令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済

第1問

※全く見る価値のないリード文省略

問1

生徒Xは、講座後、下線部「成人年齢」にかかわる制度について調べた。現在の日本の制度に関する記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

①18歳以上の者は、選挙運動期間中に特定の候補者への投票を電話をかけて依頼することができる。
②憲法改正に関する国民投票で投票権を有する年齢は、18歳以上である。
③刑事罰の適用の対象とならない年齢は、18歳未満である。
④親権者などの法定代理人の同意なく18歳未満の者が単独で締結した契約は、原則として取り消すことができる。

#時事問題

問1解説

正解:③

・十八歳成人になってから毎年のように出ている成人関係の問題
・…の割に、消去法ではなく、「③が明らかに間違ってるだろ…」という問題

・ニュースを見ていなくても一般常識として、中高生が殺人罪等で裁判にかけられるのは知っている筈
※その結果、一般的な刑務所ではなく少年刑務所に行くという形になったとしても、少なくとも刑事罰の対象にはなっているのも知っている筈である

・上記の事さえ分かっていれば解ける問題である

問2

選挙に関心をもった生徒Xは、選挙制度が選挙結果に与える影響についてモデルケースで考え、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

 ある議会の定員は10人で、各選挙区の各有権者は候補者1人に投票し、各選挙区で得票数の多い順に候補者2人が当選者となる。この議会の選挙区おいて、三つの政党A〜Cが五つの選挙区a〜eで、それぞれ1人の候補者を立てた。次の表は、この選挙区での各候補者の得票数を示したものである。表において、得票数の合計が最も少ない政党は、当選者数が最も( ア )
 いま、選挙制度が変更されたとする。変更後は、議会の定員は5人で、議員は小選挙区制で選出される。各選挙区で政党は変更前と同じ候補者1人を立て、有権者は変更前と同じ候補者に投票する。このとき、死票の数は変更前より( イ )する。そして、得票数の合計が最も少ない政党は、当選者数が最も( ウ )。
 このように、選挙制度が選挙結果に与える影響を考える際には、得票数と獲得議席数との関係、死票の数など、複数の観点からの考慮が必要である。

選挙区 A党 B党 C党 合計
a 10 25 65 100
b 25 30 45 100
c 15 20 65 100
d 40 25 15 100
e 40 35 25 100
合計 150 135 215 500

① ア 多い  イ 増加  ウ 多い
② ア 多い  イ 増加  ウ 少ない
③ ア 多い  イ 減少  ウ 多い
④ ア 多い  イ 減少  ウ 少ない
⑤ ア 少ない  イ 増加  ウ 多い
⑥ ア 少ない  イ 増加  ウ 少ない
⑦ ア 少ない  イ 減少  ウ 多い
⑧ ア 少ない  イ 減少  ウ 少ない

#選挙制度 #国語問題 #計算問題

問2解説

正解:②
復習用資料:政治分野第三章/選挙制度

ある議会の定員は10人で、各選挙区の各有権者は候補者1人に投票し、各選挙区で得票数の多い順に候補者2人が当選者となる

・これを念頭に置いて表を見てみると、以下のようになる(太線の枠が当選)

・つまり、B党は得票数合計が最も少ない(135)が、最も当選者数が多い政党である
・よって空欄( ア )は「多い」になり、選択肢①~④が正解となる

いま、選挙制度が変更されたとする。変更後は、議会の定員は5人で、議員は小選挙区制で選出される。

・この場合、当選は以下のようになる(太線の枠が当選)

そして、得票数の合計が最も少ない政党は、当選者数が最も( ウ )。

・先に( ウ )を処理してしまおう
・得票数の合計が最も少ない党は変わらずB党であるが、小選挙区導入後は全員落選している
・よって( ウ )は「少ない」になる
・こうして選択肢②か④が候補として残る

このとき、死票の数は変更前より( イ )する。

・死票の数は数えるまでもなく、小選挙区制導入後の方が多い
・単純に「小選挙区制は死票が多い」という話もあるが…
・そもそも死票とは「選挙で、当選者の決定に結びつかなかった票」(デジタル大辞泉)である
・当選する人の数が半分になったのに、死票が減っていたらその方が怖い
・よって( イ )は「増加」である

・以上の内容から、模範回答は②となる

問3

住民参加に関連して、生徒Xと生徒Yは、講座の内容を振り返りながら、現在の日本の地方公共団体において住民が政治に参加する仕組みについて話し合っている。次の会話文中の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

X:政治へのかかわり方は、年齢などによって違ってくるんだね。政治に参加する仕組みといえば、すぐに思いつくのは選挙だけど、私たち住民は選挙の時にしか政治にかかわることはできないのかな。
Y:「政治・経済」の授業では、選挙とは別に住民の意見を地方公共団体へ届ける手段として、( ア )の手続が重要だと学習したよね。
X:そういえば、その手続の一つとして新たな条例の制定を求めることができたよね。
Y:そうだね。だけど、条例の制定を求める場合、その地方公共団体の有権者の( イ )以上の署名を集める必要があるよ。
X:条例制定の提案ほど意見がまとまっていなくても、もっと簡単に住民の意見を地方公共団体へ伝える方法はないのかな。たとえば、近所の公園を市が別の場所へ移転させると聞いたけど、その方針が一度決まってしまったら、「公園を残してほしい」という私の意見は、市に伝えられないのかな。
Y:憲法第16条には、( ウ )についての規定があって、地方公共団体の政策などに関しても平穏に希望や要望を述べることができるよ。この規定によると、年齢にかかわらず意見を地方公共団体へ届けられるね。

① ア 情報公開  イ 3分の1  ウ 請願権
② ア 情報公開  イ 3分の1  ウ 再議
③ ア 情報公開  イ 50分の1  ウ 請願権
④ ア 情報公開  イ 50分の1  ウ 再議
⑤ ア 直接請求  イ 3分の1  ウ 請願権
⑥ ア 直接請求  イ 3分の1  ウ 再議
⑦ ア 直接請求  イ 50分の1  ウ 請願権
⑧ ア 直接請求  イ 50分の1  ウ 再議

#地方自治

問3解説

正解:⑦
復習用資料:政治分野第三章/地方自治

・文章は長ったらしいが、内容そのものは素直に知識の問題
・本問では、「地方自治に於ける直接請求権」と「請願権」の知識を問うている
・ぶっちゃけ、覚えていさえすれば解ける

・特に以下の原則は、覚えておいて損がない
1:必要署名数は、住民解職なら原則三分の一、それ以外なら五十分の一
2:条例の制定、改廃の請求先は、議会を招集する人。つまり首長
3:住民解職の請求先は、選挙で選ばれるモノについては選挙管理委員会、そうでない職は首長

問4

裁判員に関心をもった生徒Xは、講座後に図書館で関連する書籍などを参照して、諸国の刑事裁判への市民参加の制度についてまとめ、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして正しいものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

 日本に裁判員制度を導入するにあたって、アメリカの陪審制度やドイツの参審制度など、諸外国の刑事裁判への市民参加の制度が参考とされた。アメリカやドイツの制度は地域ごとに異なるところがあるものの、日本と比較するとおおむね次のようになる。
 選任については、アメリカでは、陪審員は事件ごとに選ばれる。ドイツでは、参審員は一定年数の任期で選ばれる。日本では、裁判員は裁判員候補者名簿の中から( ア )選ばれる。
 また、アメリカでは、有罪か無罪かの判断は、陪審員のみで行い、量刑の判断に陪審員は加わらない。ドイツでは、有罪か無罪かの判断は、参審員と裁判官が合議で行い、量刑の判断で参審員は加わる。日本では、有罪か無罪かの判断は、( イ )行い、量刑の判断で裁判員は( ウ )。
 このように、日本の裁判員制度は、アメリカの陪審制度とドイツの参審制度のそれぞれと似たところも異なるところもあり、市民の司法参加の制度として独特なものとなっている。

① ア 事件ごとに  イ 裁判員のみで  ウ 加わる
② ア 事件ごとに  イ 裁判員のみで  ウ 加わらない
③ ア 事件ごとに  イ 裁判員と裁判官が合議で  ウ 加わる
④ ア 事件ごとに  イ 裁判員と裁判官が合議で  ウ 加わらない
⑤ ア 一定年数の任期で  イ 裁判員のみで  ウ 加わる
⑥ ア 一定年数の任期で  イ 裁判員のみで  ウ 加わらない
⑦ ア 一定年数の任期で  イ 裁判員と裁判官が合議で  ウ 加わる
⑧ ア 一定年数の任期で  イ 裁判員と裁判官が合議で  ウ 加わらない

#司法府(裁判所)

問4解説

正解:③
復習用資料:政治分野第三章/司法府(裁判所)

・司法制度改革の目玉、裁判員制度の基本的な知識を問う問題
・大体以下の知識があれば解ける

1:参審制は、有罪か無罪かの判断、量刑の判断共に【民間人と裁判官】が共同で行う
2:司法制度改革で現代日本へ導入されたのは、【参審制】である
3:【地方】裁判所の、重大な【刑事】事件の時のみ、裁判員制度が適用される

問5

生徒Xと生徒Yは、職業選択に関心をもち、雇用や失業などの労働市場に関する情報を集めた。XとYは、次の資料1〜3をみながら話し合っている。後の会話文中の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

X:講師の先生が、「2010年代後半は労働市場が売り手市場になっていて、就職がしやすくなっていた」と話していたのが気になって調べてみたよ。
Y:資料1をみると、たしかにそうなっていたことがわかるね。でも、2014年以降は求人数が求職者数を( ア )いるのに完全失業率がゼロにならなかったのは、何が原因なのかな。
X:資料2をみると、「事務的職業」は労働力の需要量が( イ )いて、「輸送・機械運転の職業」は労働力の供給量が( イ )いるから、職種によるミスマッチが起こっているといえるね。
Y:なるほど資料3をみるとどういうことがわかるのかな。
X:資料3は、2002年から2006年の間の完全失業率が高くなった原因がわかるものだよ。資料1の2002年から2006年の間は、2010年から2014年の間と比べると、有効求人倍率が同じ程度で推移しているのに完全失業率が上回っているから、何が原因か調べてみたんだ。「労働経済白書」では、資料3が掲載されていて、( ウ )の労働力の需要量が( イ )いることが就職を難しくしていると分析されていたんだ。つまり、雇用形態別の労働力の需給関係の違いも、失業者数の増減を左右する原因になる可能性があるということだね。

① ア 上回って  イ 過剰になって  ウ フルタイム
② ア 上回って  イ 過剰になって  ウ パートタイム
③ ア 上回って  イ 不足して  ウ フルタイム
④ ア 上回って  イ 不足して  ウ パートタイム
⑤ ア 下回って  イ 過剰になって  ウ フルタイム
⑥ ア 下回って  イ 過剰になって  ウ パートタイム
⑦ ア 下回って  イ 不足して  ウ フルタイム
⑧ ア 下回って  イ 不足して  ウ パートタイム

#国語問題

問5解説

正解:③

・多少、経済分野の背景知識が必要だが、基本的には国語の問題

2014年以降は求人数が求職者数を( ア )いるのに完全失業率がゼロにならなかったのは、何が原因なのかな

・求人は「働きたい人募集」、求職者が「働かせてください」である
・普通に考えると、求人<求職者であれば失業者(無職)は増える
・逆に言えば、普通、求人>求職者であれば失業者(無職)は減る

・今回は「何故か失業率がゼロにならない」という話である
・つまり、「失業者が減ってる筈なのにゼロにならないんだな…」という話だと考えられる
・となると、表1を見るまでもなく求人>求職者という状態だと判断できる

・よって、( ア )は「上回って」であり、正解は①~④という事になる

資料2をみると、「事務的職業」は労働力の需要量が( イ )いて、「輸送・機械運転の職業」は労働力の供給量が( イ )いるから、職種によるミスマッチが起こっているといえるね。

・ここ、受験生を引っ掛けようとしているなかなか邪悪な部分である
・と言うのは、一般的な高校生が認識している「倍率」と、「有効求人倍率」は意味が違うのだ

・大学受験等で「倍率が高い」と言う場合、これは、定員に対して希望者が多い状況を指す
例1:10人が合格する学校を20人が受験した場合、倍率は2倍である
例2:10人が合格する学校を100人が受験した場合、倍率は10倍である

・つまるところ、倍率が高い大学は、偏差値とは別の意味で難関校という訳である
・その考え方で資料2の有効求人倍率を見ると、事務職は0.3倍から0.5倍
・一方、輸送・機械運転職の有効求人倍率は1.6倍から2.5倍程度となっている

・故に、事務職は誰でもなれる、輸送・機械運転職はなるのが難しい、と思える
・よって、( イ )は「過剰になって」だと思える
⇒事務職は労働力の需要量が過剰になっている…つまり、「事務職で働いてくれませんか!」という募集の数は多いが、これに応募する人が少ない、だと思える
⇒輸送・機械運転職は労働力の供給量が過剰になっている…つまり、「輸送・機械運転職で働きたいです!」という人が多すぎる、という話だと思える

・…のだが、冷静に考えてみてほしい
・事務職とは要するに、オフィスで働くサラリーマンである
・輸送・機械運転職の代表例は、トラックの運転手である
・サラリーマンと運転手、人気が高いのはどちらであろうか?

・そう、受験業界で言われる「倍率」と、「有効求人倍率」は真逆の概念なのである
・実は「有効求人倍率」は、「求職者一人あたり、何件の求人があるか」という指標である
・つまり、有効求人倍率が高ければ高いほど、求職者は好きな仕事を選び放題、という指標なのである

・よって、高くても0.5倍しかない事務職は、人気の職業という事になる
・逆に、高いと2.5倍もある輸送・機械運転職は、人気が低い職業という事になる

・現役高校生は普通、有効求人倍率の意味なんて知らないし、資料2の読み方も分からない
・何も知らない高校生を、ここで引っ掛けようという訳である

・無論、大学入試センターの方も、有効求人倍率の意味を知らなければ解けない問題は流石に作らない
・ちゃんとヒントがある。「サラリーマンと運転手、人気が高いのはどちら」かもそうだが…
・読み進めていくと、より分かりやすいヒントがある

「労働経済白書」では、資料3が掲載されていて、( ウ )の労働力の需要量が( イ )いることが就職を難しくしていると分析されていたんだ。

・ここで( イ )が再登場し、資料3の話も出てくる
・では…と資料3を見てみると、これは資料2よりも分かりやすいヒントになっている

・資料3にあるパートタイムは、要するにバイトである
・もっと言えば、バイトの掛け持ちで生きていく人をフリーターと言う
・一方、フルタイムは普通、正社員である(フルタイムの契約社員というのもいるが…)
・この理解に立って資料3を見ると、有効求人倍率はパートタイムの方が圧倒的に高い

・問題作成者にとって、恐らく、この部分が最大のヒントなのだと思われる
⇒有効求人倍率を、大学受験の倍率と同じような意味だと捉えていても、ここで流石に「おかしい」と思ってほしい。誰だって、フリーターじゃなくて正社員になりたいだろ…と思ってほしい、と考えて資料3をつけたのだと思われる

※ちなみに、見るまでもなく( ア )が解けてしまう資料1だが、これも見ていればヒントになる。即ち、表1は失業率が下がれば下がるほど倍率が上がっている。言い方を買えれば、就職しやすくなればなるほど(入社試験に合格しやすくなればなるほど)倍率が下がっている。これを元に、「あれ、有効求人倍率ってもしかして…」と気付くこともできる

・という訳で、有効求人倍率は、受験で言われるような倍率とは逆の意味である
・数字が高ければ高いほどその職に就職しやすく、低ければ低いほどその職に就職しづらい
・これを理解できていれば、後は簡単である

「事務的職業」は労働力の需要量が( イ )いて、「輸送・機械運転の職業」は労働力の供給量が( イ )いるから、職種によるミスマッチが起こっている
「事務的職業」は労働力の需要量が不足していて、「輸送・機械運転の職業」は労働力の供給量が不足しているから、職種によるミスマッチが起こっている

( ウ )の労働力の需要量が( イ )いることが就職を難しくしている
フルタイムの労働力の需要量が不足していることが就職を難しくしている

・これが正しい文章となる
・よって、全ての条件を満たす「③ ア 上回って  イ 不足して  ウ フルタイム」が正解となる

問6

家計に関心をもった生徒Yは、講座で配布された次の資料を見返し、分析した結果を後のノートにまとめた。ノート中の空欄( ア )には資料中の例aか例bのいずれかが当てはまる。ノート中の空欄( ア )・( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

資料 単身勤労世帯3例における1年間の家計収支の平均月額(単位:千円)

  例a 例b 例c
実収入 550 310 140
実支出 450 240 130
 消費支出 300 180 100
  うち食料費 60 42 30
 非消費支出(直接税、社会保険料) 150 60 20

ノート
○家計は、可処分所得の制約の下で最大の満足感が得られるように、消費する財やサービスを選択し、消費支出額と貯蓄額を決定する。資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。
○可処分所得が少なくなると、生活必需品の支出の割合が高くなることは避けられない。こうした点に着目した指標がエンゲル係数である。資料中でも可処分所得の最も少ない例cのエンゲル係数が最も高くなっており、その値は( イ )%となる。

① ア 例a  イ 25%
② ア 例a  イ 30%
③ ア 例b  イ 25%
④ ア 例b  イ 30%

#貧富の格差を表す指標

問6解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/貧富の格差を表す指標:

・まさかの、エンゲル係数の計算方法を知っていないと解けない問題
・貧富の格差を測る指標自体は、以前から共通テストでもちょくちょく出題されていた
・しかし、大抵は問題文中に定義や計算方法が書いてあり、実質国語問題であった
⇒「貧富の格差を測る指標に関する問題」であり、かつ「計算方法そのものを知っていないと解けない」というのは、恐らく、共通テスト始まって以来初の問題であると思われる

資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。

・ではまず「ノート」の最初の方の文章から解いていこう
・ここは、可処分所得という言葉の意味さえ知っていれば解けるところである
⇒即ち、「収入全体から“払いたい訳じゃないけど払わなきゃいけないカネ”を引いたもの」が可処分所得である、と知ってさえいれば解ける

・表を見ると、「実収入」「非消費支出」という項目がある
・前者が収入全体、後者が“払いたい訳じゃないけど払わなきゃいけないカネ”と考えればよい

例a:550 - 150 = 400
例b:310 - 60 = 250

・よって、上記の額が例abの可処分所得である
・ここで改めて「ノート」の最初の文を見てみよう

資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。

・最終的には平均消費性向を算出してそれを比べる必要がある訳だが、その計算方法は書いてある
・即ち、「可処分所得に占める消費支出の割合」を出せばいいのである
・つまり、上記で産出した可処分所得で消費支出を割ればよい

~数学がガチで全く何もできないド文系の人向け解説~
例えば「所持金1000円の内100円使った。何%使った?」ならぱっと「10%」と「所持金2500円の内300円使った。何%使った?」みたいに言われると計算の仕方が分からん、となる人。そういう人は、「割合を出すときは一般に、“小さい数字÷大きい数字”」、と覚えておくといいでしょう
~筆者もド文系です、恥ずかしがる必要はありません~

例a:300 ÷ 400 = 0.75
例b:180 ÷ 250 = 0.72

・よって、平均消費性向は例aの方が高い
・故に正解となる選択肢は①か②である
・では、「ノート」の次の文章に移ろう

可処分所得が少なくなると、生活必需品の支出の割合が高くなることは避けられない。こうした点に着目した指標がエンゲル係数である。資料中でも可処分所得の最も少ない例cのエンゲル係数が最も高くなっており、その値は( イ )%となる

・これは、エンゲル係数の計算方法を知らないと解けない

~ほんとぉーーー?~
・筆者も、この文章を解析し、エンゲル係数の計算方法を知らなくても問題が解けないか考えた
・が、この文章を読んで思いつくだろう計算方法は、恐らく以下の通りである

計算方法:可処分所得に占める食料費の割合を出す
※可処分所得は問題文に何度も出てくる重要単語、食料費は問題文中にある“生活必需品”として計算に使えそうな項目がこれしかない。よって本文から類推するのであれば、こういう計算方法にしかならない

・この計算方法で実際にやってみると、以下のような結果になる

例a:15%
例b:16.8%
例c:25%

・問題文の「例cのエンゲル係数が最も高」いに矛盾せず、しかも誤答①と同じ数字が出てしまうのである
・となるとやはりこの問題は、問題文から類推して解く問題ではない
・即ち、計算方法を知らないと解けない問題という事になる
~うーん共テの出題傾向が変わった瞬間だ~

・エンゲル係数は、消費支出全体に占める食費の割合で表される
⇒つまるところ、「エンゲル係数(%)=食費÷消費支出×100」である

・例cは消費支出全体が100、食費が30であるから30%と分かる
・よってイは30%であり、②が正解となる

問7

生徒Yは、社会の変化によって生活困難に遭遇するリスクが高まる中での社会保障の意義に関心をもち、その意義を具体化する仕組みについて調べた。次の記述ア〜ウのうち、日本における社会保険制度、公的扶助制度、社会福祉制度それぞれの基本的な特徴に関する記述として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

ア 社会保険制度では、原則としてあらかじめ保険料が拠出されていて、疾病や老齢などの保険の対象となる事由が発生した当事者に対して諸給付が行われる。

イ 公的扶助制度では、生活に困難し、最低限度の生活水準に満たない状態になった当事者に対して保険料から生活に必要な諸給付が行われる。

ウ 社会福祉制度では、老齢、障害などによって社会生活を送る上での支援が必要な当事者に対してサービスの提供などが行われる。

① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ

#社会保障

問7解説

正解:⑤
復習用資料:経済分野第二章/社会保障

・単純明快な、社会保障の種類に対する知識を問う問題
⇒社会保障の種類を覚える上では、「××という社会保障は▽▽という事由で給付金が貰える。その原資は△△である」を網羅しておくのが大事。まさにそこを中心に聞いてきている問題

・アは正文
・ウも正文
・イだけが明らかに間違い

イ 公的扶助制度では、生活に困難し、最低限度の生活水準に満たない状態になった当事者に対して保険料から生活に必要な諸給付が行われる。

・「生活に困難し、最低限度の生活水準に満たない状態になった当事者」に対して、というのは正しい
・問題は「保険料から生活に必要な諸給付が行われる」で、こんな事やってたら公的扶助にならない
⇒公的扶助は、「貧乏で困っている人を助けよう」制度である。貧乏で困っている人が、皆が皆、普段から保険料をちゃんと支払ってる…なんて事はないのである。だから公的扶助制度は、公費で行われないと意味がない

・よってアとウのみが正文、答えは⑤となる

問8

生徒Yは、日本の行政機構の変化について調べた。2000年以降における日本の行政機構の変化に関する記述として誤っているものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

① 消費者行政の一元化などを目的として新設された「消費者庁」は、内閣府におかれている。
② 東日本大震災からの復興を円滑かつ迅速に進めることなどを目的として、「復興庁」が新設された。
③ 行政手続のオンライン化によるデジタル化社会の形成などを目的として、「デジタル庁」が新設された。
④ 子どもと家庭の福祉保健政策を総合的に進めることなどを目的として新設された「こども家庭庁」は、厚生労働省におかれている。

#時事問題

問8解説

正解:④

・一種の時事問題
・報道を見ているような人は分かるだろうが、これを解けというのは高校生には酷では…

・①~③は正文
⇒特に①の消費者庁が内閣府所属というのは消費者問題でよく触れられるところ。一方②と③は…いや政治経済の授業じゃやんないんじゃないかな…

・④は誤文
⇒元々、「様々な省庁が別々に児童支援をしていたのを一本化しよう」「毒親なんていくらでもいるんだから、あくまで子供を支援する省庁を作ろう」というところから出てきたのがこども庁構想。そこに保守派の横槍が入ってこども家庭庁として実現し、「大丈夫かなぁ…」と思ってたら案の定闇の深い報道がちょいちょい流れる…というのは、報道を見ている人なら(多分)知っている
⇒元の構想からして、「複数の省庁にまたがった仕事をする」内閣府に所属しているべき省庁である

第2問

問1

生徒Xは、近代国家の成立について調べ、国家の強制力に関する次の資料をみつけた(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。資料から読みとれる内容として最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

「もちろん暴力行使は、国家にとってノーマルな手段でもまた唯一の手段でもない…(略)…が、おそらく国家に特有な手段となるだろう。そして実際今日、この暴力に対する国家の関係は特別に緊密なのである。過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた。ところが今日では、次のように言わねばならない。国家とは、ある一定の領域の内部で…(略)…正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である、と。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への『権利』の唯一の源泉とみなされているということ、これは確かに現代に特有な現象である。」

(注)「氏族」とは、共通の祖先をもつ人々の集団のことをいう。
(出所)マックス・ヴェーバー(ウェーバー)『職業としての政治』脇圭平訳

① 資料中の過去においては、暴力行使は国家に特有の手段であり、国家が用いる通常かつ唯一の手段でもある。
② 資料中の今日において、国家と暴力の関係は特別に緊密であるが、それ以外に暴力行使はないかなる団体にも認められたことがない。
③ 資料中の今日において、国家はある一定の領域の内部における正当な物理的暴力行使の唯一の源泉とみなされている。
④ 資料中の過去においては、国家の許容した範囲内でのみ、国家以外の団体や個人が物理的暴力を行使することが認められていた。

#国語問題

問1解説

正解:③

・完全に国語の問題
⇒要するに「本文の要約として正しいものを選べ」で、いいのかこれ…いやまぁお題は政治経済で定番のマクシミリアン・カール・エミール・ヴェーバーだけど……

・資料本文の内容をまとめると、以下のようになる。これを元に考えれば正答を導ける筈である
1:(資料執筆時点から見て)過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた
2:(資料執筆時点から見て)現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる

・上記のまとめを元に考えると、以下のようになる

① 資料中の過去においては、暴力行使は国家に特有の手段であり、国家が用いる通常かつ唯一の手段でもある。

・誤文。「1:過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた」に反する
⇒本文にも「過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた」とある

② 資料中の今日において、国家と暴力の関係は特別に緊密であるが、それ以外に暴力行使はないかなる団体にも認められたことがない。

・誤文。「2:現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる」に反する
⇒本文にも「国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められない」とある

③ 資料中の今日において、国家はある一定の領域の内部における正当な物理的暴力行使の唯一の源泉とみなされている。

・正文。「2:現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる」とある通り
⇒本文にも「。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への『権利』の唯一の源泉とみなされているということ」とある

④ 資料中の過去においては、国家の許容した範囲内でのみ、国家以外の団体や個人が物理的暴力を行使することが認められていた。

・誤文。「1:過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた」に反する
⇒本文にも「過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた」とある

・という訳で、③が正解となる

問2

生徒Xは、国家が運営する社会保障の仕組みに注目し、日本の雇用保険と労働者災害補償保険(労災保険)について次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )には後の記述aかb、空欄( イ )には後の記述cかdのいずれかが当てはまる。空欄( ア )・( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

○雇用保険
労働者が失業したときなどに給付を行う制度である。労働者が失業したときの主な給付の財源の負担者は、( ア )。

○労災保険
労働者が業務に起因して負傷したり病気になったりしたときなどに給付を行う制度である。給付の財源となる保険料の負担者は、( イ )。

( ア )に当てはまる記述
a 失業が事業主の経営判断や労働者の転職・求職行動を原因として生じるという考え方により、事業主と労働者とされている
b 失業が政府の経済政策や雇用政策と無縁ではなく事業主や労働者だけでは対処できない原因でも生じるという考え方により、事業主、労働者、政府の三者とされている

( イ )に当てはまる記述
c 給付を受けうる労働者も負担すべきという考え方により、事業主と労働者とされている
d 事業から利益を得る事業主が負担すべきという考え方により、事業主のみとされている

① ア-a イ-c
② ア-a イ-d
③ ア-b イ-c
④ ア-b イ-d

#社会保障

問2解説

正解:④
復習用資料:経済分野第二章/社会保障

・社会保障、特に社会保険の知識を問う問題
・…なのだが、多分ここまで細かい知識、普通の政治経済の授業じゃやらないと思う…
⇒私の授業に関しては、「労働問題なんてまさに、一生使う重要な知識なんだからきっちりやらないと駄目だろ!」でかなり細かい知識まで解説しているが、普通の公共・政治経済では…うーん…こんな知識、私大本番ならともかく共テで聞いていいのかな……という感じがある

・アで問われている雇用保険もイで問われている労災保険も、社会保険である
・社会保険である以上は、給付するカネの原資は、保険料及び公費である
⇒社会保険は「誰でも入れる安い保険」である。つまり保険料が安い。そして保険料を安くする為に、国のカネ、つまり公費が使われている

・以上を踏まえた上で、問題文を見ていく必要がある

○雇用保険
労働者が失業したときなどに給付を行う制度である。労働者が失業したときの主な給付の財源の負担者は、( ア )。

・ここで聞かれているのは、「主な給付の財源の負担者」である
・雇用保険の「主な給付の財源」は、既に見たように、保険料及び公費である
・そして雇用保険の保険料は、事業主(会社)と労働者(社員)双方が払う ⇒折半にしている会社が多い

・つまり、「主な給付の財源の負担者」は、事業主、労働者、そして政府である
・この時点で正解は③か④になる

○労災保険
労働者が業務に起因して負傷したり病気になったりしたときなどに給付を行う制度である。給付の財源となる保険料の負担者は、( イ )。

・一方、こちらは「給付の財源となる保険料の負担者」が問われている
・労災保険の保険料は、事業主(会社)のみが払う
⇒と言うか、実際に労災が発生した時の報告や、給付金請求なんかも全部事業主(会社)がやる。労働災害は完全に会社の責任なんだから、会社が全部やれ、という考え方である

・よって、正解は④である

問3

生徒Xは、国家の運営を支える公務員が結成する団体について調べてみた。そして、Xは、日本における公務員の労働基本権に関する次の資料をみながら、生徒Yと議論している(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。資料中の空欄( ア )には後の語句aかbのいずれかが当てはまる。また、後の会話文中の空欄( イ )には後の語句cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

「公務員の従事する職務には公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分が保障されているほか、適切な代償措置が講じられているのであるから、…(略)…公務員の( ア )およびそのあおり行為等を禁じるのは、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からうるやむをえない制度といわざるをえず、憲法28条に違反するものではない。」
(出所)最高裁判所刑事判例集27巻4号

X:この資料は、全農林警職法事件の最高裁判所の判決だね。判決がいう代償措置とは、たとえば、( イ )が国家公務員の給与などの勤務条件の改善を勧告する制度のことだよね。
Y:そうだね。だけど、勧告された内容を国が実施しない場合には本当に代償措置があるといえるのかな。
X:Yさんの疑問もわかるよ。でも、この判決がいうように、公務員の職務に公共性があることなどの事情を考慮すると、現行法で、( ウ )と思うよ。
Y:そうなのかな。使用者と実質的に対等な地位に立つことを可能にするという労働基本権の趣旨からすれば、たとえば、代償措置が役割を果たしていないというときは、判決とは違う結論もとれると思うよ。

( ア )に当てはまる語句
a 不当労働行為
b 争議行為

( イ )に当てはまる語句
c 人事院
d 内閣人事局

( ウ )に当てはまる記述
e 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができ、職員団体から申入れを受けた機関は交渉に応ずべき地位にあるものとされることはどまっているのもやむをえない
f 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができないとされる代わりに、国会が勤務条件を法律で定めてその適正さを確保しようとするのもやむをえない

① ア-a イ-c ウ-e   ② ア-a イ-c ウ-f
③ ア-a イ-d ウ-e   ④ ア-a イ-d ウ-f
⑤ ア-b イ-c ウ-e   ⑥ ア-b イ-c ウ-f
⑦ ア-b イ-d ウ-e   ⑧ ア-b イ-d ウ-f

#労働問題

問3解説

正解:⑤
復習用資料:経済分野第二章/社会保障

・労働問題、特に公務員の労働三権に関する知識を問う問題
・正しい知識を元に空欄を埋めていかねばならない良問である

・基本的には、公務員の労働三権に関して、以下の事項をきちんと把握していれば解ける問題である
1a:公務員は労働三権の一部が制限されている
1b:団結権はまず大丈夫だが、逆に団体行動権(争議権)は全く存在しない。団体交渉権はまちまち
2:代わりに、人事院による勧告制度がある

公務員の( ア )およびそのあおり行為等を禁じるのは、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からうるやむをえない
a 不当労働行為
b 争議行為

・公務員が制限されているのは、団体行動権(争議権)である。よってb

判決がいう代償措置とは、たとえば、( イ )が国家公務員の給与などの勤務条件の改善を勧告する制度
c 人事院
d 内閣人事局

・代償措置として勧告を行うのは人事院である。よってc

( ウ )に当てはまる記述
e 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができ、職員団体から申入れを受けた機関は交渉に応ずべき地位にあるものとされることはどまっているのもやむをえない
f 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができないとされる代わりに、国会が勤務条件を法律で定めてその適正さを確保しようとするのもやむをえない

・公務員の労働三権は、団結権はまず保障されている。よってe

・以上から、b-c-eとなり、正解は⑤となる

~一応、アに関しては、別の解き方もできます~
・アに関しては、不当労働行為と争議行為が何か分かっていれば解けるとも言える

不当労働行為:使用者側(会社側)が、労働組合の活動を妨害するもの
争議行為:労働者側(社員側)が、「給料上げてくれないんだったらストライキするぞ!」みたいなの

・現場で働く公務員が不当労働行為をする、というのはそもそも話が通じない
・不当労働行為をするなら、公務員を雇っている政府や自治体である
~まぁでも結局これだけだとイとウが解けんね~

問4

国と地方公共団体との関係に関心をもった生徒Xは、両者の関係に関する日本国憲法や地方自治法の規定を調べ、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )には後の語句aかb、空欄( イ )には後の記述cかdのいずれかが当てはまる。空欄( ア )・( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

 憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」としている。この「地方自治の本旨」の内容のうち、国から独立した団体を設け、その団体の意思と責任において地方の事務を処理するべきであるという考え方を、( ア )の原則という。
 また、1999年の地方分権一括法による改正で新たに設けられた地方自治法第1条の2は、憲法第92条を踏まえて、地方公共団体の役割について、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」と定めている。そして、それに続けて同項は、国の役割について、「国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切な役割を分担するともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」とする。ここでは、( イ )という両者の関係が定められている。

( ア )に当てはまる語句
a 団体自治
b 住民自治

( イ )に当てはまる記述
c 住民に身近な行政については、まずは国が責任を負い、国は地方公共団体に対して指揮監督を行う
d 住民に身近な行政については、まずは地方公共団体が責任を負い、国は地方公共団体による施策の実施を補助する

① ア-a  イ-c
② ア-a  イ-d
③ ア-b  イ-c
④ ア-b  イ-d

#地方自治

問4解説

正解:②
復習用資料:政治分野第三章/地方自治

・地方分権について、地方自治の本旨と地方分権一括法の内容の知識を問う問題
⇒この両者は頻出なので、必ず抑えておきましょう

国から独立した団体を設け、その団体の意思と責任において地方の事務を処理するべきであるという考え方を、( ア )の原則という

・これは団体自治。ドイツ系の地方自治の考え方である
⇒ちなみに、「その地方の事は、その地方に住む人が決めればよい」が住民自治。英米系の考え方である

( イ )に当てはまる記述
c 住民に身近な行政については、まずは国が責任を負い、国は地方公共団体に対して指揮監督を行う
d 住民に身近な行政については、まずは地方公共団体が責任を負い、国は地方公共団体による施策の実施を補助する

・簡単に言ってしまえば、地方分権一括法以前がc、以後がdである
⇒要は、「国と地方自治体の関係は、以前は上下関係だったけどこれからは対等だよ」が地方分権一括法と言える

・以上の事から、アは団体自治でa、イはdとなる

問5

宗教団体に関心をもった生徒Yは、日本国憲法における宗教に関する規定について調べた。信教の自由や政教分離の原則に関する次の記述ア〜ウのうち、正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

ア 宗教団体などを結成する宗教的結社の自由は、憲法が保障する信教の自由に含まれる。
イ 一定の要件を満たした宗教団体には、国から特権を受けたり政治上の権力を行使したりすることが憲法上認められている。
ウ 国および地方公共団体は、宗教教育をはじめとして、いかなる宗教的活動も行ってはならない。

① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ

#日本国憲法と人権(自由権)

問5解説

正解:⑤
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(自由権)

・基本的に実在性が低い生徒しか出てこない共テに、珍しく実在性の高い生徒が出てきた問題
・尊師ソングとかシャクティパットとか頭にアルミホイル巻くのが好きな高校生は割と実在する

・信教の自由についての知識を問う問題
・よく、「日本国憲法の重要な条文は暗記しろ」と言われるが、まさに重要条文暗記だけで解ける

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
(日本国憲法)

・具体的には、上記の条文を暗記していれば一発で解ける
・勿論そこまでしていなくとも、信教の自由についてしっかり勉強していれば解ける問題である

ア 宗教団体などを結成する宗教的結社の自由は、憲法が保障する信教の自由に含まれる。

・正文
・これが誤文である場合、明らかに変な話になる
⇒「宗教団体を結成する自由」は認められない、という事はつまり、「仏教とかキリスト教みたいな既存の宗教を信じるのは自由です」「あっでも新興宗教は駄目、そもそも作っちゃ駄目」という話になるので…そういうのを信教の自由とは言わないでしょ、で終わる話である

イ 一定の要件を満たした宗教団体には、国から特権を受けたり政治上の権力を行使したりすることが憲法上認められている。

・誤文。日本国憲法二十条にある通り、特定の宗教団体にそのような権力は認められない

ウ 国および地方公共団体は、宗教教育をはじめとして、いかなる宗教的活動も行ってはならない。

・正文。日本国憲法二十条3項にある通り、いかなる宗教活動も行ってはならない

・よって、アとウが正しい。正解は⑤である

問6

消費者団体に関心をもった生徒Yは、特定商取引法等にも消費者団体訴訟制度を導入した2008年の法改正について調べ、次のメモを作成した。メモ中から読みとれる内容として最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

1.改正の内容
○事業者の不当な行為について、その行為の中止を命じるなどの従来の行政による規制(行政規制)に加え、国が認定した消費者団体(適格消費者団体)が事業者の行為の差止めを求める訴訟(差止請求訴訟)を提起できる制度を導入する。

2.改正の背景
○商品・役務の内容の多様化を背景に、特定商取引法等に違反する不当な行為による消費者被害が急増した。
○消費者被害には、同種の被害が不特定多数の者に急速に拡大するという特徴があり、特定商取引法等が定める行政規制だけでは、被害の未然防止や拡大防止が十分にできなかった。

3.消費者団体訴訟制度を導入するねらい
○適格消費者団体が消費者に身近な存在として活動し、情報を早期に収集して差止請求を機動的に行うことなどが期待できる。
○行政機関の人員や予算などの資源(行政資源)を、より迅速な対応が求められる重大な消費者被害に集中させることが可能になるという副次的効果も期待できる。

① 特定商取引法等にも消費者団体訴訟制度を導入した背景の一つとして、違反行為に対処する上での行政規制の過剰があげられる。
② 民事上のルールである消費者団体訴訟制度の活用は、事業者の経済活動に対する規制緩和の一環ということができる。
③ 消費者被害の未然防止や拡大防止のための取組みは、適格消費者団体のみが行うこととなった。
④ 消費者団体訴訟制度の導入には、限りのある行政資源を重大な消費者被害に集中的に投入することを可能にするという効果も想定される。

#国語問題 #消費者問題

問6解説

正解:④
復習用資料:経済分野第二章/消費者問題

・基本的には国語の問題。本文を読んで、本文の内容に適合する選択肢を選ぶ問題
⇒一応、消費者団体訴訟制度自体は最近の公共・政治経済の教科書でも扱われるものなので、詳しく知っていればそれだけで解け…解け…いや、ここまで細かくやる事はまずないですね……

① 特定商取引法等にも消費者団体訴訟制度を導入した背景の一つとして、違反行為に対処する上での行政規制の過剰があげられる。

・誤文。本文中では、むしろ行政規制が足りない事が背景として書かれている
⇒本文中にも、「特定商取引法等が定める行政規制だけでは、被害の未然防止や拡大防止が十分にできなかった」とある

② 民事上のルールである消費者団体訴訟制度の活用は、事業者の経済活動に対する規制緩和の一環ということができる。

・誤文。新たな規制として消費者団体訴訟制度を制定しようという話であり、むしろ規制強化である
⇒せめて、今までの規制を撤廃して新しい規制を入れる…という話ならまだしも、本文を読む限り、今の規制を維持して新しい規制を追加しようという話である
⇒本文の「改正の内容」のところで、「従来の行政による規制(行政規制)に加え」て「訴訟(差止請求訴訟)を提起できる制度を導入する」とある。明らかに、今の規制を維持して新しい規制を追加しよう、という話である

③ 消費者被害の未然防止や拡大防止のための取組みは、適格消費者団体のみが行うこととなった。

・誤文
・②を検討した時に既に見たが、本文には、今までの規制を撤廃しようという話は無い
・本文中から読み取れるのは、あくまで、今の規制を維持して新しい規制を追加しよう、という話である

④ 消費者団体訴訟制度の導入には、限りのある行政資源を重大な消費者被害に集中的に投入することを可能にするという効果も想定される。

・正文
⇒本文にも「行政機関の人員や予算などの資源(行政資源)を、より迅速な対応が求められる重大な消費者被害に集中させることが可能になるという副次的効果も期待できる」とある

問7

生徒Yは、日本の会社の組織や責任について、生徒Xと議論している。次の会話文中の空欄( ア )には後の語句aかb、空欄( イ )には後の語句cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

Y:株式会社では、株主は、会社の債務に対して、( ア )よ。
X:会社の債務について出資者がどこまで責任を負うかは、( イ )も同じだね。
Y:そうだね。だけど、株主が( ア )という立場を超える場合、自らの経済的利益を優先し、社会にとって望ましくない活動を会社にさせるという意見もあるよ。
X:( ウ )は、そうした事態を避けるために有効だよね。

( ア )に当てはまる記述
a 出資額をこえた責任は負わない
b 出資額をこえた責任を負う

( イ )に当てはまる語句
c 合同会社
d 合名会社

( ウ )に当てはまる記述
e 会社が株主代表訴訟を通じて株主の責任を追及していくこと
f 会社に社会的責任を果たさせて幅広いステークホルダーの利益を確保すること

① ア-a  イ-c ウ-e
② ア-a  イ-c ウ-f
③ ア-a  イ-d ウ-e
④ ア-a  イ-d ウ-f
⑤ ア-b  イ-c ウ-e
⑥ ア-b  イ-c ウ-f
⑦ ア-b  イ-d ウ-e
⑧ ア-b  イ-d ウ-f

#企業とは

問7解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/企業とは

・「企業とは」という話についての、基本的な知識を問う問題
⇒特にアイで問われている、有限責任社員と無限責任社員の意味、及びどの社員がどの会社にいるのか、これはいつでもどこでも頻出みたいな話なのでしっかり覚えておきたい

株式会社では、株主は、会社の債務に対して、( ア )
a 出資額をこえた責任は負わない
b 出資額をこえた責任を負う

・株式会社の出資者とは、即ち株主である
・そして株主は、(出資者という意味での)社員としては、有限責任社員にあたる
・そして有限責任社員は、出資額を超えた責任は負わない
⇒言い方を変えると、「自分が出した(出資した)カネを失う事はあるが、それ以上を失う事はない」

・よって、アはaである

会社の債務について出資者がどこまで責任を負うかは、( イ )も同じだね。
c 合同会社
d 合名会社

・文脈から、有限責任社員しかいない形態の会社を答えればよい

・これ↑、本当に頻出な上に大変覚えづらいので、しっかり暗記しておこう
・表を見ての通り、有限責任社員しかいないのは合同会社である。よってイはc

Y:そうだね。だけど、株主が( ア )という立場を超える場合、自らの経済的利益を優先し、社会にとって望ましくない活動を会社にさせるという意見もあるよ。
X:( ウ )は、そうした事態を避けるために有効だよね。
e 会社が株主代表訴訟を通じて株主の責任を追及していくこと
f 会社に社会的責任を果たさせて幅広いステークホルダーの利益を確保すること

・ウに関しては、株主代表訴訟の意味が分かっていれば解ける
⇒取締役会のような会社の経営陣が、法令違反によって会社に損害を与えた場合、株主は訴訟を起こせる。特に、一部の株主が株主全体を代表して裁判に訴える場合を株主代表訴訟と言う

・文脈的に、ウは法令違反がどうこうという話ではない
・となると、社会的責任がどうこうというfの方が正しい
・つまり、ウはfである

・よって、正解はa-c-f、即ち②である

問8

家族という集団に関心をもった生徒Yは、日本の2009年の臓器移植法改正について調べ、脳死した者(以下、「本人」という)に家族がいる場合における制度の改正前後の内容を次のメモにまとめた。後の記述ア〜ウのうち、メモから読みとれる内容として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

2009年の法改正前の制度
○移植のために医師が臓器を摘出できるのは、本人が書面で臓器を提供する意思を表示しており、家族が拒まないときに限る。
○臓器を提供する意思を表示できるのは15歳以上の者に限る。

2009年の法改正後の制度
○移植のために医師が臓器を摘出できるのは、本人が書面で臓器を提供する意思を表示しており家族が拒まないときか、または、本人の臓器提供の意思は不明であるが家族が書面で臓器提供を承諾するときに限る。
○臓器を提供する意思を表示できるのは15歳以上の者に限られるが、臓器を提供しない意思は年齢にかかわらず表示できる。臓器を提供しない意思を表示していない15歳未満の者については、家族が書面で臓器提供を承諾することにより、移植のために医師が臓器を摘出できる。

ア 法改正の前後を通じて、本人が臓器を提供しない意思を表示していれば医師は臓器を摘出できないため、臓器を提供しないという本人の自己決定は、家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。
イ 法改正後は、本人の年齢にかかわらず、本人の臓器提供の意思が不明なときには家族の書面による承諾で医師が臓器を摘出できるが、本人が臓器を提供しない意思を表示しているときには臓器を摘出できない仕組みとなっている。
ウ 法改正後は、本人が臓器を提供する意思を書面で表示していれば家族が反対していても医師は臓器を摘出でき、臓器を提供すると本人の自己決定は、家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。

① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ

#国語問題

問8解説

正解:④

・国語の問題。本文を読んで、本文に適合する選択肢を選ぶだけの問題である
・本文の内容自体も長ったらしいだけで割と単純なので、そんなに難しくない問題である

・本文の内容をまとめると、上記のようになる筈である
⇒臓器提供意思表示は十五歳から、という話も本文には載っているが、この表の内容が変化するような話が載っている訳ではない
⇒本問が解けるかどうかは、このような表を「頭の中で」「ぱっと」作れるかどうかにかかっている…と言ってよい

ア 法改正の前後を通じて、本人が臓器を提供しない意思を表示していれば医師は臓器を摘出できないため、臓器を提供しないという本人の自己決定は、家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。

・正文
⇒本文やまとめた表を見ての通り、臓器を摘出できるのは「本人が書面で臓器を提供する意思を表示している」か「本人の臓器提供の意思は不明」が最低条件である(その上で家族の同意が必要)。という事は勿論、臓器を提供しない意思を表示している人からは臓器を摘出できない

イ 法改正後は、本人の年齢にかかわらず、本人の臓器提供の意思が不明なときには家族の書面による承諾で医師が臓器を摘出できるが、本人が臓器を提供しない意思を表示しているときには臓器を摘出できない仕組みとなっている。

・正文
⇒本文やまとめた表を見ての通り、「本人の臓器提供の意思は不明であるが家族が書面で臓器提供を承諾する」場合は臓器を摘出できる。また、アで考察したように、臓器を提供しない意思を表示している人からは臓器を摘出できない

ウ 法改正後は、本人が臓器を提供する意思を書面で表示していれば家族が反対していても医師は臓器を摘出でき、臓器を提供すると本人の自己決定は、家族の意思にかかわらず実現される仕組みとなっている。

・誤文
⇒本文やまとめた表を見ての通り、臓器を摘出できるのは「家族が拒んでいない」もしくは「家族が書面で臓器提供を承諾する」場合のみである。家族が反対していては臓器を摘出できない

第3問

問1

生徒Xは、付加価値について身近な例で考えるために、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )〜( オ )には、それぞれ数値が入る。空欄( エ )・( オ )に入る数値の組合せとして正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 国で生産できる財が「小麦」、「小麦粉」、「パン」だけであると仮定し、小麦を生産する農家、その小麦を小麦粉にする製粉会社、その小麦粉でパンを作る製パン会社からなる経済を考える。ここでは、1年間に小麦500袋と小麦粉1,000kgとパン10,000個が生産されたとする。農家は、生産した小麦のすべてを製粉会社に計50万円で販売した。製粉会社は、その小麦をすべて加工して1,000kgの小麦粉を生産し、それをすべて製パン会社に計150万円で販売した。製パン会社は、製粉会社から購入した小麦粉をすべて使って10,000個のパンを製造し、それをすべて消費者に計400万円で販売した。製パン会社、製粉会社、農家のそれぞれの生産に必要な中間投入物は、小麦、小麦粉以外にはないものとする。
 ここまでを整理すると次の表のようになる。

  農家 製粉会社 製パン会社
生産総額 50 150 400
中間投入物の額 0 ( ア ) ( イ )
付加価値額 50 ( ウ ) ( エ )

 以上のような経済活動が行われた場合、製パン会社の生み出した付加価値額は( エ )万円であり、この国のGDPは( オ )万円である。

① エ 250  オ 250
② エ 250  オ 400
③ エ 250  オ 600
④ エ 400  オ 250
⑤ エ 400  オ 400
⑥ エ 400  オ 600

#計算問題 #国語問題 #フローとストック #良問

問1解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/フローとストック

・最低限の知識さえあれば、後は計算問題にして国語問題。なかなかの良問である
⇒ここで言う最低限の知識とは、GDPが「付加価値の総額」であり「総生産額-中間生産物」で計算される…というもの
※私の授業では「中間生産物」という語を用いているが、本問では「中間投入物」になっている。どちらも同じ意味だと考えてよい

製パン会社、製粉会社、農家のそれぞれの生産に必要な中間投入物は、小麦、小麦粉以外にはないものとする。

・ここから、本問では、農家は無から小麦を生成できるという事になる
⇒本来なら農薬とか肥料とか種とか必要だが、そういうのなしに、無から生成していると考えてよい
⇒表で、農家の生産総額50、中間投入物の額0、付加価値額50になっているのはそれ故である。本来なら中間投入物のところに「農薬5」とか「肥料10」とかある筈

・同様に、製粉会社は小麦のみを中間生産物として小麦粉を生産している
・製粉会社についての表の表記は、生産総額150、中間投入物(ア)、付加価値額(ウ)
・ここで、最初に確認した知識が活きてくる

・GDPは、「付加価値の総額」であり「総生産額-中間生産物」で計算される
・即ち、「付加価値=総生産額-中間生産物」である
・よって製粉会社が生み出した付加価値額(ウ)は、生産総額150から中間投入物(ア)を引けばよい
・そして既に確認したように、今回、製粉会社は小麦のみを中間生産物として小麦粉を生産する
・つまり、製粉会社の中間投入物とは、農家が生産した小麦50である
⇒結果、「生産総額150-中間投入物50=付加価値額100」となる

・ここまで来たら、製パン会社の計算も同じである
・即ち、製パン会社の生産総額400から、中間投入物たる製粉会社の小麦粉を引けばよい
⇒よって、「生産総額400-中間投入物150=付加価値額250」である
※この時、引くのは製粉会社の総生産額である事に留意する。製粉会社が作って売った小麦粉は、あくまで150万円ぶんである。付加価値額100万円は、原材料費にあたる50万円を引いたもの

  農家 製粉会社 製パン会社
生産総額 50 150 400
中間投入物の額 0 50
( ア )
150
( イ )
付加価値額 50 100
( ウ )
250
( エ )

・これで表は完成した
・今回、聞かれているのは(エ)とこの国のGDPである
・(エ)は250と分かったので、後はGDPを計算すればよい

・最初に確認したように、GDPは付加価値の総額であるので、付加価値額を合計する
⇒50+100+250=400
※GDPは「総生産額-中間生産物」でも計算できるので、「(50+150+400)-(0+50+150)=400」でもよい

・よって(エ)は250、GDP(オ)は400。正解は②となる

問2

生徒Xと生徒Yは、GDP(国内総生産)について講義で学んだことを確認し合っている。次の会話文中の空欄( ア )には後の語句aかb、空欄( イ )には後の語句cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

X:GDPは一国の経済活動の規模を表す指標だね。
Y:そうだね。GDPに海外からの純所得を加え、固定資本減耗を除き、そこからさらに間接税を差し引き、補助金を加えた額は( ア )と呼ばれるよ。( ア )は一国経済の中でどのように分配されるのかな。
X:生産に貢献した者に分配されるんだよ。分配された総額が、どのように( イ )に充てられたかという点も興味深いね。
Y:確かにそうだね。生産面からみた総額と、分配面からみた総額と、( イ )面からみた総額とは、それぞれの大きさを比較するとどれが一番大きいんだろうか。
X:もちろん、( ウ )よ。

( ア )に当てはまる語句
a GNI(国民総所得)
b NI(国民所得)

( イ )に当てはまる語句
c 支出
d 投資

( ウ )に当てはまる記述
e 生産面からみた総額が一番大きい
f どの面からみた総額もすべて等しい

① ア-a  イ-c  ウ-e   ② ア-a  イ-c  ウ-f
③ ア-a  イ-d  ウ-e   ④ ア-a  イ-d  ウ-f
⑤ ア-b  イ-c  ウ-e   ⑥ ア-b  イ-c  ウ-f
⑦ ア-b  イ-d  ウ-e   ⑧ ア-b  イ-d  ウ-f

#フローとストック  #良問

問2解説

正解は:⑥
復習用資料:経済分野第一章/フローとストック

・フローとストックの知識を問う問題
⇒フローとストックと言っても、主役はフロー。GDPとGNP(GNI)の変換式や、GNP(GNI)から××を引くと△△になるよ、みたいな話が頻出。…とか言ってたら、まさにそこが問われる問題が出た、という感じ

そうだね。GDPに海外からの純所得を加え、固定資本減耗を除き、そこからさらに間接税を差し引き、補助金を加えた額は( ア )と呼ばれるよ。
a GNI(国民総所得)
b NI(国民所得)

・以下を覚えていれば解ける
1:GNP(GNI)=GDP+海外からの純所得
2:NNP=GNP-固定資本減耗(減価償却費)
3:NI=GNP-減価償却費-間接税+(政府)補助金
⇒1をやった上で3をやったのが(ア)なので、(ア)はNIである

( ア )は一国経済の中でどのように分配されるのかな。
生産面からみた総額と、分配面からみた総額と、( イ )面からみた総額とは、それぞれの大きさを比較するとどれが一番大きいんだろうか。

・この言い草を見た時点で、ビビッと「あー三面等価の原則を聞きたいのね?」と思いついてほしい
⇒NIを引き算ではなく足し算で産出する方法もあり、やり方は三通り。生産を足し算、分配を足し算、そして支出を足し算。これらは全て等しい。…というのが、三面等価の原則である

・よって、(イ)は「c 支出」、(ウ)は「f どの面からみた総額もすべて等しい」である

問3

生徒Xは、市場の失敗の例を考えた。次の記述ア〜ウのうち、市場の失敗の例として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

ア 市場で特定の企業の支配が進み、その企業が価格支配力をもつ。
イ ある企業の周辺の住民が、対価を受け取ることなく企業活動による不利益を被る。
ウ 市場で取引を行う場合、売り手がもっている情報をすべて買い手ももっている。

① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ

#市場の失敗

問3解説

正解:④
復習用資料:経済分野第一章/市場の失敗

・純粋に市場の失敗の知識を問う、非常に分かりやすい問題

ア 市場で特定の企業の支配が進み、その企業が価格支配力をもつ。

・正文。独占市場で起きる、管理価格の問題である

イ ある企業の周辺の住民が、対価を受け取ることなく企業活動による不利益を被る。

・正文。いわゆる外部不経済の話である

ウ 市場で取引を行う場合、売り手がもっている情報をすべて買い手ももっている。

・誤文。情報の対称性は、むしろ、理想的な市場にあってほしい要素である
⇒そういう知識がなくても、市場の失敗とは「政府が何もしない(自由放任)まま放っておくと、よくない事が起きるよ」であり、「市場で取引を行う場合、売り手がもっている情報をすべて買い手ももっている」ってよくない事か…? と考えれば解ける

問4

物価に関連して、生徒Xは、GDPデフレーターについて調べ、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )には後の数値a〜dのいずれか、空欄( イ )には後の語句eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

○GDPには名目GDPと実質GDPがある。
○GDPデフレーターは、基準年の値を100とする物価変動の指標である。
○たとえば、2010年の名目GDPは400兆円、2020年の名目GDPは540兆円、2010年の実質GDPは400兆円、2020年の実質GDPは360兆円である経済を考えた場合、2010年を基準年とした場合の、2020年のGDPデフレーターは( ア )である。
○この結果をみると、基準年と比較して2020年の物価は( イ )したといえる。

( ア )に当てはまる数値
a 66
b 90
c 135
d 150

( イ )に当てはまる語句
e 上昇
f 下降

① ア-a  イ-e
② ア-a  イ-f
③ ア-b  イ-e
④ ア-b  イ-f
⑤ ア-c  イ-e
⑥ ア-c  イ-f
⑦ ア-d  イ-e
⑧ ア-d  イ-f

#計算問題 #経済成長率 #良問

問4解説

正解:⑦
復習用資料:経済分野第一章/経済成長率

・経済成長率の問題は普通、名目GDPとGDPデフレーターを見せて「実質成長率は?」と聞く
・本問は、名目GDPと実質GDPを出してGDPデフレーターや物価変動を聞く、ひねった問題である
・単純な計算問題ではなく、経済成長率に関する知識も必要な良問である

たとえば、2010年の名目GDPは400兆円、2020年の名目GDPは540兆円、2010年の実質GDPは400兆円、2020年の実質GDPは360兆円である経済を考えた場合、2010年を基準年とした場合の、2020年のGDPデフレーターは( ア )である。

・上記を表にすると、以下のようになる
⇒経済成長率についてきちんと理解していれば、↓の表を見た時点で、「名目GDP伸びてるのに実質GDPむしろ下がってる…って事は実際には超のつく不況だぞこれ……物価がアホほど上がってるだけで、商品の生産量なんかはむしろ減ってるぞ」という感想が出てくる筈である

     
  名目GDP 実質GDP
2010年 400 400
2020年 540 360

・「実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター×100」なので、これを元に計算していけばよい
⇒例えば、2010年は「400=400÷GDPデフレーター×100」⇒「GDPデフレーター=100」

・2020年は「360=540÷GDPデフレーター×100」である
⇒両辺にGDPデフレーターを掛けて「GDPデフレーター×360=540×100」
⇒両辺を360で割って「GDPデフレーター=540×100÷360」
⇒後は計算すると、「GDPデフレーター=150」

・これは要するに、2010年からの十年で物価が1.5倍になったという話である

○この結果をみると、基準年と比較して2020年の物価は( イ )したといえる。

・当然、(イ)に入る言葉は「上昇」となる

問5

公害問題に関連して、生徒Xは、同一の汚染物質を排出する企業Aと企業Bだけが存在するある地域を想定し、ある年の企業Aと企業Bの汚染水の年間排出量と汚染水に含まれる汚染物質の割合(汚染水の濃度)を示す次の表を作成した。この地域で、汚染物質を減少させる規制を導入するとする。なお、企業Aと企業Bは後の仮定にしたがうものとする。この地域で1年間に排出される汚染水に含まれる汚染物質の総量を、いかなる場合においても規制導入以前より確実に減少させる規制の内容として正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

  企業A 企業B
汚染水の年間排出量 (トン) 100 500
汚染水の濃度 (%) 1 2

仮定
○規制導入後は、企業Aも企業Bも、汚染水の年間排出量や汚染水の濃度を増減させる。
○規制導入後は、制限がかかったものについて企業Aも企業Bも、制限内の量や濃度で汚染水を排出する。
○規制に対応するための費用負担は一切考慮しない。

① 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに0.1%までに制限するが、汚染水の年間排出量は制限しない。
② 汚染水の濃度は制限しないが、汚染水の年間排出量を企業Aは50トンまで、企業Bは200トンまでに制限する。
③ 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに1.5%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは120トンにする、企業Bは600トンまでに制限する。
④ 汚染水の濃度を企業Aは1%までに、企業Bは2%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは300トンまでに、企業Bは400トンまでに制限する。

#計算問題

問5解説

正解:③

・一見すると「市場の失敗の公害関係の問題かな?」となるが、その実、ただの計算問題である

・表を見ると、企業Aは現状、濃度1%の汚染水を100トン排出している
⇒つまり、現時点で企業Aは汚染物質を1トン排出している
・同様に、企業Bは現状、濃度2%の汚染水を500トン排出している
⇒つまり、現時点で企業Bは汚染物質を10トン排出している

・よって、現時点で、企業AB合わせて11トンの汚染物質を排出している
・この汚染物質排出量を減らせる規制内容を考えろ、という問題となる

① 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに0.1%までに制限するが、汚染水の年間排出量は制限しない。

・「濃度0.1%の汚染水を五千兆トン!」とかできちゃうので駄目

② 汚染水の濃度は制限しないが、汚染水の年間排出量を企業Aは50トンまで、企業Bは200トンまでに制限する。

・「濃度100%の汚染水を200トン排出!」とかできちゃうので駄目

③ 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに1.5%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは120トンにする、企業Bは600トンまでに制限する。

・①②は計算以前の常識問題だったが、ここから計算問題になる
・要するに、以下のような計算をすればよい
⇒120×0.015+600×0.015=10.8
⇒この式は、「③の規制を導入した場合、汚染物質は最大でも10.8トンまでしか排出できなくなる」という事を表している

・10.8トンという数値は、規制前の汚染物質排出量11トンより低い
・よって、③が正答となる

④ 汚染水の濃度を企業Aは1%までに、企業Bは2%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは300トンまでに、企業Bは400トンまでに制限する。

・既に③が正答というのは分かっているが、④も一応検討しておこう
・こちらも、選択肢に書いてある内容通りに計算をすればよい
⇒300×0.01+400×0.02=11

・つまり④を導入しても、最大まで11トン(規制前と同じ量)までは汚染物質が出せてしまう
・よって、やはり④は誤答選択肢である

問6

生徒Yは、講義で配布された景気循環に関する次の資料1〜4を読み直している。資料2〜4は、1989年から1994年までの日本の、GDP、民間設備投資、民間部門の在庫、それぞれの実質額が前年に比べてどのように増減したかを示している。なお、資料2〜4の中の空欄ア〜ウには、「GDP」「民間設備投資」「民間部門の在庫」のいずれかの語句が当てはまる。空欄ア〜ウに当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

資料1 景気循環に関する説明
○景気循環は、以下のような経過にしたがうといわれる。
・生産の増大が続くが需要の増加が十分でないとき、商品の売れ残りが増加し企業の利潤が減少する。
・企業の利潤の減少にともない、雇用は減少し、景気は後退する。
・景気の後退は、企業による生産の抑制や設備投資の減少とさらなる雇用の減少を促し、経済は不況に至る。
・企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理とともに需要が増加し、景気は回復し、さらに好況に向かう。この中で企業の設備投資も活発化し、生産や雇用も増加していく。
○1989年から1994年までの日本では、上記のような経過が観察される。

① ア GDP  イ 民間部門の在庫  ウ 民間設備投資
② ア GDP  イ 民間設備投資  ウ 民間部門の在庫
③ ア 民間部門の在庫  イ GDP  ウ 民間設備投資
④ ア 民間部門の在庫  イ 民間設備投資  ウ GDP
⑤ ア 民間設備投資  イ GDP  ウ 民間部門の在庫
⑥ ア 民間設備投資  イ 民間部門の在庫  ウ GDP

#国語問題 #日本経済通史 #時事問題 #難問

問6解説

正解:④
復習用資料:経済分野第四章/明治維新から終戦まで
復習用資料:経済分野第四章/終戦直後
復習用資料:経済分野第四章/高度経済成長期
復習用資料:経済分野第四章/安定成長期
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年

・日本経済史の知識と、国語の問題を組み合わせた難問
⇒日本経済史の知識は、具体的には、「1991年から1993年にかけて、バブル崩壊とか平成不況と言われる大不況になった」が必要
⇒景気循環の知識も必要ではあるが、この辺の知識については問題文に書いてあるので、知らなくても問題はない

~ところで問題文が一部怪しくない?~
・景気循環の説明の最後の行がかなり怪しい
・「需要が増加」すると「景気は回復」する。これは当たり前の事で問題ない
・ただ、「企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理」は、「需要が増加」する事を導くのか?
・…と言うと、まぁ導かないでしょうねで終わる
⇒結局のところ、需要は“買う側”の話であり、企業は基本“売る側”な訳で…無論、企業も設備投資(新たな機械の購入や新工場の建設等)や原材料購入等で“買う側”として重要な役割を果たしていると言えばそうなんですが…
⇒「過剰在庫の処分や過剰設備の整理」が終わった後、企業が“今時の売れそうな商品”を作る為に設備投資しようとする、みたいな話を端折った結果なのかもしれない
~もうちょっとちゃんと問題文練りこんでほしかった~

・この問題、「不景気になってもよっぽどの事がなければGDPは減らない」を知っていると解きやすい
⇒教科書に載っているような知識ではない、いわば時事問題で使うような雑学に類する知識なので、現役高校生が知っているかと言うとかなり微妙だが…
⇒実際、戦後日本の名目GDP(円建て)はバブル崩壊時、下がっていない。リーマンショックの時やコロナパンデミックの時は下がっている。いやでも高校生はこんな事知らんよ…
⇒ただ、「経済成長率プラスは好景気、マイナスは不景気」からもう一歩進んで、「経済成長率がやたら低い(0.01%とか)のも不景気」というのは知っておいて損はない。これは、「インフレは好景気、デフレは不景気」からもう一歩進んで、「デフレ傾向(インフレ率0.01%とか)も不景気」というのを知っておいて損はない、というのと一緒

・ともあれ上記知識があれば、(ウ)が恐らくGDPだろうと判断できる
⇒1991から1993年にかけて露骨に下がっているが、それでも前年度比マイナスに至っていない。そしてバブル崩壊による大不況がひと段落した1994年に、僅かながら上向いている

・こうして(ウ)が解決していれば、(ア)と(イ)は以下の文を基準に求められる

・景気の後退は、企業による生産の抑制や設備投資の減少とさらなる雇用の減少を促し、経済は不況に至る。
・企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理とともに需要が増加し、景気は回復し、さらに好況に向かう。この中で企業の設備投資も活発化し、生産や雇用も増加していく。

・これを見ると、以下の事が分かる
1:在庫や設備投資は、不況の間減り続ける(処分、整理が進む)
2:設備投資は、不況が終わると再び上がり始める(在庫はそうとは限らない)

・この知識を元に(ア)(イ)の1994年(バブル崩壊による大不況がひと段落した年)を見てみよう
・すると、(ア)は下がり続けているが、(イ)は最後に上向いている
・よって、不況がひと段落して再び増え始めた設備投資が(イ)であろうと分かる訳である

・つまり、(ア)が在庫、(イ)が設備投資、(ウ)がGDPとなる

~不況になっても、よっぽどの事がないとGDPは下がらない、と知らない場合~
・唯一下がり続けている(ア)が恐らく在庫だろうというのはいいとして、問題は(イ)(ウ)
・どちらがGDPでどちらが設備投資か、明確な材料があんまりないのである
・一応見分ける点としては、1990年。(イ)は下がっており、(ウ)は上がっている
⇒1990年はまだバブル景気で、景気がよかった年である。普通、景気がよければ設備投資も活発だし、GDPも上がる。…が、「景気がいいのにGDPが下がる」と「景気がいいのに設備投資が減ってる」どちらが不自然かと言えば、まぁ前者だよなぁ…で(イ)が設備投資、(ウ)がGDPと分かる
~一応、無茶な知識を要求する理不尽問題ではないです。ただ難問ではある~

問7

下線部⑥に関連して、生徒Yは、比較優位について復習するため、次の表のようなモデルケースを考え、後のメモを作成した。表は、自動車とオレンジのみを生産するA国とB国の、A国における技術革新前・技術革新後における、それぞれの財を1単位生産するために必要な労働者数を示したものである。ただし、いずれの国も、いずれの財の生産においても必要な生産要素は労働力のみとする。後の数値a〜cのうち、表中における空欄( ア )に当てはまる数値として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 A国の技術革新以後に、A国における自動車1単位を生産するために必要な労働力の量が( ア )人であるとき、A国の技術革新以前も技術革新以後で、自動車生産に比較優位をもつ国が変わる。

( ア )に当てはまる数値
a 15
b 6
c 3

① aとb
② aとc
③ bとc
④ aとbとc

#計算問題 #比較生産費説 #資本主義

問7解説

正解:⑥
復習用資料:経済分野第一章/資本主義

・比較生産費説の問題。かなりひねってある難しい問題である

・まず、全ての比較生産費説の問題に共通するが、問題文中の表の考え方を間違えないようにしたい
・例えば「20人」と書いてあれば、「20人で1個」商品を作れる、と考えればよい

・例えば上記のように考えればよい訳である
・そして、「片方の商品を作るのをやめてもう片方の商品を作った時どうなるか」を考えればよい

・「A国における技術革新以前」を比べてみよう
・自動車生産を諦めてオレンジ生産に特化した時、生産量が増えるのはA国である
・逆にオレンジ生産を諦めて自動車生産に特化した時、生産量が増えるのはB国である
・このような場合、A国はオレンジ生産に、B国は自動車生産に比較優位がある、という言い方をする
⇒実際、そのようにした場合、両国合わせて6.4個の商品を生産できる。逆にした場合、4.75個しか生産できない

・後は、A国の技術革新によって、どれぐらいA国の自動車生産が効率化されるかである

・(ア)に入るのがa、つまり15の場合
・まだ、B国がオレンジ生産を諦めて自動車生産に特化した方がよい
⇒その場合、両国合わせて5.4個の商品を生産できるが、逆であれば4.83333…個しか生産できない

・(ア)に入るのがb、つまり6の場合
・ここに来て比較優位が逆転。A国がオレンジ生産を諦めて自動車生産に特化した方がよくなる
⇒その場合、両国合計5.3333…個生産できる。逆の場合、3.6個しか生産できない

・(ア)に入るのがc、つまり3の場合は、もう計算するまでもない
・即ち、A国の自動車生産に対する比較優位はより盤石となる
・よって、bとcが正解となる

問8

生徒Yは、貿易による国内市場への影響について学習を進め、安価な冷凍野菜の輸入解禁が国内の生鮮野菜市場に与える影響を考えた。ただし、生鮮野菜の供給は国内のみから、冷凍野菜の供給は国外のみからであるとし、冷凍野菜の輸入解禁以外の変化は生鮮野菜市場において起こっていないものとする。さらに、消費者は、生鮮野菜の価格が高いほど、生鮮野菜より冷凍野菜を好んで購入する傾向にあるとする。このとき、冷凍野菜の輸入の解禁と解禁後の、生鮮野菜の需要曲線を表す図として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

#需要供給曲線  #難問

問8解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/需要供給曲線

・需要供給曲線の問題の中でも、かなり難しい方である

・問題文から、選択肢①~④は、生鮮野菜の需要曲線を表している
・また、点線は生鮮野菜しか市場に存在しなかった頃の需要曲線を表す
・同様に、実線は生鮮野菜と冷凍野菜両方が市場に存在する時の需要曲線を表す

・需要曲線とはつまり、「買う側」の「買いたい」という気持ちである
・では、「同じ価格でも、その商品を買う人は増えるか、減るか」という点で見てみよう

・①~④の各図に、任意の価格を設定してみた
⇒例えば①を見てほしい。生鮮野菜しか存在していなかった頃(点線)、生鮮野菜がとある価格(太線)であった時、どれぐらい買う人がいるかと言うと、点線と太線の交点(右側の丸)である。一方、生鮮野菜も冷凍野菜も存在するようになってから(実線)、生鮮野菜がとある価格(太線)であった時、どれぐらい買う人がいるかと言うと、実線と太線の交点(左側の丸)である

・需要供給曲線は、右に行けば行くほど数が増える
・つまり①と②は、冷凍野菜解禁後、(同じ価格であっても)生鮮野菜を買う人が減っている
・逆に③と④は、冷凍野菜解禁後、(同じ価格であっても)生鮮野菜を買う人が増えている

・そしてこれは、どう考えても①か②の方が正しい
⇒「生鮮野菜を買うしかなかった」時代と、「生鮮野菜の代わりに冷凍野菜を買える」時代、「生鮮野菜を買う人」はどちらが多く、どちらが少ないか? という話である。当然、「生鮮野菜の代わりに冷凍野菜を買える」ようになれば、生鮮野菜を買う人は減る

・では、①と②どちらが正しいのか?

消費者は、生鮮野菜の価格が高いほど、生鮮野菜より冷凍野菜を好んで購入する傾向にあるとする。

・①と②どちらが正解かを決めるのはここである
・これは言い方を変えると、「冷凍野菜解禁後、人は、高い生鮮野菜を買わなくなる」という話である

・①と②の生鮮野菜に、非常に高い価格(太線)を設定してみた
※需要供給曲線の縦軸は価格。上に行けば行くほど高くなる

・すると、冷凍野菜解禁後(実線)、①は買う人がいる(太線と実線の交点ぐらいいる)
・一方、②は誰も買わない(太線と実線が交わってすらいない。即ちこの価格の生鮮野菜を買う人は皆無)

・「冷凍野菜解禁後、人は、高い生鮮野菜を買わなくなる」に合致するのは②である

・よって、正解は②となる

第4問

問1

生徒Xは、国際社会には主権国家より上位に立つものがないので、社会というよりは自然状態であるといわれることがあると知り、図書館で関連する文献を調べた。次の記述ア〜ウは、それぞれ「自然法論」「戦争と平和の法」「リヴァイアサン」の一節が含まれている。記述ア〜ウと後の著者名a〜cとの組合せとして正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

ア 「自然状態はそれを支配する自然法をもち、すべての人間がそれに拘束される。…(略)…その自然法たる理性は、…(略)…何人も他人の生命、健康、自由、あるいは所有物を侵害すべきではないということを教えるのである。」

イ 「人びとが、かれらすべてを威圧しておく共通の権力なしに、生活しているときには、…(略)…自身のつよさと自分自身の工夫が与えるもののほかには、なんの保証もなしに生きている。…(略)…」

ウ 「戦の最中には、法は沈黙するかもしれないが、…(略)…自然が定め、または万民の合意が定立したところのものは依然効力を有する。…(略)…人民の間には、戦争を行うについて、かつまた戦争に関して有効なる共通法が存在する。…(略)…」

a グロティウス(グロチウス)
b ホッブズ
c ロック

① ア-a  イ-b  ウ-c
② ア-a  イ-c  ウ-b
③ ア-b  イ-a  ウ-c
④ ア-b  イ-c  ウ-a
⑤ ア-c  イ-a  ウ-b
⑥ ア-c  イ-b  ウ-a

#国家の正当性の原理

問1解説

正解:⑥
復習用資料:政治分野第一章/国家の正当性の原理

・政治分野で触れる思想家の知識を問う問題

・選択肢abcを見た時点で、「あ、この人はこういう人だな」というのをぱっと思いつければ簡単である
・例えば以下のようなものである

選択肢 名前を見て浮かぶべき知識
フーゴー・グロティウス ○国際法の理論的枠組みを提供した法学者
・特に戦時国際法的の基礎となった
トマス・ホッブズ ○社会契約説を唱えた思想家
・“万人の万人に対する闘争状態”
・だから自然権を放棄して国家に従おう
ジョン・ロック ○社会契約説を唱えた思想家
・自然状態の人って意外と平和だよ
・他者の自然権(特に所有権)を尊重するよ
・でもたまにやらかす奴がいるよね
・だから警察や裁判所が必要になるよね
・ひいては国家が必要になるよね

※倫理分野も含めると(つまり「倫理、政治・経済」の試験なんかだと)、ジョン・ロックは「人間の精神は生まれたばかりの頃は白紙(タブラ・ラサ)である」みたいな話をした哲学者としても出てくる。実際、この人はイギリス経験論の父とも言われる哲学者である。ただ、政治分野ではそこまでは扱わない

・こういう知識がちゃんと頭に入っていれば、それだけで解ける
※今回、ジョン・ロックについては結構細かい知識が出題されているが、他二つが解ければ後は消去法なので、問題ないと言えばない

ウ 「戦の最中には、法は沈黙するかもしれないが、…(略)…自然が定め、または万民の合意が定立したところのものは依然効力を有する。…(略)…人民の間には、戦争を行うについて、かつまた戦争に関して有効なる共通法が存在する。…(略)…」

・ウは明らかに、戦時国際法に関する話をしている
・国際法、特に戦時国際法の理論的枠組みを提供した思想家が、フーゴー・グロティウスである
・よってウはaであると分かる

・この時点で残る選択肢はジョン・ロックとトマス・ホッブズ、つまり社会契約説の二人である

ア 「自然状態はそれを支配する自然法をもち、すべての人間がそれに拘束される。…(略)…その自然法たる理性は、…(略)…何人も他人の生命、健康、自由、あるいは所有物を侵害すべきではないということを教えるのである。」

・自然状態から説き起こすのは社会契約説の特徴の一つである
・その時点でトマス・ホッブズかジョン・ロックのどちらかだと考えてほしい
⇒理想を言えば、ジョン・ロックが重視した自然権は所有権、というところまで覚えていればこの時点でアの答えは確定する。ただ流石にそこまで覚えていない人も多いと思われるので、このまま次に行ってみよう

イ 「人びとが、かれらすべてを威圧しておく共通の権力なしに、生活しているときには、…(略)…自身のつよさと自分自身の工夫が与えるもののほかには、なんの保証もなしに生きている。…(略)…」

・「かれらすべてを威圧しておく共通の権力なし」に生活している状態は危ういよ、と言っている
・言い方を変えれば、国家が存在していない状態で生活するのは危険だよ、と言っている
・これは明らかに、自然状態は万人の万人に対する闘争状態になった、と言うホッブズ的な記述である

・よって、アがcロック、イがbホッブズであると分かる

問2

生徒X、生徒Y、生徒Zは、アジアの経済情勢についての現状分析を行った。経済発展には人口が重要な影響をもつと考え、2020年時点で、アジアで人口が多い上位3か国の年齢別・性別人口構成をとりまとめた次の図を作成し、アジアの経済情勢について話し合っている。後の会話文中の空欄( ア )・( イ )に当てはまる国名と語句との組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

X:三つの図を比較すると、その形状は、傾向別に分けられそうだね。
Z:その形状は経済成長とも関連するという話を聞いたことがあるよ。
Y:今後、出生率と死亡率の変化の傾向に影響を与えるような要因が生じないと仮定して、2050年の年齢別・性別人口構成を予測すると、3か国のうち高齢化が進んで15歳から64歳までの生産年齢人口の総人口に占める割合が2020年より最も落ち込むと考えられる国は( ア )だね。
X:現在の日本もそうだけれど、2050年の( ア )で予測されるように総人口に占める生産年齢人口の割合が低下する状態は( イ )というよね。
Y:( イ )は経済成長にマイナスの影響を与えるといわれているね。

① ア インド  イ 人口ボーナス
② ア インド  イ 人口オーナス
③ ア インドネシア  イ 人口ボーナス
④ ア インドネシア  イ 人口オーナス
⑤ ア 中国  イ 人口ボーナス
⑥ ア 中国  イ 人口オーナス

#国語問題

問2解説

正解:⑤

・完全に国語の問題。会話文と図表を読み取れさえすれば、政治経済の知識は必要ない
・強いて言えばイは常識を聞いてくるが、そこも含めて国語の問題と言ってしまえばそう

X:現在の日本もそうだけれど、2050年の( ア )で予測されるように総人口に占める生産年齢人口の割合が低下する状態は( イ )というよね。
Y:( イ )は経済成長にマイナスの影響を与えるといわれているね。

・(イ)選択肢は「人口ボーナス」と「人口オーナス」である
・普通に考えて、ボーナスはいい事である
・じゃあ、「総人口に占める生産年齢人口の割合が低下する状態」はいい事か?
・じゃあ、「経済成長にマイナスの影響を与える」のはいい事か?
・…と考えると、まぁ(イ)は人口オーナスであると考えられる

Y:今後、出生率と死亡率の変化の傾向に影響を与えるような要因が生じないと仮定して、2050年の年齢別・性別人口構成を予測すると、3か国のうち高齢化が進んで15歳から64歳までの生産年齢人口の総人口に占める割合が2020年より最も落ち込むと考えられる国は( ア )だね。

・では、2050年に人口オーナス状態になる国(ア)はどれか?
※尚、上記にあるように、出生率や死亡率は特に変化しないものと仮定して考察する事になる

・ここで注目すべきは、図表中各国の若年人口の数値である
・各国を比較すると、中華人民共和国の若年人口が、露骨と言えば露骨なぐらい減っている
⇒インドネシア共和国も0~4歳人口は減っているし、インド共和国も今後ヤバそうな気配を感じさせる程度には20歳未満人口が減っているが、中華人民共和国はそういう問題ではない。「20~24」の数字より下のあたりが、とんでもない勢いで減っている

・今回想定されているのは2050年、つまり2020年から三十年後である
・2050年の中華人民共和国では、先に見た露骨に少ない層が、三十代から五十代、働き盛りとなる
・そして、その露骨に少ない層より上の世代は沢山いるので…

・という訳で、(ア)は中華人民共和国であると考えられる

問3

生徒Yは、下線部⑧の現状について調べた。アジアのインフラ開発やODA(政府開発援助)に関連する記述として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

① 中国が取り組む一帯一路構想は、現代のシルクロードとして、陸路のみによる経済圏構築をめざしているものである。
② 中国が主導して設立されたアジアインフラ投資銀行への参加は、アジア諸国に限定されている。
③ 自然災害や紛争による被災者の救援のために日本のODAとして行われる食料や医薬品の無償援助は、国際収支の第2次所得収支に含まれる。
④ ODAは発展途上国の経済発展のために行われるものであり、日本では開発協力大綱によって日本の国益を考慮せずに行うことが示されている。

#国際経済の仕組み

問3解説

正解:③
復習用資料:経済分野第一章/国際経済の仕組み

・消去法ではなく、「他の選択肢は知らんけど③は合ってるでしょ」で解く問題である
・そして、「③は合ってる」と判断するには、国際収支についての知識が必要となる
⇒一見すると何を聞きたいのかよくわからないが、その実、国際収支の知識を問うている問題であると言える

③ 自然災害や紛争による被災者の救援のために日本のODAとして行われる食料や医薬品の無償援助は、国際収支の第二次所得収支に含まれる。

・国際収支の中でも、「見返りを求めないカネ」の収支は第二次所得収支に計上される
・災害の義捐金もそうだし、紛争被害者への無償援助も勿論第二次所得収支である
・よって、明らかに③が合っている。③が正解…という解き方をする問題である

・尚、他の選択肢の知識がある事については、問題作成者も期待していないだろう
・一応④は政治経済の授業で扱われるが、①②は本当に報道とかよく見てないと分からない
・一応、以下に軽く解説をしておく

① 中国が取り組む一帯一路構想は、現代のシルクロードとして、陸路のみによる経済圏構築をめざしているものである。

・普通に海路も入っている
⇒それこそ、十九世紀に欧米各国がやってたような事をかまされた(中華人民共和国に借金漬けにされて、その借金のカタに港を「租借」された)某セイロン島の国は、一帯一路構想に於ける重要拠点と目されている

② 中国が主導して設立されたアジアインフラ投資銀行への参加は、アジア諸国に限定されている。

・アジアインフラ投資銀行と言われてぱっと思いつかない人も、AIIBと言えば通じるかも
・これは「アジアでのインフラ建設に投資する銀行」であり、アジア諸国以外も参加している
⇒…と言うか、中華人民共和国が一帯一路の建設の為に作った国際銀行みたいなところがあり、もっと言えば、「日本とかアメリカとか、ムカつくよな。同じ事思ってる奴ら、俺達と一緒に世界を変えようぜ!」みたいなノリで作った組織でもあり…なのでロシア連邦を筆頭に、世界中の様々な国が参加している

④ ODAは発展途上国の経済発展のために行われるものであり、日本では開発協力大綱によって日本の国益を考慮せずに行うことが示されている。

・そもそも、日本の国益を考えてODAやりましょう、と決めたのが開発協力大綱である

問4

金融に関連して、生徒X、生徒Y、生徒Zは、家計の金融資産構成における日本、アメリカ、ヨーロッパの違いに関心をもち調べた。そして生徒たちは、日本、アメリカ、ヨーロエリアにおける家計の金融資産構成を示す次の資料をみつけ、その特徴について話し合っている。後の会話文中の空欄ア・イに当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

X:アメリカは、日本やユーロエリアと比較すると株式等の保有比率が高いね。
Y:一般に、収益性が高い金融資産は、安全性や流動性が( ア )といわれているね。
Z:家計の金融資産構成にはリスクとリターンに対する考え方が現れているともいえるんだね。
Y:私は資産が減る可能性を最も低くしたいから、リターンが低くてもいいな。そういう意味では、この資料の中だと( イ )のような金融資産構成の方が好みが考え方に合っているね。
X:私はリスクが高くても将来的に資産が増える可能性が高い方がいいけどね。

① ア 低い  イ 日本
② ア 低い  イ アメリカ
③ ア 低い  イ ユーロエリア
④ ア 高い  イ 日本
⑤ ア 高い  イ アメリカ
⑥ ア 高い  イ ユーロエリア

#国語問題 #社会保障

問4解説

正解:①
復習用資料:経済分野第二章/社会保障

・金融に関係する問題。国語能力と常識があれば解ける

・常識と言うのは、例えば「現金とか預金って、よっぽどの事がないと消し飛ばないよね」である
⇒箪笥の中に現金を貯金してたら家が燃えて一緒に燃えちゃったとか、貯金を全部銀行に預けてたら銀行が潰れちゃって引き出せなくなっちゃった、とか

・他にも、「株って要はギャンブルだよね」というのも常識と言えるだろう
⇒株は株でも、「この会社を応援しよう」ではなく「安い内に買って高くなったら売り払おう」はまぁギャンブルと言ってしまってよい

Y:一般に、収益性が高い金融資産は、安全性や流動性が( ア )といわれているね。

・勿論、沢山儲かるものはリスクが高い(安全性が低い)、というのも常識である
・故に(ア)は「低い」であろう

Y:私は資産が減る可能性を最も低くしたいから、リターンが低くてもいいな。そういう意味では、この資料の中だと( イ )のような金融資産構成の方が好みが考え方に合っているね。

・では、資産が減る可能性を最も低くしたいのであれば、日米欧どの形がよいか?
・例えば米国型は、株の比率が高すぎる。株は儲かるがその分ギャンブルである
・一方、日本型は、余程の事がなければ消滅しない「現金・預金」による資産形成が半分を超える
・こう考えると、日本型の金融資産構成がYの好みに合うと考えられる

※ただこの問題、「いやでもインフレしてると現金って価値下がっていくよな…?」という話を考慮に入れてしまうと大変面倒な事になってしまう。そういう考え方を考慮に入れるのであれば、ユーロエリアの金融資産構成が最も安定的とも言えそうな感じがしてしまう。うーんあんまりいい問題じゃないですねこれ…

問5

生徒Zは、宇宙開発に関連して、宇宙に関する国際法について調べた。次の資料は、宇宙条約(宇宙空間平和利用条約)から条文を抜粋したものである(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。また、資料中の当事国とは、条約の効力が及びている国をいう。後の記述ア〜ウのうち、資料に基づいて判断したとき、当事国であるJ国が宇宙条約違反となる事例として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

第1条 …(略)…月その他の天体を含む宇宙空間は、すべての国がいかなる種別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従って、自由に探査しおよび利用することができるものであり、また、天体のすべての地域への立入りは、自由である。…(略)…
第2条 月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用もしくは占拠またはその他のいかなる方法によっても国際法上取得の対象とはならない。
第4条 条約の当事国は、核兵器および他の種類の大量破壊兵器を運送・配備・設置もしくは地球を周り軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に置かないことを約束する。
第6条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動がすべて、それが政府機関によって行われるか非政府機関によって行われるかを問わず、国際的責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従って行なわれることを確保する国際的責任を有する。…(略)…
第7条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射しもしくは発射させる場合またはその領域から物体が発射される場合において、その物体を発射した国および物体が領域から発射された国は、その物体またはその部品が月その他の天体を含む宇宙空間における条約の他の当事国またはその自然人もしくは法人に与える損害について国際的責任を有する。

ア J国は、地球を回る軌道上に、核兵器を搭載した人工衛星を乗せた。
イ J国は、自国の宇宙船が着陸した月面上のある場所の周辺を、自国の領土であると主張し、占拠した。
ウ J国の企業Kが製作しJ国国内から打ち上げた人工衛星が、他の当事国の領域に落下して甚大な損害を与えたところ、その原因は企業Kにあったことが立証されたので、J国は自国に国際的な責任はないと主張して責任をとらなかった。

① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ

#国語問題

問5解説

正解:⑦

・徹頭徹尾国語の問題。令和六年本試の政治経済はとにかく国語の問題が多い
・選択肢に書いてある内容が、問題文本文の条約違反になるものを選べばよい

ア J国は、地球を回る軌道上に、核兵器を搭載した人工衛星を乗せた。
第4条 条約の当事国は、核兵器および他の種類の大量破壊兵器を運送・配備・設置もしくは地球を周り軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に置かないことを約束する。

・並べると一発で分かるが、選択肢アは第四条違反である

イ J国は、自国の宇宙船が着陸した月面上のある場所の周辺を、自国の領土であると主張し、占拠した。
第2条 月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用もしくは占拠またはその他のいかなる方法によっても国家による取得の対象とはならない。

・こちらも並べると一発で分かる。選択肢イは第二条違反である
⇒ちなみに、「人類はついに宇宙へ飛び出し、月を植民地化した!」「人類は火星に住むようになった!」みたいなSF作品で、月や火星を支配しているのは国家ではなく企業…というものが多いのは、これが理由である。宇宙条約は「国家による取得」を禁じているだけで、企業による取得は禁じていないのだ

ウ J国の企業Kが製作しJ国国内から打ち上げた人工衛星が、他の当事国の領域に落下して甚大な損害を与えたところ、その原因は企業Kにあったことが立証されたので、J国は自国に国際的な責任はないと主張して責任をとらなかった。
第7条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射しもしくは発射させる場合またはその領域から物体が発射される場合において、その物体を発射した国および物体が領域から発射された国は、その物体またはその部品が月その他の天体を含む宇宙空間における条約の他の当事国またはその自然人もしくは法人に与える損害について国際的責任を有する。

・これはちょっと長いが、並べてみれば選択肢ウが第七条違反だというのは分かる
⇒「J国の企業Kが製作しJ国国内から打ち上げた人工衛星」は「宇宙空間に物体を発射しもしくは発射させる場合またはその領域から物体が発射される場合」のどれかに当たる。そして、発射された物体が「与える損害について国際的責任を有する」と第七条にはっきり書いてあるが、選択肢ウでは「J国は自国に国際的な責任はないと主張して責任をとらなかった」とある

問6

生徒Xと生徒Yは、科学技術の利用とリスクについて議論している。次の会話文中の空欄( ア )には後の語句aかb、空欄( イ )には後の記述cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

X:私たちは地球規模の課題をたくさん抱えているけれど、科学技術がもっと発展すれば、すべて解決できるかもしれないね。たとえば、新しい資源の開発や省資源・省エネルギー、再生可能エネルギーに関する技術の開発などによって、エネルギー問題を解決できるかもしれないよ。発電所の排熱を暖房や給湯などに利用して熱効率を高める( ア )の技術を導入する事例もあるよ。
Y:科学技術の発展に期待はしたいけれど、そんなに楽観的でいいのかな。科学技術は私たちにとって、さまざまなリスクももたらすのではないかな。たとえば、情報通信技術の急速な進展によって、大量の情報を短時間で処理し伝送できるようになったけれど、同時に、個人の私生活に関する情報もケンしやすくなったため、プライバシーの権利がないように( イ )のリスクが高まったよ。日本においてプライバシーの権利は、( イ )だよね。
X:たしかにリスクは高まったけれど、あらゆるものにインターネットやAI(人工知能)が活用されることで、エネルギーの効率的な利用もできるようになり、環境問題やエネルギー問題の解決につながると思うよ。
Y:そうだね。また、AIなどの先端技術は国家的な競争が激しく、また、自国の技術が他国の軍事技術に利用されることもあるよ。そのため日本では、( ウ )。
X:なるほど。科学技術の発展を促進しつつ、そのリスクに備え、ルールを作っていかないといけないねということだね。

( ア )に当てはまる語句
a スマートグリッド
b コージェネレーション

( イ )に当てはまる記述
c 現在、自らについての情報が勝手に利用されないように、それをコントロールする権利でもあるとらえられているよね
d 憲法制定時から重要だと認識されていたので、憲法第13条は、私生活をみだりに公開されない自由を明文で保障しているよね

( ウ )に当てはまる記述
e 経済安全保障推進法に基づいて、半導体など特定の重要な先端技術の流出を防止するための制度作りが行われているよ
f 1980年代の貿易摩擦で対象の品目に含まれていた半導体を、制限なく輸出できるようにするための政策が実施されているよ

① アーa イーc ウーe
② アーa イーc ウーf
③ アーa イーd ウーe
④ アーa イーd ウーf
⑤ アーb イーc ウーe
⑥ アーb イーd ウーf

#時事問題  #国語問題 #新しい人権

問6解説

正解:⑤
復習用資料:政治分野第二章/新しい人権

・時事問題でもあり、国語の問題でもあり、新しい人権の問題でもある欲張りセット

発電所の排熱を暖房や給湯などに利用して熱効率を高める( ア )の技術を導入する事例もあるよ。
a スマートグリッド
b コージェネレーション

・報道をよく見ている人は知っている単語、かもしれない
・一応、解説をそれぞれ政府系サイトから拾ってきてみた

スマートグリッド:スマートグリッドとは、情報通信技術を活用することによって、電力の需要と供給を最適化する次世代の電力網のこと
(総務省ウェブサイト/https://www.soumu.go.jp/main_content/000161105.pdf)

コージェネレーション:2つのエネルギーを同時に生産し供給するしくみです。現在主流となっているコジェネは、「熱電併給システム」と呼ばれるもので、まず発電装置を使って電気をつくり、次に、発電時に排出される熱を回収して、給湯や暖房などに利用します
(経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト/
 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cogeneration.html)

・という訳で、(ア)はコージェネレーションが正解となる

日本においてプライバシーの権利は、( イ )。
c 現在、自らについての情報が勝手に利用されないように、それをコントロールする権利でもあるとらえられているよね
d 憲法制定時から重要だと認識されていたので、憲法第13条は、私生活をみだりに公開されない自由を明文で保障しているよね

・これは新しい人権の知識を問うているところ
・プライバシーの権利は、いわゆる「新しい人権」に分類される
・「新しい人権」は、日本国憲法制定時には想定されていなかった人権全般を指す概念である
・よって、dは明らかに間違っていると分かる。(イ)はcが正解となる

※勿論、「プライバシーの権利は近年、cに書いてあるように発展し、その結果が例えば個人情報保護法である」という知識があれば、それはそれで解ける

また、AIなどの先端技術は国家的な競争が激しく、また、自国の技術が他国の軍事技術に利用されることもあるよ。そのため日本では、( ウ )
e 経済安全保障推進法に基づいて、半導体など特定の重要な先端技術の流出を防止するための制度作りが行われているよ
f 1980年代の貿易摩擦で対象の品目に含まれていた半導体を、制限なく輸出できるようにするための政策が実施されているよ

・ここは国語の問題
・自国の先端技術が外国の軍事技術に利用される場合もあるからどうしよう、というのが(ウ)である
・そこでfの「制限なく輸出できるように」しました! はどう考えてもおかしい
・一方、eの「特定の重要な先端技術の流出を防止する」なら話は通る

・よって、(ウ)はeが正解であると分かる

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