令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第2問 問1

問題

国富について、生徒Xは、日本の政府統計を調べ、次の表を作成した。後のノートは表から国富を読みとりXがまとめたものである。ノート中の空欄ア〜ウに当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

ノート
 非金融資産は生産資産と非生産資産に分類される。生産資産とは固定資産と在庫の合計のことであり、非生産資産とは土地や鉱物資源などである。次に、金融資産とは現金・預金や株式などの資産である。
 国富とは、ある時点で一国にどれだけの富が蓄積されているかを表す( ア )の指標であるが、非金融資産と金融資産を単に合計したものとは異なる。金融資産は、その債権者にとっては資産であるが、同時に債務者にとっての負債だからである。この観点から、金融資産から負債を控除した( イ )と非金融資産の合計が国富と定義されている。つまり、表中の( ウ )が国富にあたる。

① ア フロー   イ 対外純資産   ウ 総資産
② ア フロー   イ 対外純資産   ウ 正味資産
③ ア フロー   イ 外貨準備   ウ 総資産
④ ア フロー   イ 外貨準備   ウ 正味資産
⑤ ア ストック   イ 対外純資産   ウ 総資産
⑥ ア ストック   イ 対外純資産   ウ 正味資産
⑦ ア ストック   イ 外貨準備   ウ 総資産
⑧ ア ストック   イ 外貨準備   ウ 正味資産

#フローとストック

解説

正解:⑥
復習用資料:経済分野第一章/フローとストック

・正面から国富について聞いてきている問題
⇒国富は「フローとストック」という項目で扱うが、「フローとストック」と言いつつ実際にはフロー(GDPとかGNPとか)の話ばかりで出題もそちらばかり。国富はかなりマイナーで、センターや共テで問われるのは珍しい。…というのを反映してか、必要な知識の半分ぐらいは問題文に書かれている

国富とは、ある時点で一国にどれだけの富が蓄積されているかを表す( ア )の指標である

・その人がどれぐらい金持ちかを見るには、年収と貯金両方見ないと駄目
・これと同様に、国家もまた、フローとストックの両方を見ないといけない
・そしてフローの代表例がGDPであり、ストックの代表例が国富である

・よって(ア)はストックである

金融資産は、その債権者にとっては資産であるが、同時に債務者にとっての負債だからである。この観点から、金融資産から負債を控除した( イ )と非金融資産の合計が国富と定義されている

・金融資産の中でも、国債を例に考えてみよう

・例えば日本国政府が発行した一万円の国債を、日本人の鈴木さんが買ったとする
・日本人の鈴木さんにとって、この国債は資産である
・一方、日本国政府にとっては、この国債は負債である
・「日本の国富」を考える時、鈴木さんが持っている国債一万円を算入するのはよろしくない
・よろしくないと言うか、多分、「日本の国富」を計算する上では考慮しない方がよさそうである

・一方、米国政府が発行した一万円の国債を、日本人の鈴木さんが買ったとする
・この場合、日本人の鈴木さんにとって資産となり、米国政府にとっては負債となる
・「日本の国富」を考える時、鈴木さんが持っているこの国債一万円は、素直に算入して問題なかろう

・更に、日本国政府が発行した一万円の国債を、米国人のドナルドさんが買ったとする
・この場合、米国人のドナルドさんにとって資産となり、日本国政府にとっては負債となる
・「日本の国富」を考える時、ドナルドさんが持っているこの国債一万円は、マイナスで算入すべきだろう

・このような考え方から出てくるのが、対外純資産である
・よって(イ)は対外純資産である
⇒勿論、ここは対外純資産と外貨準備の二択なので、「外貨準備ってそういうもんじゃないよね」「ある国の政府や中央銀行が持ってる、外国のカネだよね」というので対外純資産を選んでもよい

この観点から、金融資産から負債を控除した( イ )と非金融資産の合計が国富と定義されている。つまり、表中の( ウ )が国富にあたる。

・(イ)でも見たこの文章は、つまり、以下のような事を言っている
国富 = (金融資産-負債)+非金融資産

・さて、(ウ)の選択肢は二つ。総資産と正味資産である
・表を見ると、総資産は金融資産と非金融資産の合計だと分かる
・この時点で、総資産は(ウ)の答えにはなり得ない
・一方、正味資産は、金融資産と非金融資産の合計から負債を引いた額になっている

・よって、(ウ)は正味資産である

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