令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済 第2問 問1
問題
生徒Xたちは、人口減少の要因やその対策を考察するための資料を収集・分析する中で、人口減少の主要因は少子化だと考え、出産・子育て支援策について検討した。次の生徒Xたちのメモ中の( A )・( B )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。
生徒Xたちのメモ
出産や子育ては、社会状況の変化などにより、保護者となる世代に個人的な負担が重くのしかかってきた。
日本においては、1972年に児童手当法が施行され、保護者に対し、児童手当が支給されている。児童手当法はその後の改定の過程で、出生順位の規定が撤廃され、支給対象年齢が拡大され、現在は子どもの年齢や出生順位によって金額に重みがつけられている。ただし、児童手当の支給には保護者の所得制限がある。一般的に給与などは、各人の能力や功績に比例して決められる、すなわちアリストテレスが言う( A )的正義に基づいていることが少なくない。一方、児童手当の所得制限では、収入が高ければ逆に支給が抑えられている。
児童手当などの日本の出産・子育て支援策としての社会給付は、社会が子育てに責任をもち、子育てを支えるという考え方を反映していると考えられる。アリストテレスは、法を守り、共同体の善を実現する( B )的正義を提唱している。これからの日本では、どのような出産・子育て支援策が考えられるだろうか。
① A―配分 B―調整 ② A―配分 B―全体 ③ A―全体 B―配分
④ A―全体 B―調整 ⑤ A―調整 B―全体 ⑥ A―調整 B―配分
解説
正解:②
復習用資料:倫理分野
・アリストテレスの言う正義は、まず大まかに二種類に分けられる
[全体的正義]:「全ての人は法を守りましょう」的な正義
[部分的正義]:「正義の法じゃなきゃ皆守りたくないよね」「だから正義の法が必要」的な正義
・本問で、Bは「法を守りましょう」的な正義だという話なので、全体的正義だと考えられる
・ところで、アリストテレスは、部分的正義を実現するには二つの正義が必要だとする
1:【配分的正義】
⇒報酬や名誉を配分する際には、それぞれの能力や功績に応じてすべきだ、というもの
2:【調整的正義】
⇒窃盗や詐欺というものが起きると、ある人が相応しくない物を持っていたり、ある人が相応しいものを持っていなかったりする状況となる。これを調整する正義。例えば窃盗なら、盗んだ者には罰を、盗まれた者には補償を与える
・問題文では、Aは以下のようにある
一般的に給与などは、各人の能力や功績に比例して決められる、すなわちアリストテレスが言う( A )的正義に基づいている
・となると、配分的正義が合致する