令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問1

問題

生徒Xは、付加価値について身近な例で考えるために、次のメモを作成した。メモ中の空欄( ア )〜( オ )には、それぞれ数値が入る。空欄( エ )・( オ )に入る数値の組合せとして正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

 国で生産できる財が「小麦」、「小麦粉」、「パン」だけであると仮定し、小麦を生産する農家、その小麦を小麦粉にする製粉会社、その小麦粉でパンを作る製パン会社からなる経済を考える。ここでは、1年間に小麦500袋と小麦粉1,000kgとパン10,000個が生産されたとする。農家は、生産した小麦のすべてを製粉会社に計50万円で販売した。製粉会社は、その小麦をすべて加工して1,000kgの小麦粉を生産し、それをすべて製パン会社に計150万円で販売した。製パン会社は、製粉会社から購入した小麦粉をすべて使って10,000個のパンを製造し、それをすべて消費者に計400万円で販売した。製パン会社、製粉会社、農家のそれぞれの生産に必要な中間投入物は、小麦、小麦粉以外にはないものとする。
 ここまでを整理すると次の表のようになる。

  農家 製粉会社 製パン会社
生産総額 50 150 400
中間投入物の額 0 ( ア ) ( イ )
付加価値額 50 ( ウ ) ( エ )

 以上のような経済活動が行われた場合、製パン会社の生み出した付加価値額は( エ )万円であり、この国のGDPは( オ )万円である。

① エ 250  オ 250
② エ 250  オ 400
③ エ 250  オ 600
④ エ 400  オ 250
⑤ エ 400  オ 400
⑥ エ 400  オ 600

#計算問題 #国語問題 #フローとストック #良問

解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/フローとストック

・最低限の知識さえあれば、後は計算問題にして国語問題。なかなかの良問である
⇒ここで言う最低限の知識とは、GDPが「付加価値の総額」であり「総生産額-中間生産物」で計算される…というもの
※私の授業では「中間生産物」という語を用いているが、本問では「中間投入物」になっている。どちらも同じ意味だと考えてよい

製パン会社、製粉会社、農家のそれぞれの生産に必要な中間投入物は、小麦、小麦粉以外にはないものとする。

・ここから、本問では、農家は無から小麦を生成できるという事になる
⇒本来なら農薬とか肥料とか種とか必要だが、そういうのなしに、無から生成していると考えてよい
⇒表で、農家の生産総額50、中間投入物の額0、付加価値額50になっているのはそれ故である。本来なら中間投入物のところに「農薬5」とか「肥料10」とかある筈

・同様に、製粉会社は小麦のみを中間生産物として小麦粉を生産している
・製粉会社についての表の表記は、生産総額150、中間投入物(ア)、付加価値額(ウ)
・ここで、最初に確認した知識が活きてくる

・GDPは、「付加価値の総額」であり「総生産額-中間生産物」で計算される
・即ち、「付加価値=総生産額-中間生産物」である
・よって製粉会社が生み出した付加価値額(ウ)は、生産総額150から中間投入物(ア)を引けばよい
・そして既に確認したように、今回、製粉会社は小麦のみを中間生産物として小麦粉を生産する
・つまり、製粉会社の中間投入物とは、農家が生産した小麦50である
⇒結果、「生産総額150-中間投入物50=付加価値額100」となる

・ここまで来たら、製パン会社の計算も同じである
・即ち、製パン会社の生産総額400から、中間投入物たる製粉会社の小麦粉を引けばよい
⇒よって、「生産総額400-中間投入物150=付加価値額250」である
※この時、引くのは製粉会社の総生産額である事に留意する。製粉会社が作って売った小麦粉は、あくまで150万円ぶんである。付加価値額100万円は、原材料費にあたる50万円を引いたもの

  農家 製粉会社 製パン会社
生産総額 50 150 400
中間投入物の額 0 50
( ア )
150
( イ )
付加価値額 50 100
( ウ )
250
( エ )

・これで表は完成した
・今回、聞かれているのは(エ)とこの国のGDPである
・(エ)は250と分かったので、後はGDPを計算すればよい

・最初に確認したように、GDPは付加価値の総額であるので、付加価値額を合計する
⇒50+100+250=400
※GDPは「総生産額-中間生産物」でも計算できるので、「(50+150+400)-(0+50+150)=400」でもよい

・よって(エ)は250、GDP(オ)は400。正解は②となる

results matching ""

    No results matching ""