令和六年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第4問 問6

問6

生徒Xと生徒Yは、科学技術の利用とリスクについて議論している。次の会話文中の空欄( ア )には後の語句aかb、空欄( イ )には後の記述cかd、空欄( ウ )には後の記述eかfのいずれかが当てはまる。空欄( ア )〜( ウ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

X:私たちは地球規模の課題をたくさん抱えているけれど、科学技術がもっと発展すれば、すべて解決できるかもしれないね。たとえば、新しい資源の開発や省資源・省エネルギー、再生可能エネルギーに関する技術の開発などによって、エネルギー問題を解決できるかもしれないよ。発電所の排熱を暖房や給湯などに利用して熱効率を高める( ア )の技術を導入する事例もあるよ。
Y:科学技術の発展に期待はしたいけれど、そんなに楽観的でいいのかな。科学技術は私たちにとって、さまざまなリスクももたらすのではないかな。たとえば、情報通信技術の急速な進展によって、大量の情報を短時間で処理し伝送できるようになったけれど、同時に、個人の私生活に関する情報もケンしやすくなったため、プライバシーの権利がないように( イ )のリスクが高まったよ。日本においてプライバシーの権利は、( イ )だよね。
X:たしかにリスクは高まったけれど、あらゆるものにインターネットやAI(人工知能)が活用されることで、エネルギーの効率的な利用もできるようになり、環境問題やエネルギー問題の解決につながると思うよ。
Y:そうだね。また、AIなどの先端技術は国家的な競争が激しく、また、自国の技術が他国の軍事技術に利用されることもあるよ。そのため日本では、( ウ )。
X:なるほど。科学技術の発展を促進しつつ、そのリスクに備え、ルールを作っていかないといけないねということだね。

( ア )に当てはまる語句
a スマートグリッド
b コージェネレーション

( イ )に当てはまる記述
c 現在、自らについての情報が勝手に利用されないように、それをコントロールする権利でもあるとらえられているよね
d 憲法制定時から重要だと認識されていたので、憲法第13条は、私生活をみだりに公開されない自由を明文で保障しているよね

( ウ )に当てはまる記述
e 経済安全保障推進法に基づいて、半導体など特定の重要な先端技術の流出を防止するための制度作りが行われているよ
f 1980年代の貿易摩擦で対象の品目に含まれていた半導体を、制限なく輸出できるようにするための政策が実施されているよ

① アーa イーc ウーe
② アーa イーc ウーf
③ アーa イーd ウーe
④ アーa イーd ウーf
⑤ アーb イーc ウーe
⑥ アーb イーd ウーf

#時事問題  #国語問題 #新しい人権

解説

正解:⑤
復習用資料:政治分野第二章/新しい人権

・時事問題でもあり、国語の問題でもあり、新しい人権の問題でもある欲張りセット

発電所の排熱を暖房や給湯などに利用して熱効率を高める( ア )の技術を導入する事例もあるよ。
a スマートグリッド
b コージェネレーション

・報道をよく見ている人は知っている単語、かもしれない
・一応、解説をそれぞれ政府系サイトから拾ってきてみた

スマートグリッド:スマートグリッドとは、情報通信技術を活用することによって、電力の需要と供給を最適化する次世代の電力網のこと
(総務省ウェブサイト/https://www.soumu.go.jp/main_content/000161105.pdf)

コージェネレーション:2つのエネルギーを同時に生産し供給するしくみです。現在主流となっているコジェネは、「熱電併給システム」と呼ばれるもので、まず発電装置を使って電気をつくり、次に、発電時に排出される熱を回収して、給湯や暖房などに利用します
(経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト/
 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cogeneration.html)

・という訳で、(ア)はコージェネレーションが正解となる

日本においてプライバシーの権利は、( イ )。
c 現在、自らについての情報が勝手に利用されないように、それをコントロールする権利でもあるとらえられているよね
d 憲法制定時から重要だと認識されていたので、憲法第13条は、私生活をみだりに公開されない自由を明文で保障しているよね

・これは新しい人権の知識を問うているところ
・プライバシーの権利は、いわゆる「新しい人権」に分類される
・「新しい人権」は、日本国憲法制定時には想定されていなかった人権全般を指す概念である
・よって、dは明らかに間違っていると分かる。(イ)はcが正解となる

※勿論、「プライバシーの権利は近年、cに書いてあるように発展し、その結果が例えば個人情報保護法である」という知識があれば、それはそれで解ける

また、AIなどの先端技術は国家的な競争が激しく、また、自国の技術が他国の軍事技術に利用されることもあるよ。そのため日本では、( ウ )
e 経済安全保障推進法に基づいて、半導体など特定の重要な先端技術の流出を防止するための制度作りが行われているよ
f 1980年代の貿易摩擦で対象の品目に含まれていた半導体を、制限なく輸出できるようにするための政策が実施されているよ

・ここは国語の問題
・自国の先端技術が外国の軍事技術に利用される場合もあるからどうしよう、というのが(ウ)である
・そこでfの「制限なく輸出できるように」しました! はどう考えてもおかしい
・一方、eの「特定の重要な先端技術の流出を防止する」なら話は通る

・よって、(ウ)はeが正解であると分かる

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