令和七年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第1問 問
問題
A:新型コロナウイルス感染症のまん延は、ワクチン接種や副反応、重篤な患者の受入れなど、様々な問題をもたらしたね。医学的な観点からだけではなく、倫理的、法的、社会的な観点からの多面的な検討を要する課題もあった。
B:人工呼吸器を緊急に要する患者が多く運び込まれてきた場合に、限られた呼吸器を誰から先に装着するか、というトリアージの問題があるね。
A:功利主義の立場では、医療措置を加えれば助かる見込みが出てくる人を優先することで、[ ア ]の救命を目指すやり方が考えられる。
B:装着順を決めざるを得ないときに備えて、基準を定めておく必要はあるから、功利主義の発想は捨てきれないね。うーん、これって、「公共の福祉」という考え方と同じなのだろうか。
A:憲法上の「公共の福祉」は、社会全体の幸福を目的とする功利主義と直結するとは必ずしも言えないかも。それに、各人が平等にもつ人権や[ イ ]を何よりも尊重しようという義務論の立場からすると、救命に優先順位をつけるのは難しいと感じられるかな。
B:よりよい社会の実現のためには、すぐに答えの出ない問題について、皆で考えていくのが大事だね。地域社会のルールや私人どうしのルールも、社会の進展に伴って生じる課題に対応するために形成されてきたんだろうね。
会話文中の空欄ア・イに入る語句の組合せとして最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ア 最大多数 イ 欲求
② ア 最大多数 イ 尊厳
③ ア 無差別 イ 欲求
④ ア 無差別 イ 尊厳
解説
正解:②
復習用資料:倫理分野
・倫理分野の中でも功利主義とは何かについての知識を問い、その上で読解力も問う複合問題
・…の筈なのだが、これ、やろうと思えば全部読解力で行けちゃうのでは…ともなる問題である
A:功利主義の立場では、医療措置を加えれば助かる見込みが出てくる人を優先することで、[ ア ]の救命を目指すやり方が考えられる。
・選択肢は「最大多数」か「無差別」である
・功利主義と言えば、“最大多数の幸福”。これさえ覚えていれば、それだけで解ける知識問題の箇所である
・なのだが、正直、もう少し広く文章を読めば、国語力で解けてしまう
B:人工呼吸器を緊急に要する患者が多く運び込まれてきた場合に、限られた呼吸器を誰から先に装着するか、というトリアージの問題があるね。
A:功利主義の立場では、医療措置を加えれば助かる見込みが出てくる人を優先することで、[ ア ]の救命を目指すやり方が考えられる。
B:装着順を決めざるを得ないときに備えて、基準を定めておく必要はある
・ここの会話は、“全員は助けられない”からこそ誰かを優先せざるを得ない、という状況の話である
⇒この会話は、要するに、「緊急」の場合を頭に浮かべながらのものである。もう少し言えば、“全員は助けられない”という状況を想定して、ABが会話している。であれば、優先順位をつけて、一部を助けて一部を見捨てる、という形にせざるを得ない
・となると、[ ア ]に「無差別」は絶対に入らない
⇒「無差別の救命」であれば、優先順位をつけず、全員を救おうとする筈だからである。結果、消去法で残った「最大多数」が正答となるのだ