日本国憲法と人権(平等権)

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●概要

 基本的人権の内、代表的なものを三つ挙げよと言われたならば、十八世紀的権利の自由権、十九世紀的権利の参政権、二十世紀的権利の社会権となるだろう。だが、これら以外にも人権はある。ここからは、そういう人権について見て行こう。

●平等権の概要

・日本国憲法に於ける平等権は、代表的なところでは【法の下の平等】と[選挙人資格の平等]がある

〇法の下の平等

・日本国憲法では、【十四条】に定められている

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、【政治的、経済的又は社会的】関係において、【差別】されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

※初期は、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」の部分は、これによる差別を禁止する、と解釈されていた。近年は、この部分は単に、例を列挙したものと解釈されている。よって、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」以外も含めて、あらゆる差別を禁止したものと解釈されている

・法の下の平等により、現代日本は【実質的】平等を実現するものとされる
形式的平等:機会の平等。平等に機会が与えられていればOK
実質的平等:結果の平等。国家による平等の実現
⇒機会の平等だけだと、「これ平等って言っていいのか」みたいな格差が発生し得る。例えば学力。金持ちは私立学校も家庭教師も塾も、いくらでもなんとかなる。一方貧乏なら、学校は行けて公立中学まで、家庭教師や塾なんてもっての外、となり得る。こういう状況で、「誰であっても受験資格があり、試験で合格すれば入学できる」という「機会の平等」を用意したとして、平等な社会と言えるのか…という話である。そこで、「ある程度は結果の平等も保障しよう」という話になったのが現代の日本。共産主義国家みたいな「誰が何をやっても必ず結果が同じ」という意味での「結果の平等」ではない

・なお、差別の禁止と言っても、【合理的理由】のある差別は禁止されていないと解釈されている
例1:未成年に選挙権がない
例2:労働基準法の[女子労働者保護]規定(産休をあげなさい、等の規定)
例3:公務員の[国籍]条項(公務員は基本、日本国籍がないとなれない)

〇選挙人資格の平等

・参政権にも被る部分
・[四十四条]で、平等選挙を定めている
⇒一人一票、一票の価値が平等

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

●平等権に関する裁判

〇栃木実父殺害事件

・刑法の【尊属殺重罰規定】について、違憲判決が出た事件
・尊属殺とは、直系目上の親族(父母や祖父母)を殺す事
・かつての刑法には、尊属殺は無期懲役か死刑のみという規定があった
⇒普通の殺人罪の刑は、こんなに重くない
・尊属殺重罰規定は何度も合憲違憲が争われたもので、戦後直後からずっと合憲判決が出ていた
⇒1973年に出たこの事件の判決で、ついに違憲判決が出た
・以降、法務省は尊属殺の規定を使わないように通達
⇒1995年の刑法改正に際して削除された

〇【議員定数不均衡】問題

・何度も繰り返し裁判になった問題
・例えば、現在神奈川県の人口は920万人。和歌山県の人口が92万人である
・もし、神奈川県から1人、和歌山県からも1人国会議員を選ぶとする
・すると単純計算で、和歌山県で議員になるには神奈川県の十分の一の票しか必要ない事になる
・言い換えれば、和歌山県民の一票は、神奈川県民の十票に相当する事になる
⇒流石にこれは平等な選挙とは言えない。こういう【一票の格差】の問題が、繰り返し訴訟になってきた

・衆議院選挙参議院選挙共に、最高裁は何度か違憲判決を下している
・但し、最高裁は違憲とした選挙について、[無効]であるとした事はない
⇒この選挙は無効、やり直し、となると政治の大混乱が必至になる為。[事情判決の法理]とか言う

・実際のところ、有権者の数が変動する以上、票の価値を完全に平等にするのは無理
・しかも、選挙区の再編はそのまま当選する政治家の顔ぶれが変わる事にもなり得る
⇒この為、票の格差解決に向けた改正はなかなかうまくいかず、結局、何度も訴訟が起こる事になる

〇婚外子[国籍]訴訟

・日本人の父と外国人の母から生まれた婚外子に、[日本国籍]を認めるよう求めた訴訟
※婚外子は、結婚していない男女から生まれた子供。非嫡出子ともいう。嫡出子は、結婚している男女から生まれた子供。当時は、外国人との間に生まれた子供は、嫡出子でないと日本国籍が取れなかった
・[違憲]判決が出て、婚外子でも日本国籍が取れるようになった

〇婚外子[相続]差別訴訟

・婚外子(非嫡出子)は、相続の際の取り分を嫡出子の二分の一にするという規定があった
・この規定は[違憲]であると判決が出て、相続上の差別はなくなった

●その他の平等権と差別解消の試み

〇家族関係における個人の尊厳と【両性】の平等

・男女は[本質的平等]であり、結婚は[両性の合意]に於いてのみ成立するとされる
・[二十四条]に規定がある
⇒前提として、大日本帝国憲法下の日本に於ける、二つの事実があった。第一に、女子の権利が明確に制限されていた事。また、家の中では戸主(一般的には父)が絶対君主として振る舞う事を認める家制度があった事。この二つを明確に否定し、個人を尊重し、人を平等にすると定めたもの

〇教育を受ける権利

・社会権でもやった奴。[二十六条]が根拠
・社会権であると同時に平等権でもある、とされるので一応載せておきました

〇女子差別解消

・【女子差別撤廃条約】の批准に伴い、日本は[男女雇用機会均等法]を制定、[国籍法]を改正している
⇒この条約関係の女子差別撤廃の動きについて詳しい事は政治分野第一章の『人権の拡大』をどうぞ
・条約の批准から十四年後の1999年、【男女共同参画社会基本法】もできる
⇒単純に、男女の雇用機会を均等にする法律が男女雇用機会均等法。いわば、機会の平等を求めるもの。一方男女共同参画社会基本法は、結果の平等を求めるもの。その為に、いわゆる[アファーマティブ・アクション](積極的格差是正措置とかポジティブ・アクションとも言われる)が必要であると明記されている。アファーマティブ・アクションとは、機会の均等を用意しただけでは結局少数しか就職できないし昇進できない弱者集団について、進学・就職・昇進の優遇措置を採るという事

〇外国人差別解消

・日本では[外国人登録法]に基づき、定住外国人には[指紋押捺]制度が設けられていた
・これが外国人差別であるとして、1999年までには廃止された
・また同様に、[外国人登録法]に基づき、定住外国人には登録証の携帯が義務付けられていた
・これも、2012年までには廃止され、日本人と同様[住民登録]を行うようになった
・なお指紋制度については、2006年、入国する外国人は指紋照合を行うよう出入国管理法が改正された
⇒テロ対策が理由

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