令和五年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第1問 問6

問題

 日本の国際収支について、貿易や海外投資の動向に関心をもった生徒は、日本の国際収支を調べ、その一部の項目を抜き出して次の表を作成した。表中のA、B、Cは、それぞれ1998年、2008年、2018年のいずれかの年を示している。表に関する後の記述ア〜ウのうち、正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①~⑦のうちから一つ選べ。

ア A、B、Cにおいて経常収支に対する第一次所得収支の比率が一番大きいのはBである。
イ A、B、Cを貿易サービス収支額の小さいものから順に並べると、A→B→Cの順になる。
ウ A、B、Cを年代の古いものから順に並べると、C→A→Bの順になる。

①ア  ②イ  ③ウ  ④アとイ  ⑤アとウ  ⑥イとウ  ⑦アとイとウ

#国際経済の仕組み #計算問題 #日本経済通史

解説

正解:⑤
復習用資料:経済分野第一章/国際経済の仕組み
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年

・計算問題でもあり、知識問題でもある問題
・アは「経常収支」という言葉の意味さえ知っていれば、後は表を見ながら計算すれば解ける
・イは表を見ながら計算すれば解ける
・ウは、日本経済通史の知識を使って表を並べ替える必要がある

ア A、B、Cにおいて経常収支に対する第一次所得収支の比率が一番大きいのはBである。

・「経常収支」とは、国際収支の一部をまとめて指す言葉である
⇒下記表を見れば分かる通り、本問の表に載っている項目すべてを以て「経常収支」を構成する

・つまり、表の全項目の合計(これが経常収支)の内、第一次所得収支の割合を、ABC全てで出せばよい
※ド文系の人は、「割合を出す時は、“一部÷合計”」というのを覚えておこう!

A:143402 ÷ (58031-39131+143402-13515)
  =143402 ÷ 148787
   =0.963…

B:214026 ÷ (11265-10213+214026-20031)
  =214026 ÷ 195047
   =1.09…

C:66146 ÷ (160782-65483+66146-11463)
  =66146 ÷ 149982
   =0.441…

・こうして見ると、比率はB>A>Cの順番で大きいと分かる
・よって、アは正文である

※なお、ここまで細かく計算せずとも、「Cは、貿易収支が大きく黒字な割に第一次所得収支の黒字は小さい」「Aは、貿易収支の黒字とサービス収支、第二次所得収支の赤字がトントンぐらい、残りは第一次所得収支」「Bは、第一次所得収支以外を合計するとむしろ赤字」というところからBの割合が一番大きいと想像する事も可能である

イ A、B、Cを貿易サービス収支額の小さいものから順に並べると、A→B→Cの順になる。

・要するに、表の貿易収支とサービス収支を合計した額を並べればよい

A B C
58031-39131
=18900
11265-10213
=1052
160782-65384
=95398

・つまり、小さい順に並べ替えるとBACになる
・よって、イは誤文である

ウ A、B、Cを年代の古いものから順に並べると、C→A→Bの順になる。

・表のABCを見てみると、CABの順番で貿易黒字が減っている
・貿易黒字が減る理由にも色々あるが、この「失われた三十年」で言えば、産業の空洞化が大きい
⇒バブル期から既にその兆候があったとは言え、日本国内にあった工場が外国へ移転してしまい、「日本国内で作った商品を外国へ売る」という機会がどんどん減っていったのは、1991年以降の「失われた三十年」の特徴である

・また、第一次所得収支の黒字額は、CABの順番で激増している
・そして第一次所得収支は、日本人が外国で働いたり、日本人が外国に投資したりすると増える
・即ち、いわゆるグローバル化が進むと増えるのが第一次所得収支である
・この点で見ても、CABの順に古い統計である可能性が高い

・よって、ウは正文である

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