令和五年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第1問 問1
問題
資本主義経済の成立に関連して、生徒Xは、資本主義経済の成立と発展の概要について考察するためにキーワードを整理し、次のノートにまとめた。ノート中の下線部ア~エのうち誤っているものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
○産業革命
18世紀後半にイギリスで産業革命が起こり、その後、他のヨーロッパ諸国やアメリカ、そして日本でも産業革命が起こった。産業革命によって、工場制手工業から工場制機械工業へと発展し、生産力が飛躍的に高まった。
○私有制
(ア)生産手段を私有できることで、資本蓄積への意欲が高められる。
○市場経済
(イ)市場での自由な取引を通じて企業は利潤を追求し、その利潤がさらなる設備投資の資金となって経済が成長する。
○階級分化
資本主義経済下では、生産手段を所有する者と所有しない者、つまり資本家と労働者への階級分化が生じる。これが資本主義経済において経済格差が発生する要因の一つとなる。(ウ)マルクスは資本主義経済を分析し、資本家と労働者との間の利害の対立構造を明らかにした。
○景気循環(景気変動)
資本主義経済の発展によって、生活が豊かになる一方で、景気循環による不況や恐慌の発生という問題が起こる。(エ)ケインズは資本主義経済下での不況の原因は供給能力の不足にあるとの理論を示した。
①下線部ア ②下線部イ ③下線部ウ ④下線部エ
解説
正解:④
復習用資料:経済分野第一章/資本主義
復習用資料:経済分野第一章/社会主義
・下線部エの文章がびっくりするぐらいの誤文になっている問題である
(エ)ケインズは資本主義経済下での不況の原因は供給能力の不足にあるとの理論を示した。
・びっくりするぐらいの誤文(二回目)である
・古典経済学派が供給に注目したのに対し、需要に注目した点に、ケインズの特徴がある
⇒即ち、「いくら商品を大量生産して市場に供給したところで、買う側がカネ持ってなかったら売れんだろ」と言ったのである。故に、買う側(消費者)に何らかの形でカネを持たせ、有効需要を創出しないと好景気にならない、と述べたのである
・他の文章は正文ではあるが、「ん?」となる部分もあるので、最初は判断に困るかもしれない
・が、このエの文章が明らかに誤文なので、決断的にエを選択して正解を掴もう
・一応、ア~ウの文章も見ておこう
(ア)生産手段を私有できることで、資本蓄積への意欲が高められる。
・正文である
・生産手段(商品を作る手段)(土地、工場、機械等)の私有を認める事は、資本主義経済の根幹である
・なお、「資本蓄積」という見慣れない言葉があるが、これは「儲かる」ぐらいの意味で考えてよい
・と言うか、「資本を集める・貯める」系の言葉はだいたい、「儲かる」ぐらいの意味と考えればよい
⇒例えば「資本の集積」や「資本の集中」という言葉は、要するに企業が大企業になる、というような意味の言葉であるが…それはつまり、「儲かってる」という事であると言えよう
(イ)市場での自由な取引を通じて企業は利潤を追求し、その利潤がさらなる設備投資の資金となって経済が成長する。
・正文である
・企業や資本家の利潤追求を肯定する事は、資本主義経済の根幹である
(ウ)マルクスは資本主義経済を分析し、資本家と労働者との間の利害の対立構造を明らかにした。
・正文である
・無論、マルクスの打ち立てた社会主義という理論に基づいて作られた国家は全て失敗している
・故に、まるでマルクスの理論は正しいみたいな書き方をされるとちょっと…とはなるだろう
・が、エとは比べ物にならない