令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第2問 問2
問題
生徒Xは、国債残高の増大に関連する新聞記事検索を行い、次の記事をみつけた。記事中の空欄( ア )には後の記述aかb、空欄( イ )には後の語句cかdのいずれかが当てはまる。空欄( ア )・( イ )に当てはまるものの組合せとして最も適当なものを、後の①〜④のうちから一つ選べ。
( ア )
a 特例国債を発行して行う所得税減税により消費需要を強力に刺激
b 歳出削減と増税により基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化
( イ )に当てはまる語句
c国内 d国外
① ア-a イ-c ② ア-a イ-d
③ ア-b イ-c ④ ア-b イ-d
解説
正解:③
復習用資料:経済分野第一章/通貨とは何か
・私の授業をきちんと受けている人なら、ぱっと答えられる問題
⇒従来、テレビや新聞では○○○○氏のような事を言う人ばかりだったのが、令和六年現在、△△△△氏のような事を言う人も徐々に目立ちつつある。これは一種の時代の変わり目とも言え、その風潮が反映された、ある意味時事問題であるとも言えるだろう
・本文をぱっと読めば、○○○○氏と△△△△氏の主張は正反対であると分かる
・以下に、両氏の主張を要約してみよう
○○○○氏:国債とは国の借金である。本来、借金は一銭たりとてするべきではない。よって国債発行を停止すべきだ。政府が大赤字になって破産したらどうするんだ!
△△△△氏:国債は国の借金、という認識そのものがまずおかしい。それを抜きにしても、「不景気の時こそ政府は赤字にならないと、余計不景気になる」って政治経済でやらなかったんですか?
・これを踏まえた上で(ア)(イ)を見ていこう
>( ア )
a 特例国債を発行して行う所得税減税により消費需要を強力に刺激
b 歳出削減と増税により基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化
・○○○○氏の「まず(ア)すべきである」に入るのはaかbか、というところである
・先に要約したように、○○○○氏は国債を発行すべきでないと言っている
・という事は、aではありえない
⇒こういう主張をする人って、プライマリーバランス黒字化みたいな世迷い事言うよね…という知識でbを選んでも勿論よい
・よって、(ア)はbである
日本国債はそのほとんどが( イ )の経済主体に保有されており、債務不履行に陥る可能性は極めて低い
c国内 d国外
・私の授業で何度も言及しているように、日本国債は債務不履行の危険性が低い
・誰が買っているか以前の問題として、そもそも、日本円建てで発行している時点で極めて低い
⇒「一年後に一万百円あげます」券を一万円で売る、みたいな事をしている。一年後、どうしても手元に一万円がなかったのであれば最悪、一万円札を刷って渡せばよい
⇒これが「一年後に十一ドルあげます」券を十ドルで売る、みたいな事をしていた場合(ドル建て)はそうはいかない。ドルは日本政府が作っているものではないので。この場合は債務不履行に陥る可能性は充分にある
・そして、円建てで発行した国債を沢山買うのはどの国の人か、と言ったら当然日本人である
・普段から円を使って生活しているのは日本人しかいないのだから、それはそうとしか言いようがない
・もっと言えば、アベノミクス以来十年に渡って、日本銀行は買いオペを続けてきた
・という事は、日本国債のかなりの部分は日本銀行(つまり国内)にある、という事である
⇒これは現実にそうで、令和六年三月末の時点で、日本の国債合計1082兆506億円の内、約五割を日本銀行が保有している。海外が保有する日本国債は、6.5%に過ぎない
参考:財務省の統計
・よって、(イ)はcである