可処分所得に占める表中キの割合が高く、消費税の逆進性の一例となっている。
問5解説
正解:②
問6
国際機関に関連して、生徒Xと生徒Yは、国際連合に関連する国際機関について調べた。次の国際機関に関する記述ア~ウのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
ア WHOは、世界の人々の保健水準の向上や国際的な保健事業の推進に関する活動を行っている。
イ UNICEFは、発展途上国を中心に子どもの教育や権利保障に関する活動を行っている。
ウ UNHCRは、迫害や紛争などによって生じる難民の保護に関する活動を行っている。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ ⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問6解説
正解:⑦
復習用資料:政治分野第四章/国際連合
問7
新興国通貨に関連して、生徒たちは、アジア通貨危機の発端となったタイについて関心をもった。そこで、タイの通貨バーツと当時のタイの状況および通貨危機についての要点を、次のようにメモにまとめた。また、アジア通貨危機が起こった1997年の前後5年にあたる1992年から2002年のタイの外国為替レート(1米ドルあたりのバーツ)、経常収支、外貨準備の値を調べ、その推移を作図した。生徒たちが作成した図として適当なものを、外国為替レートについては後の図アか図イ、経常収支については後の図ウか図エ、外貨準備については後の図オか図カより選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
メモ
○アジア通貨危機の前、タイのバーツも含めて、アジアの通貨の中には市場においてヘッジファンドなどによる売り圧力がかけられているものがあった。タイ政府は、通貨の下落を阻止するために、外貨準備を用いて買い支えようとしたが、結局は通貨危機に陥ってしまった。
○経済基盤が脆弱で、経常収支赤字が継続している国は、通貨危機が起こりやすいといわれている。
外国為替レート | 経常収支 | 外貨準備 | |
---|---|---|---|
① | 図ア | 図ウ | 図オ |
② | 図ア | 図ウ | 図カ |
③ | 図ア | 図エ | 図オ |
④ | 図ア | 図エ | 図カ |
⑤ | 図イ | 図ウ | 図オ |
⑥ | 図イ | 図ウ | 図カ |
⑦ | 図イ | 図エ | 図オ |
⑧ | 図イ | 図エ | 図カ |
問7解説
問8
生徒Xと生徒Yが、授業後に経済連携について議論した。次の会話文中の空欄[ ア ][ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:最近は、世界のいろんな地域での経済連携についての話題が、ニュースで取り上げられることが多いね。
Y:そうだね。経済分野では最近、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)のような条約を結ぶ動きがみられるね。日本も2018年には、EU(欧州連合)との間にEPAを締結したし、[ ア ]に参加したね。[ ア ]は、アメリカが離脱した後に成立したものだよ。
X:でも、このような動きは、WTO(世界貿易機関)を中心とする世界の多角的貿易体制をかえって損ねたりはしないかな。GATT(関税及び貿易に関する一般協定)は、ある締約国に貿易上有利な条件を与えた場合に他の締約国にもそれを適用する[ イ ]を定めているよ。このような仕組みを活使用して、円滑な貿易を推進した方がいいような気がするなあ。
Y:本当にそうかな。FTAやEPAといったそれぞれの国や地域の実情に応じたきめの細かい仕組みを整えていくことは、結果として世界の自由貿易の促進につながると思うよ。これらは、WTOを中心とする世界の多角的貿易体制を補完するものと考えていいんじゃないかな。
① ア TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)
イ 最恵国待遇原則
② ア TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)
イ 内国民待遇原則
③ ア APEC(アジア太平洋経済協力会議)
イ 最恵国待遇原則
④ ア APEC(アジア太平洋経済協力会議)
イ 内国民待遇原則
問8解説
第4問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Xと生徒Yは戦後日本の自治制度と地域社会について調べた。次のA~Dは、第二次世界大戦後の日本の地方自治をめぐって起きた出来事に関する記述である。これらの出来事を古い順に並べたとき、3番目にくるものとして正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
A 地方分権改革が進む中で行財政の効率化などを図るために市町村合併が推進され、市町村の数が減少し、初めて1,700台になった。
B 公害が深刻化し住民運動が活発になったことなどを背景として、東京都をはじめとして都市部を中心に日本社会党や日本共産党などの支援を受けた候補者が首長に当選し、革新自治体が誕生した。
C 地方自治の本旨に基づき地方自治体の組織や運営に関する事項を定めるために地方自治法が制定され、住民が知事を選挙で直接選出できることが定められた。
D 大都市地域特別区設置法に基づいて、政令指定都市である大阪市を廃止して新たに特別区を設置することの賛否を問う住民投票が複数回実施された。
①A
②B
③C
④D
問1解説
問2
生徒Xと生徒は、地方分権一括法(1999年成立)に関する資料をみながら会話をしている。次の会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:この時の地方分権改革で、国と地方自治体の関係を[ ア ]の関係としたんだね。
Y:[ ア ]の関係にするため、機関委任事務制度の廃止が行われたんだよね。たとえば、都市計画の決定は、[ イ ]とされたんだよね。
X:[ ア ]の関係だとして、地方自治体に対する国の関与をめぐって、国と地方自治体の考え方が対立することはないのかな。
Y:実際あるんだよ。新聞で読んだけど、地方自治法上の国の関与について不服があるとき、地方自治体は[ ウ ]に審査の申出ができるよ。申出があったら[ ウ ]が審査し、国の機関に勧告することもあるんだって。ふるさと納税制度をめぐる対立でも利用されたよ。
① ア 対等・協力 イ 法定受託事務 ウ 国地方係争処理委員会
② ア 対等・協力 イ 法定受託事務 ウ 地方裁判所
③ ア 対等・協力 イ 自治事務 ウ 国地方係争処理委員会
④ ア 対等・協力 イ 自治事務 ウ 地方裁判所
⑤ ア 上下・主従 イ 法定受託事務 ウ 国地方係争処理委員会
⑥ ア 上下・主従 イ 法定受託事務 ウ 地方裁判所
⑦ ア 上下・主従 イ 自治事務 ウ 国地方係争処理委員会
⑧ ア 上下・主従 イ 自治事務 ウ 地方裁判所
問2解説
問3
生徒Xと生徒Yは地方議会の選挙について、次の資料aと資料bを読みとった上で議論している。資料aと資料bのグラフの縦軸は、統一地方選挙における投票率か、統一地方選挙における改選定数に占める無投票当選者数の割合のどちらかを示している。後の会話文中の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:議員のなり手が不足しているといわれている町村もあることが資料[ ア ]からうかがえるね。町村議会では、立候補する人が少ない背景には議員報酬が低いためという指摘があるよ。議員定数を削減する町村議会も一部にあるんだね。
Y:都道府県議会議員選挙では、それぞれの都道府県の区域を分割して複数の選挙区を設けるのに対し、市町村議会議員選挙では、その市町村の区域を一つの選挙区とするのが原則なんだね。図書館で調べた資料によると、都道府県議会議員選挙での無投票当選は、定数1や2の選挙区で多い傾向があるよ。資料[ ア ]から、都道府県や町村の議会議員選挙では、市議会議員選挙と比べると無投票当選の割合が高いことがわかるけど、無投票当選が生じる理由は同じではないようだね。
Y:なるほど。この問題をめぐっては、他にも議員のなり手を増やすための環境づくりなどの議論があるよ。無投票当選は、選挙する側からすると選挙権を行使する機会が失われることになるよ。議会に対する住民の関心が低下するおそれもあるんじゃないかな。
X:資料[ イ ]において1983年と2019年とを比べると、投票率の変化が読みとれるね。投票率の変化の背景として、[ ウ ]が関係しているといわれているけど、これは政治に対する無力感や不信感などから生じるそうだよ。
X:[ エ ]をはじめとして選挙権を行使しやすくするための制度があるけど、政治参加を活発にするためには、無投票当選や[ ウ ]に伴う問題などに対処していくことも必要なんだね。
① ア-a イ-b ウ-政治的無関心 エ-パブリックコメント
② ア-a イ-b ウ-政治的無関心 エ-期日前投票
③ ア-a イ-b ウ-秘密投票 エ-パブリックコメント
④ ア-a イ-b ウ-秘密投票 エ-期日前投票
⑤ ア-b イ-a ウ-政治的無関心 エ-パブリックコメント
⑥ ア-b イ-a ウ-政治的無関心 エ-期日前投票
⑦ ア-b イ-a ウ-秘密投票 エ-パブリックコメント
⑧ ア-b イ-a ウ-秘密投票 エ-期日前投票
問3解説
問4
社会保障に関連する資料について、生徒Xと生徒Yは報告会前にL市役所を訪問し、職員に質問することにした。次の会話文は生徒たちが訪問前に相談している場面である。会話文中の下線部ア〜エの四つの発言のうち、三つの発言は、後の資料の数値のみからは読みとることのできない内容である。会話文中の下線部ア~エのうち資料の数値のみから読みとることのできる内容について発言しているものはどれか。最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
X:高齢者向けの社会保障と同時に子育ての支援も重要だと思うよ。
Y:子育てにはお金がかかるから児童手当のような現金給付が必要じゃないかな。ア資料1を使って児童手当支給額の経年での変化をみると、支給額は増えていないことが示されているよ。もっと給付できないのかな。
X:でも、それよりも保育サービスの拡充の方が求められているんじゃないかな? イ資料2には、保育所等を利用する児童数の増加傾向が示されているよ。
Y:現金給付と保育サービスの拡充のどちらも必要なのかもしれないよね。この前読んだ本には子育て支援の給付などを表す指標として家族関係社会支出があると書いてあったんだけど、ウ資料3では、世界の国の中には、対GDP比でみた家族関係社会支出の規模が日本の2倍以上の国があることが示されているしね。
X:でもエ資料4には、社会保障の財源には借金が含まれていて、プライマリーバランスが悪化している主な要因であることが示されているよ。持続可能な仕組みなのかな。
Y:日本全体の話だと実感がわかないから、身の回りの問題から考えてみようよ。市役所の訪問時にはL市の子育て支援について質問してみない?
①下線部ア ②下線部イ ③下線部ウ ④下線部エ
問4解説
正解:③
・知識不要の、典型的な図表読み取り系国語問題である
・図表に書かれている事と、下線部の文章が一致しているかどうかを見ればよい
ア 資料1を使って児童手当支給額の経年での変化をみると、支給額は増えていないことが示されている
・という訳で資料1を見てみると、そもそも資料1はそういう図表ではない
・資料1にあるのは「子供が×歳の時は月△円貰える」の一覧である
・「児童手当支給額の経年での変化」は、何処にも書いていない
・よって、下線部アは図表から読み取れる内容ではない
イ 資料2には、保育所等を利用する児童数の増加傾向が示されている
・という訳で資料2を見てみると、またしても、資料2はそういう図表ではない
・資料2にあるのは「保育所等の待機児童数の推移」である
・「保育所等を利用する児童数」を示したものではない
・よって、下線部イは図表から読み取れる内容ではない
ウ 資料3では、世界の国の中には、対GDP比でみた家族関係社会支出の規模が日本の2倍以上の国があることが示されている
・という訳で資料3を見てみると、「各国の家族関係社会支出の対GDPの比較」が載っている
・そして資料3によると日本国は1.6であり、その2倍となる3.2を超える国が複数載っている
⇒例えばノルウェー王国は3.2、スウェーデン王国は3.4である
・よって、下線部ウは図表から読み取れる内容である
エ 資料4には、社会保障の財源には借金が含まれていて、プライマリーバランスが悪化している主な要因であることが示されている
・もう既に正答はウ(③)だと分かっているが、念の為下線部エも検討しておこう
・資料4には確かに、「日本の社会保障の給付と負担の現状」が書かれている
・ただ、資料4の負担をよく見てみると、「保険料」「公費」「その他」としか書いていない
・注を含めたとしても、やはり、「借金」という文言が何処にもない
・一般に国の「借金」と言われがちな国債の表記すらない
・故に資料4には「社会保障の財源には借金が含まれてい」るとは示されていない
・よって、下線部エは図表から読み取れる内容ではない
問5
財務状況について生徒Xと生徒Yは報告会を主催したL市とその近隣の地方自治体について調べた。発表内容をまとめるために、生徒たちは歳入区分のうち地方税と地方交付税と国庫支出金に着目して、次の文章と後の表を作成した。なお、文章は表を読みとって作成したものである。表中の地方自治体①~④のうちL市はどれか。正しいものを、表中の①~④のうちから一つ選べ。
L市の依存財源の構成比は、表中の他の地方自治体と比べて最も低いわけではありません。ただし、「国による地方自治体の財源保障を重視する考え方」に立った場合は、依存財源が多いこと自体が問題になるとは限りません。たとえばL市では、依存財源のうち一般財源よりも特定財源の構成比が高くなっています。この特定財源によってナショナル・ミニマムが達成されることもあるため、必要なものとも考えられます。
しかし、「地方自治を重視する考え方」に立った場合、依存財源の構成比が高くなり地方自治体の選択の自由が失われることは問題だと考えられます。L市の場合は、自主財源の構成比は50パーセント以上となっています。
問5解説
正解:②
復習用資料:政治分野第三章/地方自治
問6
民間企業の取組みに関連して、次の文章は、L市内の民間企業の取組みについて、生徒Xと生徒Yがまとめた発表用原稿の一部である。文章中の空欄[ ア ]にはaかb、空欄[ イ ]にはeかdのいずれかが当てはまる。次の文章中の空欄[ ア ][ イ ]に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
一つ目はA社とB大学についての事例です。L市に本社があるベンチャー企業のA社は、それまで地元の大学からの人材獲得を課題としていました。そのためA社は、市内のB大学と提携してインターンシップ(就業体験)を提供するようになりました。このインターンシップに参加したB大学の卒業生は、他の企業への就職も考えたものの、仕事の内容を事前に把握していたA社にやりがいを見いだして、A社への就職を決め
たそうです。この事例は[ ア ]の一例です。
二つ目は事業者Cについての事例です。事業者Cは、市内の物流拠点に併設された保育施設や障がい者就労支援施設を運営しています。その物流拠点では、障がいのある人たちが働きやすい職場環境の整備が進み、障がいのない人たちと一緒に働いているそうです。この事例は[ イ ]の一例です。
a スケールメリット(規模の利益)を追求する取組み
b 雇用のミスマッチを防ぐ取組み
c トレーサビリティを明確にする取組み
d ノーマライゼーションの考え方を実行に移す取組み
① ア-a イ-c
② ア-a イ-d
③ ア-b イ-c
④ ア-b イ-d