令和三年 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問6
問題
生徒たちは、経済のグローバル化によって、人々の雇用や生活がさまざまな影響を受けると考え、経済の国際的なやりとりについて調べることにした。
次の図は、A国とB国との間で一年間に行われた経済取引をドル換算で示したものである。A国がB国以外の取引を行わなかったとすると、A国の貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の金額の組合せとして正しいものを、下の①〜⑧のうちから一つ選べ。

| 選択肢 | 貿易・サービス収支 | 第一次所得収支 | 第二次所得収支 |
|---|---|---|---|
| ① | -10 | -40 | -15 |
| ② | -10 | -40 | 20 |
| ③ | -10 | 50 | -15 |
| ④ | -10 | 50 | 20 |
| ⑤ | 25 | -40 | -15 |
| ⑥ | 25 | -40 | 20 |
| ⑦ | 25 | 50 | -15 |
| ⑧ | 25 | 50 | 20 |
※単位:10億ドル
解説
正解:③
・国際収支の各勘定科目について、きちんと理解していれば後は算数…という良問である
⇒「経済分野第一章/国際経済の仕組み」の「●国際収支」の内容をきちんと把握していれば解ける。特に重要なのは、「○主要勘定科目まとめ」の部分である
⇒図の一番上、「株式の配当40億ドル」というところから、一行ずつ、「これは××収支だね」「これは△△収支だね」というのを丁寧にやっていけば必ず解ける
株式の配当40億ドル(A←B)
・外国へ投資して得た利益は、第一次所得収支に入る
⇒令和七年現在の国際収支統計では、金融収支以外は「自分の国にカネが入ってきたらプラス」で計算するのが普通である。この問題で問われているのはA国の国際収支であり、この40億円はA国に入ってきている。よってこの40億ドルは、A国の第一次所得収支にプラスである
貿易サービス収支:なし
第一次所得収支:+40
第二次所得収支:なし
医薬品の為の無償資金援助5億ドル(A→B)
・見返りを求めないカネの移動は、第二次所得収支に入る
⇒A国からカネが出て行っているので、マイナスで計上する
貿易サービス収支:なし
第一次所得収支:+40
第二次所得収支:-5
特許使用料25億ドル(A←B)
・非物理的な商品の売買によるカネの移動は、サービス収支(貿易サービス収支)に入る
⇒A国にカネが入ってきているので、プラスで計上する
貿易サービス収支:+25
第一次所得収支:+40
第二次所得収支:-5
外国人労働者による家族への送金10億ドル(A→B)
・これが難しい。これは、一般的な教科書や参考書で出てくる類型ではない
⇒「来日したアメリカ人が日本の企業に雇われて働き、給料を受け取った」みたいな形であれば、第一次所得収支に入れる…というのはまず間違いなくやる。同様に「見返りを求めないカネの移動」が第二次所得収支、というのもやる。が、「外国人労働者による家族への送金」がどちらに入るのか…というところまでは普通、政治経済の授業ではやらない
・少なくとも、A国からカネが出て行っているので、10億ドルをマイナスで計上するのは間違いない
⇒が、第一次所得収支に入れるべきか、第二次所得収支に入れるべきかが、普通の受験生には分からない訳である。だってこんな例、普通はやらないから…
・こういう時は、一旦保留して後に回すのが正解である
貿易サービス収支:+25
第一次所得収支:+40
第二次所得収支:-5
※何処かに-10が入る
国債の利子10億ドル(A←B)
・外国へ投資して得た利益は、第一次所得収支に入る
⇒A国にカネが入ってきているので、プラスで計上する
貿易サービス収支:+25
第一次所得収支:+40+10
第二次所得収支:-5
※何処かに-10が入る
電子機器の輸入代金35億ドル(A→B)
・物理的な商品の売買によるカネの移動は、貿易収支(貿易サービス収支)に入る
⇒A国からカネが出て行っているので、マイナスで計上する
貿易サービス収支:+25-35
第一次所得収支:+40-10+10
第二次所得収支:-5
※何処かに-10が入る
・上記を計算すると、最終的に以下のようになる
貿易サービス収支:-10
第一次所得収支:50
第二次所得収支:-5
※何処かに-10が入る
・ここまで来たところで選択肢を見ると、-10は第二次所得収支にしか入らない事が分かる
⇒貿易サービス収支に入れると-20になってしまうが、そんな選択肢はない。第一次所得収支に入れると40になってしまうが、やはりそんな選択肢はない。唯一、第二次所得収支であれば、-15になる選択肢がある
・よって、正解は③である
追加で考えてみよう
・この問題のA国の金融収支はいくらだろうか?
⇒仮に資本移転等収支と誤差脱漏をゼロとして、ちょっと考えてみてほしい。以下に答えを書く
※ここまでできれば、国際収支の勉強は完璧も同然である。是非やってみてほしい
正解:-25億ドル
・「経済分野第一章/国際経済の仕組み」で学習したように、国際収支は複式簿記的な考え方で作られる
|
「左」 日本にカネが入ってきたら【プラス】 |
「右」 日本からカネが出て行ったら【プラス】 |
|---|---|
|
【経常収支】
【資本移転等収支】
|
【金融収支】 |
・基本的には、「左」と「右」をガッチャンしたらゼロ、という考え方で作られている
⇒具体的には、2014年以降、「経常収支」に2000万円と書いたら、「金融収支」には-2000万円と書く…というような書き方をしている
・よって、上記図で言う「左」を算出し、プラスとマイナスを引っ繰り返せば金融収支が出る
⇒無論、現実の国際収支では「左」と「右」をガッチャンしてもゼロにならず、その数字を誤差脱漏と呼ぶ。が、今回は誤差脱漏がゼロとしているので、やはり、「左」を算出してプラスとマイナスを引っ繰り返せばよい
・「左」を経常収支+資本移転等収支とすると、「右」は金融収支である
⇒そして経常収支は、貿易サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支、で求められる
・よって、「左」は以下のように求める事ができる
(-10+50-15)+0 = 25
※左から貿易サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支、資本移転等収支
・よって、金融収支は経常収支の25のプラスマイナスを引っ繰り返した-25である