令和七年度 大学入学共通テスト試作問題 公共、政治・経済 第6問 問4

問題

ヨーロッパの難民問題を調べていた生徒Yは、シリア難民が、ギリシャ、オーストリア、ドイツをめざしたという先生Tの説明を思い出した。そこで、シリアを離れこれら3か国に到着し保護を求めた「庇護申請者」の合計の推移を調べ、次の資料5を作成した。後のア〜ウの記述のうち、資料5から推察できる内容として適当なものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。

ア 2011年から2013年にかけて庇護申請者数はわずかに増加した一方、ギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国の割合は減少している。これは、「アラブの春」によりシリアで政権交代が実現したことが背景にあると推察できる。

イ 2015年、2016年ともギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国への庇護申請者数が前年に比べ急増している。これは、内戦の激化によって国内を脱出した人々が、自国より政治的に安定した国をめざしたからであると推察できる。

ウ 2017年にギリシャ、オーストリア、ドイツへの庇護申請者数は前年に比べ減少している。これは、パグウォッシュ会議でシリア難民対応への国際的合意がなされたことが一因であると推察できる。

①ア   ②イ   ③ウ   ④アとイ
⑤アとウ ⑥イとウ ⑦アとイとウ

#現代国際政治史―ModernWarfare

解説

正解:②
復習用資料:政治分野第四章/現代国際政治史―ModernWarfare

・これ世界史の問題に片足突っ込んでないか? 感がある問題
※正直に言うと両足突っ込んでると思います。こういうの共テで出さないでほしい
・なお、図表を読み取らせる問題の癖に、読み取る意味があんまりない問題でもある

ア 2011年から2013年にかけて庇護申請者数はわずかに増加した一方、ギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国の割合は減少している

・資料5を見ると、確かにそのようになっている

これは、「アラブの春」によりシリアで政権交代が実現したことが背景にあると推察できる。

・ここがおかしい
・シリアでは、アラブの春の結果内戦が起きている
・よってアは誤文である

イ 2015年、2016年ともギリシャ、オーストリア、ドイツ3か国への庇護申請者数が前年に比べ急増している

・資料5を見ると、その通りに推移している

これは、内戦の激化によって国内を脱出した人々が、自国より政治的に安定した国をめざしたからであると推察できる。

・ここも、選択肢イの文章前半と矛盾はない
⇒シリア内戦が激化したらそりゃシリアからの難民増えるよね、という当たり前の話をしている

・よってイは正文である

ウ 2017年にギリシャ、オーストリア、ドイツへの庇護申請者数は前年に比べ減少している。

・資料5を見ると、その通りに推移している

これは、パグウォッシュ会議でシリア難民対応への国際的合意がなされたことが一因であると推察できる。

・ここが(二重の意味で)おかしい

・そもそもパグウォッシュ会議は、冷戦期に行われた、核(兵器)廃絶運動である
⇒いわゆるラッセル=アインシュタイン宣言によって創設されている
⇒1950年代の、原水爆禁止世界大会やバンドン会議に代表される潮流の一つと言える

・パグウォッシュ会議自体は一応、現代でも残っているが…
・少なくとも現代の国際政治に於いて、難民の取り扱いに対して国際的合意を作れるような力はない
⇒一応、ウクライナ戦争に於いて即時停戦の呼びかけとかはしているが、あくまで「呼びかけ」である

・よって、ウは誤文である

・誤文なのだが、これ、果たして政治経済の知識か…?
・バンドン会議ならともかく、パグウォッシュ会議まで来るとそれは世界史ではないのか…?
・そういう意味でもおかしいと言うか、疑問が残る問題とも言える
※私大受験の本番で世界史の知識が問われる事は勿論よくある。が、これ共テの問題なので…

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