今日的な福祉問題

・ここでいう福祉は、「人々が幸福に生きる」という一般的な意味の方
・今日的な福祉問題としては、少子高齢化を含む人口問題と、これに付随する高齢者福祉の問題が代表例

●人口問題

・先進国は何処も少子高齢化の傾向にある
・現代日本も例に漏れず、と言うか、世界【一位】の高齢化率を誇る(誇らなくていい)
・少子高齢化は「産まれる子供が少なくなる」「老人が増える」事によって進行する

・「老人が増える」は、まず若者が少なくなれば当然、相対的に老人は増えるというのが一つ
・もう一つは、医療技術の進歩や公衆衛生の向上による長寿化がもう一つ理由として挙げられる
・一方、少子化については「そもそも何で少子化するのか」という点になかなか結論が出ない

・例えば現代日本では、「若者の貧困化」がよく挙げられる
⇒新自由主義の進展により、人口の1%にあたる超富裕層が更に金持ちになり、残りの99%は皆貧乏になった。既得権益を持たない若者は、特に貧乏になった。家を買うなんてもっての外で、そもそも正社員になれるかどうかすら怪しく、正社員になれてもブラック労働が蔓延。賃金は時給換算すると最低賃金以下も多々…みたいな。これで結婚して子供作ろうと思う方が凄い
・ただ、じゃあ「若者の貧困化」だけが本当に原因なのか? と言うと疑問もある
⇒例えばスウェーデン王国では、シングルマザー含め、誰でも子育てができるように出産・育児支援に力を入れている。出産費用は無料、教育費用は大学まで全部無料、待機児童はほぼゼロなぐらいの恵まれた保育園環境、産休育休制度も充実…とこの上なく恵まれている。しかし出生率は低い。日本ほど低くはないが、まぁこの程度じゃ人口は減っていくし高齢化は止まりませんよねぐらいである。また、シングルマザー含めて誰であっても出産育児が手軽にできる、とした結果、一部のイケメンに多くの女性が群がり子供を産むという実質的な一夫多妻制になってしまっている

・このように、なかなか原因は特定できない
・複数の原因が複合して影響している可能性も高い
・ただ基本的には、文明化と言うか、人権意識が行き渡ると出生率が下がる傾向にある
⇒なので個人的な見解としては、「そもそも出産育児という行為そのものが、親の人生を犠牲にする非人道的なものだというのが、人権という意識の浸透によりバレてしまった」から出生率が下がっているのではないかと思っている。昔なら、子供は労働力だったので積極的に出産して労働させていたが、今はそういう非人道的な事はしない。「人道的とは何かが浸透した結果、出産育児が非人道的行為になってしまった」のではないかと考えている
※皆さんも、どうして誰も子供を産もうと思わないのか、自分なりに調べ考えてみるのはいい事でしょう

○少子化

・人口問題は、人口が増える、減る、というのを問題にする
・この時、【合計特殊出生率】がいくつか、というのが分かりやすい指標になる
⇒一人の女性が、生涯の内に出産する子供の平均人数。人間の男女比は普通1:1と考えると、これが2を越えていれば、理論上人口は横ばいとなる
・日本の場合、2005年に【1.26】という記録的低出生率を記録した
・その後多少回復はしたが、1.5を下回るレベルで推移している

・日本の合計特殊出生率が2を割るようになったのは、1970年代後半から
・つまり、福祉とかそういうものを「不要なコスト」と見做すようになった1980年代からが本番
⇒そんな時期に、出産とか子育ての支援を手厚くしよう、なんて考える筈がない。少子化対策は後手後手となった
・合計特殊出生率が1.5を割った1990年代から、少子化が政治問題として取り上げられるようになる
・1994年には【エンゼルプラン】という子育て支援政策が実施される
⇒1999年には、【新エンゼルプラン】へと発展する
・では、これらの政策は効果があったのか? 出生率はずっと低いままなのでお察しください

・具体的に何が駄目だったのか見る為に、新エンゼルプランの「主な内容」を見てみよう
~ここから引用~
 1.保育サービス等子育て支援サービスの充実
 2.仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備
 3.働き方についての固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正
 4.母子保健医療体制の整備
 5.地域で子どもを育てる教育環境の整備
 6.子どもたちがのびのび育つ教育環境の実現
 7.教育に伴う経済的負担の軽減
 8.住まいづくりやまちづくりによる子育ての支援
~ここまで引用~厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/syousika/tp0816-3_18.htmlより~

⇒「ん? これ今年からやりますって言ってる少子化対策じゃないの?」と思った人、多いと思います。要するに、子育てしすい環境を作ろうとか、掛け声だけかけておいて全然ちゃんとやってない訳ですね。そらあかんわ

・一応、全くやってない訳ではなく、例えば[育児・介護休業法]というのがある
⇒最長で子供が二歳になるまで、育児休業を取れるようにしろ、という制度。またこれは高齢化社会対策法でもあり、介護が必要な家族がいる場合、一年に最長【九十三日】まで介護休業ができるようにしろ、という法律でもある
・また、[児童手当法]を改正して、子供のいる家庭へ給付するカネを増やしてもいる
⇒1971年制定の法律で、当時は「第三子以降が生まれた場合、その子が五歳未満の間、月額三千円」支給だった。2006年の改正により、「第一子でもいいので子供が生まれた場合、小学校卒業まで月額五千円」に増強されている
・さらには、2009年から、国公立の高等学校の[授業料無償]化も行われている

・ただ、こういった少子化対策は日本の現状を反映していないという批判も多い
・日本の場合、「結婚した後子作りする」率自体は、全然下がっていない
・単純に結婚する率が減った、結婚するとしても晩婚化したから出生率が減っている
⇒人間の身体の物理的な問題で、例えば二十歳で結婚した場合と三十歳で結婚した場合だと、産める人数に差が出る。ただでさえ結婚する人が減った上に、結婚する年齢も上がってしまった為に、出生率が減っている

・となると、「結婚した後子育てが楽になるよ」としても仕方ないとも言える
⇒勿論、「結婚して子供作ったら死ぬからやめとこ」がなくなるという効果もあるので効果ゼロとは言わないが、結婚しやすい(結婚したくなる)社会にするか、結婚しなくても子供産める社会にするか…という視点からやった方がいい、という話ではある。そして、こういう視点から行われた少子化対策というのは極めて少ない

○高齢化

・合計特殊出生率が低いというのは、つまり、若い世代の数が少ないという話になる
・若い世代の数が少なければ、老人世代の数は増える。つまり高齢化社会になる

・実は、単純に「老人が多い」という一般的な意味の「高齢化社会」とは別に、厳密な定義もある
・総人口に占める[六十五歳]以上の割合が【7%】以上であれば、【高齢化社会】
・総人口に占める[六十五歳]以上の割合が【14%】以上であれば、【高齢社会】
・総人口に占める[六十五歳]以上の割合が【21%】以上であれば、【超高齢社会】
⇒日本の場合、高齢化社会になったのが1970年、高齢社会になったのが1994年、超高齢社会になったのが2007年。少子化対策をほっぽらかしてた為、事態は急速に進行している。今や世界【一】位の高齢率である

・社会の高齢化は、当然様々な問題を発生させる
⇒それこそ、全人口の20%が働かない(働けない)、どころかその多くが介護を必要とする…となったら、普通は問題が起きて当然

・この高齢化、実は日本だけの問題ではなく、様々な国で問題になっている
・東アジアで見ると、大韓民国や中華人民共和国では深刻な問題になっている
⇒大韓民国は、高齢率こそ日本ほど酷くないが、今や合計特殊出生率が日本より【低く、1前後】である。一方、中華人民共和国は、今はまだ、高齢率も合計特殊出生率も【日本ほど酷くない】。しかし、かつて[一人っ子政策](1夫婦あたり子供は1人までとする、という政策。つまり強制的な合計特殊出生率1化政策)をやっていた影響で、やがて日本を越えるレベルでヤバい事態が来る事は確定している

・勿論東アジアに限らず、非常に多くの国で、高齢化は進行している
・G7と言われる先進国はもちろん、インドやインドネシアも「ヤバい」と言われている
⇒参考:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_2.html(内閣府)
・かつて、二十一世紀の問題は【人口爆発】だと言われていたが、実際には高齢化が問題になりそうである

●老人福祉問題

・出生率が下がった結果人口が減る、という事態に付随して起こるのは高齢化である
・そして、高齢化した社会に於いては、どうしても老人をどうするかという問題が出てくる
・つまり、老人に対する社会保障をどうするかという問題である
⇒そして日本では、増え続ける老人に対する社会保障費から、社会保障費は「不要なコスト」「削減すべきコスト」と見做す傾向が強まっている。金融庁は「老後は二千万貯蓄してないときついぜ」とか言い出すし、令和二年の自民党総裁選では「自助共助公助」とか言い出す候補も出るし…

・勿論、社会保障もコストカット一辺倒という訳ではない
・例えば、2000年に【介護保険】制度ができたが、これは明らかにコストカットに逆行するもの
・しかし大きな流れとしては、明らかにコストカットの流れになっている

例:
・1982年の[老人保健法]で、老人医療も自己負担ありになった
⇒1970年代から、老人医療は自己負担なしだった
・2002年の[老人保健法]改正で、老人医療は原則[一割]負担となり、負担が増えた
・2008年には、[後期高齢者]医療制度ができた
⇒老人医療の中でも、七十五歳以上は別枠とした。そして、この歳になっても現役世代並みの収入がある人は、現役世代と同じ自己負担三割、となった

・他には、1989年に策定された【ゴールドプラン】も、ある意味福祉国家からの撤退の流れである
⇒急速に進む社会の高齢化により、老人ホームのような老人医療施設が足りなくなる事が懸念された。そこで、在宅介護を重視し、在宅介護を支援していこうという方針が出たのがこのゴールドプラン。一面に於いて、今までは年老いた国民はちゃんと国が面倒見ますと言っていたのが、「家でやれ」になったとも言える方針転換である

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