令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済 第5問 問2

問題

 生徒Wが、「近年では情報技術がどんどん発達しているし、それが日本経済を大きく変化させていそうだよね。」と発言すると、先生Tは、「そのとおりですね。しかし経済の中にはさまざまな産業があり、情報化の影響の表れ方は産業によってかなり差があると思いますよ。データを調べてみてはどうですか。」とアドバイスした。それを受けてW、生徒X、生徒Y、生徒Zの4人のグループは、近年における産業ごとの変化を示すデータを集め、それをもとに考察と議論を行った。
 次の表1・2は、日本の農林水産業、製造業、サービス業のそれぞれについて、1994年と2019年の実質付加価値と就業者数のデータをまとめたものである。表1・2の内容を踏まえて、後の会話文中の空欄( ア )に当てはまる記述として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。

T:産業構造の変化を捉える上では、それぞれの産業でどれぐらいの生産が行われているかという実質付加価値の面と、それぞれの産業でどれぐらいの人が働いているかという就業者数の面の、双方をみることが重要です。表1と表2から、どのようなことが読み取れますか?
W:1994年から2019年にかけては情報化が大きく進んだと思いますが、情報通信業を含むサービス業は、実質付加価値でみても、就業者数でみても、この25年間で増加していますね。情報化の進展とともに、サービス業の比重がますます高まっていることが読み取れます。
T:そうですね。また情報技術は、生産にも影響を与えた可能性があります。実質付加価値を就業者数で割ると、「その産業で一人の人がどれぐらいの付加価値を生産しているか」を示す一人当たり労働生産性という指標が得られます。この25年間における各産業の一人当たり労働生産性の変化について、どのようなことがわかりますか?
X:表1と表2を見比べると、( ア )ということがいえるのではないでしょうか。
T:そのとおりです。つまり日本において情報技術が一人当たり労働生産性にどのような影響を与えたかは、産業ごとにかなり違っていた可能性がありますね。こうした違いがなぜ引き起こされるのかについても、考えてみると良いですよ。

①農林水産業と製造業はともに就業者数の1994年から2019年にかけての変化率がマイナスであるが、一人当たり労働生産性の1994年から2019年にかけての変化率を比べると、農林水産業の方が製造業よりも大きな率で上昇している
②製造業とサービス業はともに1994年から2019年にかけて実質付加価値が増加しているが、一人当たり労働生産性の1994年から2019年にかけての変化率を比べると、製造業の方がサービス業よりも大きな率で上昇している
③1994年から2019年にかけて一人当たり労働生産性はすべての産業において上昇しているが、最も大きな率で上昇しているのはサービス業である
④1994年から2019年にかけて一人当たり労働生産性はすべての産業において低下しているが、最も大きな率で低下しているのは農林水産業である

#国語問題

解説

正解:②
・会話文を見ると、一人当たり労働生産性の出し方を話している
・即ち、「その産業が稼いでいる額÷その産業で働いている人数」と言っている
・そして、表1が「その産業が稼いでいる額」、表2が「その産業で働いている人数」である
・よって、産業別に、表1の数字÷表2の数字とすれば、一人当たり労働生産性が出てくる

  1994 2019
農林水産業 76358÷486=157.11… 48833÷260=187.81…
製造業 846691÷1411=600.06… 1179232÷1081=1090.87…
サービス業 2983294÷3904=764.16… 3720865÷4841=768.61…

・この表を元に考えれば、②が正文、他は誤答と分かる

・…というような感じで、正直に計算問題として処理するのは、実はあんまり美味しくない問題である
・無論、非常に計算が速い人ならそれでいいのだが、世の中そういう人ばかりではない
・あんまり計算の早くない、いわば普通の人は、馬鹿正直に計算問題として解かない方がいい

・と言うのは、わざわざ細かく計算せずとも、以下のように考えても普通に解ける問題なのである
例1:「製造業が一番効率上がってるだろ…稼ぎが39%増えてるのに働く人数が23%下がってるんだぞ…」
例2:「農林水産業、働く人数が-46%の割に稼ぎが-36%で済んでるのは頑張ってると思うけど製造業に比べると…」
例3「サービス業、稼ぎがプラス24%、働く人数もプラス24%ってほぼ効率変わっとらんやん」

⇒実際のところ、共通テストは時間が足りなくなる試験なので、馬鹿正直に計算するよりもパーセンテージだけ見て解いて時短した方がいい
⇒そういう意味では考える力を問う問題としてよく考えられている、とも言える問題である

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