令和七年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第2問 問4
問題
生徒Cは、講演会をきっかけにして、ビジネスを営んでいく上で、企業を取り巻く経済状態も重要であることに気づき、各企業の経済活動と日本銀行による金融政策との関係について調べて、次のノート2にまとめた。ノート2中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
ノート2
私が今日の講演会を聞いて関心をもったことは、中央銀行による金融政策が、日々の経済活動にどのように影響を及ぼすのかという点です。
例えば、不況の際、日本銀行は景気を回復させるために[ ア ]を行うとされています。このとき、日本銀行は公開市場操作として、[ イ ]を実施することによって貨幣を供給し、短期金融市場において政策金利が[ ウ ]するように誘導します。この金利の動きに連動して、市中銀行の貸出金利も[ ウ ]するため、企業や家計の経済活動が刺激されると考えられています。
こうした金融政策の景気変動に関する理論上の効果を期待して、日本銀行の政策が実施されてきました。今後は、各企業の事業だけでなく、金融政策の動向にも注目していきたいと思います。
① ア 金融引締め イ 売りオペレーション ウ 上昇
② ア 金融引締め イ 売りオペレーション ウ 低下
③ ア 金融引締め イ 買いオペレーション ウ 上昇
④ ア 金融引締め イ 買いオペレーション ウ 低下
⑤ ア 金融緩和 イ 売りオペレーション ウ 上昇
⑥ ア 金融緩和 イ 売りオペレーション ウ 低下
⑦ ア 金融緩和 イ 買いオペレーション ウ 上昇
⑧ ア 金融緩和 イ 買いオペレーション ウ 低下
解説
・金融政策の基本さえ分かっていれば解ける問題である
例えば、不況の際、日本銀行は景気を回復させるために[ ア ]を行うとされています。
・不況の時は、一般にデフレである。デフレは一般に、物価下落、貨幣価値上昇である
⇒つまり、放っておくとカネの価値が上がっていく。カネを使わずに貯金しておくだけで、実質貯金が増えていくような状況であるから、誰もカネを使わない。誰もカネも使わないという事は、企業の商品が売れないという事である。どの企業も業績が悪いという状況になれば、それはまさに不況である
・よって一般に、不況時(デフレ時)の金融政策は、貨幣価値低下を狙う事になる
⇒放っておくとカネの価値が下がっていくなら、貯金しておくより使ってしまった方が得である。皆がカネを使いたがるという事は、企業の商品が飛ぶように売れるという事である。どの企業も業績がいいという状態は、まさに好景気である
・貨幣価値を低下させたいのであれば、カネの量を増やせばいい
⇒どんなモノであっても、沢山あれば価値は下がる(希少であれば価値は上がる)。これは、カネであろうとも例外ではない
・カネの量を増やす経済政策は、勿論、金融緩和である
⇒カネの量を減らす経済政策が、金融引締
・よって、[ア]は金融緩和である
このとき、日本銀行は公開市場操作として、[ イ ]を実施することによって貨幣を供給し
・公開市場操作は、一般に、買いオペと売りオペに分けられる
・そして、金融緩和の時にするのは買いオペである
⇒買いオペでは、日本銀行が市中銀行(普通の銀行)から有価証券(国債や株券等)を買う。勿論、購入なので、日銀は市中銀行へカネを支払う。すると、市中銀行の手元には大量のカネが溜まる。市中銀行はカネを貸して稼ぐのが仕事なので、こういう状況になれば、カネを貸そうとする。そして銀行がカネを貸すと、国全体に流通するお金の量が増える(信用創造)。…という流れで、金融緩和が実現する
・よって、[イ]は買いオペレーションである
短期金融市場において政策金利が[ ウ ]するように誘導します。
・金利とは要するに、利子である。金融緩和をする上では、金利は低い方がよい
⇒当たり前だが、利子は低い方が借金しやすい。そして、金融緩和(カネの量を増やす)に於いては、信用創造(銀行がカネを貸すと、国全体に流通するお金の量が増える)を増やすのが大事。つまり、金融緩和をする上では、金利(利子)が低い方がよい
・よって、[ウ]は低下である