令和七年度 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第2問 問3
問題
三人は社会保障の在り方をさらに検討した。三人が二つの代表的な年金制度の仕組みの特徴と社会情勢の変化によって影響を受けやすい点、及び、対応策について検討した際の次のメモを読み、メモ中の空欄[ イ ]・[ ウ ]・[ エ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。
メモ
| 年金制度 | [ ア ]方式 | [ イ ]方式 |
|---|---|---|
| 特徴 | 現役時に年金受給者が支払った年金保険料を財源として、年金受給者への支給を行う。 | その時々の現役世代が負担する年金保険料を財源として、年金受給者への支給を行う。 |
| 社会情勢の変化によって影響を受けやすい点 | 社会情勢の持続的な物価の上昇によって、年金給付額の実質的価値が[ ウ ]することがある。 | 少子高齢化が進み世代間の人口比率が変動することに伴い、給付水準を維持するためには、現役世代の年金保険料負担を[ エ ]必要がある。 |
| 対応策 | 一人ひとりが掛け金を用いて、投資などの資産運用をしていくことで対応する。 | 年金支給開始年齢を引き上げることで対応する。 |
① イ 賦課 ウ 減少 エ 減らす
② イ 賦課 ウ 減少 エ 増やす
③ イ 賦課 ウ 増加 エ 減らす
④ イ 賦課 ウ 増加 エ 増やす
⑤ イ 積立 ウ 減少 エ 減らす
⑥ イ 積立 ウ 減少 エ 増やす
⑦ イ 積立 ウ 増加 エ 減らす
⑧ イ 積立 ウ 増加 エ 増やす
解説
正解:②
復習用資料:経済分野第二章/社会保障
・積立方式と賦課方式についての基本的な知識を問う問題である。こういう問題は落とさないようにしたい
[ ア ]方式
現役時に年金受給者が支払った年金保険料を財源として、年金受給者への支給を行う。
・これが積立方式である
⇒かつて、日本の年金制度はこれであった。その為、令和七年現在も、“自分が今貰っている年金は、現役世代が稼いだカネが財源”であると理解していない高齢者は多い
[ イ ]方式
その時々の現役世代が負担する年金保険料を財源として、年金受給者への支給を行う。
・これが賦課方式である
⇒令和七年現在、事実上賦課方式に移行している。日本政府や教科書は長い事「修正積立方式」や「修正賦課方式」と言って頑なに賦課方式であると認める事を拒んでいたが、近年の教科書は普通に「賦課方式」と書き始めている
積立方式
社会情勢の持続的な物価の上昇によって、年金給付額の実質的価値が[ ウ ]することがある。
・物価が上がると、連動して貨幣価値は下がる。これは経済の基本である
⇒例えば、去年までは一本百円だったペットボトルが、今年は一本二百円に値上げされた、としよう。これは言うまでもなく物価上昇にあたる。一方、貨幣価値(カネの価値)に着目するとどうなるか? 去年までは、百円玉にはペットボトル一本分の価値があったが、今年はペットボトル一本分の価値はない(百円玉二枚でようやくペットボトル一本分)…という話になる。即ち、物価上昇に合わせて、貨幣価値(カネの価値)が下落しているのである
・故に、年金支給額が同じでも、インフレ(物価上昇)が起こると、その価値は減少する
・よって、[ ウ ]は「減少」である
賦課方式
少子高齢化が進み世代間の人口比率が変動することに伴い、給付水準を維持するためには、現役世代の年金保険料負担を[ エ ]必要がある。
・賦課方式は、単純化して言えば、“若者が稼いだカネで高齢者を養う”形の年金である
・では、令和七年現在の日本国で進行しているように、少子高齢化が進むとどうなるか?
⇒言い方を変えると、“若者が多く高齢者が少ない”から“若者が少なく高齢者が多い”へ変化した場合、どうなるか…という事である。言うまでもなく、若者一人が払う保険料を増やさないと、高齢者へ支給する年金額を維持できない
※まぁ、日本国の公的年金は公費も投入して維持しているものなので、“国債発行して年金支給に充てる”とかしてもいいのだが…民意が許さないしね……
・よって、[ エ ]は「増やす」である
※ところで、この問題の「対応策」の部分要らないというか、ガバガバ過ぎませんか…? 日本全国の高校三年生が受ける試験で、こんなガバガバ対応策をまるで正解であるかのように示していいのか…? 積立方式の対応策とか、最早「じゃあ年金って制度自体やめろよ」って話にしかならなさそうなのだが……