令和七年度 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第2問 問4
問題
三人は、これまでの検討結果を整理し、若者議会で提案する内容をまとめている。次の会話文を読み、会話文中の空欄[ ア ]〜[ ウ ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑧のうちから一つ選べ。
A:若者議会の提案をまとめていくために、強調したいポイントを出してほしい。
B:公的年金の世代間公正について検討したけど、若い世代の課題としては、親から子の世代に格差や貧困が引き継がれる問題についても考える必要がある。
C:その点について考えてみると、貧困などに陥った際に生じる問題を防ぐ仕組みや制度である[ ア ]の機能が注目される理由が見えてくる。
A:その機能について、地域社会や企業の役割も大切になってくると思う。社会保険のなかでも、事業主のみが負担する[ イ ]の意義にも気付かされた。
B:たしかに、政府や企業など多様な主体が関わる仕組みはとても重要だと思う。
C:私は、社会保障制度を持続可能なものとするために、一人ひとりが取り組む意識を高め、社会に参画する準備を促すことを提案したい。
A:若い世代が主体的に社会に参画するための方法には、何があるだろうか。
B:[ ウ ]があげられるね。授業では、阪神・淡路大震災後に大きく進展したことから、1995年が日本における[ ウ ]の「元年」と言われたことを学んだ。
C:様々な主体が社会課題に関わる可能性を示してくれたので、さらに検討して提案をまとめていこう。
① ア ディーセント・ワーク イ 雇用保険 ウ 公共サービス
② ア ディーセント・ワーク イ 雇用保険 ウ ボランティア
③ ア ディーセント・ワーク イ 労災保険 ウ 公共サービス
④ ア ディーセント・ワーク イ 労災保険 ウ ボランティア
⑤ ア セーフティネット イ 雇用保険 ウ 公共サービス
⑥ ア セーフティネット イ 雇用保険 ウ ボランティア
⑦ ア セーフティネット イ 労災保険 ウ 公共サービス
⑧ ア セーフティネット イ 労災保険 ウ ボランティア
解説
正解:⑧
復習用資料:経済分野第二章/労働問題
復習用資料:経済分野第二章/社会保障
・知識を問うだけの問題を会話文で糊塗しただけの、あんまり捻りがない問題である
⇒問われている知識もイ以外はそんなに難しいものではないので、少なくともアとウに関しては間違えないようにしたい
※イに関しては…いや確かに去年の共テ本試でも同じ知識を問う問題が出たけど…そこそんなにしつこく聞く知識か…? 私が公共とか政治経済の授業するなら強調するとこだけど、普通の人はそんなとこやらないと思うぞ…? って感じ
貧困などに陥った際に生じる問題を防ぐ仕組みや制度である[ ア ]
・選択肢は「ディーセントワーク」か「セーフティネット」である
・ここは、単語の意味さえ分かっていれば「セーフティネット」が正解であるとすぐ分かる
⇒社会保障の文脈で、貧困を予防したり、貧困により生じる問題を防いだりするのがセーフティネットである。本文から、明らかにこちらが適切である
※ディーセントワークは、“働きがいのある人間らしい仕事”を指す。もうちょっと言うと、“人間らしい生活“を”継続的に“営める労働である。つまるところ、ブラック労働や超低賃金労働は“人間らしい生活“を”継続的に“営む事はできない訳で…
・よって、アは「セーフティネット」である
社会保険のなかでも、事業主のみが負担する[ イ ]の意義にも気付かされた
・選択肢は「雇用保険」か「労災保険」である
・労災保険の保険料は、事業主(会社)のみが払う
⇒と言うか、実際に労災が発生した時の報告や、給付金請求なんかも全部事業主(会社)がやる。労働災害は完全に会社の責任なんだから、会社が全部やれ、という考え方である
・よって、イは「労災保険」である
※先にも触れたが、全く同じ知識が昨年(令和六年)追試験でも問われているので、大学入試センター的にホットな話題なのかもしれない
A:若い世代が主体的に社会に参画するための方法には、何があるだろうか。
B:[ ウ ]があげられるね。授業では、阪神・淡路大震災後に大きく進展したことから、1995年が日本における[ ウ ]の「元年」と言われたことを学んだ。
・選択肢は「ボランティア」か「公共サービス」である
・文脈的にも知識的にも、ウには「公共サービス」は入らないだろう
・まず知識で考えてみよう。阪神淡路大震災は、ボランティアの元年と呼ばれる事件でもある
⇒阪神淡路大震災は、当時の村山内閣の無為無策(以外にも色々あるけど)もあって、“公”による対応が遅れた事で有名である。一方で、現地でのボランティア活動が活発に行われ、また注目されたのもあり、阪神淡路大震災が起きた1995年はボランティアの「元年」と呼ばれている
⇒よって、ウに「公共サービス」は不適切で、「ボランティア」が適すると考えられる
・一方、文脈から考えるなら、Aの「若い世代が主体的に社会に参画する」発言に注目すればよい
⇒ここで言う「若い世代」は高校生や大学生であろうと考えられるが、一般に、「公共サービス」は官僚がやるものである(公共サービスの例をざっと挙げると、警察、裁判所、ゴミ収集、上下水道、公立学校、公民館…等々。公務員がやるものである)。逆に、「ボランティア」は、若い世代でも気軽に参加できる
・どちらから考えても、ウは「ボランティア」である