令和七年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問1
問題
先生Tは、講演会に向けて、持続可能な社会や経済の在り方について授業を行った。授業の内容に関心をもった生徒Aと生徒Bは、社会関係資本と社会的共通資本について調べて、次のメモ1とメモ2にまとめた。後の会話文中の下線部①~④は、それぞれメモ1とメモ2から読み取れることの説明である。その内容として適当でないものを①~④のうちから一つ選べ。
メモ1 社会関係資本
この資本は、個人と共同体や個人間のつながりを意味するものである。この資本を形成する過程では、直接の見返りを期待せず、いずれ誰かがお返しをしてくれると信頼して行動することが望ましいとされる。
(パットナム『孤独なボウリング』柴内康文訳に基づく)
メモ2 社会的共通資本
この資本は、すべての人々が豊かで文化的な生活を送ることを可能にするものである。この資本を形成する過程では、自然、経済、社会の維持において、市場的な基準を無批判に取り入れてはならないとされる。
A:メモ1によれば、①例えば、誰も手入れをしていない公園の清掃は、直接的な報酬に動機づけられて行うことが望ましいと判断できます。
B:メモ1には、②毎日会釈をして信頼関係を築くことも、社会的なつながりやその広がりへ寄与することが含意されていると思います。
A:メモ2から、③例えば、河川や森林は、私有が認められている場合でも、その管理には社会的な基準を考慮する必要があると読み取れます。
B:メモ2によれば、④全ての人々の生活を豊かで文化的なものにするには、調和的な経済的環境を整えることが求められていると言えます。
T:社会や経済の在り方には様々な考え方がありますね。明日の講演会では、授業で学んだ経済の基本原理に関係づけて内容の理解に努めましょう。
解説
正解:①
・近年の公共・政治経済特有の、“知識を問うかと思いきやただの国語”問題である
メモ1によれば、①例えば、誰も手入れをしていない公園の清掃は、直接的な報酬に動機づけられて行うことが望ましい
・明らかに誤文である。何せ、メモ1には以下のようにある
この資本を形成する過程では、直接の見返りを期待せず、いずれ誰かがお返しをしてくれると信頼して行動することが望ましいとされる。
・よって、①が正解である。一応、②以降も確認しておこう
メモ1には、②毎日会釈をして信頼関係を築くことも、社会的なつながりやその広がりへ寄与することが含意されている
・正文である
・メモ1には、「この資本は、個人と共同体や個人間のつながりを意味する」とある
⇒毎日顔を合わせたら挨拶するというのは、まさに、「個人と共同体や個人間のつながり」である
メモ2から、③例えば、河川や森林は、私有が認められている場合でも、その管理には社会的な基準を考慮する必要がある
・正文である
⇒メモ2には、「自然、経済、社会の維持において、市場的な基準を無批判に取り入れてはならない」とある。“コレは俺の私有財産なんだからどう扱ってもいい”はまさに「市場的な基準」と言える
メモ2によれば、④全ての人々の生活を豊かで文化的なものにするには、調和的な経済的環境を整えることが求められている
・正文である
・メモ2には、「この資本は、すべての人々が豊かで文化的な生活を送ることを可能にするもの」とある