令和七年度 大学入学共通テスト本試験 政治・経済 第1問 問2

問題

人権に関して、生徒Aと生徒Bは、日本国憲法が保障する基本的人権は、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」であり、自由獲得の歴史のなかで、次の考え方ア~ウが展開されてきたことを学んだ。後のカードX~Zは、人権保障に関する思想や歴史を表す資料を基に、生徒Aと生徒Bが作成したものである。考え方ア~ウと、それに対応するカードX~Zとの組合せとして最も適当なものを、後の①~⑥のうちから一つ選べ。

考え方
ア 権力者といえども法に従わなければならない
イ 市民の自由を守るために政治権力を分立する
ウ 人は生まれながらに人権を有している

カード
X すべての人は生れひとしく自由かつ独立しており、一定の生来の権利を有するものである。(斎藤眞訳)
Y 〔国王が、〕議会の同意なくして王の権威により法や法の執行を停止する権限があるかのようにふるまうことは違法である。(江藤晶子訳)
(注)表現を一部〔〕内で補っている。
Z 同一の人間あるいは同一の役職者団体において立法権力と執行権力とが結合するときは、自由は全く存在しない。(横田伸弘訳)

① ア-X   イ-Y   ウ-Z
② ア-X   イ-Z   ウ-Y
③ ア-Y   イ-X   ウ-Z
④ ア-Y   イ-Z   ウ-X
⑤ ア-Z   イ-X   ウ-Y
⑥ ア-Z   イ-Y   ウ-X

#人権の拡大 #国家の正当性の原理 #法の支配と法治主義 #世界の政治制度

解説

正解:④
復習用資料:政治分野第一章/人権の拡大
復習用資料:政治分野第一章/国家の正当性の原理
復習用資料:政治分野第一章/法の支配と法治主義
復習用資料:政治分野第一章/世界の政治制度

・「人権の拡大」や「国家の正当性の原理」、「法の支配と法治主義」に関する知識を問う問題
・なのだが、あまり各項目の細かい内容は聞いてこない問題でもある
・むしろ、「中世・近世・近代史概略」をきちんと学んでいるかが問われている

ア 権力者といえども法に従わなければならない

・ヘンリー・ド・ブラクトンの格言と類似する、大憲章(マグナ・カルタ)の精神を表す文章である
⇒「王と雖も神と法の下にある」と言ったのが大憲章制定当時の人物、ヘンリー・ド・ブラクトン。清教徒革命直前、この言葉を引き合いに出して権利請願を起草したのがエドワード・コークである

・では、ヘンリー・ド・ブラクトンは何処の国の人か? 大憲章は何処の国で出たものか?
・それはもちろん、イングランド王国(現代のイギリス)である
・この国は伝統的に王の権力が弱い、という話は「中世・近世・近代史概略」でした
・即ちイングランド王国には、王の権力を、議会(や議会の制定する法)が牽制する伝統があるのだ

Y 〔国王が、〕議会の同意なくして王の権威により法や法の執行を停止する権限があるかのようにふるまうことは違法である。(江藤晶子訳)

・このイングランド王国の伝統に沿うのは、明らかにYである
・よって、ア-Yであると分かる

イ 市民の自由を守るために政治権力を分立する

・明らかに、権力分立に関する文言である
・簡単に言えば、あらゆる国家権力が一人に集中している状態が絶対王政であり、人の支配である
・近世も後半に入ると絶対王政が実現されていくが、その中で、人の支配の弊害も指摘され始める
・即ち、“絶対王政・人の支配の場合、一度圧政が始まったら止めようがない”のである

・ここで出てきた考え方の一つが、制御と均衡(チェック・アンド・バランス)に基づく権力分立である
・国家権力を二つか三つに分けて、互いに牽制させよ…という訳である
⇒これを提唱した人物としては、社会契約説でも有名なジョン・ロックや、三権分立を唱えたラ・ブレード=モンテスキュー男爵シャルル=ルイが有名

Z 同一の人間あるいは同一の役職者団体において立法権力と執行権力とが結合するときは、自由は全く存在しない。(横田伸弘訳)

・Zは、この権力分立の考え方の前提を述べたものである
前提:国家権力が全て「同一の人間あるいは同一の役職者団体」に集中していると、マズイ
結論:だから「政治権力を分立」しよう

・という訳で、イ-Zであると分かる

ウ 人は生まれながらに人権を有している

・人権という考え方の中でも、天賦人権説的な考え方である
・即ち、「人は生まれながらに」、一定の権利を有しているという考え方である
⇒一般に多いのは、“××という義務を果たしたから、△△という権利がある”という考え方である。人権、特に天賦人権説的な人権は、そうではない。誰であっても(どんな悪人でも、犯罪者でも、ニートでも)人権を持っている、と考える

X すべての人は生れひとしく自由かつ独立しており、一定の生来の権利を有するものである。(斎藤眞訳)

・こちらも、天賦人権説的な内容になっている
・何せ、「すべての人は(中略)一定の生来の権利を有する」のだから、これは天賦人権である

・よって、ウ-Xであると分かる

results matching ""

    No results matching ""