令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第1問 問6

問題

家計に関心をもった生徒Yは、講座で配布された次の資料を見返し、分析した結果を後のノートにまとめた。ノート中の空欄( ア )には資料中の例aか例bのいずれかが当てはまる。ノート中の空欄( ア )・( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。

資料 単身勤労世帯3例における1年間の家計収支の平均月額(単位:千円)

  例a 例b 例c
実収入 550 310 140
実支出 450 240 130
 消費支出 300 180 100
  うち食料費 60 42 30
 非消費支出(直接税、社会保険料) 150 60 20

ノート
○家計は、可処分所得の制約の下で最大の満足感が得られるように、消費する財やサービスを選択し、消費支出額と貯蓄額を決定する。資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。
○可処分所得が少なくなると、生活必需品の支出の割合が高くなることは避けられない。こうした点に着目した指標がエンゲル係数である。資料中でも可処分所得の最も少ない例cのエンゲル係数が最も高くなっており、その値は( イ )%となる。

① ア 例a  イ 25%
② ア 例a  イ 30%
③ ア 例b  イ 25%
④ ア 例b  イ 30%

#貧富の格差を表す指標

解説

正解:②
復習用資料:経済分野第一章/貧富の格差を表す指標:

・まさかの、エンゲル係数の計算方法を知っていないと解けない問題
・貧富の格差を測る指標自体は、以前から共通テストでもちょくちょく出題されていた
・しかし、大抵は問題文中に定義や計算方法が書いてあり、実質国語問題であった
⇒「貧富の格差を測る指標に関する問題」であり、かつ「計算方法そのものを知っていないと解けない」というのは、恐らく、共通テスト始まって以来初の問題であると思われる

資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。

・ではまず「ノート」の最初の方の文章から解いていこう
・ここは、可処分所得という言葉の意味さえ知っていれば解けるところである
⇒即ち、「収入全体から“払いたい訳じゃないけど払わなきゃいけないカネ”を引いたもの」が可処分所得である、と知ってさえいれば解ける

・表を見ると、「実収入」「非消費支出」という項目がある
・前者が収入全体、後者が“払いたい訳じゃないけど払わなきゃいけないカネ”と考えればよい

例a:550 - 150 = 400
例b:310 - 60 = 250

・よって、上記の額が例abの可処分所得である
・ここで改めて「ノート」の最初の文を見てみよう

資料中の例aと例bとを比較すると、可処分所得に占める消費支出の割合である平均消費性向は( ア )の方が高い。

・最終的には平均消費性向を算出してそれを比べる必要がある訳だが、その計算方法は書いてある
・即ち、「可処分所得に占める消費支出の割合」を出せばいいのである
・つまり、上記で産出した可処分所得で消費支出を割ればよい

~数学がガチで全く何もできないド文系の人向け解説~
大体の人は、「所持金1000円の内100円使った。何%使った?」ならぱっと「10%」と言えるだろう。ただ、ド文系だと「所持金2500円の内300円使った。何%使った?」みたいに言われると計算の仕方が分からん、となる可能性がある。そういう人は、「割合を出すときは一般に、“一部÷全部”」、と覚えておくといいでしょう
~筆者もド文系です、恥ずかしがる必要はありません~

例a:300 ÷ 400 = 0.75
例b:180 ÷ 250 = 0.72

・よって、平均消費性向は例aの方が高い
・故に正解となる選択肢は①か②である
・では、「ノート」の次の文章に移ろう

可処分所得が少なくなると、生活必需品の支出の割合が高くなることは避けられない。こうした点に着目した指標がエンゲル係数である。資料中でも可処分所得の最も少ない例cのエンゲル係数が最も高くなっており、その値は( イ )%となる

・これは、エンゲル係数の計算方法を知らないと解けない

~ほんとぉーーー?~
・筆者も、この文章を解析し、エンゲル係数の計算方法を知らなくても問題が解けないか考えた
・が、この文章を読んで思いつくだろう計算方法は、恐らく以下の通りである

計算方法:可処分所得に占める食料費の割合を出す
※可処分所得は問題文に何度も出てくる重要単語、食料費は問題文中にある“生活必需品”として計算に使えそうな項目がこれしかない。よって本文から類推するのであれば、こういう計算方法にしかならない

・この計算方法で実際にやってみると、以下のような結果になる

例a:15%
例b:16.8%
例c:25%

・問題文の「例cのエンゲル係数が最も高」いに矛盾せず、しかも誤答①と同じ数字が出てしまうのである
・となるとやはりこの問題は、問題文から類推して解く問題ではない
・即ち、計算方法を知らないと解けない問題という事になる
~うーん共テの出題傾向が変わった瞬間だ~

・エンゲル係数は、消費支出全体に占める食費の割合で表される
⇒つまるところ、「エンゲル係数(%)=食費÷消費支出×100」である

・例cは消費支出全体が100、食費が30であるから30%と分かる
・よってイは30%であり、②が正解となる

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