令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第1問 問1
問題
市場経済と政府の役割に関連して、生徒Xは、著名な二人の経済学者の著作を読み、次の記述a・bについて後のメモにまとめた。記述a・bは、一方がケインズのエッセイ「自由放任の終焉」からの抜粋であり、他方がフリードマンの著書『資本主義と自由』からの抜粋である(なお、表記を省略した箇所がある)。メモ中の空欄( ア )・( ウ )には記述a・bのいずれかが当てはまる。空欄( ア )~( ウ )には当てはまる記述と語句の組み合わせとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
a 世界は、私的利益と社会的利益とがつねに一致するように、天上から統治されてはいない。世界は、実際問題として両者が一致するように、この地上で管理されているわけでもない。啓発された利己心が、つねに公益のために作用するというのは、経済学の諸原理から正しく演繹されたものではない。
b 政府が重要な役割を果たすようになった結果、すでに政権には危険なまでの経済支配力が集中し、民間企業の事業環境に影響をおよぼし、事業の成功にかかわるような基準や規格を次から次へと定め、他にもさまざまな手段を使って自由市場を脅かしている。
メモ
ケインズは、予定調和的な資本主義観に懐疑的な立場だったといわれ、「( ア )」という記述で、自由放任が常に社会の調和をもたらすわけではないことを指摘している。そして、彼は「( イ )」による補完が必要であると主張する。これに対してフリードマンは、新自由主義的な立場だったといわれ、「( ウ )」という記述で、「( イ )」が拡大した現状について批判的に述べている。
① ア‐a イ‐裁量的な政策介入 ウ‐b
② ア‐a イ‐市場での競争 ウ‐b
③ ア‐b イ‐裁量的な政策介入 ウ‐a
④ ア‐b イ‐市場での競争 ウ‐a
解説
正解:①
復習用資料:経済分野第一章/資本主義
・資本主義の理論について問う問題
・長い十九世紀から現代までの資本主義思想の変遷を覚えていれば簡単に解ける
帝国の時代まで | 世界大戦期~冷戦期 | 冷戦末期~ | |
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重視された人権 | 【自由権】 | 【社会権】 | 【自由権】 |
路線 | 【小さな政府】 | 【大きな政府】 | 【小さな政府】 |
基礎理論提供者 | 【『国富論』】の【アダム・スミス】 | [『雇用、利子及び貨幣に関する一般理論』]のジョン・メイナード・【ケインズ】 | ミルトン・【フリードマン】 |
・ケインズは、自由放任による経済を批判し、政府が経済に介入すべきだと説いた人物である
・一方フリードマンは、ケインズ的なやり方を批判し、自由主義的な経済を現代に蘇らせた
・となれば、答えは①しかない