令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問1
問題
生徒Xは、近代国家の成立について調べ、国家の強制力に関する次の資料をみつけた(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。資料から読みとれる内容として最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
「もちろん暴力行使は、国家にとってノーマルな手段でもまた唯一の手段でもない…(略)…が、おそらく国家に特有な手段となるだろう。そして実際今日、この暴力に対する国家の関係は特別に緊密なのである。過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた。ところが今日では、次のように言わねばならない。国家とは、ある一定の領域の内部で…(略)…正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である、と。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への『権利』の唯一の源泉とみなされているということ、これは確かに現代に特有な現象である。」
(注)「氏族」とは、共通の祖先をもつ人々の集団のことをいう。
(出所)マックス・ヴェーバー(ウェーバー)『職業としての政治』脇圭平訳
① 資料中の過去においては、暴力行使は国家に特有の手段であり、国家が用いる通常かつ唯一の手段でもある。
② 資料中の今日において、国家と暴力の関係は特別に緊密であるが、それ以外に暴力行使はないかなる団体にも認められたことがない。
③ 資料中の今日において、国家はある一定の領域の内部における正当な物理的暴力行使の唯一の源泉とみなされている。
④ 資料中の過去においては、国家の許容した範囲内でのみ、国家以外の団体や個人が物理的暴力を行使することが認められていた。
解説
正解:③
・完全に国語の問題
⇒要するに「本文の要約として正しいものを選べ」で、いいのかこれ…いやまぁお題は政治経済で定番のマクシミリアン・カール・エミール・ヴェーバーだけど……
・資料本文の内容をまとめると、以下のようになる。これを元に考えれば正答を導ける筈である
1:(資料執筆時点から見て)過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた
2:(資料執筆時点から見て)現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる
・上記のまとめを元に考えると、以下のようになる
① 資料中の過去においては、暴力行使は国家に特有の手段であり、国家が用いる通常かつ唯一の手段でもある。
・誤文。「1:過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた」に反する
⇒本文にも「過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた」とある
② 資料中の今日において、国家と暴力の関係は特別に緊密であるが、それ以外に暴力行使はないかなる団体にも認められたことがない。
・誤文。「2:現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる」に反する
⇒本文にも「国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められない」とある
③ 資料中の今日において、国家はある一定の領域の内部における正当な物理的暴力行使の唯一の源泉とみなされている。
・正文。「2:現在、暴力は、国家によって「合法」と認められた範囲でのみ「合法」となる」とある通り
⇒本文にも「。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲内でしか、物理的暴力行使の権利が認められないということ、つまり国家が暴力行使への『権利』の唯一の源泉とみなされているということ」とある
④ 資料中の過去においては、国家の許容した範囲内でのみ、国家以外の団体や個人が物理的暴力を行使することが認められていた。
・誤文。「1:過去、暴力は、様々な人によって合法的に使われていた」に反する
⇒本文にも「過去においては、氏族(ジッペ)を始めとする多種多様な団体が、物理的暴力をまったくノーマルな手段として認めていた」とある
・という訳で、③が正解となる