令和六年度 大学入学共通テスト追試験 政治・経済 第1問 問8
問8
主権国家に関連して、生徒Yは、国家が領域に対してもつ権利について調べ、次のメモにまとめた。メモを踏まえて判断したとき、後の記述ア〜ウのうち、国家が領域に対してもつ国際法上の権利を行使する例として正しいものはどれか。当てはまるものをすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑦のうちから一つ選べ。
〇国家の領域に主権が及ぶことは、その領域において統治権の行使が認められることを意味する。すなわち、国家は、自国の領域内にあるすべての人や物を排他的に支配する権利を有し、また他国の領域内にある人や物に対して許可なく支配を及ぼすことを禁じられる。
〇国家の領域に主権が及ぶことは、また、その領域を使用したり、処分したりする権利が認められることを意味する。過去には、国家が自国の領域の一部を他国に売り渡すこともあったが、これは自国の領域を処分する権利の行使の一例である。
ア 自国の領海で違法薬物の取引をしている外国人犯罪グループに対して、停船命令を下し、逮捕する。
イ 自国の領域で殺人を犯した者が他国の領域に逃れた場合に、その逃亡犯罪人を他国の許可なくその領域で捜索し、逮捕する。
ウ 国際機関に対して、自国の領土の一部に事務局の設置を認める。
① ア
② イ
③ ウ
④ アとイ
⑤ アとウ
⑥ イとウ
⑦ アとイとウ
解説
正解:⑤
復習用資料:政治分野第一章/国家とは何か
・国家とは何かについての最低限の知識さえあれば、後は国語の問題である
⇒今回問われている最低限の知識は、「国家を構成する領域は、領土、領海、領空」というもの。これさえ分かっていれば問題ない
ア 自国の領海で違法薬物の取引をしている外国人犯罪グループに対して、停船命令を下し、逮捕する。
・正文である
⇒問題文にあるように「国家は、自国の領域内にあるすべての人や物を排他的に支配する権利を有」するのであるから、当然、自国の領域内(領海は、国家の領域に含まれる)で犯罪者がいたら逮捕してよい
イ 自国の領域で殺人を犯した者が他国の領域に逃れた場合に、その逃亡犯罪人を他国の許可なくその領域で捜索し、逮捕する。
・誤文である
⇒問題文にあるように「国家は、自国の領域内にあるすべての人や物を排他的に支配する権利を有」するが、「他国の領域内にある人や物に対して許可なく支配を及ぼすことを禁じられる」。つまり、他国の領域にいる人物は他国に支配されているものなので、「許可なく」手を出してはならない
ウ 国際機関に対して、自国の領土の一部に事務局の設置を認める。
・正文である
⇒問題文にあるように「国家の領域に主権が及ぶことは、また、その領域を使用したり、処分したりする権利が認められることを意味する。過去には、国家が自国の領域の一部を他国に売り渡すこともあった」。自国の領域の一部を他国に売り渡す事さえできるのだから、当然、自国の領域の一部を国際機関に使わせるぐらい構わないのである
・よって、アとウのみが正文となる