令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問3
問題
生徒Xは、国家の運営を支える公務員が結成する団体について調べてみた。そして、Xは、日本における公務員の労働基本権に関する次の資料をみながら、生徒Yと議論している(なお、資料には表記を改めた箇所や省略した箇所がある)。資料中の空欄( ア )には後の語句aかbのいずれかが当てはまる。また、後の会話文中の空欄( イ )には後の語句cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。
「公務員の従事する職務には公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分が保障されているほか、適切な代償措置が講じられているのであるから、…(略)…公務員の( ア )およびそのあおり行為等を禁じるのは、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からうるやむをえない制度といわざるをえず、憲法28条に違反するものではない。」
(出所)最高裁判所刑事判例集27巻4号
X:この資料は、全農林警職法事件の最高裁判所の判決だね。判決がいう代償措置とは、たとえば、( イ )が国家公務員の給与などの勤務条件の改善を勧告する制度のことだよね。
Y:そうだね。だけど、勧告された内容を国が実施しない場合には本当に代償措置があるといえるのかな。
X:Yさんの疑問もわかるよ。でも、この判決がいうように、公務員の職務に公共性があることなどの事情を考慮すると、現行法で、( ウ )と思うよ。
Y:そうなのかな。使用者と実質的に対等な地位に立つことを可能にするという労働基本権の趣旨からすれば、たとえば、代償措置が役割を果たしていないというときは、判決とは違う結論もとれると思うよ。
( ア )に当てはまる語句
a 不当労働行為
b 争議行為
( イ )に当てはまる語句
c 人事院
d 内閣人事局
( ウ )に当てはまる記述
e 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができ、職員団体から申入れを受けた機関は交渉に応ずべき地位にあるものとされることはどまっているのもやむをえない
f 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができないとされる代わりに、国会が勤務条件を法律で定めてその適正さを確保しようとするのもやむをえない
① ア-a イ-c ウ-e ② ア-a イ-c ウ-f
③ ア-a イ-d ウ-e ④ ア-a イ-d ウ-f
⑤ ア-b イ-c ウ-e ⑥ ア-b イ-c ウ-f
⑦ ア-b イ-d ウ-e ⑧ ア-b イ-d ウ-f
解説
正解:⑤
復習用資料:経済分野第二章/社会保障
・労働問題、特に公務員の労働三権に関する知識を問う問題
・正しい知識を元に空欄を埋めていかねばならない良問である
・基本的には、公務員の労働三権に関して、以下の事項をきちんと把握していれば解ける問題である
1a:公務員は労働三権の一部が制限されている
1b:団結権はまず大丈夫だが、逆に団体行動権(争議権)は全く存在しない。団体交渉権はまちまち
2:代わりに、人事院による勧告制度がある
公務員の( ア )およびそのあおり行為等を禁じるのは、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からうるやむをえない
a 不当労働行為
b 争議行為
・公務員が制限されているのは、団体行動権(争議権)である。よってb
判決がいう代償措置とは、たとえば、( イ )が国家公務員の給与などの勤務条件の改善を勧告する制度
c 人事院
d 内閣人事局
・代償措置として勧告を行うのは人事院である。よってc
( ウ )に当てはまる記述
e 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができ、職員団体から申入れを受けた機関は交渉に応ずべき地位にあるものとされることはどまっているのもやむをえない
f 一般職の国家公務員は勤務条件の維持改善を目的とする職員団体をつくることができないとされる代わりに、国会が勤務条件を法律で定めてその適正さを確保しようとするのもやむをえない
・公務員の労働三権は、団結権はまず保障されている。よってe
・以上から、b-c-eとなり、正解は⑤となる
~一応、アに関しては、別の解き方もできます~
・アに関しては、不当労働行為と争議行為が何か分かっていれば解けるとも言える
不当労働行為:使用者側(会社側)が、労働組合の活動を妨害するもの
争議行為:労働者側(社員側)が、「給料上げてくれないんだったらストライキするぞ!」みたいなの
・現場で働く公務員が不当労働行為をする、というのはそもそも話が通じない
・不当労働行為をするなら、公務員を雇っている政府や自治体である
~まぁでも結局これだけだとイとウが解けんね~