経済成長率

 よく「○○国は毎年○○%の経済成長を遂げており…」みたいなニュースを見る筈。このニュースが、具体的に何を言ってるのかを理解するのが本節のテーマ。

●経済成長率概説

・GDPやGNPは要するに、「ある一定期間、その国でどれぐらい経済活動が行われたか」
・このGDPやGNPを、今年の分と去年の分で比べると「○%増えた」「○%減った」みたいになる
・このGDPやGNPが「○%増えた」「○%減った」というのを【経済成長率】という
・現在では、一般的に【GDP(国内総生産)】を使う。本稿でも以後、GDPのみを使う

・例えば、去年のGDPが100兆円、今年のGDPが110兆円だとする
・この場合、GDPが10兆円増えた事になる。つまり、10%増えた事になる
・これはつまり、GDP基準で10%の経済成長を遂げた、と表現できる
・経済成長率という言葉の理解は、基本的にはこの考え方でいい

・ただ、ここでひとつ問題がある
・GDPというのは、国内で生産された商品の総額をベースにしている
※GDPの計算式は「一年間の国内の総生産額-中間生産物」
・この「商品の総額」どうやって求めるのか?
・勿論、価格×個数を無数に足し算して求める
・ところで価格(物価)は、上がったり下がったりする
・つまり、物価が上がると、生産した商品の数は同じであっても、GDPは増えてしまう

・例えばさっきの「去年のGDPが100兆円、今年のGDPが110兆円」
・この場合GDPが10%増えた訳だが、実は、去年と今年で物価が10%上がったとすればどうだろう?
⇒「なんや、GDPが10%増えたって言っても、ただ物価が上がっただけやん」「経済成長なんて全くしとらんやんけ」になってしまう

・つまり、経済成長率を求めるにしても、物価を考慮するのかしないかで、全く話が変わってくる
・物価を考慮しない経済成長率を【名目経済成長率】、考慮する経済成長率を【実質経済成長率】と言う
・同様に、物価を考慮しないGDPを【名目GDP】、考慮するGDPを【実質GDP】と言う
・ここから、それぞれの算出方法について述べるが、その際に使うのが【GDPデフレーター】

・GDPデフレーターは、「ある時からある時までにどれぐらい物価が上がったか」を示すもの
・基本的に、GDPデフレーターは百分率で示す
・例えば、去年と今年で物価が10%上がったなら、GDPデフレーターは110となる
・同様に、十年前と今年で物価が35%上がったなら、GDPデフレーターは135となる

●経済成長率の計算方法

○公式

※基準年次と比較年次:仮に去年と今年のGDPを比べる場合、去年が基準年次、今年が比較年次

・名目GDP:統計で出たその年のGDPそのまま
・GDPデフレーター:物価が10%上がったなら110、という形
・実質GDP:[名目GDP÷GDPデフレーター×100]
・名目経済成長率:[(比較年次の名目GDP-基準年次の名目GDP)÷基準年次の名目GDP×100]
・実質経済成長率 :[(比較年次の実質GDP-基準年次の実質GDP)÷基準年次の実質GDP×100]
※厳密に言えば、実質経済成長率はこの式だとちょっとおかしいのだが、基本的にはこれで覚えるといい

○例題(センター試験追試験、平成三十年、改題)

次の表は、ある国の2000年と2001年の名目GDPとGDPデフレーターを示している。この国の2001年の名目経済成長率と実質経済成長率を、それぞれ算出せよ。

名目GDP GDPデフレーター
2000年 500兆円 100
2001年 504兆円 96

○例題解説

・名目経済成長率は、名目GDPがどれぐらい増えたかという話である
・2000年が500兆円で2001年が504兆円なのだから、4兆円増えたという事になる
・じゃあその4兆円は500兆円の何%かと言えば…4÷500×100=0.8%
⇒先に、名目経済成長率の公式は「(比較年次の名目GDP-基準年次の名目GDP)÷基準年次の名目GDP×100」と言ったが、考え方自体はこの通りである。そしてここに数字を代入すると「(504-500)÷500×100」になる

・続いて、実質経済成長率は、実質GDPと実質GDPを比較する必要がある
・実質GDPの出し方は、「名目GDP÷GDPデフレーター×100」
・つまり2000年の実質GDPは…500÷100×100=500兆円
・続いて2001年の実質GDPは…504÷96×100=525兆円

・実質GDPが500兆円から525兆円になったという事は、つまり25兆円増えたという事になる
・じゃあ25兆円って500兆円の何%かと言えば…25÷500×100=5%
⇒ここまでの考え方を公式化すると「(比較年次の実質GDP-基準年次の実質GDP)÷基準年次の実質GDP×100」 

○雑談

 見ての通り、インフレ(物価上昇・貨幣価値下落)やデフレ(物価下落・貨幣価値上昇)は大きな影響を持ちます。基本的には、インフレであれば【名目経済成長率>実質経済成長率】、デフレであれば【名目経済成長率<実質経済成長率】です。そして、近年の日本みたいな、よっぽど突然変異みたいな特殊事例でもない限りある程度のインフレは起きるので、普通は「名目経済成長率>実質経済成長率」になります。
 まぁ極端な話、インフレさえ起きれば名目上は経済成長します。なので名目経済成長率で「ここ十年の経済成長ランキング」とか作ると、「君絶対そんな成長してないよね??? 知ってるよ??? 今経済大爆発して治安も悪化して大変なことになってるでしょ???」みたいな国が上位に来ることも普通にある。
 逆に日本みたいに長いことデフレだと、「なんだこの日本の名目経済成長率…いや確かに今の日本って全然経済成長してないけど、ここまで低くないでしょ…」みたいなことになる。実際のところ、ここ二十年ぐらいの実質経済成長率見てみると、主要国ではかなり低い方なのは確かで、「まぁギリシアよりはましだしイタリアみたいに悲惨なことにはなってないかな…」という感じ。

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