国家とは何か

※令和六年八月に本ページの内容を全面改訂しました。授業動画は改訂前のものです。改訂後の資料を使った授業動画は現在作成中です

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国家とは何か(前半) YouTube
国家とは何か(後半) YouTube

●概要

・国家とは何か? と言われた時の、有名な解答が「国家三要素説」である
⇒ドイツの法学者【ゲオルグ・イェリネック】が[『一般国家学』]で唱えたもの

・概要としては、「国家は【領域】【国民】【主権】の三要素を備える」というものである
⇒この三要素、国民はまぁそこに住んでる人でいいとして、主権と領域については詳しく解説しよう

●主権

・実は、主権という言葉は側面が三つぐらいある。それぞれ見ていこう

1:「統治権」
⇒国を統治する権利そのものを、「統治権」と呼ぶ。「法律を作る権利」「裁判をする権利」「条約を結ぶ権利」「税金を集める権利」…こういったものをひっくるめて、「統治権」と呼ぶ訳である。主権は、この「統治権」の言い換えとして使われる事がある

2:「国家意思最終決定権」
⇒国家の意思(この法律を作る、作らないとか、戦争をする、しないとか)を、最終的に決定する権利・権力を、主権と呼ぶ事がある。君主(王、皇帝)が最終的に決定するなら君主主権、国民が最終的に決定するなら国民主権

3:「対外的独立性」
⇒国家の権力が対外的に独立しており、他国に口出しされない事を指して、「主権がある」と表現する事がある。逆に言えば、ある国が「この法律を作ろう」と言ったところに他国が「やめろ」と口を出し、やめざるを得なくなった…というのであれば、「対外的独立性」という意味での「主権がない」状態と言える

※政経や公共の試験で主権という言葉の意味を問われる事は、ほぼありません。「日本の首都は東京」というような知識と同じで、「それぐらいは知ってる前提」で出題されます。ちゃんと覚えておきましょう

●領域

○領海、接続水域、排他的経済水域

・領域とは何か? 普通に考えると領土の事だが、実は海や上空も一部、領域となる
・まずは海について見てみよう

・まず、沿岸に基準となる線、【基線】を引く
⇒自然の地形は複雑なので、基線で話を分かりやすくする

・基線から【12】海里が、【領海】 ※1海里=[1852m]
⇒領土と同等。完全にその国のものとなる「領域」

・領海から更に12海里が、[接続水域]
⇒領土と同等ではないが、その国の法令が及ぶ「領域」

・基線から【200】海里が、【排他的経済水域(EEZ)】
⇒領土と同等ではないがではないが、そこにある水産資源や鉱物資源はその国の専有物と見做される「領域」。また、その国はEEZ内の資源管理と海洋汚染防止の義務を負う

※「領海から12海里」みたいな勘違いに注意
※EEZは、【国連海洋法条約】(西暦1994年)にて制定。日本は1996年に批准
※[大陸棚が200海里以上ある]場合、EEZは延長可能

基線、領海、接続水域、排他的経済水域
Pqks758 11:24, 29 November 2007 (UTC), CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Zonmar-ja.png

○領海、接続水域あれこれ

・領海は完全にその国の領域と見做され、その国の法律が有効である
・例えば「麻薬は持っているだけで犯罪」という国の領海に、麻薬を積んだ外国船が進入したら?
・当然、その国の海上警察(日本で言えば海上保安庁)に捕まる事になる
※領海から接続水域に逃げたとしても捕まる。接続水域は、「完全にその国の領域という訳ではない」が「その国の法令(法律と命令)が有効」な領域なので…

○排他的経済水域

・何でこんなものができたのか? …というのを知るには、まず海底の地形を知る必要がある
・という訳で、まずは海底の地形を示した以下の図を見てほしい

大陸棚

・海底というのは普通、岸から離れるほどに深くなっていく
・なっていくのだが、岸から近い場所は普通、傾斜がなだらかになっている
・このなだらかな部分を大陸棚と呼び、大抵、長さは200海里以下である

・そしてこの大陸棚、大抵の場合、魚や貝のような水産資源が豊富である
・また石油や天然ガスが埋まっている場合も掘り出しやすい
・そうなってくると、「大陸棚も沿岸国の持ち物って事にしたいね」という話が出てくる
・結果として誕生したのが、排他的経済水域という概念である
・だからこそ基線から200海里が排他的経済水域であり、大陸棚が長ければ延長可能なのである

○領空

・国の上空、【領空】も国家の領域である
⇒完全にその国の領域と見做される。なので外国の飛行機が勝手に領空へ進入すると、いわゆる領空侵犯になる。その国の空軍が出動する事態になるし、最悪、撃墜される事になる

・領空は、【領土】と【領海】の上空。尚、高さ制限があり、大気圏内限定である
⇒宇宙まで領空にしてしまうと、人工衛星どうなるの…という話を通り越して、そもそも地球は回転している訳で。「この星はこの国の領域」が一日の間に物凄い勢いで変化する事になる

○領域まとめ

国家の領域三つ 【領土】【領海】【領空】
1海里 [1852m]
【領海】 【基線】から【12】海里
[接続水域] 領海から更に12海里
【排他的経済水域(EEZ)】 【基線】から【200】海里
西暦1994年の【国連海洋法条約】で制定
[大陸棚が200海里以上ある]場合、延長可能
【領空】 【領土】と【領海】の上空
但し大気圏内まで

○ちょっと雑談

日本のEEZ 平成二十八年版
日本国のEEZを示した図。日本国政府の主張通り「北方領土は、北方四島のみ日本領」とした場合になっている。EEZを大陸棚延長している範囲があるのに注目。
Ministerial Meeting Coast Guard, CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Japan_Exclusive_Economic_Zone_Map_2016.png

・ところで、日本国は狭い国だと思い込んでいる人が多い
・実際には、そうでもない。世界中の国家を対象に領土の面積ランキングを作ると、六十位ぐらいになる
⇒全世界で大体200ぐらいの国家が存在すると考えると、「めっちゃ大きい」国ではないが、日本人が思い込んでいるほど小さい国家ではない事が分かる。まぁ、普通に大きい方である

・そして、「排他的経済水域の大きさ」だと、日本国は滅茶苦茶大きくなる
・排他的経済水域の面積ランキングを作ると、日本国は上位一桁になる
⇒現ロシア連邦が不法占拠している北方領土を、何処まで計算に入れるか…で日本の排他的経済水域の面積はかなり変動する。そういうのもあって考え方次第で順位は変動するのだが、それでも世界八位は堅い

・もっと言えば、日本国の人口は令和四年現在、1億2500万人ぐらいである
・これは、世界人口ランキングを作ると十一位になる
⇒例えば欧州の国家で、日本国の人口を超える国は基本、存在しない。強いて言えばロシア連邦が人口1億4000万だが、それぐらいである

・脱線ついでに言ってしまえば、母語として日本語を話す人間も、人口と同じぐらいいる
※その人が赤ちゃんの時、親から聞く等して自然に話せるようになった言語を母語と呼ぶ
・で、母語話者数の世界ランキングを作ると、日本語は九位である
・日本語を母語とする者は、ドイツ語よりも、フランス語よりも、イタリア語よりも、トルコ語よりも多い

日本が欧州にあったらどうなるか
日本列島を、大きさそのままに欧州へ持ってきた図。北方領土完全にナシでこれである。でっか(素の反応)となる人も多いのでは。となる人も多いのでは。
https://thetruesize.com/

・ここまでの話で「え、そうなの!?」となった人。そういう人は今まで、疑ってこなかった人である
・「日本は小さい、人も少ない、弱い」と言うテレビを、親を、教員を、動画を、疑ってこなかったのだ
・「小さいって言うけど、具体的にはどれぐらい小さいんだ?」と疑って調べれば、そうはならなかった

・だからこそ。是非とも、疑ってほしい。教科書も、テレビも、新聞も、そして私の授業も
・「これって本当か?」と疑ってほしい。そして自分で調べる習慣をつけてほしい
・受験とかそういうのを抜きにすれば、社会科を勉強する意義の核心は、そういう感覚を養う事にある 

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