令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問6

問題

生徒Yは、講義で配布された景気循環に関する次の資料1〜4を読み直している。資料2〜4は、1989年から1994年までの日本の、GDP、民間設備投資、民間部門の在庫、それぞれの実質額が前年に比べてどのように増減したかを示している。なお、資料2〜4の中の空欄ア〜ウには、「GDP」「民間設備投資」「民間部門の在庫」のいずれかの語句が当てはまる。空欄ア〜ウに当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

資料1 景気循環に関する説明
○景気循環は、以下のような経過にしたがうといわれる。
・生産の増大が続くが需要の増加が十分でないとき、商品の売れ残りが増加し企業の利潤が減少する。
・企業の利潤の減少にともない、雇用は減少し、景気は後退する。
・景気の後退は、企業による生産の抑制や設備投資の減少とさらなる雇用の減少を促し、経済は不況に至る。
・企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理とともに需要が増加し、景気は回復し、さらに好況に向かう。この中で企業の設備投資も活発化し、生産や雇用も増加していく。
○1989年から1994年までの日本では、上記のような経過が観察される。

① ア GDP  イ 民間部門の在庫  ウ 民間設備投資
② ア GDP  イ 民間設備投資  ウ 民間部門の在庫
③ ア 民間部門の在庫  イ GDP  ウ 民間設備投資
④ ア 民間部門の在庫  イ 民間設備投資  ウ GDP
⑤ ア 民間設備投資  イ GDP  ウ 民間部門の在庫
⑥ ア 民間設備投資  イ 民間部門の在庫  ウ GDP

#国語問題 #日本経済通史 #時事問題 #難問

解説

正解:④
復習用資料:経済分野第四章/明治維新から終戦まで
復習用資料:経済分野第四章/終戦直後
復習用資料:経済分野第四章/高度経済成長期
復習用資料:経済分野第四章/安定成長期
復習用資料:経済分野第四章/失われた三十年

・日本経済史の知識と、国語の問題を組み合わせた難問
⇒日本経済史の知識は、具体的には、「1991年から1993年にかけて、バブル崩壊とか平成不況と言われる大不況になった」が必要
⇒景気循環の知識も必要ではあるが、この辺の知識については問題文に書いてあるので、知らなくても問題はない

~ところで問題文が一部怪しくない?~
・景気循環の説明の最後の行がかなり怪しい
・「需要が増加」すると「景気は回復」する。これは当たり前の事で問題ない
・ただ、「企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理」は、「需要が増加」する事を導くのか?
・…と言うと、まぁ導かないでしょうねで終わる
⇒結局のところ、需要は“買う側”の話であり、企業は基本“売る側”な訳で…無論、企業も設備投資(新たな機械の購入や新工場の建設等)や原材料購入等で“買う側”として重要な役割を果たしていると言えばそうなんですが…
⇒「過剰在庫の処分や過剰設備の整理」が終わった後、企業が“今時の売れそうな商品”を作る為に設備投資しようとする、みたいな話を端折った結果なのかもしれない
~もうちょっとちゃんと問題文練りこんでほしかった~

・この問題、「不景気になってもよっぽどの事がなければGDPは減らない」を知っていると解きやすい
⇒教科書に載っているような知識ではない、いわば時事問題で使うような雑学に類する知識なので、現役高校生が知っているかと言うとかなり微妙だが…
⇒実際、戦後日本の名目GDP(円建て)はバブル崩壊時、下がっていない。リーマンショックの時やコロナパンデミックの時は下がっている。いやでも高校生はこんな事知らんよ…
⇒ただ、「経済成長率プラスは好景気、マイナスは不景気」からもう一歩進んで、「経済成長率がやたら低い(0.01%とか)のも不景気」というのは知っておいて損はない。これは、「インフレは好景気、デフレは不景気」からもう一歩進んで、「デフレ傾向(インフレ率0.01%とか)も不景気」というのを知っておいて損はない、というのと一緒

・ともあれ上記知識があれば、(ウ)が恐らくGDPだろうと判断できる
⇒1991から1993年にかけて露骨に下がっているが、それでも前年度比マイナスに至っていない。そしてバブル崩壊による大不況がひと段落した1994年に、僅かながら上向いている

・こうして(ウ)が解決していれば、(ア)と(イ)は以下の文を基準に求められる

・景気の後退は、企業による生産の抑制や設備投資の減少とさらなる雇用の減少を促し、経済は不況に至る。
・企業による過剰在庫の処分や過剰設備の整理とともに需要が増加し、景気は回復し、さらに好況に向かう。この中で企業の設備投資も活発化し、生産や雇用も増加していく。

・これを見ると、以下の事が分かる
1:在庫や設備投資は、不況の間減り続ける(処分、整理が進む)
2:設備投資は、不況が終わると再び上がり始める(在庫はそうとは限らない)

・この知識を元に(ア)(イ)の1994年(バブル崩壊による大不況がひと段落した年)を見てみよう
・すると、(ア)は下がり続けているが、(イ)は最後に上向いている
・よって、不況がひと段落して再び増え始めた設備投資が(イ)であろうと分かる訳である

・つまり、(ア)が在庫、(イ)が設備投資、(ウ)がGDPとなる

~不況になっても、よっぽどの事がないとGDPは下がらない、と知らない場合~
・唯一下がり続けている(ア)が恐らく在庫だろうというのはいいとして、問題は(イ)(ウ)
・どちらがGDPでどちらが設備投資か、明確な材料があんまりないのである
・一応見分ける点としては、1990年。(イ)は下がっており、(ウ)は上がっている
⇒1990年はまだバブル景気で、景気がよかった年である。普通、景気がよければ設備投資も活発だし、GDPも上がる。…が、「景気がいいのにGDPが下がる」と「景気がいいのに設備投資が減ってる」どちらが不自然かと言えば、まぁ前者だよなぁ…で(イ)が設備投資、(ウ)がGDPと分かる
~一応、無茶な知識を要求する理不尽問題ではないです。ただ難問ではある~

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