令和七年度 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第3問 問6
問題
財政の機能に関心をもった生徒Xと生徒Yは、日本における所得再分配政策によるジニ係数の変化を示した次の模擬授業の資料をみながら話し合っている。後の会話文中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。

X:再分配効果について、当初所得のジニ係数と、社会保障と税による再分配所得のジニ係数の推移をみてみよう。2002年よりも2021年の方が再分配効果は[ ア ]ことがわかるね。それから、どの年も社会保障が中心となって所得再分配機能を果たしているね。
Y:それに関して、模擬授業での租税負担率の国際比較では、日本は先進諸国に比べると、個人所得課税の負担率が低いことを学習したね。もし、所得格差を小さくするために現在の所得課税の税率の構造を変えるとしたら、最高税率を[ イ ]と、再分配効果は高くなるね。
X:それも一案だね。高齢化が進行する中、格差が固定化しないように、所得再分配機能のあり方を考える必要があるかもね。
① ア 大きい イ 引き上げる
② ア 大きい イ 引き下げる
③ ア 小さい イ 引き上げる
④ ア 小さい イ 引き下げる
解説
・貧富の格差を表す指標、と言うか、ジニ係数についての知識があれば後は国語の問題である
⇒具体的には、“ジニ係数は0から1の数字であり、0に近ければ平等、1に近ければ格差社会である”という知識さえあればいい。後は国語の問題として解ける
X:再分配効果について、当初所得のジニ係数と、社会保障と税による再分配所得のジニ係数の推移をみてみよう。2002年よりも2021年の方が再分配効果は[ ア ]ことがわかるね。それから、どの年も社会保障が中心となって所得再分配機能を果たしているね。
・図を見ると、●は常に高く、△と■は常に低い
・また、●は緩やかながら上昇していく傾向があるのに対して、△と■はほぼ横ばいである
●:当初所得のジニ係数
△:社会保障による再分配所得のジニ係数
■:社会保障と税による再分配所得のジニ係数
・以上の事から、以下のような事実が分かる
1:(少なくとも所得に関しては、)社会保障や税は、格差の是正に効果がある
2:社会保障や税による是正前で見ると、ゼロ年代よりも20年代の方が、格差が広がっている
3:2の事実があるにも拘わらず、社会保障や税による再分配後の格差は広がっていない
⇒つまるところ、2021年は本来、2002年に比べて格差が広がっている筈にも拘わらず、社会保障や税による格差是正後の格差は広がっていない。これを、社会保障や税による格差是正の「効果」という側面から見れば、2021年の方が「再分配効果は高い」と言えるだろう
もし、所得格差を小さくするために現在の所得課税の税率の構造を変えるとしたら、最高税率を[ イ ]と、再分配効果は高くなるね。
・ところで、格差是正の為に使われる「税」とは何か? 言うまでもなく累進課税であり、所得税である
⇒“金持ちからは沢山税を取る、貧乏人からはあんまり取らない”が累進課税である。現代日本の場合、この累進課税制度を採っている税の代表例が所得税である
・よって、所得税による格差是正効果(再分配効果)を高めたいなら、所得税の累進性をより高めればよい
⇒言い方を変えれば、“今は金持ちからでも最大、収入の45%しか取っていない。これを、70%とか90%とかにすればいい”というような話である
・よって、「最高税率を引き上げる」と、格差是正効果は上がる筈である
※“今や消費税よりも逆進性が高いと話題になってる社会保障で、こんなに格差が是正される訳ないだろ!!”と思うかもしれないが、ジニ係数は“所得”つまり“収入”しか見ないので…“貯金もロクにできない若者から収奪した社会保険料が、たっぷり資産のある年金生活者の年金として支給される”みたいな現実は一切反映されないのである