令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第2問 問4
問4
FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)に関して、生徒Xと生徒Yが話し合っている。次の会話文中の空欄( ア )〜( ウ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。
X:FTAやEPAは、締約国間の貿易を促進し、経済を活性化するとの考えから、1990年代以降に増加しているよね。日本は2002年に初めてのEPAを( ア )と結んだよ。
Y:その一方で、WTO(世界貿易機関)の多国間主義の下では加盟国間の利害が調整しきれず、合意形成ができなくなり、ドーハ・ラウンド(ドーハ開発アジェンダ)では交渉の休止が宣言されたよ。
X:そうした背景もあり多くの国がFTAやEPAを推進しようとしているのではないかな。ただ、これが国家間の経済紛争の原因となってはいけないよね。FTAやEPAが締約国間の貿易を促進すると、非締約国にとっては、不利な状況になってしまう可能性があるからね。
Y:第二次世界大戦が起こった一因ともいわれる( イ )と似た状況にしてはならないということだね。
X:そうだね。多角的貿易交渉に参加する国や地域が( ウ )してきたこともあり、WTOの下での自由化促進が停滞しているけれど、国際平和の実現という観点からも多国間主義の理念は大切にしなければならないよね。
① ア アメリカ イ 計画経済 ウ 増加
② ア アメリカ イ 計画経済 ウ 減少
③ ア アメリカ イ ブロック経済 ウ 増加
④ ア アメリカ イ ブロック経済 ウ 減少
⑤ ア シンガポール イ 計画経済 ウ 増加
⑥ ア シンガポール イ 計画経済 ウ 減少
⑦ ア シンガポール イ ブロック経済 ウ 増加
⑧ ア シンガポール イ ブロック経済 ウ 減少
問4解説
正解:⑦
復習用資料:経済分野第三章/国際経済通史
復習用資料:経済分野第三章/国際経済テーマ史
・国際経済通史と、国際経済テーマ史を問うてくる問題である
⇒大まかには、第二次世界大戦以降GATT/WTOを中心に自由貿易が推進されてきたが、加盟する国が増えすぎたWTOが機能不全となり、FTAやEPAが増えている…という話を理解できていればよい
日本は2002年に初めてのEPAを( ア )と結んだよ
・ここは、国際経済テーマ史でも「地域統合」のところを聞いてきている
・ここの選択肢はアメリカ、シンガポールである
・そして私の授業でも触れたように、日本国は最初、先進国とはFTA/EPAを締結していなかった
・第二次安倍政権の後半戦となる2010年代終盤になってようやく、結ぶようになる
⇒自由貿易を志向した安倍晋三の外交の結果と言える
・よって、初めてのEPAはアメリカではありえない。(ア)はシンガポールである
第二次世界大戦が起こった一因ともいわれる( イ )と似た状況にしてはならない
・ここは、国際経済通史でも「戦後の貿易体制」のところを聞いてきている
・ここの選択肢はブロック経済、計画経済である
・そして第二次世界大戦の原因となったのは、ブロック経済である
⇒計画経済は社会主義国家がやるもの。まぁソ連という社会主義国家の存在そのものが第二次世界大戦の原因の一つになったとは言えるが…
・よって、(イ)はブロック経済である
多角的貿易交渉に参加する国や地域が( ウ )してきたこともあり、WTOの下での自由化促進が停滞している
・ここは、国際経済テーマ史でも「1980年代以降のGATT/WTO」を聞いてきている
・ここの選択肢は増加、減少である
・WTOが機能不全に陥ったのは、加盟国が増えすぎたせいである
・よって、(ウ)は増加である