令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問5

問題

公害問題に関連して、生徒Xは、同一の汚染物質を排出する企業Aと企業Bだけが存在するある地域を想定し、ある年の企業Aと企業Bの汚染水の年間排出量と汚染水に含まれる汚染物質の割合(汚染水の濃度)を示す次の表を作成した。この地域で、汚染物質を減少させる規制を導入するとする。なお、企業Aと企業Bは後の仮定にしたがうものとする。この地域で1年間に排出される汚染水に含まれる汚染物質の総量を、いかなる場合においても規制導入以前より確実に減少させる規制の内容として正しいものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

  企業A 企業B
汚染水の年間排出量 (トン) 100 500
汚染水の濃度 (%) 1 2

仮定
○規制導入後は、企業Aも企業Bも、汚染水の年間排出量や汚染水の濃度を増減させる。
○規制導入後は、制限がかかったものについて企業Aも企業Bも、制限内の量や濃度で汚染水を排出する。
○規制に対応するための費用負担は一切考慮しない。

① 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに0.1%までに制限するが、汚染水の年間排出量は制限しない。
② 汚染水の濃度は制限しないが、汚染水の年間排出量を企業Aは50トンまで、企業Bは200トンまでに制限する。
③ 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに1.5%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは120トンにする、企業Bは600トンまでに制限する。
④ 汚染水の濃度を企業Aは1%までに、企業Bは2%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは300トンまでに、企業Bは400トンまでに制限する。

#計算問題

解説

正解:③

・一見すると「市場の失敗の公害関係の問題かな?」となるが、その実、ただの計算問題である

・表を見ると、企業Aは現状、濃度1%の汚染水を100トン排出している
⇒つまり、現時点で企業Aは汚染物質を1トン排出している
・同様に、企業Bは現状、濃度2%の汚染水を500トン排出している
⇒つまり、現時点で企業Bは汚染物質を10トン排出している

・よって、現時点で、企業AB合わせて11トンの汚染物質を排出している
・この汚染物質排出量を減らせる規制内容を考えろ、という問題となる

① 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに0.1%までに制限するが、汚染水の年間排出量は制限しない。

・「濃度0.1%の汚染水を五千兆トン!」とかできちゃうので駄目

② 汚染水の濃度は制限しないが、汚染水の年間排出量を企業Aは50トンまで、企業Bは200トンまでに制限する。

・「濃度100%の汚染水を200トン排出!」とかできちゃうので駄目

③ 汚染水の濃度を企業Aも企業Bもともに1.5%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは120トンにする、企業Bは600トンまでに制限する。

・①②は計算以前の常識問題だったが、ここから計算問題になる
・要するに、以下のような計算をすればよい
⇒120×0.015+600×0.015=10.8
⇒この式は、「③の規制を導入した場合、汚染物質は最大でも10.8トンまでしか排出できなくなる」という事を表している

・10.8トンという数値は、規制前の汚染物質排出量11トンより低い
・よって、③が正答となる

④ 汚染水の濃度を企業Aは1%までに、企業Bは2%までに制限し、汚染水の年間排出量を企業Aは300トンまでに、企業Bは400トンまでに制限する。

・既に③が正答というのは分かっているが、④も一応検討しておこう
・こちらも、選択肢に書いてある内容通りに計算をすればよい
⇒300×0.01+400×0.02=11

・つまり④を導入しても、最大まで11トン(規制前と同じ量)までは汚染物質が出せてしまう
・よって、やはり④は誤答選択肢である

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