令和五年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第2問 問6
問題
生徒Yは、死刑制度に関する議論を調べ、次の資料1と資料2をみつけた(なお、資料1と資料2には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。資料1と資料2の内容を踏まえつつ、日本の死刑制度に関する記述として正しいものを、後の記述ア〜エから二つ選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。
資料1(最高裁判所昭和23年大法廷判決・最高裁判所判例集・最高裁判所刑事判例集第3巻第6号)
「刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに憲法第36条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ死刑といえども…(中略)…その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、もちろんこれを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来もし…(中略)…残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第36条に違反するものというべきである。」
資料2(団藤重光『死刑廃止論(第6版)』)
「かりに殺人の真犯人に対する死刑がいかに正義の要請だとしても、無実の者が処刑されることは…(中略)…とうてい許すべからざる不正義であります。また、犯罪予防論者から言えば、仮に無実の者が処刑される多少の心配があろうとも、死刑によって犯罪の予防ができさえすれば、それだけで十分に死刑制度の合理性があるという議論をするかも知れませんが、いやしくも無実の者が死刑になるという恐ろしき犠牲において犯罪の予防を重視するという論者がもしいるとすれば、私はその人の人間的なセンスを疑うものです。」
ア 資料1によれば、死刑の執行方法に残虐性があれば残虐な刑罰として禁止されるが、死刑自体は憲法第36条に直ちには違反しない。
イ 資料1は、死刑自体が違憲であるとする。実際、憲法によれば法の定める手続によっても国民の生命を奪いえない。
ウ 資料2によれば、死刑による犯罪予防効果が重要であるので、無実の者が誤って処罰されることもやむをえない。
エ 資料2は、死刑廃止の根拠として無実の者が誤って死刑にされる危険を重視する。実際、死刑判決確定後に再審で無罪となった事件がある。
①アとイ ②アとウ ③アとエ ④イとウ ⑤イとエ ⑥ウとエ
解説
正解:③
・完全に国語の問題。問題文本文と選択肢を見比べれば、自然と答えが出る
・以下、解説作成者が解いた時の思考を文字化していく
ア 資料1によれば、死刑の執行方法に残虐性があれば残虐な刑罰として禁止されるが、死刑自体は憲法第36条に直ちには違反しない。
・アは資料1に書いてある内容と概ね合っている
・恐らく正文だが、一旦判断を保留。次を見てみよう
イ 資料1は、死刑自体が違憲であるとする。実際、憲法によれば法の定める手続によっても国民の生命を奪いえない。
刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに憲法第36条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない
・イは資料1の初手の一文と明らかに矛盾する
・よってイはまず間違いなく誤文だろう。次を見てみよう
ウ 資料2によれば、死刑による犯罪予防効果が重要であるので、無実の者が誤って処罰されることもやむをえない。
無実の者が死刑になるという恐ろしき犠牲において犯罪の予防を重視するという論者がもしいるとすれば、私はその人の人間的なセンスを疑うものです
・ウは、資料2の全体の論調と明らかに矛盾する
・特に、最後の部分と驚くほど矛盾する
・よって、ウも間違いなく誤文だろう。という事はアとエが正文なのでは?
・一応、エも見てみよう
エ 資料2は、死刑廃止の根拠として無実の者が誤って死刑にされる危険を重視する。実際、死刑判決確定後に再審で無罪となった事件がある。
・エは、資料2に書いてある内容と概ね合っている
⇒後半は資料2の内容に書いていない話ではあるが事実だし、前半は概ね合っていると言える
・となると、やはり、あからさまに矛盾するイウが誤文で、アエが正文だろう
・よってアとエが正文、正解は③である