令和七年度 大学入学共通テスト追試験 公共、政治・経済 第3問 問5

問題

生徒Xと生徒Yは、模擬授業後、税制について話し合っている。次の会話文中の空欄[ ア ]・[ イ ]に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①〜⑥のうちから一つ選べ。

X:K准教授は、税制を構築する上で考慮すべき原則について話していたね。そのうち、課税が経済活動にできるだけ影響しないようにする[ ア ]の原則が気になったよ。この原則に基づけば、働く人の勤労意欲を削ぐことにはならないし、経済活動を大きく妨げることにもならないからいいね。
Y:でも、[ ア ]の原則を満たすことは実際には難しいよ。これは、環境問題について考えてみるとわかるね。
X:そうだね。たとえば、ある企業が生産活動で汚染物質を排出して他の経済主体に損失を与えている場合、その損失の費用を考慮しないで生産活動を行うと、その企業の生産量は、社会全体として望ましい生産量よりも[ イ ]なるよ。
Y:たしかにね。だから、環境税の導入によってその企業が生産量を調整し、汚染物質の排出量が削減できれば、[ ア ]の原則には反するけれど、税によって、企業の経済活動を社会的に望ましい方向へ導くことができるといえるよ。
X:なるほど。それでは、税の望ましい経済効果と果たすべき役割について調べてみよう。

① ア 公平   イ 多く
② ア 公平   イ 少なく
③ ア 中立   イ 多く
④ ア 中立   イ 少なく
⑤ ア 簡素   イ 多く
⑥ ア 簡素   イ 少なく

#税 #国語問題

解説

正解:③
復習用資料:経済分野第一章/税

・税に関する知識を問う…ように見せかけて、読解力だけで解ける問題である
⇒とは言え、高校の政治経済ではあまり扱わない知識が身に着くので、一応「税」のタグもつけている

課税が経済活動にできるだけ影響しないようにする[ ア ]の原則

・選択肢は「公平」「中立」「簡素」である。言葉の意味をまず確認しよう
公平:すべてのものを同じように扱うこと。判断や処理などが、かたよっていないこと。また、そのさま。
中立:対立するどちらの側にも味方しないこと。また、特定の思想や立場をとらず中間に立つこと。
簡素:簡易で質素なこと。
※公平と中立はデジタル大辞泉から、簡素は現代実用辞典(第二版、講談社)から

・意味から考えて、公平の原則は“誰でも同じような税を納める”みたいな意味になりそうである
・同様に簡素の原則は、“誰にでも分かる簡単な税制にする”みたいな意味になりそうである
・そして中立は、“特定の何かにとって有利、不利になるような税制にしない”になりそうである

・問題文の書き方からすると、[ ア ]には明らかに「中立」が適する
⇒“特定の何かにとって有利、不利になるような税制にしない”から、「課税が経済活動に(中略)影響しない」という話になるし、「この原則に基づけば、働く人の勤労意欲を削ぐことにはならないし、経済活動を大きく妨げることにもならない」のである

~ここから豆知識~
・「公平」「中立」「簡素」という三原則は、現代日本の税制の根幹であるとされている
⇒“どこが簡素やねん言うてみぃ”と言いたくなるぐらい複雑なのが現代日本の税制だし、“消費税とかいう逆進性の塊みたいな税をバリバリかけといて何が公平やねん”ともなるだろうが、お題目としてはそうなっている。ちなみにこの三原則は、日本経済史の戦後混乱期に出てくるシャウプ勧告の内容が元になっている、とも言われている

・「公平」「中立」「簡素」の三原則を、経済学初学者向けに噛み砕いて解説すると以下のようになる
1:公平(Equity)
⇒納税額を、その人の経済力に応じたものにする。具体的には“垂直的公平:その人の経済力に応じて税額を増減する”“水平的公平:同じ経済力の人なら同額を負担する”
2:中立(Neutrality)
⇒税が経済行動に影響を与えない税制にする。言い方を変えれば、“働かない方が得”“投資しない方が有利”等にならないようにする
3:簡素(Simplicity)
⇒納税する側からすれば分かりやすい税制。徴税する側からしても、手間がかからない税制にする
~豆知識終わり~

X:そうだね。たとえば、ある企業が生産活動で汚染物質を排出して他の経済主体に損失を与えている場合、その損失の費用を考慮しないで生産活動を行うと、その企業の生産量は、社会全体として望ましい生産量よりも[ イ ]なるよ。

・選択肢は「多く」「少なく」である。ここはどう考えても、「少なく」であろう
⇒普通に考えて、汚染物質を垂れ流しながら商品を作る工場は、あんまり多くない方がいい。が、“汚染物質を垂れ流してもお咎めなし!”“その汚染物質で人が死のうが何しようが一切関係なし!”であるなら、かつ、その商品で儲かるなら、汚染物質垂れ流し工場は沢山建つし、汚染物質垂れ流し商品は大量に作られるだろう。これは、「社会全体として望ましい生産量よりも」多い状態である

※汚染物質を適切に処理するコストを企業が負担しないと、社会全体としては“本来より作り過ぎ”になるので、望ましい生産量より“多く”なる。だから、“汚染物質を浄化するコストは、工場を経営する企業が払いなさい!”というような法律が作られる…というのは、政治経済の授業でも、“市場の失敗”の“外部不経済”のところでよく見られる解説である

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