令和七年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第3問 問1

問題

生徒Aは、一票の格差の是正を求める裁判について関心をもち、衆議院議員の選挙区の定数や有権者数の変化を調べて、一票の重みが最も大きい選挙区と最も小さい選挙区を選び出し、次の表1~3を作成した。生徒Aは、生徒Bと表1~3を見ながら後の会話をした。会話文中の空欄[ ア ]~[ ウ ]に入るものの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。

A:一票の格差が広がっていくと、それを是正するために、選挙区や議員定数の見直しがされることがあるんだ。
B:衆議院議員の選挙区の数が「10増10減」するというニュースを見たよ。
A:それも、一票の格差の是正のためのものだね。
B:選挙区は時代とともに変わっていくということかな。表1は、[ ア ]の導入よりも前のものだよね。
A:そうだね。このときは、一票の格差が[ イ ]倍程度にまで至っていて、最高裁判所は、このような一票の格差が、憲法に違反する状態になっていたと判断しているんだ。
B:表2表3のときには、最高裁はどう判断したのかな。
A:最高裁は、2000年の選挙のときは合憲と判断したけど、2014年の選挙のときは憲法に違反する状態であったと判断したそうだよ。
B:そうすると、2000年の選挙については、[ ウ ]倍を超える一票の格差を、最高裁は許容したということかな。
A:その通り。最近では、一票の格差を是正するための努力を国会がしているかどうかも、最高裁は評価しているらしいね。

① ア 小選挙区制   イ 3   ウ 2
② ア 小選挙区制   イ 3   ウ 3
③ ア 小選挙区制   イ 4   ウ 2
④ ア 小選挙区制   イ 4   ウ 3
⑤ ア 中選挙区制   イ 3   ウ 2
⑥ ア 中選挙区制   イ 3   ウ 3
⑦ ア 中選挙区制   イ 4   ウ 2
⑧ ア 中選挙区制   イ 4   ウ 3

#国語問題 #選挙制度 #現代日本の政党政治 #日本国憲法と人権(平等権)

解説

正解:①
復習用資料:政治分野第二章/日本国憲法と人権(平等権)
復習用資料:政治分野第三章/現代日本の政党政治
復習用資料:政治分野第三章/選挙制度

・国語の問題でもあり、選挙制度の問題でもあり、日本政治史の問題でもある
⇒「一票の格差」をお題にした問題でもあるので、日本国憲法と人権(平等権)の問題でもあるとも言えるが、その辺の知識を聞いてくる問題ではない

表1は、[ ア ]の導入よりも前のものだよね。

・表1の選挙は、西暦1990年の衆議院議員選挙であり、定数が4や3になっている
・即ちこれは、小選挙区比例代表並立制導入前の、中選挙区の時代である
⇒1993年の衆議院議員選挙で自民党は過半数を失い、五十五年体制が崩壊。自民党に代わって細川護熙率いる連立政権が誕生し、政治改革四法の制定を推進。結果、衆議院議員選挙は中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へ移行した

・よって、アは「小選挙区制」である

B:選挙区は時代とともに変わっていくということかな。表1は、[ ア ]の導入よりも前のものだよね。
A:そうだね。このときは、一票の格差が[ イ ]倍程度にまで至っていて、最高裁判所は、このような一票の格差が、憲法に違反する状態になっていたと判断しているんだ。

・ここからは国語の問題である
・表1を見ると、神奈川四区は定数4で有権者134万人、宮崎二区は定数2で有権者32万人である
・それぞれの選挙区で当選するには、何人ぐらいが投票してくれればよさそうか?
⇒ここは難しく考えず、単純に割ってみよう。すると、以下のようになる

134÷4=33.5
32÷3=10.666…

・神奈川四区では、33.5万人ぐらいが投票してくれれば当選できそうである
・一方、宮崎二区では、11万人ぐらい投票してくれれば、当選できそうである
⇒つまるところ、神奈川四区で当選するには、宮崎二区の三倍の票を集めなければいけない。そしてこれは、見方を変えれば神奈川人一人の票の力は、宮崎人一人の票の三分の一の価値しかないという事でもある

・よって、イは「3」である

B:表2と表3のときには、最高裁はどう判断したのかな。
A:最高裁は、2000年の選挙のときは合憲と判断したけど、2014年の選挙のときは憲法に違反する状態であったと判断したそうだよ。
B:そうすると、2000年の選挙については、[ ウ ]倍を超える一票の格差を、最高裁は許容したということかな。

・表2(2000年)、表3(2014年)はどちらも小選挙区制になった後であり、定数は1である
・よって、有権者数を比べればよい

・表2(2000年)では、神奈川十四区の有権者が島根三区の2.5倍程度いる
・表3(2014年)では、東京一区の有権者が宮城五区の2倍程度いる
⇒つまるところ、表2と表3は、二倍以上の一票の価値の差が出ているぞ、という意味のものである

・よって、ウは「2」である

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