令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済 第1問 問1
問題
(ここからリード文必要なところだけ)
Y3:例えば、行為の善さは行為の結果にあるのではなく、多様な人々に共通している人格を尊重しようとする意志の自由にあるという思想が挙げられる。この思想を唱える哲学者は、すべての人には地表を共同で所有する権利があるのだから、どんな人にも外国を「訪問する権利」があると言っている。
(ここまでリード文)
多様性と共通性に関する生徒Xと生徒Yの会話文について、次のア〜エの考えのうち、Y3の発言にある「この思想を唱える哲学者」の考えとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
ア 人間は自分で自分のあり方を選択していく自由な存在であると同時に、自分の選択の結果に対して責任を負う存在でもある。個人の選択は社会全体のあり方にも影響を与えるので、社会への参加、すなわち「アンガジュマン」を通して個人は社会に対して責任を負う、という考え
イ 人間はこの世界では不完全で有限だが、この世界に生まれる以前、魂は、完全で永遠な「イデア」の世界にあったので、この世界においても、魂は、イデアへの憧れをもっている。その憧れが哲学の精神であり、統治者がこの精神をもつことによって、理想的ですぐれた国家が実現できる、という考え
ウ 人間は各々個別の共同体で育ち、共同体内で認められることで自己を形成する。それゆえ、個人にとっての善と共同体にとっての善とは切り離すことができず、各共同体内で共有される「共通善(公共善)」とのつながりによって、個人の幸福で充実した生は実現する、という考え
エ 人間は自己を目的として生きており、どんな相手をも手段としてのみ利用してはならない。この道徳法則に従うことを義務として自らを律する人々が形成する社会全体を普遍的な理念とするべきであり、「永遠平和」を実現するためには、この理念を国際社会にも拡大すべき、という考え
① ア
② イ
③ ウ
④ エ
解説
正解:④
復習用資料:倫理分野
・リード文Y3を見ると、以下のようにある
行為の善さは行為の結果にあるのではなく、多様な人々に共通している人格を尊重しようとする意志の自由にある
・即ち「結果的にいいことをした、ではなくて、いいことをしようとした、が大事」という思想である
・これは、明らかにイマヌエル・カントの思想である
・よって、カントの思想らしきものを選択肢から探せばよい
ア:アンガージュマンがある時点でジャン=ポール・サルトルの思想、と判断してほしい
イ:イデアがある時点でプラトンの思想、と判断してほしい
ウ:共通善という言葉から、マイケル・ジョゼフ・サンデルに代表される共同体主義者の思想であろう
・最後にエは、「他者を手段としてのみ利用してはならない」や永久平和がどうこうと言っている
・イマヌエル・カントはまさにこのような事を言っていた哲学者なので、エが正解
・また、Y3の言っている話(目的が大事だ)と、エの話(誰もが自己を目的とする)は類似性がある
・よって、国語力で突破しようと思えばできなくはない問題ではある。まぁかなり厳しいだろうが…