通貨とは何か

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●前説

・我々は、印刷された紙をやれ諭吉だ万札だと有難がっている
・しかしあらゆる紙幣は、究極、印刷された紙に過ぎない
・硬貨だって、果たして百円玉を構成する金属に百円の価値はあるのか? と言うとまずない
・では、印刷された紙にしろ謎金属にしろ、こういう通貨を何故、人々は有難がっているのか?
・そもそも通貨とは何か?
・そんな感じの話

●商品貨幣と信用貨幣

・中近世では、希少金属そのものが通貨の価値を保障した
・例えば金貨は、要するに「金○g」という意味で価値を認められ、使われていた
⇒江戸時代の日本の銀に至っては、銀の重さを計量して使っていた。「お会計銀100gになります」「はいこれ」「ちょっと計ってみますね…あーこれなら銀120gですね。お釣りの銀20gです」みたいな感じ

・近代に入ると、各国は通貨として紙幣を発行するようになる
・十九世紀ぐらいまでは、この紙幣は希少金属によってその価値を保障されていた
・例えば大日本帝国は1897年から、「日本円1円は0.75gの金と交換できる」としていた
⇒要は「我が国の紙幣は、確かに印刷された紙かもしれません!」「でも、この印刷された紙は、決まった量の金と交換できます!」「だから安心して使ってください!」という形
・こういう、金属との交換を認める紙幣を[兌換]紙幣とか言う
・また、その国の保有する金の保有量を元に通貨を発行する体制を、【金本位制】と言う
⇒銀の保有量を元に通貨を発行するなら【銀本位制】。基本的には金本位制を採る国が多く、この手の希少金属の保有量を元に通貨を発行する体制は一般に、金本位制という言葉で代表される

・ただこの金本位制、欠点があった
・その国の金の保有量までしか、通貨を発行できないのである
⇒既に見たように、経済成長が続く限り、商品の数は増え、取引は増える。取引が増えれば、その取引に使うカネがより多く必要になる。だと言うのに、金本位制だとカネの発行がいつかできなくなってしまう。また、不況によるデフレ(物価下落、カネの価値上昇)対策としては、公共事業による雇用の創出と共に通貨の流通量を増やす事が効果的だが、そういう事も難しい
・世界恐慌後、世界各国で金本位制の廃止が起こるのは、この辺の事情と無関係ではない
※実際には、世界恐慌で金本位制が廃止されるのには様々な理由があるんですが、重要ではないしここではざっくり「自由に通貨を発行できない」という理由で廃止に向かって行った、と思ってください

・金本位制に代わって採用されたのが、【管理通貨】制である
・ざっくり言えば、政府(もしくは政府の中央銀行)の判断で、好きなだけ通貨を発行できる、という制度
・この管理通貨制の下では、基本的に[兌換]紙幣ではなく[不換]紙幣が発行される
⇒不換紙幣は、その名の通り金とか銀との交換が保障されていない紙幣
※二十世紀中葉ぐらいまでは、金本位制と管理通貨制の中間みたいな状態だった。この辺の詳しい話は後でやる予定。ともあれ、現代では完全な管理通貨制の下、完全な不換紙幣を発行している国が多い。少なくとも日本はそういう国の一つ

・さて、では管理通貨制下の不換紙幣は、一体何によって保障されているか?
・言い換えれば、何故「一万円札」は「一万円」の価値を認められているか?
・基本的にはこれは、政府に対する信用である
⇒要するに、日本政府が「このチケット(一万円札)には一万円の価値があります」「信用してください」と言っている。それを日本国民や世界の人間が信用しているから、「一万円札」は「一万円」の価値を認められている

・勿論国によって信用のさせ方は色々ある
・例えば中華人民共和国は、米ドルを根拠に人民元を発行している
⇒中華人民共和国は貿易黒字で相当量の米ドルを溜め込んでいる。そして政府は、国民が政府を信頼していない事を痛いぐらいよく知っている。そこで、「うちにはアメリカのドルがいっぱいあります。人民元が信頼できくても、いざって時はドルに交換できる!」「だから皆さん、安心して人民元を使ってください!」みたいな感じ
※逆に言えば、中華人民共和国が米国と喧嘩しても絶対勝てないのはこの辺に理由がある。対米貿易黒字がなくなるだけで通貨の発行が厳しくなるので、米国は関税を上げて貿易の収支を均等にすればいい。それだけで、中華人民共和国は経済的に悲鳴をあげる事になる

・管理通貨制下の通貨の発行は、金の保有量とかに左右されない
・特に日本のような、自国への信頼を根拠に自国通貨を発行している国は、ほぼ無限に通貨を発行できる
⇒勿論、通貨は発行すればするほど価値が下がる(そして物価が上がる。要は【インフレ】が起きる)。通貨の価値が紙と同レベルまで落ちたら意味がないので、実際には「インフレ(物価上昇、通貨価値下落)が許容できる範囲内で」無限に発行できる、という形になる

~ここから雑談~(クリック・タップして雑談を表示)

日本のような国の場合、完全に「このチケット(一万円札)には一万円の価値があります」「信用してください」で通貨を発行している。要するに、信用で通貨を発行している。信用通貨である。
 ところで、国債というものがある。これは政府が行う一種の借金と、よく説明される。具体的には、「日本政府は、令和×年×月×日に、一万百円を支払います」というような感じのチケットが国債である。このチケットを一万円で売る…というような形で、政府はカネを集めている。で、じゃあ本当に令和×年×月×日に一万百円が支払われるのか、という点に関しては、これもやはり「信用してください」でしかない。
 さて。
 「このチケット(一万円札)には一万円の価値があります」「信用してください」
 「このチケット(国債)を持っている人には、一万百円を支払います」「信用してください」
 似ていないだろうか。
 結局、一万円札も日本政府への信用を元に発行しているのである。一万円札という通貨と一万円の国債は、一体何が違うのだろうか。近年の経済学に於いて、「国債は通貨の一形態に過ぎない」と主張するものがあるのには、こういう事情がある。
 現代日本が、結構な量の国債を発行しているのは有名である。財政赤字を補填する為だ。これを人は借金と呼び、減らさねばならないと考えている。しかし、国債が通貨の一種だと考えると、どうだろうか。そして日本は、重度のインフレにならない限りは、無限に通貨を発行できる制度を採用しているという事と組み合わせて考えると、どうなるだろうか。
 少なくとも、国債を「借金」と呼ぶのはマズい…という話は出てくるだろう。勿論、国債は国債でも、例えば日本政府の発行した国債がドルで支払うものだったら、話が違ってくる。ドルは日本政府の信用で成り立っているものではないし、これは普通に借金と言っていいだろう。まぁ現代日本の場合、日本円でしか国債を発行していないので…
~ここまで雑談~

●市場に流通する通貨

○現金通貨と預金通貨

・一般的に、紙幣や硬貨だけが「通貨」だと思われているが、それ以外の通貨もある

・紙幣や貨幣の事は[現金通貨]という
⇒日本の場合は、紙幣(日本銀行券)と硬貨(貨幣)

・そしてもう一つ、[預金通貨]というのがある
⇒代表例は、文字通りの銀行預金。また、小切手や手形等も含まれる。要するに、「紙幣や硬貨という形になってはいないが、支払いや決済に使えるような形にはなっているもの」と捉えるといい

~ここから雑談~(クリック・タップして雑談を表示)

通貨の発行は基本的に政府の管轄だが、大体どの国でも、発行を直接的に担当するのはその国の中央銀行である。現代の日本であれば、日本銀行が発行している。千円札や一万円札をよく見ると、「日本銀行券」と書いてあるのが分かる。極端な話、日本円とは「日本銀行が発行した商品券」(もう少し言うと、「日本政府に頼まれて日本銀行が発行した商品券」)であると表現しても間違いではない。それが現金通貨として、現代日本では使われている。
 しかしながら、既に学習したように、「現金通貨」同様「預金通貨」もまた、通貨である。そして、近年の経済学では、「普通の銀行であっても、日夜、預金通貨を無から生み出している」と考えるようになっている。
 例えば、A銀行がB社に一千万円を貸したとする。
 普通の人は、こう考える。「A銀行が持っている一千万円分の通貨を、一時的にB社に渡した」と。
 しかし、考えてみてほしい。今時、一千万貸すと言っても、トランクに一万円札を一千枚詰め込んで渡す、という貸し方はしない。そういう貸し方をするなら間違いなく「A銀行が持っている一千万円分の通貨を、一時的にB社に渡した」となるが…現代では、そういう貸し方はしない。B社の預金口座の数字が一千万円増えて、それで終わりである。
 そう、今時「カネを貸す」というのは「預金口座の数字が増える」なのである。
 「カネを貸す」という行為のこの変化に対して、最近の経済学では、「“カネを貸す”とは、“カネを無から生み出す”だ」説明する場面が増えている。何せ、今時「トランクに一万円札を一千枚詰め込んで渡す」をする銀行は無いのである。「A銀行がB社に一千万円を貸す」として、「A銀行の手元のカネが一千万円減る」は起こらないのだ。

A銀行 B社
「トランクに一万円札を一千枚詰め込んで渡す」で貸す場合 手元の現金が一千万円ぶん減る 手元の現金が一千万円ぶん増え
「B社の預金口座の数字が一千万円増える」で貸す場合 手元のカネは変化しない 預金口座のカネが一千万円増える

つまるところ、現代社会に於いては、銀行が「カネを貸す」と、「カネが無から生み出される」のだ…と、最近の経済学はそんな風に考えるようになっている。高校の公共や政治経済でも「カネが無から生み出される」現象を「信用創造」と呼び、学習する(本教材でも「金融政策と銀行」という節でやる)が、現代の経済学は、とにかく銀行が「カネを貸す」をやれば「カネが無から生み出される」、というような事を言うのである。だから、銀行の貸出を制限するのは銀行の手元の資金ではない、別の要素だ…と論じるのだ。
 はっきり言うが、今の話は、直感や一般的な感覚とは全く異なる筈である。「“カネが無から生み出される”って…何?」というのが、一般的な感覚である。しかしながら、こういう直感に反する話は、経済学の世界では大量に出現する。と言うか今話したのは直感に反する話のほんのさわりでしかなく、本来はこの後、「借金によって無から生み出されたカネは、返済によって消滅する」という話に続く。一般的な感覚からすれば、意味不明だろう。
 なので、今の内にそういう感覚に慣れておいた方がいい。経済学部に行かなくても、銀行に勤務しなくても、経済からは逃げられないのである。景気が悪くなれば、クビになる人が出たり会社が潰れる人が出たりするのである。
~ここまで雑談~

○マネーストックの分類

・市場に流通する通貨の総量を操作するのは、経済政策の重要な柱である
※例えば不景気な時はだいたいデフレ(物価下落、通貨価値上昇)で通貨の量が足りないので、市場に流通する通貨の量を増やしてやる必要がある。勿論それだけでは駄目なのはアベノミクスが証明していて、公共事業による雇用の創出が必要なのだが…

・市場に流通する通貨の総量を、かつては[マネーサプライ]、今は[マネーストック]という
・「市場に流通する通貨の総量」とはつまり、現金通貨と預金通貨の合計である
・ただ預金通貨については「どこまでを預金通貨と認めるか」という部分でちょっと問題がある
⇒例えば普通預金は、いつでもどこでもすぐに現金化できる(現金通貨に変えられる)。しかし、定期預金は、決められた年数経つか解約しないと現金化できない。普通預金はともかく、定期預金は預金通貨として扱っていいのか? という疑問が当然出てくる

・そこで、M1、M2、M3、広義流動性という四つの分類がある
・ここでめんどくさいのはマネーサプライ時代にもM1~M3の分類があった事である
・そして、マネーサプライ時代とマネーストック時代で、同じM1、M2、M3でも分類の仕方が違う
・ここでは、マネーストック時代の分類を扱う

・M1
・現金通貨+一部を除く要求支払預金
※要求支払預金とは、普通預金や当座預金のような、いつでも現金化できる預金
※一部を除く、と言うのは、「M1の言う要求支払預金は小切手・手形を含まない」という意味

・M2
・現金通貨+要求支払預金+準通貨(定期性預金)+一部の譲渡性預金
※準通貨(定期性預金)とは、定期預金のような、いつでも現金化できる訳ではない預金
※[譲渡性]預金(CDとも言う)は、他人に譲渡可能な定期預金。企業が決済とかに使うもので、最低額千万とかが多い。一部、と言うのは、主に外国の銀行が対象外という事

・M3
・現金通貨+要求支払預金+準通貨(定期性預金)+全ての譲渡性預金

・広義流動性
・M3に、投資信託や国債、外債、社債等を加えたもの

●国債

○種類と原則

・政府や地方公共団体が発行する債券を、【公債】と言う
・政府(国)が発行するなら【国債】。地方公共団体が発行するなら【地方債】
※債という字は、返済する、返済させる、みたいな意味の字。だから、カネを借りた人は返済する責務がある、という事で債務者。カネを貸した人は返済させる権利がある、という事で債権者。同様に、返済しますからお金ください、という券が債券。借用証みたいなもの

・国債についての規定は財政法に書いてある
・財政法に規定された国債は色々な種類があるが、取り敢えず二種類覚えておけばいい
⇒【赤字国債(特例国債)】と【建設国債】。この二種類は普通国債と言われる、一般的な国債である
・この両者の違いを理解するついでに、一般会計について知っておこう

・政府の収入の中には、「こういう用途に使え」と決まっているものがある
⇒「この税金による収入は森林整備にしか使っちゃいけません」みたいな奴
・そういう収入と支出は、特別会計と言ってそれ専用の会計を作る
・また、政府が全額出資している公企業については、政府関係機関予算という専用の会計を作る
・特別会計と政府関係機関予算に入るもの以外は、全ての収入と支出を一般会計で処理する

・赤字国債は、一般会計の収入不足を補うもの
※要するに、政府の収入より支出の方が多いからその赤字を補填する、というもの
・赤字国債は、財政法によって原則、発行を禁止されている
※財政法は基本的に「国債は借金!」「借金はいけない事!」みたいな発想で作られている
※実際には、毎年【財政特例法】を作って発行している

・建設国債は、[公共事業]専用の国債
・財政法では、「借金は借金だけど後の世代に公共財を残すからセーフ」という扱い

・国債の原則として一番有名なのは、【日銀引き受け】の禁止である
⇒政府が発行した国債を、日本銀行が直接買う事を禁止するもの
※中央銀行はカネを発行できる。言ってみれば、無限にカネを生み出せる機関。無限に金を生み出せる機関が国債を買ってくれる(政府にカネを流してくれる)というのをあまりに安易にできるようにすると、無茶苦茶な財政をやりがち…という事で、大体の国で禁止されている。こういう、中央銀行が直接国債を買うのを財政ファイナンスとか言う

・そういう事情で、国債は中央銀行(日本銀行)が直接買ってはいけない事になっている
・国債は基本的に、市中(民間)の金融機関に売却する
⇒市中の金融機関は、更に個人の投資家とかに売却する、という感じ
・こういうのを、【市中消化】の原則という
※ちなみに、後でやるが、日銀が有価証券(国債とか社債)を買い取る、買いオペというのもある。実は、「政府が発行したばかりの国債」を日本銀行が買うのが駄目ってだけで、「一度民間の金融機関に流れた国債」を買い取るのは問題ない。そして、アベノミクス以降、日銀は無制限に国債を買い上げているので、「これ実質財政ファイナンスでは?」とか言われている

○財政健全化と国債

・国債を考える上で避けて通れないのが、国債は借金だという話である
・借金であるからには返さねばならないし、利子もつけないといけない
・その為、国債をバリバリ発行している国は、政府支出のかなりの割合を国債費が占める
・こういう状態を【財政の硬直化】とか言う
※現代日本の場合、令和二年の一般会計支出で23%ぐらい

・また、国債を発行し過ぎると[クラウディング・アウト]というのが起こる場合もある
・国債を大量に発行すると、「あ、この国やべーんだな」となって国債が売れなくなる
・売れない国債を売るには、金利を上げるしかない
⇒これにつられて市中銀行の金利も上がってしまうと、企業は銀行からカネを借りづらくなる。基本的に国債を発行しまくってる時というのは不況でデフレ。なのに銀行からカネを借りづらくなるという事はつまり、通貨流通量が減る。まずいですね、という話
※現代日本の場合、国債の金利はまるで上がっていない

・現代日本でこういう状況が起きてるかどうかはともかくとして、国債発行し過ぎるとこういう事が起きる
・直感的に、こういうのはよくない、と考えるのは当然の発想である
・政府の支出は税収だけで賄う。そういう健全な財政を目指すべきだという話になるのは普通である
・財政赤字の国がそういう事をするならば、当然、収入を増やして支出を減らさなければならない
・つまり、増税したり公共事業を減らしたりしなければならない
・そして、この話をする時に気を付けねばならない事は、既に雑談という形で喋った
⇒日本のような、「自分の国に対する信用のみで通貨を発行する」国が「自分の国の通貨で国債を発行する」場合、単純な借金と考えてはいけないのである

・勿論、日本がいくら信用で通貨を発行できる国だと言っても、無限に国債発行していいという話でもない
・日本の普通国債残高は2014年度末で780兆円。なかなか凄い額である
・結局、何でこうなっているかというと、要するに中途半端なのである
・公共事業を全くやらない訳ではないが、かと言って景気が回復するぐらい大規模にやる訳でもない
・金融緩和は大規模にやるが(アベノミクス)、公共事業を増やす訳でもない
・中途半端にダラダラやってるから、景気が回復しないのに国債発行額が延々と増えるのである
※中途半端にダラダラやってるから、国債発行額が凄い事になってる割に金利が全く上がらないのだとも言える。日本の国債発行ペースは、景気回復ができるほどの量でもないし、日本国債の価値を下げるほどの量でもない、という事
・必要なのは、景気が回復するまで思いっきり国債を発行して、景気刺激策を打つ事
・そして景気がちゃんと回復したら、公共事業を減らしたり金融引き締めしたり増税したりする事である
⇒アベノミクスも結局、効果が無かったのではなく、「効果はあったがパワーが足りない。もっとガツンとやらないとデフレは終わらない」という話なのである

●複式簿記的な考え方

○概要

・本来、高校の政治経済で扱うような話ではなく、大学の経済学部や簿記検定で習うような話である
⇒しかし令和四年の共通テスト以降、こういう話が入試で出るようになってきているので、新しく項目を作った。複式簿記的な考え方を理解していれば、令和四年本試験や令和七年追試験で出てきた貸借対照表(バランスシート)の見方の問題が解けたり、国債とカネの関係が理解できたり、「国際経済の仕組み」を勉強する時に役に立ったりする。何とか頑張ろう!

○複式簿記の発想

・例えば以下のようなお小遣いの帳簿があったとする

摘要 収入 支出 残額
4/1 お小遣い受取 10000 10000
4/2 ガチャに課金 5000 5000
4/3 お出かけ費用 3000 2000

・このようなものを、単式簿記と呼んでいる。一般人が知っている帳簿のつけ方はこれである
・一方、「帳簿を右と左に分け、右と左に同じ数字を書き込んでいく」という帳簿のつけ方もある
⇒例えば「左に5000と書いたら右にも5000と書く」「左に3000と書いたら右にも3000と書く」というような書き方である

5000 5000
3000 3000

・「何でこんな書き方がこの世に存在するのか?」「不便なだけではないか?」当然の疑問である

・では例として、あなたが学校の事務室の人で、出張の経費を管理していると考えてみよう
⇒教員でも出張する時はある。出張は仕事でやる訳だから、学校としては当然、出張に必要な経費(交通費等)を出張する人に渡す。例えば今回の出張には5000円必要だと言うので5000円渡す、次回の出張には3000円必要だと言うので3000円渡す…という具合である

・ところで、その「出張する人」は、渡されたおカネをちゃんと使ったのだろうか?
⇒「出張する人」が5000円必要だと言うから5000円渡す。それはいい。しかし実は、本当に必要なのは4000円ぐらいで、残りの1000円はネコババ…という可能性もゼロではない。出張経費を管理しているあなたからすれば、渡した5000円が本当に出張の為に使われているか、確認する必要がある

・では、以下のような帳簿のつけ方はどうだろうか?
1:出張する人に経費を渡した時、左に渡した金額をつける
2:出張した人が使ったおカネのレシートを受け取った時、右にレシートの金額をつける

⇒この帳簿のつけ方で、「左に5000」「右に5000」や、「左に3000」「右に3000」という風になっていれば、出張経費は正しく使われている。逆に言えば、「左に5000」「右に4000」とかになると、何かが起きているという事になる

・どうやら、「帳簿を右と左に分け、右と左に同じ数字を書き込んでいく」にも意味がありそうである
⇒そして「帳簿を右と左に分け、右と左に同じ数字を書き込んでいく」帳簿の書き方を、一般に、複式簿記と呼んでいる

○貸借対照表 概要

・複式簿記とその発想を応用したもののひとつとして、【貸借対照表(バランスシート)】がある

資産
3兆1513億9400万円
負債
5463億9600万円
純資産
2兆6049億9800万円

※例として、令和六年三月の任天堂の貸借対照表。数字は↓より
https://www.buffett-code.com/company/7974/financial/bs

・貸借対照表は複式簿記の発想で作られているので、基本、左右は同額になる
⇒上記任天堂の例の場合、左は3兆1513億9400万円、右は5463億9600万円+2兆6049億9800万円=3兆1513億9400万円。左右で同額である

・貸借対照表には、大まかに分けて、三つの項目が存在する
資産:現時点で持っているモノの合計
負債:支払う義務があるカネの総額(例:借金)
純資産:資産-負債

・このように、貸借対照表は、「現時点で持っているモノの合計」とその内訳を分かりやすく示してくれる
⇒「現時点で持っているモノの合計」は左側、資産を見れば一発で分かる。しかし「現時点で持っているモノの合計」の中には当然、借金等の「支払う義務があるカネ」(負債)も含まれている。そして、資産-負債という計算をすれば、純資産という、純粋に「自分の財産」と言えるモノの総額が出てくる訳である

⇒では、この貸借対照表の基本的な読み方が分かっていれば解ける問題を一問、解いてみよう

○令和七年 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第4問 問2

企業の資金調達に関連して、さまざまな資金調達の方法について関心をもった生徒Yは、企業のバランスシート(貸借対照表)の変化を考えるために、企業のバランスシートを模式的に示した次の図を作成した。企業が銀行から3000万円の資金を借り入れて設備投資を行った場合、図中のア〜ウのどの欄に3000万円を書き加えればよいか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして正しいものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

①ア  ②イ  ③ウ  ④アとイ  ⑤アとウ  ⑥イとウ  ⑦アとイとウ

○令和七年 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第4問 問2 解説

・以下のような場合、貸借対照表のどこに3000万を書けばいいか…というのがこの問題である

企業が銀行から3000万円の資金を借り入れて設備投資を行った

・まず、資産(左側)に3000万を書くべきであろう
⇒「資産」は、「現時点で持っているモノの合計」である。この企業は3000万円を借りたので、この企業の手元には3000万円がある。もしくは、3000万円相当の新しい工場か何かが、この企業の手元にある筈である

※「設備投資」とは、新しい工場を建てる、工場に新しい機械を導入する等。今回問題文に「3000万円の資金を借り入れて設備投資を行った」とあるので、3000万円相当の新しい工場を作るか、3000万円相当の新しい機械を導入したか、そんな感じの事をしている筈である。何にせよ、“3000万円相当の何か”がこの会社の手元にあるので、「現時点で持っているモノの合計」たる資産にプラス3000万円しておくべきであろう

・続いて、「負債」にも3000万円を書くべきであろう
⇒「負債」は、「支払う義務があるカネの総額(例:借金)」である。問題文に「銀行から3000万円の資金を借り入れ」とある以上、負債に3000万を書くべきである

・よって、正解は④、アとイである

○貸借対照表の左と右

・ところで。先の問題の貸借対照表では、左の「資産」に3000万円、右の「負債」に3000万円と書いた
・この左と右の「3000万円」、同じ「3000万円」でも意味が違う事に気付いただろうか?
⇒あくまで一つの見方としてではあるが…例えば、「左の3000万円」は「何が増えたか」、「右の3000万円」は「何故増えたか」という言い方ができるだろう

資産 負債+純資産
会社の資産が3000万円増えた(結果) 3000万円借りたから(原因)

⇒実を言えば、複式簿記の考え方の根本の一つに、「一つの出来事には、必ず二つの側面が同時に生じる」「その二つの側面を、両方書いておく」というものがある。この「二つの側面」は、勿論、「原因」と「結果」だけではない。例えば、①~④の例を貸借対照表にし、「プラスマイナス」という観点から考えると、以下の表のようになる

①:3000万円借りた
②:1000万円ぶんの商品を売った
③:500万円ぶんの商品を仕入れた(買った)
④:500万円を、事務所の家賃や店舗の賃料として払った

資産 負債+純資産
会社の資産が3000万円増えた
(カネが増えた、プラス)
3000万円借りた
(将来的に借金返済しなきゃいけない。マイナス)
会社の資産が1000万円増えた
(カネが増えた、プラス)
商品を1000万円ぶん売った
(商品の在庫が減った。マイナス)
会社の資産が500万円減った
(カネが減った、マイナス)
商品を500万円ぶん仕入れた・買った
(商品の在庫が増えた。プラス)
会社の資産が500万円減った
(カネが減った、マイナス)
500万円を家賃等として払った
(賃料が払えなかったら店を潰さなきゃいけないが、ちゃんと払えたので営業を続けられる。プラス)

・このように、「左」と「右」に分けるのは、二つの側面を両方書く、という意味もあるのである

・これと、先の雑談で得た知識があれば簡単に解ける問題を、今度は解いてみよう
⇒先の雑談というのは、「市場に流通する通貨」の「現金通貨と預金通貨」のところでやった、“今時の銀行の「カネを貸す」は、「銀行の手元にあるカネを相手に渡す」ではなく、「無からカネを創造する」だよ”…という話

○令和四年 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問5

融資に関連して、生徒たちは、次の図1と図2を用いて市中銀行の貸出業務を学習することになった。これらの図は、すべての市中銀行の資産、負債、純資産を一つにまとめた上で、貸出前と貸出後を比較したものである。これらの図から読みとれる内容を示した後のメモを踏まえて、市中銀行の貸出業務に関する記述として最も適当なものを後の①~④のうちから一つ選べ。

メモ
個人や一般企業が銀行から借り入れると、市中銀行は「新規の貸出」に対応した「新規の預金」を設定し、借り手の預金が増加する。他方で借り手が銀行に返済すると、市中銀行の貸出と借り手の預金が同時に減少する。

①市中銀行は「すでにある預金」を個人や一般企業に貸し出すため、銀行貸出は市中銀行の資産を増加させ負債を減少させる。
②市中銀行は「すでにある預金」を個人や一般企業に貸し出すため、銀行貸出は市中銀行の資産を減少させ負債を増加させる。
③市中銀行は「新規の預金」を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を減少させる。
④市中銀行は「新規の預金」を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を増加させる。

○令和四年 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問5 解説

・出題当時、業界が騒然となった難問である

・まだ学習していない単語として、市中銀行というのが出てくる
⇒これは、日本銀行のような特殊な銀行(日本の中央銀行)に対する、「普通の銀行」を指す言葉である。三菱UFJ銀行も、みずほ銀行も、りそな銀行も、横浜銀行も、全部市中銀行である

・まず、バランスシートの各項目を確認していこう

1:日銀当座預金
⇒「この市中銀行が、日本銀行に預けているカネ」である。これは後に「金融政策と銀行」で詳しくやるが、一般人は日本銀行に口座を作れない。市中銀行(民間の銀行、普通の銀行)が、日本銀行に預金口座を作って、そこにカネを入れる

2:資本金
⇒「会社(この市中銀行)を運営する為の元手」である。借金等ではなく、純粋に会社の財産である
※負債か純資産かで言えば、純資産

3:「既にある預金」「新規の預金」
⇒「この市中銀行の顧客の口座に入っているカネ」である。もうちょっと言うと、「顧客から預かっているカネ」であり、顧客が「現金にしたいから返して」と言ってきたら返さねばならない
※負債か純資産かで言えば、負債

4:「既にある貸出」「新規の貸出」
⇒「顧客に対し、この市中銀行が貸しているカネ」である

名前(左) 概要(左) 名前(右) 概要(右)
「既にある貸出」
「新規の貸出」
顧客に対し、この市中銀行が貸しているカネ 「既にある預金」
「新規の預金」
この市中銀行の顧客の口座に入っているカネ
※負債にあたる
日銀当座預金 この市中銀行が、日本銀行に預けているカネ 資本金 会社(この市中銀行)を運営する為の元手
※純資産にあたる

個人や一般企業が銀行から借り入れると、市中銀行は「新規の貸出」に対応した「新規の預金」を設定し、借り手の預金が増加する。

・では、メモの↑の文章を読み解いていこう

・既に雑談で見たように、現代の銀行の「カネを貸す」は以下のようになっている
×:銀行の手元にあるカネを、顧客に渡す。そのカネを後で返してもらう
○:顧客の預金通帳の数字が増える(無からカネを創造する)(創造されたカネは返済によって消滅する)
⇒これを視覚化したのが、本問の図1図2である

・既に見たように、現代の銀行の「カネを貸す」は「顧客の預金通帳の数字が増える」である
⇒実際、図2の「右」で「新規の預金20」が増えている。「顧客の預金通帳の数字が増え」たのである

・しかし、「一つの出来事には、必ず二つの側面が同時に生じる」のである
⇒「新規の預金20」の別の側面を考えてみよう。これは勿論、顧客が自由に使っていいカネであるが、一方で、“銀行が貸したカネ”という側面を持つ
⇒だから、図2で増えたのは「右」の「新規の預金20」だけではない。「左」にもう一つの側面、即ち「新規の貸出20」が書かれている

・さて、ではこれら二つの「20」は、どこから生えてきたのか?
⇒言うまでもなく、「無から」生えてきたのである。現代の銀行の「カネを貸す」という行為により、「無から」カネが創造されたのだ

他方で借り手が銀行に返済すると、市中銀行の貸出と借り手の預金が同時に減少する。

・そしてメモの後半にあるように、二つの「20」は、借金の返済により消滅する運命にある
⇒「新規の預金20」は、無論、顧客が自由に使っていいカネである。一方でこの20は借金でもあるので、顧客にとっていつかは手放さねばならない(返済しなければならない)20である
⇒「新規の貸出20」は、“銀行が貸したカネ”である。当然、返済の期限が設けられており、“銀行が貸したカネ”ではなくなる日が来る20である
⇒結果、これら二つの「20」は、借金の返済に伴い、同時に消滅するのである

・という訳で、正解は④である

⇒なお、この辺の知識がなくても国語の問題として解けるは解ける。何せ、以下の二つの文章は、結局言っている事は同じである。文章の意味が分からなくとも、「問題文と言ってる事が矛盾しないのは④だな」で解けると言えば解ける

個人や一般企業が銀行から借り入れると、市中銀行は「新規の貸出」に対応した「新規の預金」を設定し、借り手の預金が増加する ※問題文のメモの部分
④市中銀行は「新規の預金」を創り出すことによって個人や一般企業に貸し出すので、銀行貸出は市中銀行の資産と負債を増加させる。

○複式簿記的な考え方の応用

▽国際収支で応用してみる

・この複式簿記的な考え方は、経済分野の様々なところで応用する事ができる

・例えば、後の「国際経済の仕組み」の節、「国際収支」の項でやる国際収支である
⇒いわゆる「貿易黒字」とか「貿易赤字」と言われるようなものを、全部ひっくるめて統計にしたものが【国際収支】である。実はこの国際収支にも、複式簿記的な考え方が使われている

・国際収支には、主に三つの項目がある。「経常収支」「資本移転等収支」「金融収支」である
⇒細かく見ればもっと色んな項目があるが、そういう話は「国際経済の仕組み」の節でやるので、今は「はえ~そうなんだ~…」ぐらいに思っていてくれればそれでいい

・主に三つの項目がある、というのでもう分かったかもしれないが…国際収支は↓のようになっている

金融収支
11兆円
経常収支
10兆円
資本移転等収支
1兆円

例1:日本国が、アメリカ合衆国に対し、1000億円ぶんの自動車を輸出した
⇒金融収支に1000億円、経常収支に1000億円

例2:日本国が、アメリカ合衆国から、1000億円ぶんの公共施設を無償で譲渡された
⇒金融収支に1000億円、資本等移転収支に1000億円

・このように、「左」に1000と書いたら「右」にも1000と書く、という発想で国際収支は作られている
⇒即ち、国際収支は完全に、複式簿記的な発想で作られている。これを覚えておくと、「国際経済の仕組み」の勉強が格段に楽になる

※大抵の高校生は複式簿記的な発想を知らんまま国際収支の勉強をするので、「金融収支にも経常収支にも同じ額を書くって、何…?」ってなっちゃんですよね…

▽国債の話に応用してみる(半分雑談)

・2012年に第二次安倍内閣が成立して以来行われた経済政策が、アベノミクスである
・このアベノミクスでは、平たく言えば、「カネを大量に増やす」が行われた
⇒マネタリーベースで言うと、2012年からの十年間で、五倍に増えている。第二次安倍内閣の経済政策の心臓は、「カネを増やす」(ひいては「カネの価値を下げる」「カネの価値が下がると連動して物価が上がる」「カネの価値が下がって物価が上がるって、これってインフレじゃん?」「インフレは好景気!」)だったと言ってよい

・では、アベノミクス以降の現代日本ではどうやってカネを増やしているのか?
⇒細かい仕組みは「金融政策と銀行」でやるので省くが、簡単に言うと、「国債が100発行されると、日本円が100増える」というような形でカネを増やしてきた

新規のおカネ100 新規の国債100
既にあるカネ1000 既にある国債1000

・先の令和四年の問題風に書くと、アベノミクス以降の日本国は、↑のような形でカネを増やしている
⇒大雑把に言えば、「新規の国債」が100発行されれば、「新規のおカネ」も100増える…というような形で日本円を増やしているのが、令和の日本国である

・さてここで、普段テレビの経済ニュースを見ていて聞くような台詞を思い出してみてほしい

「日本は国債が多すぎる。つまり日本は借金まみれだ」
「このままでは日本は破産する」
「ただでさえ日本は不況なんだから、借金を減らさないといけない」

・上記意見は、“一般的な感覚”では正しい
⇒「借金なんて、しなくて済むなら一切すべきではない」が“一般的な感覚”である。況して日本国は、1991年にバブル景気が終わってから三十年以上不況の国である。「不況の国で、国が借金しまくる(国債発行しまくる)なんてけしからん!」というのは“一般的な感覚”である。

※国債を単純に「借金」と認識してはいけない、という話は既にしているが、一方で国債が「借金」の一種というのは嘘ではないので…ここでは、「国債=借金」という図式に対する疑問は一旦、横に置いておく事にする

・…ところで、“一般的な感覚”に反する話は、経済学の世界では大量に出現する
・という訳で、この話に複式簿記的な考え方を応用し、考えてみよう

前提:今の日本では、「“国債が100増える”と“日本円が100増える”」という関係にある

新規のおカネ100 新規の国債100
既にあるカネ1000 既にある国債1000

・では、上記図の「新規の国債100」(借金)を返済したらどうなる?
⇒「新規の国債100」が消滅する

・「右」で「新規の国債100」が消滅したら、「左」の「新規のおカネ100」は?
⇒勿論、同時に「新規のおカネ100」も消滅する

・つまるところ、令和四年本試第2問の問5と同じである
⇒借金をする(カネを貸す)と、世の中のおカネが増える。借金を返済する(カネを返してもらう)と、世の中のおカネは減る。これは令和四年本試第2問の問5を解いた時と完全に同じである

「日本は国債が多すぎる。つまり日本は借金まみれだ」
「このままでは日本は破産する」
「ただでさえ日本は不況なんだから、借金を減らさないといけない」

・という訳で、テレビでよく見る↑の人達の意見を経済学的に言うと、「カネの量を減らす」政策になる

・では、カネの量を減らすと、どうなる?
⇒勿論、カネの価値が上がる

・では、カネの価値が上がるとインフレになるか? それともデフレになるか?
⇒カネの価値が上がると連動して物価が下がる。これはデフレである。つまり、「国の借金(国債)を返済する」「カネの量を減らす」は、デフレ誘導政策という事になる

・では、デフレが進むと、景気はどうなるのだったか?
⇒一般に、デフレは不景気である(インフレが好景気)

・…という訳で、「“国債(借金)を減らす=よいこと”とは限らない」という話になる訳である
⇒ここまで幾度となく述べてきたが、経済の世界では、“一般的な感覚”や“直感”に反する事が大量に起こる。国債は、その最大の例と言っていいだろう

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