令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第4問 問4

問題

企業の生産拠点の海外移転に関連して、生徒Yは、A国の企業がA国内からB国へ生産拠点を移転した場合、A国の輸出や輸入はさまざまな影響を受けると考え、それらを次のメモ中の記述a〜dにまとめた。さらに、Yは、他の条件が一定のとき、メモ中の記述a〜dの効果が表れた場合にA国の貿易収支が受ける影響について考察し、それらをメモ中の記述e・fにまとめた。メモ中の空欄( ア )〜( エ )には、それぞれ「増加」または「減少」の語句が当てはまり、空欄( オ )・( カ )には、それぞれ「黒字化」または「赤字化」の語句が当てはまる。メモ中の空欄( ア )・( オ )・( カ )に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。

  • 〇企業の生産拠点の海外移転がA国の輸出や輸入に与える効果
    • a A国の企業がB国に移転した生産拠点で生産した最終製品を、B国で販売したりC国などの第三国に輸出したりすると、A国からB国への輸出やA国からC国などの第三国への輸出が( ア )する効果が考えられる。これは「輸出代替効果」といわれる。
    • b A国の企業が最終製品の生産拠点をB国に移転すると、A国からB国への部品等の中間財や機械設備などの資本財の輸出が( イ )する効果が考えられる。これは「輸出誘発効果」といわれる。
    • c A国の企業がB国に移転した生産拠点で生産した最終製品が、A国に輸出されると、A国の輸入額が( ウ )する効果が考えられる。これは「逆輸入効果」といわれる。
    • d A国の企業がB国に移転した生産拠点が、A国で生産するはずであった最終製品を代替生産するようになると、A国の生産拠点で必要であった原材料などの輸入が不要となり、A国の輸入額が( エ )する効果が考えられる。これは「輸入転換効果」といわれる。
  • 〇上記の記述a〜dの効果が表れた場合にA国の貿易収支が受ける影響についての考察
    • ※考察にあたっては、当初A国の貿易収支は均衡状態にあると仮定する。また、後の記述e・fにおいては、それぞれ言及されていない条件は一定とする。
    • e「輸出代替効果」による貿易額の増減が「輸入転換効果」による貿易額の増減よりも大きければ、貿易収支は( オ )する。
    • f「輸出誘発効果」による貿易額の増減が「逆輸入効果」による貿易額の増減よりも小さければ、貿易収支は( カ )する。

① ア 増加  オ 黒字化  カ 黒字化
② ア 増加  オ 黒字化  カ 赤字化
③ ア 増加  オ 赤字化  カ 黒字化
④ ア 増加  オ 赤字化  カ 赤字化
⑤ ア 減少  オ 黒字化  カ 黒字化
⑥ ア 減少  オ 黒字化  カ 赤字化
⑦ ア 減少  オ 赤字化  カ 黒字化
⑧ ア 減少  オ 赤字化  カ 赤字化

#国語問題

解説

正解:⑧

・基本的には、本文を読み解けばそれで正解が出てくる国語の問題である
・ただ、普段から政治経済的な話題に触れていないと厳しいだろうと思われる話題でもある
⇒簡単に言えば、「サッカーを見た事もないしルールも知らない人が、サッカーの試合の評論文を読んで理解できるか?」みたいなところがある問題。そういう意味では、政治経済の試験に相応しい国語問題と言えるかもしれない

a A国の企業がB国に移転した生産拠点で生産した最終製品を、B国で販売したりC国などの第三国に輸出したりすると、A国からB国への輸出やA国からC国などの第三国への輸出が( ア )する効果が考えられる。これは「輸出代替効果」といわれる。

・今まで(A国の企業が、A国内に工場を持つ)の図式はこうである
A国で生産⇒輸出⇒B国で販売
A国で生産⇒輸出⇒C国で販売

・A国の企業がB国に工場移転した後の図式は、こうである
B国で生産⇒B国で販売
B国で生産⇒輸出⇒C国で販売

・つまり、A国からB国への輸出やA国やC国への輸出は減少する
・よって、(ア)は減少である

d A国の企業がB国に移転した生産拠点が、A国で生産するはずであった最終製品を代替生産するようになると、A国の生産拠点で必要であった原材料などの輸入が不要となり、A国の輸入額が( エ )する効果が考えられる。これは「輸入転換効果」といわれる。

・今まで(A国の企業が、A国内に工場を持つ)の図式はこうである
?国が原材料生産⇒輸出⇒A国で生産
※A国が、どこかの国(?国)から原材料を輸入していた

・A国の企業がB国に工場移転した場合、この輸入がゼロになる
・つまり、A国の輸入額が減少する
・よって、(エ)は減少である

・という事は、A国は、輸出代替効果で輸出が減り、輸入転換効果で輸入が減る事になる
・言い方を変えると、輸出代替効果で貿易赤字になり、輸入転換効果で貿易黒字になる

e「輸出代替効果」による貿易額の増減が「輸入転換効果」による貿易額の増減よりも大きければ、貿易収支は( オ )する。

・つまり、輸出代替効果による貿易赤字が、輸入転換効果で貿易黒字より大きければ…?
・勿論、貿易は赤字化する
・よって、(オ)は赤字化である

b A国の企業が最終製品の生産拠点をB国に移転すると、A国からB国への部品等の中間財や機械設備などの資本財の輸出が( イ )する効果が考えられる。これは「輸出誘発効果」といわれる。

・今までは、「A国の企業が、A国内に工場を持つ」形であった
・これが「A国の企業がB国に工場を持つ」形に変わる
・ただ勿論、無から工場が発生する訳ではない
・特に、商品を作る機械(工場で動かす機械)なんかはA国から持っていく必要がある場合も多い

・つまり、A国からB国への輸出が増加する
・よって、(イ)は増加である

c A国の企業がB国に移転した生産拠点で生産した最終製品が、A国に輸出されると、A国の輸入額が( ウ )する効果が考えられる。これは「逆輸入効果」といわれる。

・今まで(A国の企業が、A国内に工場を持つ)の図式はこうである
A国で生産⇒A国で販売

・A国の企業がB国に工場移転した後の図式は、こうである
B国で生産⇒輸出⇒A国で販売

・つまり、工場移転後、A国の輸入額が増加する
・よって、(ウ)は増加である

・という事は、A国は、輸出誘発効果で輸出が増え、逆輸入効果で輸入が増える事になる
・言い方を変えると、輸出誘発効果で貿易黒字になり、逆輸入効果で貿易赤字になる

f「輸出誘発効果」による貿易額の増減が「逆輸入効果」による貿易額の増減よりも小さければ、貿易収支は( カ )する。

・つまり、輸出誘発効果で貿易黒字が、逆輸入効果による貿易赤字より小さければ…?
・勿論、貿易は赤字化する
・よって、(カ)は赤字化である

・まとめると、以下のようになる
ア:減少  イ:増加  ウ:増加  エ:減少  オ:赤字化  カ:赤字化

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