平成二十三年 大学入試センター試験本試験 政治経済 第4問 問7

問題

総需要管理に関連して、次の表は2007年度における日本のGNE(国民総支出)とそれを産出するために必要な項目を示したものである。この表についての記述として誤っているものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

項目 額(兆円)
民間最終消費支出 292
政府最終消費支出 93
総資本形成 123
財貨・サービスの輸出 92
財貨・サービスの輸入 84
海外からの所得 27
海外に対する所得 9
国民総支出 534

(注)表中の数字は名目値である。
(資料)内閣府『国民経済計算年報』(平成21年版)により作成

①GNP(国民総生産)の額は534兆円である
②GNI(国民総所得)の額は534兆円である
③GDP(国内総生産)の額はGNPの額より大きい
④国内需要(内需)の額は総需要の額より小さい

#フローとストック #計算問題

解説

正解:③
復習用資料:経済分野第一章/フローとストック

・フローとストックのマニアックな知識を問う問題
・…であるかのように見せかけて、最低限の知識さえあれば計算すれば解ける良問である

・まず、三面等価の原則の内容を確認しよう
⇒GNPやNIといった指標は、「生産」「分配」「支出」の三側面から計算可能で、どの計算の仕方をしても原則、全て等しい…これが、いわゆる三面等価の原則である。この法則に従えば、GNP=GNI=GNEという話になる

・三面等価の原則は、”経済学的に理想的な社会”での法則であり、現実世界では正しくない
⇒現実世界では、GNP≠GNI≠GNEである。売るつもりで作った商品が実際には売れ残る、とか発生するので当たり前 ※統計を取る時は、売れ残り在庫を”投資”にしてしまう…とかそういう操作をするので、結果として三面等価の原則が成立する(と言うか、三面等価の原則が成立するように統計を作るから、当然、三面等価の原則が成立する)場合が多い

・つまるところ、GNP、GNI、GNEの関係は、以下のどちらかになる
経済学的に理想的な社会:GNP=GNI=GNE
現実世界:GNP≠GNI≠GNE

①GNP(国民総生産)の額は534兆円である
②GNI(国民総所得)の額は534兆円である

・上記を踏まえた上で①と②を見ると、どちらも正文かどちらも誤文しかあり得ないと分かる
⇒どちらも正文ならGNP=GNI=GNEになるし、どちらも誤文ならGNP≠GNI≠GNEになる。どちらかだけが正文でどちらかだけが誤文では、”経済学的に理想的な社会”にも現実世界にもならない

・今回は「誤っているもの」を「一つ選べ」という問題である事から、①と②は正文であると分かる
⇒つまりこの問題は、”経済学的に理想的な社会”を想定して作られている

・となると③がどうかとなる訳だが、これが正か誤か見極めるには結局、計算するしかない
⇒そしてこの計算さえ素直にできてしまえば、正答が導けるのである

・では計算してみよう。GNPとGDPの換算式を使えばよい

GNP - ”国外で国民が生産した額” + ”国内で外国人が生産した額” = GDP
GNP - (”国外で国民が生産した額” - ”国内で外国人が生産した額”) = GDP
GNP - (”海外からの要素所得” - ”海外への要素所得”) = GDP
GNP - ”海外への純所得” = GDP

・問題文の表から、以下の要素は以下の額と分かる
GNE=GNP:534兆円
海外からの(要素)所得:27兆円
海外への(要素)所得:9兆円

・よって、計算式は以下のようになる
534 - ( 27 - 9 ) = GDP
516 = GDP

③GDP(国内総生産)の額はGNPの額より大きい

・よって、③は誤文である

~ここからおまけ~
・この時点で正解は③と明らかなので、④を検討する必要はない
⇒もっと言えば、受験生も”総需要の計算式””内需の計算式”など知らない。恐らく問題作成者も、”受験生が、④を正文か誤文か判断する知識がある”と思って問題を作っていない。四択正誤問題でよくある、”正解は③でしょ、他の選択肢はよう知らんけど明らかに③が正解”で解く問題である

・が、折角なので軽くやっておこう

・まず、総需要と内需の定義を簡潔に述べると、以下のようになる
総需要:”日本で生産された商品が売れた額”の合計
内需:”日本国内で売れた商品の額”の合計

・つまり、以下のようになる

  日本で生産・日本で販売 日本で生産・外国で販売 外国で生産・日本で販売
総需要 ×
内需 ×

・ここまで分かっていれば、後は考えれば解ける

・まず、内需は「民間最終消費支出」「政府最終総支出」「総資本形成」の和でよい
⇒既に見たように、内需は”日本国内で売れた商品の額”である。よって、”日本の民間が買った商品の支払額”たる「民間最終消費支出」、”日本政府が買った商品の支払額”たる「政府最終総支出」、”日本で行われた投資の額”(投資も結局は、カネを払って何かを買ったという話である)たる「総資本形成」を足せばよい

・問題文の表から、上記三項目は以下の通りである
民間最終消費支出:292兆円
政府最終消費支出:93兆円
総資本形成:123兆円

・よって、内需は以下のようになる
292 + 93 + 123 = 508兆円

・続いて、先の表から、内需に以下の計算をすれば総需要が出ると分かる
内需 - ”日本で生産・外国で販売” + ”外国で生産・日本で販売” = 総需要

・”日本で生産・外国で販売”とは、要は輸出である
・”外国で生産・日本で販売”とは、要は輸入である
・よって、先の式は以下のように変形できる
内需 - 輸出 + 輸入 = 総需要

・問題文の表から、輸出は92、輸入は84である。よって以下のようになる
内需 - 輸出 + 輸入 = 総需要
508 - 92 + 84 = 総需要
516兆円 = 総需要

・つまるところ、内需508兆円、総需要516兆円である

④国内需要(内需)の額は総需要の額より小さい

・こうしてみると、④はやはり正文である

results matching ""

    No results matching ""