消費者問題

●概要と消費者基本法

・資本家(企業)と労働者(社員)なら、立場が強いのは資本家である
・では、企業と消費者であればどうか?
・商品を売る側と、商品を買う側であれば、どうか?
・やはり、基本的には企業(売る側)の方が強い

・極端な話、台所がどんなに不衛生な飲食店であっても、消費者には基本、分からない
・賞味期限切れの食品を調理して出したとて、余程食中毒にでもならないと分からない
・詐欺によって消費者がカネを騙し取られる場合だって当然、ある

・そういう弱い立場の消費者を守ろう、というのが消費者問題である

・戦後日本に於ける消費者保護は、基本的には1947年の【独占禁止法】に始まる
・既に見てきたように、この法律は様々な顔を持っている
⇒独占資本主義の登場の防止、日本人という黄色い猿が二度と逆らえないように叩き潰す、等々…
・ただ建前としては、「不公正の防止」というので導入された法律である
・だからこそ、独占禁止法に基づく取り締まりをするのが公正取引委員会なのだとも言える
・故に、不公正な価格をつける事もまた禁止されており、消費者保護の始まりと言える訳である

・ただ、本格的かつ今日的な消費者保護は、米国に源泉を求める場合が多い
・1962年、当時の米国大統領ジョン・フィッツジェラルド・[ケネディ]は、【四つの権利】を発表した
・これは消費者を守る為に、こういう権利を人々に認めましょう、ものであった

・四つの権利とは即ち、【安全である権利】【選ぶ権利】【知る権利】【意見を反映させる権利】である
※それぞれ、あまり訳が定まっていない単語で、参考書や教科書によって訳がちょっと違う場合がある
・安全な商品を手にできて、また、自分で好きな商品を選べる
・そしてまた、商品の品質と性能を知る事が可能であり、消費者の意見を商品に反映させる事もできる
・そういう権利が、消費者にはあるべきだ
・ケネディは、そう言ったのである

・日本でも、詐欺の横行等を背景に、消費者保護の機運が高まった
・これを受けて、1968年、【消費者保護基本法】が制定された
・そして2004年、改正されて【消費者基本法】と改名された

・消費者基本法第一条には、以下のようにある
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の【権利の尊重】及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。

・見ての通り、消費者と会社では格差があるから、消費者を守りましょう…という法律である
・基本的には、消費者保護の活動はこの法律に基づいて実施される事になる

・消費者基本法に基づいて消費者保護を管轄するのは、基本的には[内閣府]である
・内閣府の中に[消費者政策会議]があり、これが消費者保護行政の最高意思決定機関となる
・会議で決まった事を実際に各所へ指示する司令機関の役割を担うのが、2009年創設の[消費者庁]である
⇒こちらも内閣府に属する

・一方、消費者の窓口になるのは[消費生活センター]である
⇒全国各地に存在する
・この窓口と消費者庁を繋ぐ役割を担うのが[国民生活センター]となる
⇒つまり、「これ詐欺じゃないか」みたいになった時、相談する先は最寄りの消費生活センター、という事である

●様々な消費者保護

・現代は悪徳商法も多様化しており、消費者保護の形態も様々である
・有名どころを取り上げて紹介する

○クーリング・オフ

・かつて、悪徳商法として社会問題化したのが訪問販売である

・ピンポーン、と呼び鈴が鳴ったからとドアを開けるとセールスマンがいる
・このセールスマンが、半分無理矢理モノを売ってくる
⇒買わないと帰ろうとしないとか、脅したり、騙したりして、無理矢理モノを買わせる

・こういう悪徳訪問販売が問題になり、1976年には[訪問販売法]が制定された
・その後、訪問販売だけでなく、インターネット上の取引でも悪徳商法が問題となった
⇒それこそ今でも、インターネットの通販でモノを買ったら、HPの商品見本と全く違うものが届いた、なんて事はある

・そういった新たな悪徳商法も一緒に禁止する法律として、訪問販売法は改正された
・名前も[特定商取引法]となり、多くの商取引を規制する法律となった
⇒例えば、インターネット上で商売する場合は、これに従わねばならない。それこそ、あなたが仮にぬいぐるみを作るのが趣味だったとして「もう置くとこないし、売るか」というのでインターネット通販で売るというのであれば、この法律に従って売らねばならない

・この特定商取引法に定められた、有名な制度が【クーリング・オフ】である
・この制度は、「売買契約の成立後一定期間内なら、買主側から契約を解除できる」というものである

・即ち、モノの売り買いというのは、売買契約である
・我々は意識していないが、コンビニでおにぎりを買うのだって、売買契約である
⇒コンビニは客に「おにぎりを100円で売る」という契約を、客はコンビニに「おにぎりを受け取る代わりに100円払う」という契約を、結んでいるのである

・そういう売買契約を、無条件に、それこそ【違約金】なしに、買主側から契約解除できる
・これがクーリング・オフである
⇒この制度ができる前は、この違約金を悪用した悪徳商法が多かった。例えば訪問販売で、高い家電製品を押し売りする。で、高いものだから契約書に判子を、と言って判子を押させる。しかし後からその契約書をよく見ると、「返品は受け付けません」とか書いてあったり、「返品してもいいけど値段の八割は違約金になります」とか書いてあったりする…こういうのが多かったのだ

※ちなみに、クーリング・オフという単語は法律の条文には書いていない。一般にそう呼ばれているだけである
※また、クーリング・オフは特定商取引法以外の法律でも定められている。特定商取引法以外にも悪徳商法を防止する法律はあり、そういう法律に書いてある場合がある

○消費者契約法

・世の中には「必ず儲かります!」と言って商売している輩が結構いる
⇒それこそ令和三年のこの時代、ツイッターをやっていれば、一度は、「必ず儲かります!」「お金振り込んでくれたら稼げる方法を教えます」みたいなメッセージを受け取った事があるのではないだろうか

・まぁ当然、必ず儲かるやり方を知ってるなら、それをやって儲けている筈であって…
・こういう「必ず儲かります」というのは十割詐欺である
・そしてそういう、「必ず儲かると説明された契約」による悪徳商法を防ぐのが[消費者契約法]である
⇒この「必ず儲かると説明された」というのには、「必ず値上がりするから今の内に買っておくといいですよ」というのも含む

・当然だが、「必ず儲かる」とか「必ず値上がる」なんてことはあり得ない訳である
・そういう断定的な説明を受けて、消費者が「必ず儲かる」と誤って判断し、それで契約を結んだ場合
・そういう場合、契約の[取り消し]ができる、というのが消費者契約法である
⇒また、こういう「必ず儲かる」「必ず値上がる」みたいな事を言って契約させる悪徳商法は、契約書をよく読むと「実際に儲からなくても責任持ちません」「逆に損害が出ても知りません」みたいな事が書いてある事が多いのだが、そういうのを無効とする条文もある

○PL法

・いつの時代どんな地域でも、欠陥商品というのは製造されるものである
⇒それこそ古代ローマ帝国期に生産された甘味料やワインは鉛を多く含み、鉛中毒を引き起こしたなどと言われている。これが本当なら、まさに古代の「欠陥商品」である

・そういった欠陥商品を製造した者は、過失がなくとも賠償しなければならない
・即ち、欠陥品の製造業者は、【無過失】賠償責任を負う
・これが規定されたのが、1994年の【製造物責任法(PL法)】である

・と言っても、何でもかんでも欠陥品なら全部賠償、という訳ではない
・例えば、「この商品には欠陥がある」というのは、被害者側が証明せねばならない
・また、【開発危険】の抗弁、というのもある
⇒その商品を開発し、販売した(流通させた)時点での科学技術では予想不可能な危険については賠償しなくていい、というもの。まぁこれすらも認めないと、誰も新商品を作らなくなるので…

○消費者生活協同組合

・皆さんの家の近くには、生協、もしくはCO・OPがあるだろうか
・一般には「よく分からないけどモノが安いスーパー」程度に認識されているアレである
・あれは、正式には[消費者生活協同組合(生活協同組合)]と呼ばれる
・そして実を言えば、消費者保護の観点から生まれたものでもある

・と言うのは、昔の労働者の待遇は極めて悪かった
・企業はあらゆる方法で労働者からカネを搾り取ろうとした
・労働者の給料を下げるのもそうだし…
・工場と家しかないような田舎で働かせて、そこで日用品を高く売る店を構える、なんて事もした
⇒産業革命期、イギリスの話である

・生協は、これに対する対抗策として生まれたものである
・即ち、労働者が組合を作り、皆でカネを出して日用品を安く大量購入
・そして店を出し、安く売るのである
⇒最初の生協は、産業革命期イギリスの[ロッチデール]という場所で誕生した。現代日本の各種の生協も、元を辿ればここに行き着く

results matching ""

    No results matching ""