令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済
第1問
※全く見る価値のないリード文省略ほぼ省略、問1のみ見る価値があるので見る価値がある部分だけ抜粋して載せている
問1
(ここからリード文必要なところだけ)
Y3:例えば、行為の善さは行為の結果にあるのではなく、多様な人々に共通している人格を尊重しようとする意志の自由にあるという思想が挙げられる。この思想を唱える哲学者は、すべての人には地表を共同で所有する権利があるのだから、どんな人にも外国を「訪問する権利」があると言っている。
(ここまでリード文)
多様性と共通性に関する生徒Xと生徒Yの会話文について、次のア〜エの考えのうち、Y3の発言にある「この思想を唱える哲学者」の考えとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
ア 人間は自分で自分のあり方を選択していく自由な存在であると同時に、自分の選択の結果に対して責任を負う存在でもある。個人の選択は社会全体のあり方にも影響を与えるので、社会への参加、すなわち「アンガジュマン」を通して個人は社会に対して責任を負う、という考え
イ 人間はこの世界では不完全で有限だが、この世界に生まれる以前、魂は、完全で永遠な「イデア」の世界にあったので、この世界においても、魂は、イデアへの憧れをもっている。その憧れが哲学の精神であり、統治者がこの精神をもつことによって、理想的ですぐれた国家が実現できる、という考え
ウ 人間は各々個別の共同体で育ち、共同体内で認められることで自己を形成する。それゆえ、個人にとっての善と共同体にとっての善とは切り離すことができず、各共同体内で共有される「共通善(公共善)」とのつながりによって、個人の幸福で充実した生は実現する、という考え
エ 人間は自己を目的として生きており、どんな相手をも手段としてのみ利用してはならない。この道徳法則に従うことを義務として自らを律する人々が形成する社会全体を普遍的な理念とするべきであり、「永遠平和」を実現するためには、この理念を国際社会にも拡大すべき、という考え
① ア
② イ
③ ウ
④ エ
問1解説
正解:④
復習用資料:倫理分野
・リード文Y3を見ると、以下のようにある
行為の善さは行為の結果にあるのではなく、多様な人々に共通している人格を尊重しようとする意志の自由にある
・即ち「結果的にいいことをした、ではなくて、いいことをしようとした、が大事」という思想である
・これは、明らかにイマヌエル・カントの思想である
・よって、カントの思想らしきものを選択肢から探せばよい
ア:アンガージュマンがある時点でジャン=ポール・サルトルの思想、と判断してほしい
イ:イデアがある時点でプラトンの思想、と判断してほしい
ウ:共通善という言葉から、マイケル・ジョゼフ・サンデルに代表される共同体主義者の思想であろう
・最後にエは、「他者を手段としてのみ利用してはならない」や永久平和がどうこうと言っている
・イマヌエル・カントはまさにこのような事を言っていた哲学者なので、エが正解
・また、Y3の言っている話(目的が大事だ)と、エの話(誰もが自己を目的とする)は類似性がある
・よって、国語力で突破しようと思えばできなくはない問題ではある。まぁかなり厳しいだろうが…
問2
ある鉄道会社で就業体験活動をした生徒Xは、その資料室で見ることができた1970年代の写真と現在の様子を比べ、多様性の尊重として、ア〜エに示す改善・工夫が行われてきたことに気付いた。それらは、法令の施行や改定とも関連があると思われた。
後の法令A〜Cのうち、BとCの目的・趣旨に基づく改善・工夫をア〜エのうちからそれぞれ選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。
気付いた改善・工夫
ア 昔の写真ではお守りや御札がオフィスや運転席に置かれているが、現在では置かれていない。
イ 昔の写真では車掌や運転士は男性で、女性はオフィスで働いているが、現在では多くの業務に女性も男性も従事している。
ウ 昔の写真では改札口の間が狭く、ホームをつなぐ高架には階段しかないが、現在では幅が広い改札口もあり、エレベーターなども設置されている。
エ 昔の写真では駅や車内の案内は漢字やひらがな、ローマ字つづりでの表示であるが、現在では多言語表示がなされている。
A 消費者基本法
B 障害者差別解消法
C 男女雇用機会均等法
① B−ア C−ウ ② B−ア C−エ ③ B−イ C−エ
④ B−ウ C−ア ⑤ B−ウ C−イ ⑥ B−エ C−イ
問2解説
正解:⑤
・法律の知識がなくとも、国語力で充分解けてしまう問題
・男女雇用機会均等法は、名前からして「男女の雇用を平等にしましょう」法である
・よって、男も女も色んな場所で平等に働くようになったよ、みたいな話が当てはまる
・障害者差別解消法も、名前だけでも性質を察する事ができる
・即ち「障害者を差別するのはやめましょう、障害者でも平等に生きられるようにしましょう」法である
・例えば車椅子の人が階段を登るのはかなり厳しいが、エレベーターがあれば容易に上下移動できる
問3
「人間はそれぞれの地域に固有の文化や伝統の中に生まれ落ち、その文化や伝統を糧にして育つ」ということに関して、生徒Xと生徒Yの学校では課外活動で地元の自治体に協力し、桃の節句、菖蒲(しょうぶ)の節句に合わせてSDGsに関するイベントを企画することになった。次のイベント企画案は、市役所のエントランスホールなどの施設を利用して、一回につき二つの目標を取り上げるものである。イベント企画案中の( ア )・( イ )に当てはまる目標の組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
問3解説
正解:①
・完全に国語の問題
・一応SDGsを問う問題ではあるが、「本文に答え書いてあるじゃん」なので特に知識は必要ない
・2~3月のイベントは、女性!女性!女性!みたいな内容である
・恐らくこれが「ジェンダー平等を実現しよう」の部分(男性は…?)(男性はいいんですか…?)
・ただその中に、「国際労働機関(ILO)」の文字があるので、労働関係の何かもやりそう
・一方4~5月のイベントは、「多機能トイレ」等が「安全な水とトイレを世界中に」だと思われる
・一方で、「分煙」とか「世界保健機関(WHO)」といった単語が出てくる
・となると、こちらのイベントでは健康関係の何かもやっていそう
・というところから、アが「働きがいも経済成長も」、イが「すべての人に健康と福祉を」だと思われる
問4
各種の法に関して、生徒Xと生徒Yは日本における民法の変遷について調べてまとめた。このうち、現行の民法の内容に関する記述として正しいものを次のア~ウからすべて選んだとき、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
ア 現行の民法では、成年年齢に達するということには、親権に服さなくなるという意味がある。
イ 現行の民法では、当事者の一方が未成年である場合に、未成年が単独で相手方とした契約は、原則として後になって取り消すことができることが定められている。
ウ 現行の民法では、当事者の一方が公序良俗に反する内容の契約を申し出た場合に、相手方がそれに合意する限りにおいて、その契約は有効となり、後になって取り消すことができないことが定められている。
① アとイとウ ② アとイ ③ アとウ ④ イとウ
⑤ ア ⑥ イ ⑦ ウ ⑧ 正しいものはない
問4解説
正解:②
消費者問題
・アとイはそのまんま正文
・現代日本では、年齢差別は合理的差別、即ちよい差別であり合法であるとされている
・即ち、未成年はマトモな判断力がなく、単独で契約を結ぶのも危険である、という考え方をする
・故に親権に服す必要があり(ア)、未成年者が単独で結んだ契約は親の判断で取り消す事ができる(イ)
・ウは、現行の民法ではそもそも公序良俗に反する契約は認められていない
・…いないが、「後になっても取り消せない」とか明らかに怪しすぎるでしょこれ…
※多分問題作ってる方も、「現行民法では、公序良俗に反する契約は認められていない」という知識を受験生が持っている事を期待せずに作っている問題だと思われる
第2問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
生徒Xたちは、人口減少の要因やその対策を考察するための資料を収集・分析する中で、人口減少の主要因は少子化だと考え、出産・子育て支援策について検討した。次の生徒Xたちのメモ中の( A )・( B )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
生徒Xたちのメモ
出産や子育ては、社会状況の変化などにより、保護者となる世代に個人的な負担が重くのしかかってきた。
日本においては、1972年に児童手当法が施行され、保護者に対し、児童手当が支給されている。児童手当法はその後の改定の過程で、出生順位の規定が撤廃され、支給対象年齢が拡大され、現在は子どもの年齢や出生順位によって金額に重みがつけられている。ただし、児童手当の支給には保護者の所得制限がある。一般的に給与などは、各人の能力や功績に比例して決められる、すなわちアリストテレスが言う( A )的正義に基づいていることが少なくない。一方、児童手当の所得制限では、収入が高ければ逆に支給が抑えられている。
児童手当などの日本の出産・子育て支援策としての社会給付は、社会が子育てに責任をもち、子育てを支えるという考え方を反映していると考えられる。アリストテレスは、法を守り、共同体の善を実現する( B )的正義を提唱している。これからの日本では、どのような出産・子育て支援策が考えられるだろうか。
① A―配分 B―調整 ② A―配分 B―全体 ③ A―全体 B―配分
④ A―全体 B―調整 ⑤ A―調整 B―全体 ⑥ A―調整 B―配分
問1解説
正解:②
復習用資料:倫理分野
・アリストテレスの言う正義は、まず大まかに二種類に分けられる
[全体的正義]:「全ての人は法を守りましょう」的な正義
[部分的正義]:「正義の法じゃなきゃ皆守りたくないよね」「だから正義の法が必要」的な正義
・本問で、Bは「法を守りましょう」的な正義だという話なので、全体的正義だと考えられる
・ところで、アリストテレスは、部分的正義を実現するには二つの正義が必要だとする
1:【配分的正義】
⇒報酬や名誉を配分する際には、それぞれの能力や功績に応じてすべきだ、というもの
2:【調整的正義】
⇒窃盗や詐欺というものが起きると、ある人が相応しくない物を持っていたり、ある人が相応しいものを持っていなかったりする状況となる。これを調整する正義。例えば窃盗なら、盗んだ者には罰を、盗まれた者には補償を与える
・問題文では、Aは以下のようにある
一般的に給与などは、各人の能力や功績に比例して決められる、すなわちアリストテレスが言う( A )的正義に基づいている
・となると、配分的正義が合致する
問2
生徒Xたちは、日本とヨーロッパのOECD加盟国について、次の図1・図2を示しながら「日本は出産・子育て支援策として、保育サービスなどの『現物給付』の充実を図る必要がある。」という提案を行うことにし、事前に他のグループに説明したところ、後のア~エのような意見が他の生徒からあった。
ア~エのうち図1・図2を正しく読み取った上での意見の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
ア 日本よりも合計特殊出生率が低いすべての国は、「現金給付」対GDP比が日本より低いため、「現金給付」より「現物給付」の充実に重点を置く提案に賛同する。
イ 「現金給付」対GDP比と合計特殊出生率には強い相関があるため、「現物給付」より「現金給付」の充実に重点を置くべきである。
ウ 「現物給付」対GDP比が日本より低くても合計特殊出生率が1.60を超える国々があるため、「現物給付」の充実を提案する前に諸外国の状況を調査してはどうか。
エ 「現物給付」対GDP比と合計特殊出生率との因果関係は示されていないため、「現物給付」の充実を提案するためには別の資料も準備した方がよい。
① アとイ ② アとウ ③ アとエ
④ イとウ ⑤ イとエ ⑥ ウとエ
問2解説
正解:⑥
・何も知識がなくても国語文と図表が読めれば解けてしまう問題
・アは「日本よりも合計特殊出生率が低いすべての国は、「現金給付」対GDP比が日本より低い」とある
・つまり、図1に於いて、日本より下にある国(点)は全て、日本より左にある、という話だが…
・んなこたーない
・イは「「現金給付」対GDP比と合計特殊出生率には強い相関がある」とある
・つまり図1の左下から右上へ引いた直線の近辺に点が散らばっているという話だが…
・んなこたーない
・ウは「「現物給付」対GDP比が日本より低くても合計特殊出生率が1.60を超える国々がある」とある
・つまり、図2に於いて、日本より左にある国(点)でも、1.60より上にあるものがある、という話だが…
・その通りである
・エ「「現物給付」対GDP比と合計特殊出生率との因果関係は示されていない」とある
・つまり、つまり図2の左下から右上へ引いた直線の近辺に点が散らばっていない、という話だが…
・その通りである
問3
生徒Xたちは、高齢化の進行と、少子化による人口減少が進むと、社会保障の面で問題が生じるのではないかと考えた。このことを中間発表で説明したところ、「今後の日本には、どのような社会保障のあり方が望ましいと考えますか。諸外国の給付規模などとの比較を踏まえて、教えてください。」という質問が他の生徒からあった。
これに対し、生徒Xたちは準備していた次の図3を踏まえ、回答した。図3は、1980年から2015年における5年ごとの日本、ドイツ、イギリス、アメリカの高齢化率と社会支出の対GDP比が表されており、生徒Xたちの回答中の( A )~( D )は、日本、ドイツ、イギリス、アメリカのいずれかである。
生徒Xたちの回答中の( A )・( D )に当てはまる国名及び( E )に当てはまる文の組合せとして最も適当なものを、後の~のうちから一つ選べ。
生徒Xたちの回答
( A )は、1980年から2015年にかけて、図3中の他のいずれの国よりも急速に高齢化が進行したと言える。そのため、社会保障の給付規模は、高齢化率が高くなるに従って、社会支出の対GDP比も大きくなっている。
( B )は、高齢化率も社会支出の対GDP比も相対的に低い水準にある。こうした傾向は、市場経済を重視する立場から、労働移動や自助努力を促す政策を展開してきたことと関連していると考えられる。
( C )では、1995年から2010年にかけて社会支出の対GDP比はほぼ横ばいであった。また、( C )は市場経済を重視していると考えられるが、1980年においてすでに他国と比べて高水準の社会支出対GDP比を実現していた。
( C )に次いで1980年に高齢化率が高かった( D )では、1990年から2010年にかけて社会支出の対GDP比が大きく引き上げられた。この現象は、1990年代にそれまでの政策からの転換を遂げたことと関連していると考えられる。
このようにして、図3に基づいて考えると、( E )が、今後の日本における社会保障のあり方を構想するための重要な要因になるだろう。
(A) | (D) | (E) | |
---|---|---|---|
① | 日本 | アメリカ | 一定期間における高齢化率の伸びに対する社会支出の対GDP比の割合を大きくするか否か |
② | 日本 | アメリカ | 市場経済と社会保障の双方を重視する政策を推進し、高齢化率を大幅に抑制し続けるか否か |
③ | 日本 | イギリス | 一定期間における高齢化率の伸びに対する社会支出の対GDP比の割合を大きくするか否か |
④ | 日本 | イギリス | 市場経済と社会保障の双方を重視する政策を推進し、高齢化率を大幅に抑制し続けるか否か |
⑤ | ドイツ | アメリカ | 一定期間における高齢化率の伸びに対する社会支出の対GDP比の割合を大きくするか否か |
⑥ | ドイツ | アメリカ | 市場経済と社会保障の双方を重視する政策を推進し、高齢化率を大幅に抑制し続けるか否か |
⑦ | ドイツ | イギリス | 一定期間における高齢化率の伸びに対する社会支出の対GDP比の割合を大きくするか否か |
⑧ | ドイツ | イギリス | 市場経済と社会保障の双方を重視する政策を推進し、高齢化率を大幅に抑制し続けるか否か |
問3解説
正解:③
A:日本国
B:アメリカ合衆国
C:ドイツ連邦共和国
D:イギリス
( A )は、1980年から2015年にかけて、図3中の他のいずれの国よりも急速に高齢化が進行した
・これは、明らかに図3中の■を指している(物凄い速度で右に伸びている)
( B )は、高齢化率も社会支出の対GDP比も相対的に低い水準にある
・これは、明らかに図3中の▲を指している(2015時点で一番左にあるし、一番下にある)
・また、「市場経済を重視する」とか「自助努力を促す」というのも非常にアメリカ的な文言である
( C )では、1995年から2010年にかけて社会支出の対GDP比はほぼ横ばい
1980年においてすでに他国と比べて高水準の社会支出対GDP比を実現
・上の文について、図3中の●が、確かに途中から横ばい(上にも下にも行っていない)になっている
・また下の文について、図3中の●は、確かに最初からかなり上の方にある
( C )に次いで1980年に高齢化率が高かった( D )
1990年から2010年にかけて社会支出の対GDP比が大きく引き上げられた
・上の文について、図3中の◆は、最初から●と同じぐらい右にある
・また下の文について、確かに途中で◆がかなり荒ぶっている
・となってくると、選択肢③か④が正解となる
・問題は(E)だが、日本は高齢化が急速に進行し、図表中で最も高齢化が進んだ国になっている
・なので「高齢化率を大幅に抑制し続ける」も何もない(抑制し続けたくても最初から抑制できていない)
・となると④は間違っていると考えられ、③が正解となる
問4
生徒Xたちは、最終発表に向け、人口減少及び高齢化が進行する自らの地域において、高齢者がよりよい生活を送るためにはどのような施策が考えられるかということについて話し合った。次の会話文中の( A )~( C )に当てはまる文の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:人口減少、高齢化が進行している私たちの住む地域の中で、どのような施策が考えられるだろうか。
Y:私たちの住む地域は高齢者世帯が多いことから、行政主体での、希望するすべての高齢者世帯への家事援助や配食サービスの実施を提案してはどうだろう。
X:公正を重視した提案だね。新たな社会保障の施策を考える時に大切な考え方だ。では、効率の面からはどうかな。
Z:効率の面からみると、( A )。
Y:そうだね。Zさんの発言に加えると、( B )ということも考えられるから効率的だし、地元にもメリットがあるね。
W:でも、効率が安易に追求されすぎて、利用者の生活の質(QOL)が損なわれることになってはいけない。提供されるサービスの質を確保し、すべての利用者が適切にサービスを受けられるという公正さの確保も大切なことだ。だから( C )とよいのではないかな。
X:施策を考えるには、様々な視点や立場から検討することが大切だね。
( A )に入る文
ア このようなサービスは、新たに行政が始めるよりも、入札を実施して、ノウハウをもつ民間企業に委ね、サービスの提供に関わる費用を行政が負担して提供する方がよいのではないかな
イ このようなサービスは、各自治体が住民の求めるすべてのサービスに対応できるようにするために、ニーズの有無に関わらず大きな組織を複数作って提供する方がよいのではないかな
( B )に入る文
ウ 行政に幾つもの新しい組織が作られることで、その運営に関わる費用が多少増えても、多くの組織が作られることによる新たな雇用の創出が期待できる
エ 企業は業務を請け負い、また利潤を得るために無駄な経費を抑えるだろうし、また、その地域で新たな雇用の創出が期待できる
( C )に入る文
オ 行政には、すべての企業がその規模や過去の実績に関わらず入札に参加できる機会の公正を確保する役割を担ってもらう
カ 行政には、企業から高齢者世帯へのサービスの提供後に、その内容を点検することによって公正さを確保する役割を担ってもらう
①A-アB-ウC-オ ②A-アB-ウC-カ ③A-アB-エC-オ ④A-アB-エC-カ
⑤A-イB-ウC-オ ⑥A-イB-ウC-カ ⑦A-イB-エC-オ ⑧A-イB-エC-カ
問4解説
正解:④
完全に国語の問題。社会科の知識とか特に関係はない。
話の展開としては、まず、「高齢者向けサービスは、公正さを考えると、行政主体でやった方がいいよね」という話で始まり、その後、「でも効率という面から見ると( A )だよね」という話に繋がる。これを受けて「( A )をやるなら( B )ってことが考えられるよね」という話になる。そして、「効率追求ばっかりにした結果、サービスの質が下がったらマズイから、( C )をしよう」という展開である。
選択肢を見ると、( A )の選択肢は、アの「企業にやらせる」かイの「行政主体でやる」かである。この二つの選択肢の中で、イの「行政主体でやる」の文章は、明らかに効率性について考えていない。公正さのみを頭に入れて語っている。この時点で、( A )はアが正解の可能性が高い。
また、( B )の選択肢は、( A )で「企業にやらせる」を選んだか、「行政主体でやる」を選んだかで変動するような内容である。また、( C )の選択肢を見ると、どちらの選択肢も「企業にやらせる」話が行われている事を前提にした内容になっている。こう考えると、( A )の時点で「企業にやらせる」選択肢を選んでいなければならない。
このように考えてくると、( A )はアの「企業にやらせる」が正解と考えられる。また、( B )は、エの企業関係の選択肢が正解だと考えられる。
最後の( C )だが、どちらの選択肢も「企業にやらせる」としてどのように公正さを確保するかについて語っている。そして会話文を読む限り、「利用者(高齢者)が酷い目に遭わない」という意味での公正さの話が行われている。よって、そのような意図での公正さについて語っているカが正解になる。
第3問
※リード文は問1と問6のみ読む価値があるので、問1問6に掲載
問1
~ここからリード文~
X:男女の平等については、女子差別撤廃条約が重要だね。この条約を批准した日本は男女差別撤廃に向けて、これまでaさまざまな法律を制定したり、改正したりしてきたようだよ。
Y:男女の平等をはじめとして、国際社会ではそれ以外にも人々の権利を保障するための多くの人権条約が採択されているようだね。ただ、これらの条約の中には、まだ日本が批准していない条約もあるみたいだ。
~ここまでリード文~
下線部aについて、生徒Xは、男女の平等に関する日本の法律を調べてみた。それぞれの法律に関する記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。ただし、各法律の内容は現行法によるものとする。
①労働基準法は、男女同一賃金の原則を明文で定め、賃金面における女性への差別を禁止している。
②育児・介護休業法は、女性労働者のみならず男性労働者に対しても、育児休業の取得を義務づけている。
③民法は、女性の婚姻開始年齢を引き下げる改正を経て、男女とも18歳にならなければ婚姻できないことを規定している。
④男女雇用機会均等法は、事業主は、募集、採用、配置、昇進など、職場における男女差別の解消に努めなければならないことを定めている。
問1解説
正解:①
労働問題
・人権の拡大(個別の人権条約)の問題…に見せかけて、労働問題(労働基準法)の問題
・解き方としては基本に、消去法ではなく「他は知らんが①は正解だろう」で解く問題である
※労働基準法に「男女同一賃金の原則」が「明文で定め」られている事を知っていれば解ける
※特に②や③は高校の公民の授業ではここまでやらないと思われるので…
・なお、④の男女雇用機会均等法は、「職場における男女差別の解消に努め」る法律ではない
・むしろ、「職場における男女差別」を禁じる法律である
⇒常識的に考えても、男女差別が残存している事実に対して「差別解消に努めているんですが、なかなかうまくいかなくて…」とか言っても大体は許されないのが今の世の中である
問2
「日本が批准していない条約もある」という事実について生徒Yは、人権条約と現在の日本の批准状況について調べ、次の表1を作成した。表1中の空欄( ア )~( ウ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
①ア 子ども(児童)の権利条約
イ アパルトヘイト犯罪の禁止及び処罰に関する国際条約
ウ なし
②ア 死刑の廃止を目指す、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書(死刑廃止条約)
イ 子ども(児童)の権利条約
ウ なし
③ア あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)
イ 死刑の廃止を目指す、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書(死刑廃止条約)
ウ あり
④ア 障害者の権利に関する条約
イ あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)
ウ あり
問2解説
正解:③
人権の拡大
・第二次世界大戦後結ばれた人権関係の条約について、最低限の知識があれば解ける問題
・今回特に問われているのは、国際人権規約について知っているかどうか。即ち…
・国際人権規約はA規約(社会権規約)とB規約(自由権規約)に分かれている
・批准する場合は別々に批准する
・日本国はABともに批准している
・B規約には選択議定書が二つある(個人通報制度と、死刑廃止)
・日本国は、B規約の選択議定書は一つも批准していない
・上記が分かっていれば、基本的には③を導ける
・日本国が人種差別撤廃条約と障害者権利条約に参加しているという事も知っていれば、より完璧である
問3
一票の格差について、生徒Xは、1980年以降の衆議院議員総選挙における最大格差を調べ、その結果をまとめた次の表を作成した。表で示されている内容に関する記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
総選挙の実施年 | 1980年 | 1983年 | 1986年 | 1990年 | 1993年 | 1996年 |
一票の格差 | 3.94 | 4.40 | 2.92 | 3.18 | 2.82 | 2.31 |
総選挙の実施年 | 2000年 | 2005年 | 2009年 | 2012年 | 2014年 | 2017年 |
一票の格差 | 2.47 | 2.17 | 2.30 | 2.43 | 2.13 | 1.98 |
(出所)裁判所Webページにより作成。
①中選挙区制の下で実施された総選挙では、いずれも一票の格差が4.00を超えることはなかった。
②小選挙区比例代表並立制の導入以降の総選挙では、いずれも一票の格差は2.50を下回っている。
③2000年以降の総選挙に関して、最高裁判所が一票の格差を違憲状態と判断したことはなかった。
④1980年の総選挙に比べて2017年の総選挙は投票率が高かったため、一票の格差も小さくなっている。
問3解説
正解:②
復習用資料:政治分野第三章/選挙制度
復習用資料:政治分野第三章/現代日本の政党政治
・選挙制度そのものと言うよりは、歴史知識について聞いてくる問題
・と言うのは、1991年から1993年は、四つの事件が重なる非常に重要な時期である
1:現代日本(令和六年現在)最後の好景気が終わった(1991-1993/バブル崩壊)
2:五十五年体制が崩壊した(1993/細川内閣成立)
3:ソ連が崩壊し、冷戦という時代が完全に終わった(1991)
4:湾岸戦争(イラク共和国軍のクウェート侵攻による戦争発生そのものは前年夏だが、「クウェート解放戦争」「多国籍軍vsイラク共和国軍」としての湾岸戦争は1991年)
・そして、「腐敗政治の打破」を掲げた細川内閣の目玉政策が、「政治改革関連四法」である
・これによって中選挙区制がなくなり、現在の小選挙区比例代表並立制が成立したのだった
・…という知識があれば、解ける問題である
⇒即ち、「あー、細川内閣は1993年の選挙で成立してるから、その次の選挙から小選挙区比例代表並立制に切り替わったんだな」となり、表を読み取って正答を導く事ができる
・とは言え、そこまでできる高校生は多くないと思われ、難問と言えるだろう
問4
拒否権について、生徒Yは、東西冷戦の対立構図の下、国際連合(国連)の安全保障理事会が、常任理事国の拒否権の頻繁な発動により十分な役割を果たせなかったことに関心をもった。そこでYは、常任理事国が拒否権を行使した回数を調べて次の表を作成し、その背景にあるできごとについて推察した。表から推察できる内容の記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
期間 | アメリカ | イギリス | ソ連(ロシア) | 中国 | フランス |
---|---|---|---|---|---|
1946〜1960年 | 0 | 2 | 96 | 1 | 4 |
1961〜1975年 | 12 | 11 | 18 | 2 | 2 |
1976〜1990年 | 57 | 19 | 6 | 0 | 12 |
1991〜2005年 | 12 | 0 | 3 | 2 | 0 |
2006〜2020年 | 6 | 0 | 24 | 13 | 0 |
(注)1946年から1971年まで中国の代表権は中華民国(台湾)がもっていた。また、1991年のソ連の解体後、ソ連の地位はロシアが継承した。
(出所)United Nations Webページにより作成。
①1946~1960年の期間では、常任理事国のうちソ連が最も多く拒否権を行使しているが、その中には朝鮮戦争に関連する決議が含まれる。
②1961~1975年の期間では、常任理事国のうちイギリスが最も多く拒否権を行使しているが、その中にはベトナム戦争に関連する決議が含まれる。
③1976~1990年の期間では、常任理事国のうちアメリカが最も多く拒否権を行使しているが、その中にはキューバ危機に関連する決議が含まれる。
④2006~2020年の期間では、常任理事国のうちロシアが最も多く拒否権を行使しているが、その中には湾岸戦争に関連する決議が含まれる。
問4解説
正解:①
復習用資料:政治分野第四章/戦後国際政治史―ColdWar
復習用資料:政治分野第四章/国際連合
・戦後国際政治史について問う問題に見せかけて、むしろ、国際連合について聞いている問題。即ち…
・国際連合には安全保障理事会がある
・安全保障理事会には常任理事国というのがいて、拒否権を持っている
・安全保障理事会が拒否権発動で機能不全に陥った時の為に、平和の為の結集決議というのがある
・上記決議は、冷戦初期、朝鮮戦争の際にソ連が拒否権を発動した為にできた
・…という事が分かっていれば、①が正解だという事が分かる
※②~④の選択肢については、問題作成者の方でも「どこがどう間違っているという事を、受験生が知っている」とは想定していないと思われる
問5
最高裁判所の仕組みに関心をもった生徒Xは、裁判所法を調べ、最高裁判所の違憲審査権の行使に関する部分について次のメモを作成した。なお、メモには、表記を改めた箇所やふりがなを振った箇所がある。メモから読み取れる、最高裁判所における裁判に関する記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ
第9条第1項 最高裁判所は、大法廷又は小法廷で審理及び裁判をする。
第10条 事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
一 当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
二 前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
三 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。
①法律が憲法に適合しないとの裁判は、最高裁判所の定めるところに反しない限り、小法廷において行うことができる。
②法律が憲法に適合しないとの裁判は、それが当事者の主張に基くか否かにかかわらず、小法廷において行うことはできない。
③法律が憲法に適合するとの裁判は、その意見が前に大法廷で行った裁判と異なるときであっても、小法廷において行うことができる。
④法律が憲法に適合するとの裁判は、その意見が前に大法廷で行った裁判と同一である場合には、大法廷において行うことはできない。
問5解説
正解:②
・ザ・論理国語で出せ案件
・論理国語で出すのであれば、よく考えなければ解けない良問と言えるが、政治経済で出すのは…
・時間がかかるので、実際の試験では、一旦飛ばした方がいいような問題でもある
・選択肢は全て、「法律が憲法に適合する・しない」の判断を「小法廷」でできるか? という話である
※④だけ「大法廷でできない」ではあるが、それは裏を返せば「小法廷でやる」という意味である
・「法律が憲法に適合する・しない」とは即ち、法律が合憲か違憲かという話である
・ここで問題文のメモを見ると、以下の事が分かる
十条一:「当事者の主張に基いて」裁判する場合、小法廷では「合憲判決も違憲判決も出せない」
十条二:「当事者の主張に基かない」裁判の場合でも、小法廷では「違憲判決は出せない」
十条三:最高裁判所の以前の判断と違う判決を出す場合は、小法廷ではできない
・上記を元に考えてみると…
①「小法廷は違憲判決を出せる」←出せません(十条一、十条二)
②「小法廷は違憲判決を出せない」←そうです(十条一、十条二)
③「小法廷は合憲判決を出せる」「最高裁の以前の見解と違っても小法廷でできる」←できません(十条三)
④「最高裁の以前の見解と同じ合憲判決は、大法廷でやった駄目」←メモの何処にもそんな話は無い
・…という形で②が正解だと分かる
問6
生徒Yは、あらためて日本国憲法の前文を読み返してみた。次の資料は、日本国憲法の前文の一部である。なお、一部現代仮名遣いに改めた箇所やふりがなを振った箇所がある。会話文中の空欄(ア)に当てはまる記述として最も適当なものを、資料中の下線部①~④のうちから一つ選べ。
X:日本国憲法では「法の下の平等」が規定されていて、この規定を根拠とした最高裁判所の違憲判決も出されているね。
Y:国際社会では、1994年に国連開発計画が「人間の安全保障」という理念を打ち出しているね。この理念は、一国の国防というよりも、世界中の人々がそれぞれの暮らしの中で直面する問題に焦点を当てている点で、日本国憲法の前文の中の、( ア )という部分にみられる考え方に近いともいえるよね。
資料
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、①平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、②全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、③いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、④自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」
問6解説
正解:②
・国語の問題。一応、人間の安全保障という公民科で出てくる概念について聞いてはいるのだが…
・見ての通り、問題文中に説明があるので、知らなくても読解力があれば解ける
・人間の安全保障について、問題文中の説明を要約すると以下のようになる
1:「一国の国防」という話ではない
2:「世界中の人々がそれぞれの暮らしの中で直面する問題」をどう解決していくか…というものである
・上記の要約から考えると、②以外に適する選択肢がない
・①はそれっぽいとは言え、「われらの安全と生存」の話であって、「世界中の人々」の話ではない
・③と④も、国単位でどうこうという話をしていて、不適である
第4問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
日本経済について、生徒Xは、第二次世界大戦後の日本経済の歩みを調べ、次のア~ウのグラフを作成した。これらは、それぞれ1970年代、1990年代、2010年代のいずれかの消費者物価指数の変化率(対前年比)と完全失業率との推移を示したものである。グラフの横軸は「年」を表し、10年間について1年ごとの目盛り間隔となっている。このとき、これらを年代の古いものから順に並べたものとして正しいものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
①ア→イ→ウ ②ア→ウ→イ ③イ→ア→ウ
④イ→ウ→ア ⑤ウ→ア→イ ⑥ウ→イ→ア
問1解説
正解:③
復習用資料:経済分野第四章/安定成長期
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年
・日本経済史を覚えた上で、図表を正しく読み取れないと解けない良問
・まず、それぞれの年代の特徴を挙げてみよう
年代 | 特徴 |
---|---|
1970年代 | ・日本国の高度経済成長期が、二度の石油危機で完全に終わる ・ニクソンショックとその後のゴタゴタで、ブレトン=ウッズ体制が崩壊する |
1990年代 | ・現代日本(令和六年現在)最後の好景気が終わった(1991-1993/バブル崩壊) ・五十五年体制が崩壊した(1993/細川内閣成立) ・ソ連が崩壊し、冷戦という時代が完全に終わった(1991) ・湾岸戦争(イラク共和国軍のクウェート侵攻による戦争発生そのものは前年夏だが、「クウェート解放戦争」「多国籍軍vsイラク共和国軍」としての湾岸戦争は1991年) |
2010年代 | ・東日本大震災(2011年) ・民主党下野、第二次安倍晋三内閣成立(2012年末) ・いわゆるアベノミクスの実施 |
・これを頭に入れた上で、各図表を読み取ればよい
・例えばアは、1年から急激にデフレ傾向となり(■が下がる)、失業率(△)が右肩上がりになっている
・つまりアは、1年から大不況になったと考えられる
⇒という事は、1991年からバブル崩壊が始まる1990年代の可能性が高い
・同様にウは、最初3%ほどあった完全失業率が一貫して下がっている
・という事は、2010年代の可能性が高い
⇒2010年代は、2000年代末のリーマンショックによる大不況直後であり、最初から完全失業率が高くて当然。そしてまた、2010年代は、アベノミクス実施で景気が回復していった(少なくとも失業率は下がった)時代である
・一番分かりにくいのがイである
・何が分かりにくいかと言うと、石油危機は二回あったのに、イでは大インフレが一回しか起きていない
⇒実際のところ、二回目の石油危機は日本国経済には(比較的)大きな影響を与えなかったのだが…とは言え…うーん……という感じで悩む事になる
・ただ、消去法でイが1970年代という事は分かるだろう
・結果として、答えは以下のようになる
イ(1970年代) ⇒ ア(1990年代) ⇒ ウ(2010年代)
問2
日本と他国の雇用慣行に関するデータについて、生徒Yは、日本、イギリス、スウェーデン、ドイツの4か国の雇用慣行を比較して考えてみた。次の表は、これら4か国の雇用慣行を数値で表したものであり、表中のA~Dは、それぞれ、これら4か国のいずれかを示している。なお、表中の(ア)は勤続年数1~5年の賃金を100としたときに賃金が勤続年数に応じてどのぐらい変化するかを、(イ)は年齢階層別の平均勤続年数を、(ウ)は数値が大きくなるほど賃金交渉を主導する主体が企業別組合から産業別組合へ移ることを意味する「賃金交渉の集権度」を、それぞれ表している。表と後の説明文1~3とを参考にして、A~Dが示す国の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
説明文1 同一労働同一賃金が浸透しているとされるスウェーデンでは、他国に比べて、賃金水準が勤続年数とは独立に決まっている。
説明文2 労働市場の流動性が高いことなどを背景に、イギリスの平均勤続年数はどの年齢階層においても日本より短くなっている。
説明文3 ドイツおよびスウェーデンは、賃金交渉の集権度の面で、日本とは異なっている。
A | B | C | D | |
---|---|---|---|---|
① | ドイツ | 日本 | イギリス | スウェーデン |
② | 日本 | イギリス | スウェーデン | ドイツ |
③ | イギリス | スウェーデン | ドイツ | 日本 |
④ | スウェーデン | ドイツ | 日本 | イギリス |
⑤ | イギリス | 日本 | ドイツ | スウェーデン |
⑥ | 日本 | ドイツ | スウェーデン | イギリス |
⑦ | ドイツ | スウェーデン | イギリス | 日本 |
⑧ | スウェーデン | イギリス | 日本 | ドイツ |
問2解説
正解:①
労働問題
・ほぼ論理国語の問題
・ただ、全て国語力だけで解ける訳ではなく、ちょっとだけ公共・政治経済の知識が必要
⇒「日本社会は企業別労働組合が主流」という事だけは覚えている必要がある
・ちゃんとやれば時間もかからないので、国語問題の中では良問かも?
(ウ)は数値が大きくなるほど賃金交渉を主導する主体が企業別組合から産業別組合へ移ることを意味する
・経済分野の労働問題のところで、「現代日本社会は、企業別労働組合が主流」と習う
・という事は、日本国は(ウ)の数字が小さい筈である
・そう思って表を見ると、B国とC国が企業別労働組合主流社会だと分かる
説明文3 ドイツおよびスウェーデンは、賃金交渉の集権度の面で、日本とは異なっている。
・つまるところ、ドイツ連邦共和国とスウェーデン王国は、ウの数字が日本とは異なるという事である
・既に見たように、B国かC国が日本であると考えられる
・そしてこの説明文3から、残るA国D国に独瑞両国が該当すると考えられる
・問題は、どちらがA国でどちらがD国か、という点にある
説明文1 同一労働同一賃金が浸透しているとされるスウェーデンでは、他国に比べて、賃金水準が勤続年数とは独立に決まっている。
・この説明文を念頭にA国とD国の賃金を見ると…
A国:勤続年数が増えると賃金も増える
D国:勤続年数と賃金に相関関係が全くない
・という事は、A国がドイツ連邦共和国、D国がスウェーデン王国である
・そしてこの時点で、実は、答えが出ている
・と言うのは、A独D瑞の選択肢が、そもそも①しかないのである
・よって正解は①となるが、念のため、説明文2も参照しておこう
説明文2 労働市場の流動性が高いことなどを背景に、イギリスの平均勤続年数はどの年齢階層においても日本より短くなっている。
・既にA国D国は独瑞と分かっており、残る日英がB国C国に該当する筈である
・そして、説明文2から、「イギリスの平均勤続年数はどの年齢階層においても日本より短」い
・そう思って表を見てみると、平均勤続年数は常にC国の方が短い
・よって、B国が日本国、C国がイギリスという事になる
・これは、選択肢①に合致する推論である
・よって、やはり正解は①となる
問3
生徒Zは、年金について調べてみた。年金の仕組みに関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①現在の日本の年金制度の下では、税収が基礎年金の原資の中で最も大きな割合を占めている。
②年金給付に要する原資をその時々の現役世代が賄う方式は、賦課方式と呼ばれる。
③デフレーションが生じたときに年金給付額が実質的に減少するという問題が積立方式の下では存在する。
④現在の日本の厚生年金制度の下では、すべての受給者に対して同額の給付がなされている。
問3解説
正解:②
復習用資料:経済分野第二章/社会保障
・普通の、知識を問う四択問題
・消去法で解く問題ではなく、「これが正解でしょ、他の選択肢は知らんけど」で解く問題
・この問題の場合は、②が明らかに正解、③が明らかに間違い(積立方式で問題が出るのはインフレ時)
・一方①と④については、公共や政治経済の授業では扱わない範囲である
・よって、「②が正解でしょ、他の選択肢は知らんけど」で決断的に②を選べば正解となる問題である
問4
資本主義経済に関連して、生徒Xは、さまざまな経済学説について調べ、そのうちの二つの考え方を現代的な論点と対応させる次のメモ1・2を作成した。それぞれのメモ中の空欄( ア )・( イ )に当てはまる人名の組合せとして正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ1( ア )は、物価の安定を重視し、政策当局は通貨量を一定の率で供給すべきと主張したが、リーマン・ショック以降の日本の金融政策は、どのように実施されているのだろう。
メモ2( イ )は、自由貿易がもたらす国際分業によって関係国全体での生産量が増えると論じたが、資本や労働力も自由に国境を越える時代の国際分業には、どのようなメリット・デメリットがあるのだろう。
① ア ガルブレイス イ マルサス
② ア ガルブレイス イ リカード
③ ア フリードマン イ マルサス
④ ア フリードマン イ リカード
問4解説
正解:④
復習用資料:経済分野第一章/資本主義
・大学入試共通テストでよくある、「ただの知識問題を会話文にしてみました」問題
・選択肢から、(ア)はジョン・ケネス・ガルブレイスかミルトン・フリードマンである
ガルブレイス:現代社会は寡占市場の状態にあり、人々は広告による非価格競争に弄ばれていると論じた経済学者
フリードマン:経済に於いては貨幣流通量こそが重要であると論じ、マネタリズムを掲げて新自由主義の旗手となった経済学者
・これを踏まえて会話文を見てみよう
( ア )は、物価の安定を重視し、政策当局は通貨量を一定の率で供給すべきと主張した
・明らかにこれはマネタリズム的な主張である
・よって(ア)はミルトン・フリードマンであると考えられる
・続いて、選択肢から、(イ)はトマス・ロバート・マルサスかデイビッド・リカードである
マルサス:「国家規模、世界規模で口減らしをしないと人口が増えすぎて大飢饉になる」という旨の主張で有名な古典派経済学者
リカード:比較優位に基づく比較生産費説で自由貿易を推奨した古典派経済学者
・これを踏まえて会話文を見てみよう
( イ )は、自由貿易がもたらす国際分業によって関係国全体での生産量が増えると論じた
・これは明らかに比較生産費説である
・よって(イ)はデイビッド・リカードである
・以上から、(ア)はフリードマン、(イ)はリカードである
問5
現在の雇用に関する記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①日本では、労働者派遣法により、同一の人物が同じ職場で派遣労働者として勤務できる期間は、原則として最長3年に制限されている。
②フルタイムで働いているにもかかわらず、生活の維持が困難になるような所得水準にある労働者も、ワーキングプアと呼ばれる。
③日本では、グローバルな企業間競争が激化する中で、すべての雇用に占める非正規雇用者の割合は、現在も30%を超えている。
④ある一定の仕事量に対して、一人当たりの労働時間を減らすことで雇用人数を増やすことは、ワーク・ライフ・バランスと呼ばれる。
問5解説
正解:④
労働問題
・普通の、知識を問う四択問題
・消去法で解く問題ではなく、「これが正解でしょ、他の選択肢は知らんけど」で解く問題
・この問題の場合は、④が明らかに間違っている
※ワーク・ライフ・バランスの改善に繋がる施策なのは間違いないが、「会社が雇用を増やして従業員の労働時間を減らす」という施策そのものをワーク・ライフ・バランスとは呼ばない
・他の選択肢はと言うと、一応②は公共や政治経済の授業で扱う
・ただ①、③の知識は、正直授業や教科書で扱うような内容ではない(細かすぎる)
・よって、「④が正解でしょ、他の選択肢は知らんけど」で決断的に④を選べば正解となる問題である
問6
新技術の導入もまた、従来型の雇用慣行とは別のメカニズムで、賃金や雇用に影響を与えるという事実について、生徒X、生徒Y、生徒Zは、需要と供給によって価格と取引量が決まるという財市場のメカニズムを労働市場にも適用し、技術進歩が均衡賃金に与える効果を考え、次の図と、図を説明した後のメモとを作成した。メモ中の空欄( ア )~( ウ )に当てはまる語句と記号の組合せとして正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
メモ
労働を節約できるような新しい技術が企業に導入されると、他の条件が等しい限りにおいて、( ア )が( イ )の方向に移動する。その結果、均衡賃金は( ウ )する。
① ア 労働需要曲線 イ A ウ 低下
② ア 労働需要曲線 イ B ウ 上昇
③ ア 労働供給曲線 イ C ウ 上昇
④ ア 労働供給曲線 イ D ウ 低下
問6解説
正解:①
復習用資料:経済分野第一章/需要供給曲線
・一般的な需要供給曲線の場合、商品(財)を売り買いする市場を想定する
・この場合、商品を買うのは消費者(一般人)、商品を作って売るのは会社である
・つまり、以下のようになる
需要曲線:商品を買う側の話⇒消費者(一般人)の話
供給曲線:商品を作って売る側の話⇒会社の話
需要と供給によって価格と取引量が決まるという財市場のメカニズムを労働市場にも適用
・しかし今回は、そういう商品(財)を売り買いする市場の話を、労働市場に適用する、と言っている
・よって、普段とは話が異なるのである
・具体的には、労働力を買う(労働者を雇う)のは会社であり、労働力を売るのは一般人(労働者)である
・つまり、以下のようになる
労働需要曲線:労働力を買う側の話⇒会社の話
労働供給曲線:労働力を売る側の話⇒一般人(労働者)の話
・これを理解した上で解かないと、頓珍漢な事になる
労働を節約できるような新しい技術が企業に導入される
・今回の問題は、これによってどんな変化が起きるかを問うものである
・要するに、AIで工場が無人で動かせるようになったとか、そういう時何が起こるかを問うている
・では何が起こるかと言うと、会社が人を雇わなくなる
・つまりこれは、会社側の話、もっと言えば、労働需要曲線側の話である
( ア )が( イ )の方向に移動する。その結果、均衡賃金は( ウ )する。
・よって、(ア)は労働需要曲線である
・では、労働需要曲線はどう動くか
・会社があまり人を雇わなくなる訳だから、当然、「同じ価格(賃金、給料)でも、雇う人の数は減る」筈である
・需要供給曲線は、右に行けば行くほど量が増え、左に行けば行くほど量が減る。つまり、Aに動く事になる
・その場合、均衡点(需要曲線と供給曲線が交わる点)は下に動く事になるので、価格(賃金、給料)は下がる
・よって、以下のようになる
ア:労働需要曲線
イ:A
ウ:低下
第5問
※全く見る価値のないリード文省略
問1
探究する学習を始めるにあたり、先生Tが「日本経済は歴史のなかでさまざまな変化を経験してきており、現在も変わり続けています。こうした現代につながる歴史を知った上で、現代社会を理解することが大切です。」と述べた。日本経済の変化に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①1980年代には貿易摩擦の激化を背景として、日本が外需主導型経済へ転換することが求められた。
②2000年代に入ると、小泉純一郎内閣の下で構造改革が進められたが、これはいわゆる大きな政府を志向するものであった。
③近年進行してきた、モノそれ自体よりも知識や情報の重要性が高まっていく変化のことを、産業の空洞化という。
④企業の組織再編の加速を目的に設立が解禁された、株式の所有を通じて他の企業を支配することを主たる業務とする会社のことを、持株会社という。
問1解説
正解:④
復習用資料:経済分野第四章/安定成長期
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年
・消去法でも、「④が正解だ!」「他は知らんけど」でも解ける問題である
⇒ただ、日本経済史は頻出のお題な割に、公共・政治経済の授業ではあんまりきっちりやらない(私の授業ではきっちりやるけど)。本問の全選択肢ぐらいなら解説できるぐらい、しっかり勉強しておきたい
・①は、外需主導型という部分が間違い
・そもそも、日本国が外国(主に米国)へ物凄い勢いで輸出しているから、貿易摩擦になるのである
・そこで外需主導(沢山商品を輸出しましょう)型経済への転換を求めてどうする…という話で……
・②の小泉内閣は、大きな政府ではなく、小さな政府志向である
⇒1980年代以降の日本国の内閣では、中曽根内閣、橋本内閣、小泉内閣が新自由主義的で小さな政府志向だと覚えておこう
中曽根康弘内閣:1980年代に新自由主義的な政策を日本で初めて行った
橋本龍太郎内閣:バブル崩壊後の1990年代、不況の中で突如新自由主義的な小さな政府志向の政策を始めた
小泉純一郎内閣:橋本内閣の後、大きな政府志向だった小渕内閣を挟み、2000年代、再び新自由主義的な小さな政府志向の政策を実施
・③は、産業の空洞化の意味が違う
⇒産業の空洞化は、「日本の企業なのに、日本の工場を閉鎖して日本人をクビにして、代わりに外国に工場を作って外国人を雇って…」「あれ、日本の企業が儲かってる筈なのに、日本経済自体は弱くなってるな?」というような事態の事を言う
・④は正文である
⇒なお、この持株会社は元々独占禁止法で禁じられていた事、及び金融ビッグバンの目玉として解禁された事を覚えておきたい。もっと言えば、金融ビッグバンを大々的に進めたのが橋本内閣である事も知っておきたい
問2
生徒Wが、「近年では情報技術がどんどん発達しているし、それが日本経済を大きく変化させていそうだよね。」と発言すると、先生Tは、「そのとおりですね。しかし経済の中にはさまざまな産業があり、情報化の影響の表れ方は産業によってかなり差があると思いますよ。データを調べてみてはどうですか。」とアドバイスした。それを受けてW、生徒X、生徒Y、生徒Zの4人のグループは、近年における産業ごとの変化を示すデータを集め、それをもとに考察と議論を行った。
次の表1・2は、日本の農林水産業、製造業、サービス業のそれぞれについて、1994年と2019年の実質付加価値と就業者数のデータをまとめたものである。表1・2の内容を踏まえて、後の会話文中の空欄( ア )に当てはまる記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
T:産業構造の変化を捉える上では、それぞれの産業でどれぐらいの生産が行われているかという実質付加価値の面と、それぞれの産業でどれぐらいの人が働いているかという就業者数の面の、双方をみることが重要です。表1と表2から、どのようなことが読み取れますか?
W:1994年から2019年にかけては情報化が大きく進んだと思いますが、情報通信業を含むサービス業は、実質付加価値でみても、就業者数でみても、この25年間で増加していますね。情報化の進展とともに、サービス業の比重がますます高まっていることが読み取れます。
T:そうですね。また情報技術は、生産にも影響を与えた可能性があります。実質付加価値を就業者数で割ると、「その産業で一人の人がどれぐらいの付加価値を生産しているか」を示す一人当たり労働生産性という指標が得られます。この25年間における各産業の一人当たり労働生産性の変化について、どのようなことがわかりますか?
X:表1と表2を見比べると、( ア )ということがいえるのではないでしょうか。
T:そのとおりです。つまり日本において情報技術が一人当たり労働生産性にどのような影響を与えたかは、産業ごとにかなり違っていた可能性がありますね。こうした違いがなぜ引き起こされるのかについても、考えてみると良いですよ。
①農林水産業と製造業はともに就業者数の1994年から2019年にかけての変化率がマイナスであるが、一人当たり労働生産性の1994年から2019年にかけての変化率を比べると、農林水産業の方が製造業よりも大きな率で上昇している
②製造業とサービス業はともに1994年から2019年にかけて実質付加価値が増加しているが、一人当たり労働生産性の1994年から2019年にかけての変化率を比べると、製造業の方がサービス業よりも大きな率で上昇している
③1994年から2019年にかけて一人当たり労働生産性はすべての産業において上昇しているが、最も大きな率で上昇しているのはサービス業である
④1994年から2019年にかけて一人当たり労働生産性はすべての産業において低下しているが、最も大きな率で低下しているのは農林水産業である
問2解説
正解:②
・会話文を見ると、一人当たり労働生産性の出し方を話している
・即ち、「その産業が稼いでいる額÷その産業で働いている人数」と言っている
・そして、表1が「その産業が稼いでいる額」、表2が「その産業で働いている人数」である
・よって、産業別に、表1の数字÷表2の数字とすれば、一人当たり労働生産性が出てくる
1994 | 2019 | |
---|---|---|
農林水産業 | 76358÷486=157.11… | 48833÷260=187.81… |
製造業 | 846691÷1411=600.06… | 1179232÷1081=1090.87… |
サービス業 | 2983294÷3904=764.16… | 3720865÷4841=768.61… |
・この表を元に考えれば、②が正文、他は誤答と分かる
・…というような感じで、正直に計算問題として処理するのは、実はあんまり美味しくない問題である
・無論、非常に計算が速い人ならそれでいいのだが、世の中そういう人ばかりではない
・あんまり計算の早くない、いわば普通の人は、馬鹿正直に計算問題として解かない方がいい
・と言うのは、わざわざ細かく計算せずとも、以下のように考えても普通に解ける問題なのである
例1:「製造業が一番効率上がってるだろ…稼ぎが39%増えてるのに働く人数が23%下がってるんだぞ…」
例2:「農林水産業、働く人数が-46%の割に稼ぎが-36%で済んでるのは頑張ってると思うけど製造業に比べると…」
例3「サービス業、稼ぎがプラス24%、働く人数もプラス24%ってほぼ効率変わっとらんやん」
⇒実際のところ、共通テストは時間が足りなくなる試験なので、馬鹿正直に計算するよりもパーセンテージだけ見て解いて時短した方がいい
⇒そういう意味では考える力を問う問題としてよく考えられている、とも言える問題である
問3
情報技術について議論していく中で、日本において各種のインターネット端末を利用している人の割合を年齢階層別にまとめた次の資料をみつけた生徒Yは、生徒W、生徒X、生徒Zと発表に向けたグループ学習の進め方を話し合った。後の会話文中の空欄( ア )に当てはまる記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
Y:情報通信機器の利用実態は、若い人と高齢の人など、世代によってけっこう違いがあるかもしれないと思うんだけど、実際はどうなのかな。
Z:この資料をみると、たとえば、( ア )、といったことが読み取れるね。
X:なるほど。興味深い結果だね。この資料からは他にもいろいろと面白い特徴が読み取れそうだから、その背景にある理由を考えてみたいな。
W:そうだね。「インターネットに関わる問題」について、みんなで分担して、もっと調べてみようよ。
①スマートフォンを利用している人の割合をみると、「6~12歳」では半数に満たないものの、それ以外のすべての年齢階層においては半数を超えている
②パソコンを利用している人の割合をみると、「13~19歳」における割合は、60歳以上のすべての年齢階層における割合よりも高い
③すべての年齢階層において、「携帯電話・PHS(スマートフォンを除く)」よりも「スマートフォン」の方が利用している人の割合が高い
④すべての年齢階層において、「タブレット型端末」よりも「パソコン」の方が利用している人の割合が高い
問3解説
正解:③
・単純に図表と選択肢を睨めっこしていれば解ける国語の問題
⇒国語の問題は時間がかかるものが多い。だからこそ、こういう問題はぱぱっと短時間で、かつ正確に解けるようになりたい。その為に大事なのは、「飛ばしながら読む」ではなく「全てを高速で読む」訓練である
①スマートフォンを利用している人の割合をみると、「6~12歳」では半数に満たないものの、それ以外のすべての年齢階層においては半数を超えている
・確かに6~12歳のスマホ使用率は40%程度だが、70~79歳以降もスマホ使用率が50%を割る
・よって誤文である
②パソコンを利用している人の割合をみると、「13~19歳」における割合は、60歳以上のすべての年齢階層における割合よりも高い
・図表を見て分かる通り、13~19歳のパソコン利用者は少ない(50%行かない)
・むしろ、20~29歳で露骨に増える(60%超え)
・よって誤文である
⇒この選択肢に関しては、そもそもの話として「中高生でそんなパソコン持ってる奴多いか?」という話も…
③すべての年齢階層において、「携帯電話・PHS(スマートフォンを除く)」よりも「スマートフォン」の方が利用している人の割合が高い
・図表の内容と矛盾しない。正文
④すべての年齢階層において、「タブレット型端末」よりも「パソコン」の方が利用している人の割合が高い
・図表一番左の6~12歳からして、タブレット型端末利用者の方がパソコン利用者より多い
・よって誤文である
問4
インターネットに関わる問題について調べたことをきっかけに、生徒W、生徒X、生徒Y、生徒Zは、さらに議論を重ねていった。インターネットをめぐる日本の今日の状況について述べた次のア~エの記述のうち、内容が誤っているものが二つある。その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
ア インターネットにつながる自由は、著作権や商標権などとともに、知的財産権の一種として保障されている。
イ インターネット接続事業者に対して、インターネット上の表現によって権利を侵害された者が、発信者情報の開示を請求することについて定める法律が制定されている。
ウ インターネットやその他の高度情報通信ネットワークを通じた情報の活用などを所掌する組織として、デジタル庁が発足した。
エ インターネットを用いた通信販売は、一定の期間であれば無条件で契約の申込みを撤回したり契約を解除したりできるという、消費者保護を目的とした制度の対象となる。
①アとイ
②アとウ
③アとエ
④イとウ
⑤イとエ
⑥ウとエ
問4解説
正解:③
・珍しく、誤答を二つ選ぶ問題
・そして、正文のイとウを高校生が知っているとは、恐らく問題作成者は想定していない
・即ち、消去法ではなく「イとウは分からんが、アとエは違うだろ」で解く問題である
・アは、今のところ、インターネットに繋がる権利は人権として認められていない
⇒そういう話は、政治経済の教科書の何処にもなかった…というのもあるが、どちらかと言うと常識の話になってくる
⇒例えば、「もしこの権利が人権と認められているなら、どのご家庭にもスマホ・パソコン・光回線・wifiあたりが標準装備されている筈だよな…」と考えるような常識があるかどうか。そういう部分を見ている選択肢だと思われる
・エの制度とは即ちクーリングオフだが、通信販売は対象外である
⇒通信販売そのものは特定商取引法の対象となるが、通信販売はクーリングオフ対象にはならない
⇒実際、Amazonや楽天を利用した事のある高校生も多い筈だが、クーリングオフ制度について見た事はない筈である
問5
生徒K、生徒L、生徒Mのグループでは、インターネットをめぐる今日の問題として、インターネット上に誹謗中傷やフェイクニュースなどの違法・有害情報が氾濫しているという状況についての対策を議論している。次の会話文中の空欄( ア )~( ウ )には、それぞれ後のa~cの記述のいずれかが当てはまる。当てはまる記述の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
K:SNSなどのオンライン・サービスを提供する事業者が、表現の内容をモニタリングして、他人の権利を侵害する違法な情報や、法的には違法とはいえないけど有害な情報を削除したり、投稿者のアカウントを停止したりすることを、コンテンツ・モデレーションというらしいね。
L:違法・有害情報対策を、事業者の自主的なコンテンツ・モデレーションの取組みに任せておく方法はどうかな?
M:( ア )。
K:せめて違法な情報に対しては、コンテンツ・モデレーションを適切に行う義務を事業者に負わせる、というような法律を作るという方法はどうだろう?
L:( イ )。
M:そういう問題があるとしたら、その他に、どのような方法があり得るかな?
K:( ウ )。
L:情報を受け取る私たちのリテラシーを高めることも、同時に追求していくべきだね。
a違反に対して罰則があったら、事業者は罰を回避するために、本来であれば規制対象とはならないような内容の表現も過剰に削除してしまう可能性があると思うよ
b利用者が安心・信頼してサービスを利用できるように、事業者にコンテンツ・モデレーションの基準と運用を明確にさせるような法的な仕組みがあるといいと思うよ
c事業者の考えや好みによって、違法・有害情報が放置されてしまったり、逆に問題があるとまではいえない内容の表現が削除されてしまったりする可能性があると思うよ
①ア―a イ―b ウ―c ②ア―a イ―c ウ―b
③ア―b イ―a ウ―c ④ア―b イ―c ウ―a
⑤ア―c イ―a ウ―b ⑥ア―c イ―b ウ―a
問5解説
正解:⑤
インターネット上に誹謗中傷やフェイクニュースなどの違法・有害情報が氾濫している
L:情報を受け取る私たちのリテラシーを高めることも、同時に追求していくべきだね。
⇒まるで「インターネット上でしか違法・有害情報の氾濫は無い」とでも言うかのような問題を作っている時点で、リテラシーとか言う資格のない情報弱者では…?
・それはさておき、(ア)も(イ)も直後に同じような発言がある
・即ち、「そうだとしても何とかしてインターネット上の発言を検閲できないか?」的な発言である
・故に(ア)(イ)は、インターネット上の発言に対する検閲制度の弊害を指摘するものの可能性が高い
・そう思って選択肢を見ると、aとcがそのような趣旨の発言である
・また、(ア)は直前に、事業者に自主的に検閲させようと言っている
・一方、(イ)は、法的に、事業者に検閲の義務を負わせようとしている
・ここで改めて選択肢を見ると、cは事業者の自主性に任せる場合の問題点の話である
・そしてaは、法的に、事業者に検閲の義務を負わせた場合の問題点の話である
・残るは(ウ)とbであり、こちらも適合する内容になっている
・よって、正解は「ア―c イ―a ウ―b」となる
問6
探究する学習のまとめの発表会で、「インターネット時代の世論」というテーマで調査を行った生徒Nたちのグループが、次の発表原稿に基づいて報告を行った。この報告に対して、報告を聴いていた生徒たちから、報告の内容を確認する後のア~ウの発言があった。ア~ウのうち、Nたちのグループの報告の内容に合致する発言として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。
発表原稿
これまで、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などのマス・メディアが、国民が政治を判断するために必要な情報を伝えるなど、世論形成に大きな役割を果たしてきましたが、今日ではインターネットが果たす役割が大きくなっています。
しかし、インターネットやSNSの特性から、世論の分断化を招く恐れがあるなどの弊害も指摘されています。たとえば、SNS等を利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという経験をしたことがあるでしょう。それにより、特定の意見が増幅されて強化されていくとされます。こうした状況は、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえて「エコーチェンバー」といいますが、それが世論形成に影響を与えるといわれています。
また、インターネットでは、アルゴリズムがインターネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析・学習し、個々のユーザーがみたい情報を優先的に表示していきます。その結果、自分の考え方や価値観に近い情報だけに包まれた情報環境に置かれることになります。この状況を指して、「フィルターバブル」といわれることがあります。
人間は、自分に都合の良い情報にばかり目を向けてしまい、都合の悪い情報は無意識のうちに無視したり、または、意識的に避けてしまったりという心理的な傾向をもつといわれます。かつては自分の好みや考え方に合わない情報にもマス・メディアを通じて触れる機会がありましたが、インターネットなどの特性からその機会が失われつつあるのです。
これらのことを自覚しながら、情報を批判的に吟味し読み解くメディア・リテラシーを身に付けることが、ますます重要な時代といえるでしょう。
ア 限定的な情報に接し、考えの同じ人々と同調し合うことで、特定の意見や立場が強化されていく結果、世論がより極端な意見や立場に分断していってしまう可能性があるということですね。
イ インターネット上の情報には真偽不明なものが少なくないから、たとえば、政治家についての虚偽情報が流布されることなどによって、有権者の理性的な判断が妨げられてしまうということですね。
ウ テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などのマス・メディアは、自分とは異なる価値観や、多様な情報に触れる機会を与えるという意味で、インターネットの時代でもその重要性が失われたわけではないということですね。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ
⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問6解説
正解:⑤
人間は、自分に都合の良い情報にばかり目を向けてしまい、都合の悪い情報は無意識のうちに無視したり、または、意識的に避けてしまったりという心理的な傾向をもつといわれます。
⇒この発表原稿作った人自身が、「マス・メディアはいいもの!」「インターネットは悪!」という価値観を持って原稿を作っていたら…? と考えると趣深いですね。鏡見た方がいい
・問題としては、文章がまず提示されて、その文章の要約として正しいものを選ぶ問題
・即ち、選択肢の文章それぞれが正しいかは関係なく、要約になっているかどうかだけを見ればよい
・つまり、100%完全に国語の問題。こんな問題政治経済で出すな
・アは、発表原稿で言うとエコーチェンバーあたりの話の事。発表原稿内にある話なので正文
・イは、発表原稿にそれらしい話がない。よって誤文
・ウは、発表原稿で言うと最後のあたり。発表原稿内にある話なので正文
第6問
※リード文は珍しく複数の問に渡って必要なので、回答に必要な問題ごとに記載している
問1
(第6問リード文)
生徒X、生徒Y、生徒Zは、「政治・経済」の授業において、「ヨーロッパにおける人の移動と、それが日本に問いかけていること」をテーマにして、先生Tの助言の下、研究発表と討論を行うことになった。
まず先生Tが、ヨーロッパにおける人の移動に関連して、欧州連合(EU)加盟国の人口に関わる資料を配布した。次の資料1は、EU加盟国の市民権をもつがEU域内の他国に移り住んでいる20~64歳の人口の、市民権をもつ国の居住人口に対する比率(2020年時点)の上位10か国を示し、資料2は、2014年と2020年とを比較したときのEU加盟国の居住人口増加率の上位5か国・下位5か国を示している。
(第6問リード文ここまで)
生徒Xと生徒Yは、資料1と資料2の内容と自分たちが学習してきたこととを合わせて話し合っている。次の会話文中の空欄( ア )には、後の語句aかb、空欄( イ )には後の年cかd、空欄( ウ )には後の語句eかfのいずれかが当てはまる。当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。
X:資料1では、東ヨーロッパに加えてポルトガルなど南ヨーロッパでも、出身国以外のEU加盟国に移り住んでいる人口の比率が高い国があるね。
Y:南ヨーロッパといえば、リーマン・ショックの後、2009年からの( ア )の影響が大きかった地域だよね。
X:資料2をみると、( イ )以降に新たにEUに加盟した東ヨーロッパ諸国での人口の減少が目立っているね。これはなぜだろうか?
Y:東ヨーロッパ諸国では、1989年に相次いで民主化した後、1990年代に( ウ )へ移行する過程で深刻な不況に見舞われたんだよね。
X:人口の減少と出稼ぎ労働とが関連しているような気がするな。
( ア )に当てはまる語句
a金融ビッグバン bユーロ危機
( イ )に当てはまる年
c2004年 d2013年
( ウ )に当てはまる語句
e計画経済 f市場経済
① ア―aイ―cウ―e ② ア―bイ―cウ―e
③ ア―aイ―dウ―e ④ ア―bイ―dウ―e
⑤ ア―aイ―cウ―f ⑥ ア―bイ―cウ―f
⑦ ア―aイ―dウ―f ⑧ ア―bイ―dウ―f
問1解説
正解:⑥
復習用資料:経済分野第一章/社会主義
復習用資料:経済分野第三章/国際経済テーマ史
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年
・図表を読み取る、という要素はほとんどない問題
・一応国の名前ぐらいは読んだ方がいいがそれぐらいで、後は知識さえあれば解ける問題である
南ヨーロッパといえば、リーマン・ショックの後、2009年からの( ア )の影響が大きかった地域だよね。
a金融ビッグバン bユーロ危機
・リーマンショックの後に起こった事と言えば、勿論世界的な大不況である
・その大不況の中でも特筆されるのがいわゆるギリシア危機と言える
・結果、EUの、特に経済が弱い国は大変な目に遭った
・これを、ユーロ危機と呼称する事もある
・一方、金融ビッグバンは、1990年代後半の橋本龍太郎内閣の目玉政策である
⇒金融業界への規制緩和政策。証券取引法改正、金融業務規制の廃止、規制金利の廃止、持株会社解禁等々
※橋本内閣だけが金融ビッグバンをやった訳ではないが、中心になったのは橋本内閣である
・上記の知識どちらかがあれば、「bユーロ危機」が正解だと分かる
資料2をみると、( イ )以降に新たにEUに加盟した東ヨーロッパ諸国での人口の減少が目立っているね
c2004年 d2013年
・資料2で下位五ヶ国に入っているのは、リトアニア等の旧東側国家、即ち、旧ソ連属国群である
・こういった旧ソ連属国群の多くは、2004年にEUに加盟。これをEUの東方拡大と呼ぶ
・…という知識があれば、「c2004年」が正解と分かる
⇒知識がなくとも、「ソ連は1991年に爆発四散してなくなってるのに、2013年は時間かかりすぎだろ…」と言えばそれはまぁそう。もうクリミア危機始まってますよ2013年って
東ヨーロッパ諸国では、1989年に相次いで民主化した後、1990年代に( ウ )へ移行する過程で深刻な不況に見舞われたんだよね
e計画経済 f市場経済
・資料2の下位に載っているような東欧諸国というのは、旧東側国家である
・即ち社会主義国家たるソ連の属国であり、社会主義国家と言えば勿論、計画経済である
・ソ連の支配から解放されたのに、計画経済をやろうとするのは明らかに異常と申し上げるより他ない
・よって、「f市場経済」が正解である
問2
(第6問リード文)
生徒X、生徒Y、生徒Zは、「政治・経済」の授業において、「ヨーロッパにおける人の移動と、それが日本に問いかけていること」をテーマにして、先生Tの助言の下、研究発表と討論を行うことになった。
まず先生Tが、ヨーロッパにおける人の移動に関連して、欧州連合(EU)加盟国の人口に関わる資料を配布した。次の資料1は、EU加盟国の市民権をもつがEU域内の他国に移り住んでいる20~64歳の人口の、市民権をもつ国の居住人口に対する比率(2020年時点)の上位10か国を示し、資料2は、2014年と2020年とを比較したときのEU加盟国の居住人口増加率の上位5か国・下位5か国を示している。
(第6問リード文ここまで)
生徒Zは、EU加盟国の法定最低賃金に関する資料3を新たにみつけ、資料1、資料2も踏まえて、EU域内における人の移動について推察した。このときの推察について述べた後のア〜ウの記述のうち、適当でないものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。
ア ラトビアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。よって、EUに加盟したことでEU域内での人の移動が大幅に自由化され、EU域内の他国での就労などを目的とした移住がEU加盟後に増加したと推察できる。
イ ルクセンブルクは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率と居住人口増加率が高く、最低賃金はEU加盟国の中で上位にある。よって、EU域内の他国からの移住が増加する一方で、EUの原加盟国であることから経済統合が深化してEU域内の他国への移住も増加したと推察できる。
ウ ブルガリアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。よって、EU加盟によりEU域内での人の移動は大幅に自由化されたが、EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少したと推察できる。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ
⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問2解説
正解:③
・図表を読み取らせる問題の割に、図表を読み取る意味があんまりない問題
・知識も特に必要なく、結局は、選択肢の各文の矛盾を評価する国語の問題である
⇒そういうものだと分かっていればいいが、解いてみないと分からない訳で。意地が悪い問題と言える
ア ラトビアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の下位に名前があり、資料3の下位に名前がある
よって、EUに加盟したことでEU域内での人の移動が大幅に自由化され、EU域内の他国での就労などを目的とした移住がEU加盟後に増加したと推察できる。
・この部分も、選択肢アの文章前半と矛盾しない
⇒「人の移動が大幅に自由化された結果、故郷(田舎国家)から都会(他国)へ移住する人が増えた」という話と、「人口が減っている」「賃金が低い」という話は矛盾しない
・よってアは正文である
イ ルクセンブルクは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率と居住人口増加率が高く、最低賃金はEU加盟国の中で上位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の上位に名前があり、資料3の上位に名前がある
よって、EU域内の他国からの移住が増加する一方で、EUの原加盟国であることから経済統合が深化してEU域内の他国への移住も増加したと推察できる。
・この部分も、選択肢イの文章前半と矛盾しない
⇒「EU域内の他国からの移住が増加する」から資料2に名前があるのだし、「EU域内の他国への移住も増加した」から資料1に名前があるのだ、と考えられる
・よってイは正文である
ウ ブルガリアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の下位に名前があり、資料3の下位に名前がある
よって、EU加盟によりEU域内での人の移動は大幅に自由化されたが、EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少したと推察できる。
・この部分が、選択肢ウの文章前半と矛盾する
⇒資料1に名前が載っている(つまり人口が他国へ流出している)のに「EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少した」はおかしい。移住が増加したという話なら分かるが…
・よってウは誤文である
・以上から、ウのみが誤文。正解は③
問3
生徒Xは、調べ学習を進める中で、イギリスではポーランドなど東ヨーロッパ諸国から移民労働者を多く受け入れていたことを知った。他方で、Xは、先生Tが以前の授業で、EU離脱の是非を問うたイギリス2016年国民投票で移民問題が関わっていたと、関連する世論調査データも使いつつ話していたことを思い出した。次の資料4は、その授業での配布資料である。資料4中の空欄( ア )・( イ )に当てはまる記述として正しいものを、後の①〜④のうちから、それぞれ一つ選べ。
①EU市場へのアクセスは現状維持が最善である
②イギリスのことはイギリスが決めるのが当然である
③欧州自由貿易連合(EFTA)に留まる必要がある
④ユーロから離脱し通貨主権を取り戻せる
問3解説
正解:アが①、イが②
復習用資料:経済分野第三章/国際経済テーマ史
・イギリスに於ける、EU残留支持理由と離脱支持理由を一つずつ選べ、という問題
・解き方は色々考えられるが、今回は、明らかに変な選択肢を除外するところから始めよう
③欧州自由貿易連合(EFTA)に留まる必要がある
・EFTAはイギリスが作った組織ではある
・ではあるが、イギリスがEU(の前身)に入る前に抜けている
・よってEFTAがどうこうという話には絶対にならない
④ユーロから離脱し通貨主権を取り戻せる
・イギリスはEUには参加しているが、ユーロは使っていない。ポンドを使用し続けている
・以上から、選択肢③と④は除外できる
①EU市場へのアクセスは現状維持が最善である
②イギリスのことはイギリスが決めるのが当然である
・後はこの二つのどちらがEU離脱、残留支持理由かなのだが…
・「現状維持が最善」と言っておいて、EU離脱支持理由というのは通らないだろう
⇒今EUに入ってて、これから抜けるかどうかって話してるんですよこの時のイギリスは…
・という訳で、①が残留支持理由、②が離脱支持理由である
・勿論他にも解き方は色々ある
⇒それこそ私の授業をきちんと受け、授業用資料を読み込んでいる人であれば、②が離脱支持理由である事は一発で見抜ける
問4
ヨーロッパの難民問題を調べていた生徒Yは、シリア難民が、ギリシャ、オーストリア、ドイツをめざしたという先生Tの説明を思い出した。そこで、シリアを離れこれら3か国に到着し保護を求めた「庇護申請者」の合計の推移を調べ、次の資料5を作成した。後のア〜ウの記述のうち、資料5から推察できる内容として適当なものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。
ア 2011年から2013年にかけて庇護申請者数はわずかに増加した一方、ギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国の割合は減少している。これは、「アラブの春」によりシリアで政権交代が実現したことが背景にあると推察できる。
イ 2015年、2016年ともギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国への庇護申請者数が前年に比べ急増している。これは、内戦の激化によって国内を脱出した人々が、自国より政治的に安定した国をめざしたからであると推察できる。
ウ 2017年にギリシャ、オーストリア、ドイツへの庇護申請者数は前年に比べ減少している。これは、パグウォッシュ会議でシリア難民対応への国際的合意がなされたことが一因であると推察できる。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ
⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
問4解説
正解:②
復習用資料:政治分野第四章/現代国際政治史―ModernWarfare
・これ世界史の問題に片足突っ込んでないか? 感がある問題
※正直に言うと両足突っ込んでると思います。こういうの共テで出さないでほしい
・なお、図表を読み取らせる問題の癖に、読み取る意味があんまりない問題でもある
ア 2011年から2013年にかけて庇護申請者数はわずかに増加した一方、ギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国の割合は減少している
・資料5を見ると、確かにそのようになっている
これは、「アラブの春」によりシリアで政権交代が実現したことが背景にあると推察できる。
・ここがおかしい
・シリアでは、アラブの春の結果内戦が起きている
・よってアは誤文である
イ 2015年、2016年ともギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国への庇護申請者数が前年に比べ急増している
・資料5を見ると、その通りに推移している
これは、内戦の激化によって国内を脱出した人々が、自国より政治的に安定した国をめざしたからであると推察できる。
・ここも、選択肢イの文章前半と矛盾はない
⇒シリア内戦が激化したらそりゃシリアからの難民増えるよね、という当たり前の話をしている
・よってイは正文である
ウ 2017年にギリシャ、オーストリア、ドイツへの庇護申請者数は前年に比べ減少している。
・資料5を見ると、その通りに推移している
これは、パグウォッシュ会議でシリア難民対応への国際的合意がなされたことが一因であると推察できる。
・ここが(二重の意味で)おかしい
・そもそもパグウォッシュ会議は、冷戦期に行われた、核(兵器)廃絶運動である
⇒いわゆるラッセル=アインシュタイン宣言によって創設されている
⇒1950年代の、原水爆禁止世界大会やバンドン会議に代表される潮流の一つと言える
・パグウォッシュ会議自体は一応、現代でも残っているが…
・少なくとも現代の国際政治に於いて、難民の取り扱いに対して国際的合意を作れるような力はない
⇒一応、ウクライナ戦争に於いて即時停戦の呼びかけとかはしているが、あくまで「呼びかけ」である
・よって、ウは誤文である
・誤文なのだが、これ、果たして政治経済の知識か…?
・バンドン会議ならともかく、パグウォッシュ会議まで来るとそれは世界史ではないのか…?
・そういう意味でもおかしいと言うか、疑問が残る問題とも言える
※私大受験の本番で世界史の知識が問われる事は勿論よくある。が、これ共テの問題なので…
問5
生徒Xと生徒Yは、主な先進国の難民認定率と難民認定者数を示す次の資料6をみつけ、その内容について話し合っている。後の会話文中の空欄( ア )には後の国名aかb、空欄( イ )には後の語句cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:難民の認定者数はドイツが一番多いけど、認定率は( ア )が一番高いね。
Y:( ア )は( イ )の政策をとっていたね。それが関係しているのかもしれないね。
X:日本は難民の認定者数が少なく、認定率も0.5%とかなり低いね。
Y:そういえば、難民条約では、ノン・ルフールマンの原則により、難民認定の申請を受けた国は( ウ )と定められている、と授業で学習したよね。
X:その原則の申請者への適用の仕方は各国の事情によるんだろうね。この後、日本の難民受入れ政策や申請者への処遇などを調べてみようか。
( ア )に当てはまる国名
aアメリカ
bカナダ
( イ )に当てはまる語句
cユニラテラリズム
dマルチカルチュラリズム
( ウ )に当てはまる記述
e出身国での困窮を理由に入国した申請者を自国から送還してはならない
f帰国後に迫害される恐れのある申請者を自国から送還してはならない
① ア―a イ―c ウ―e
② ア―b イ―c ウ―e
③ ア―a イ―d ウ―e
④ ア―b イ―d ウ―e
⑤ ア―a イ―c ウ―f
⑥ ア―b イ―c ウ―f
⑦ ア―a イ―d ウ―f
⑧ ア―b イ―d ウ―f
問5解説
正解:⑧
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
・表も読み取れなければいけないし、常識も問われるし、政治経済の知識も問われる欲張り問題
X:難民の認定者数はドイツが一番多いけど、認定率は( ア )が一番高いね。
aアメリカ
bカナダ
・資料6を見ると、認定率そのものはカナダが最も高い(50%超え)
Y:( ア )は( イ )の政策をとっていたね。
cユニラテラリズム
dマルチカルチュラリズム
・ユニラテラリズムが何かを知らなくても、「多文化共生でしょ…」で終わる問題
※尚、ユニラテラリズムは単独行動主義等と訳される。主に、イラク戦争あたりの米国を批判する用途で使われる単語である
Y:そういえば、難民条約では、ノン・ルフールマンの原則により、難民認定の申請を受けた国は( ウ )と定められている、と授業で学習したよね。
e出身国での困窮を理由に入国した申請者を自国から送還してはならない
f帰国後に迫害される恐れのある申請者を自国から送還してはならない
・ノン・ルフールマンの原則の意味を覚えていれば解ける部分
・また、eのような経済難民は、難民条約の言う「難民」ではないという知識も持っておきたい
問6
これまでの学習の成果を踏まえて、生徒Zは、生徒X、生徒Yとともに、日本での移民・難民の期限を定めない受入れについて授業で討論した。この討論は異なる視点から3人が意見を出し合い、それぞれの意見を組み合わせて一つの政策的な含意をもつ提言を導くことがねらいであった。討論を通じて、まとめられたXたちによる次のア~ウの提言を読み、後の(1)、(2)の問いに答えよ。
ア 日本への移民・難民の受入れを考える前に、現状の根本的な問題解決として、そもそも日本は移民・難民の発生する地域の安定や開発に貢献すべきであるだろうし、そうした支援を行う国際機関への資金援助も今以上に積極的に行うべきだ。
イ 経済の活力が失われる日本の将来を考慮するならば、移民・難民の受入れとは考えなければならない選択肢の一つだけれども、移住してくる人たちに日本の社会や歴史、文化を深く理解してもらう教育制度に加えて、在留資格や国籍取得の要件を厳格にすべきだ。
ウ 多様な人材を日本に受け入れることで、雇用する会社はそれらの人材を事業や取引に活かせるだろうから、日本は移住者の雇用をどのように促進できて、その人たちといかに接点を作れるか、受入れ後の制度について既に移住している人たちと一緒に考えるべきだ。
(1)まず3人の生徒が導いたア〜ウの提言のうちから任意に一つ選び、アを選択する場合には①、イを選択する場合には②、ウを選択する場合には③のいずれかをマークせよ。なお、(1)で①~③のいずれを選んでも、(2)の問いについては、それぞれに対応する適当な選択肢がある。
(2)(1)で選択した提言は、討論を踏まえ意見をまとめていく中で、2人の生徒の意見を調整して組み合わせたものである。どの2人の意見を組み合わせた提言だと考えられるか。次のa〜cの意見のうちから適当なものを二つ選び、その組合せとして最も適当なものを、後の〜のうちから一つ選べ。
a【生徒Xの意見】
今の日本は移民なしに少子高齢化社会を支えられないだろうし、移民労働者によって日本経済も活性化すると思うな。難民についても、欧米諸国との受入れの国際比較に関する資料6にあったように、日本は他の国と比べて受入れ数が少ないんだし、積極的に受け入れることでもっと国際社会に貢献しても良いと思う。日本国憲法にもあるように、人権はすべての人に保障されているもので、誰かが困っているんだったら答えは受入れ以外ないと思う。
b【生徒Yの意見】
移住してくる人たちが日本で働き口をみつけ、家族を呼び寄せて、ある地域に移民が急に増えると、生活習慣や文化の違いでその地域の住民と摩擦が起こりそうだな。資料4のEU離脱支持理由にもあったけど、移民を手放しで受け入れた後では遅くて、受入れ前に対策を講じるのが一番大切だと思う。難民も多く発生しているアフガニスタンやシリアは言葉や宗教の面で日本と違うだろうから、暮らしにくいと思うよ。
c【生徒Zの意見】
資料2で人口減少が顕著だった東ヨーロッパの国をみて思ったんだけど、移民・難民として出ていかれたら、その国の将来を担う人材も減りそう。それに他国の就労先で低賃金・重労働の仕事を押し付けられるのも心配だ。私たちが互いの意見を尊重するのと同様に、いろんな言語や宗教の人たちの考え方や意思を尊重してあげたいな。ただ実際に多くの人が国境を越えて移動している中、国が移住を希望する人を制限したり妨げたりすることは避けるべきことだと思う。
①aとb ②aとc ③bとc
問6解説
正解は以下の三種
(1)が① ⇒ (2)は③
(1)が② ⇒ (2)は①
(1)が③ ⇒ (2)は②
・問題文を読んで分かる通り、完全に国語の問題である
⇒提言ア~ウは意見a~cの内二つを組み合わせて作られているから、その組み合わせを見つけろ、という問題。ここまで国語っぽい問題も珍しいというぐらい国語の問題
・簡単にまとめると、abcの意見は以下のようなものである
a:難民・移民を受け入れなければ日本経済は死にます! 難民・移民の受け入れは正義! ジャスティス! ラブ&ピース!!
⇒難民・移民受け入れ積極的賛成
b:難民・移民を無制限に受け入れたらとんでもねぇ事になるぞ。文化も習俗も違うんだから。受け入れてから後悔しても遅いぞ
⇒難民・移民受け入れ積極的反対
c:(難民・移民受け入れ反対とか言うと悪人扱いされるな~…どうしよっかな~…)移民反対って訳じゃないけど、移民って必ずしもいい事ばっかりじゃないよね?
⇒難民・移民受け入れ消極的反対
・以上を受けて考えていこう
ア 日本への移民・難民の受入れを考える前に、現状の根本的な問題解決として、そもそも日本は移民・難民の発生する地域の安定や開発に貢献すべきであるだろうし、そうした支援を行う国際機関への資金援助も今以上に積極的に行うべきだ。
・アは、難民・移民の受け入れそのものには言及していない
・結果的に、難民・移民を受け入れなくてよくなるように誘導している
・そもそも難民・移民が発生しなければ、日本側も受け入れるかどうか考えなくてよいのである
⇒と考えると、ねっこに難民・移民受け入れ積極的反対がありつつも、批判されないように、消極的反対意見を取り入れるという経緯があったと考えられる
・よって、アはbとcの意見によって構成されていると考えられる
イ 経済の活力が失われる日本の将来を考慮するならば、移民・難民の受入れとは考えなければならない選択肢の一つだけれども、移住してくる人たちに日本の社会や歴史、文化を深く理解してもらう教育制度に加えて、在留資格や国籍取得の要件を厳格にすべきだ。
・イは、その前半に於いて、難民・移民受け入れを拡大すべきだという立場である
・これはaの意見に見られる内容である
⇒日本経済にとって難民・移民は有益、むしろ受け入れなかったら日本経済は死にます…みたいな話はaの意見にのみ見られる
・一方で、後半には、同化政策や「ならず者の排除」と言える政策が盛り込まれている
・これは、bの意見に見られる内容である
⇒それこそ文化がどうこう、みたいな話はbの意見にのみ見られる
・よって、イはaとbの意見によって構成されていると考えられる
ウ 多様な人材を日本に受け入れることで、雇用する会社はそれらの人材を事業や取引に活かせるだろうから、日本は移住者の雇用をどのように促進できて、その人たちといかに接点を作れるか、受入れ後の制度について既に移住している人たちと一緒に考えるべきだ。
・ウはその前半で、難民・移民を受け入れると経済的に発展する、という旨の事を言っている
・これはaの意見に見られるものである
⇒日本経済にとって移民は有益、みたいな話はaの意見にのみ見られる
・ただ後半が、何を言いたいのかどうもはっきりしない
・この消極性は、cに特徴的である
・よって、ウはaとcの意見によって構成されていると考えられる