令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問8
問題
生徒Yは、貿易による国内市場への影響について学習を進め、安価な冷凍野菜の輸入解禁が国内の生鮮野菜市場に与える影響を考えた。ただし、生鮮野菜の供給は国内のみから、冷凍野菜の供給は国外のみからであるとし、冷凍野菜の輸入解禁以外の変化は生鮮野菜市場において起こっていないものとする。さらに、消費者は、生鮮野菜の価格が高いほど、生鮮野菜より冷凍野菜を好んで購入する傾向にあるとする。このとき、冷凍野菜の輸入の解禁と解禁後の、生鮮野菜の需要曲線を表す図として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。
#需要供給曲線 #難問
解説
正解:②
復習用資料:経済分野第一章/需要供給曲線
・需要供給曲線の問題の中でも、かなり難しい方である
・問題文から、選択肢①~④は、生鮮野菜の需要曲線を表している
・また、点線は生鮮野菜しか市場に存在しなかった頃の需要曲線を表す
・同様に、実線は生鮮野菜と冷凍野菜両方が市場に存在する時の需要曲線を表す
・需要曲線とはつまり、「買う側」の「買いたい」という気持ちである
・では、「同じ価格でも、その商品を買う人は増えるか、減るか」という点で見てみよう
・①~④の各図に、任意の価格を設定してみた
⇒例えば①を見てほしい。生鮮野菜しか存在していなかった頃(点線)、生鮮野菜がとある価格(太線)であった時、どれぐらい買う人がいるかと言うと、点線と太線の交点(右側の丸)である。一方、生鮮野菜も冷凍野菜も存在するようになってから(実線)、生鮮野菜がとある価格(太線)であった時、どれぐらい買う人がいるかと言うと、実線と太線の交点(左側の丸)である
・需要供給曲線は、右に行けば行くほど数が増える
・つまり①と②は、冷凍野菜解禁後、(同じ価格であっても)生鮮野菜を買う人が減っている
・逆に③と④は、冷凍野菜解禁後、(同じ価格であっても)生鮮野菜を買う人が増えている
・そしてこれは、どう考えても①か②の方が正しい
⇒「生鮮野菜を買うしかなかった」時代と、「生鮮野菜の代わりに冷凍野菜を買える」時代、「生鮮野菜を買う人」はどちらが多く、どちらが少ないか? という話である。当然、「生鮮野菜の代わりに冷凍野菜を買える」ようになれば、生鮮野菜を買う人は減る
・では、①と②どちらが正しいのか?
消費者は、生鮮野菜の価格が高いほど、生鮮野菜より冷凍野菜を好んで購入する傾向にあるとする。
・①と②どちらが正解かを決めるのはここである
・これは言い方を変えると、「冷凍野菜解禁後、人は、高い生鮮野菜を買わなくなる」という話である
・①と②の生鮮野菜に、非常に高い価格(太線)を設定してみた
※需要供給曲線の縦軸は価格。上に行けば行くほど高くなる
・すると、冷凍野菜解禁後(実線)、①は買う人がいる(太線と実線の交点ぐらいいる)
・一方、②は誰も買わない(太線と実線が交わってすらいない。即ちこの価格の生鮮野菜を買う人は皆無)
・「冷凍野菜解禁後、人は、高い生鮮野菜を買わなくなる」に合致するのは②である
・よって、正解は②となる