令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済 第6問 問2
問題
(第6問リード文)
生徒X、生徒Y、生徒Zは、「政治・経済」の授業において、「ヨーロッパにおける人の移動と、それが日本に問いかけていること」をテーマにして、先生Tの助言の下、研究発表と討論を行うことになった。
まず先生Tが、ヨーロッパにおける人の移動に関連して、欧州連合(EU)加盟国の人口に関わる資料を配布した。次の資料1は、EU加盟国の市民権をもつがEU域内の他国に移り住んでいる20~64歳の人口の、市民権をもつ国の居住人口に対する比率(2020年時点)の上位10か国を示し、資料2は、2014年と2020年とを比較したときのEU加盟国の居住人口増加率の上位5か国・下位5か国を示している。
(第6問リード文ここまで)
生徒Zは、EU加盟国の法定最低賃金に関する資料3を新たにみつけ、資料1、資料2も踏まえて、EU域内における人の移動について推察した。このときの推察について述べた後のア〜ウの記述のうち、適当でないものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。
ア ラトビアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。よって、EUに加盟したことでEU域内での人の移動が大幅に自由化され、EU域内の他国での就労などを目的とした移住がEU加盟後に増加したと推察できる。
イ ルクセンブルクは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率と居住人口増加率が高く、最低賃金はEU加盟国の中で上位にある。よって、EU域内の他国からの移住が増加する一方で、EUの原加盟国であることから経済統合が深化してEU域内の他国への移住も増加したと推察できる。
ウ ブルガリアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。よって、EU加盟によりEU域内での人の移動は大幅に自由化されたが、EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少したと推察できる。
①ア ②イ ③ウ ④アとイ
⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ
解説
正解:③
・図表を読み取らせる問題の割に、図表を読み取る意味があんまりない問題
・知識も特に必要なく、結局は、選択肢の各文の矛盾を評価する国語の問題である
⇒そういうものだと分かっていればいいが、解いてみないと分からない訳で。意地が悪い問題と言える
ア ラトビアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の下位に名前があり、資料3の下位に名前がある
よって、EUに加盟したことでEU域内での人の移動が大幅に自由化され、EU域内の他国での就労などを目的とした移住がEU加盟後に増加したと推察できる。
・この部分も、選択肢アの文章前半と矛盾しない
⇒「人の移動が大幅に自由化された結果、故郷(田舎国家)から都会(他国)へ移住する人が増えた」という話と、「人口が減っている」「賃金が低い」という話は矛盾しない
・よってアは正文である
イ ルクセンブルクは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率と居住人口増加率が高く、最低賃金はEU加盟国の中で上位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の上位に名前があり、資料3の上位に名前がある
よって、EU域内の他国からの移住が増加する一方で、EUの原加盟国であることから経済統合が深化してEU域内の他国への移住も増加したと推察できる。
・この部分も、選択肢イの文章前半と矛盾しない
⇒「EU域内の他国からの移住が増加する」から資料2に名前があるのだし、「EU域内の他国への移住も増加した」から資料1に名前があるのだ、と考えられる
・よってイは正文である
ウ ブルガリアは、EU域内の他国に移り住んでいる人口の比率は高いが、居住人口増加率と最低賃金はEU加盟国の中で下位にある。
・この部分は、図表を見ると正しいと分かる
⇒資料1に名前があり、資料2の下位に名前があり、資料3の下位に名前がある
よって、EU加盟によりEU域内での人の移動は大幅に自由化されたが、EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少したと推察できる。
・この部分が、選択肢ウの文章前半と矛盾する
⇒資料1に名前が載っている(つまり人口が他国へ流出している)のに「EU域内の他国での就労などを目的とした移住はEU加盟後に減少した」はおかしい。移住が増加したという話なら分かるが…
・よってウは誤文である
・以上から、ウのみが誤文。正解は③